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妖魔山編
1771.遠くからは分からなかった光景
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大魔王ソフィの天狗族に対しての『報復』が完了する少し前、九尾の『妖狐』である『王琳』と七尾の『七耶咫』は山の頂で神斗と別れた後、真っすぐに山の中腹に居るソフィと帝楽智の元に向かっていた。
既にこの王琳はオーラを纏っており、いつでも戦闘態勢に入れる状態のままであった。どうやら王琳はソフィの膨大な『魔力』を感知した事で相当の興味を抱いたようであり、一刻も早くソフィの元へ向かいたいと考えているのだろう。
そんな王琳の後を必死に追いかけている七耶咫もまた、王琳とは異なり『青』だけではあるが、決して離されないようにと全力を出して、山の整備もされていない『禁止区域』の中にある森を駆け抜けていた。
先に山の頂から悟獄丸やイダラマを追って下りてきたシギンは『空間魔法』を扱える為に例外とはなるが、この王琳と七耶咫が山を下る速度は異常な程であり、決して妖魔ランクが『8』以下の者達では追いつける者ではない程の速度であった。
(は、速すぎですよ……! こ、ここまで王琳様が誰かに執着するのを見たのは久方ぶりだ。確かにあの羽付きが『天従十二将』をたった一人で相手に出来ているのは凄いと思うけど、それでも『天魔』や副首領の『華親』を除けば我々『妖狐』でもあっさりと制圧できる程度の存在が『天狗族』だ。実際にあの羽付きがどこまでやれるかは分からないけど、王琳様がそこまで意識される意味がよく分からない)
この時はまだ七尾の『七耶咫』はソフィの事を侮っており、妖狐と同じ『三大妖魔』である『天狗族』に対しても下に見ている為、たとえ『天狗族』よりあの羽付きが強いとしても、王琳様が注目する程でもない存在だと本気で考えている様子であった。
しかしこの彼女の考えは、実際に天狗族の縄張りが目に見えた辺りから、あっさりと印象を変えるのであった。
……
……
……
(な、何だこれは……!?)
整備などされていない山の道を慣れた足取りで下ってきた『王琳』と『七耶咫』は、遂に天狗族の縄張りが目前に迫った近くの崖の上で姿と魔力を認識されないように『結界』を施しながら足を止めた。
そこからは、遠くからは何故か感じられなかった信じられない程の『魔力』で張られている『結界』を感じ取ってしまい、七耶咫は愕然とした表情を浮かべながら、内心ではその表情と照らし合わせたかのような言葉が吐かれるのだった。
「ククッ! おい七耶咫、見ろよ? あの天狗の魔王と呼ばれた『帝楽智』殿が、アイツの殺意に当てられてビビって動けなくなっていやがる。これは長い歴史の中でも相当珍しい場面に居合わせる事が出来たな……!」
『結界』に意識を向けていた七耶咫は、主の王琳の言葉に顔を上げると、確かに震えているように見える『帝楽智』の姿と、舌打ち交じりに睨みつけている『華親』の姿を視界に収める事が出来たのだった。
「ま、まさか……! あの羽付き、たった一人で『天従十二将』を含めた天狗達を!?」
そこで視線の先で大勢の倒れている天狗達と、謎の白い鎖が空の上で一体の天狗を串刺しにしたままで、グルグルと円を描くように廻り続けているのが見えた。
(あ、あれは一体何なんだ……? あんな悍ましいものは見たことがないが、信じられない程の『魔』の密度が感じられる。あれに触れたら最後だと私の本能が感じ取っている……!)
どうやら七尾として『妖狐』の中でも相当の地位に居る力を有する七耶咫は、一目見ただけでソフィの放った『絶殲』のヤバさを本能で理解した様子であった。
「あの中に居る連中は、どいつもこいつも大した力を持っているようだが、やはりあの羽付きの男だけは別格だな。あれだけの『魔力』を放出してやがるのに、全く身体に負担がかかっているようには見えぬ。間違いなくアイツはこちら側の存在だ。下手をすれば『悟獄丸』殿よりも強いかもな?」
顎を手で擦りながら王琳は、何事もなくそう言い放った。
――この場には自分の忠実な配下である七耶咫しかいないため、わざわざ『妖魔神』にして目上の存在である筈の『悟獄丸』に様と呼ばずに殿と明言した王琳であった。
妖魔神である『悟獄丸』は確かにこの山に居る妖魔達より強い存在であり、恐れられている存在ではあるが、それでも同じくらい古くからこの山に存在して、幾度となく転生を繰り返して気が遠くなる程の年数を生きてきた九尾の妖狐である『王琳』は、そんな妖魔神の『悟獄丸』より強い――。
数多くの妖魔を従えるのが面倒だという理由で『妖魔神』を名乗る事は避けた王琳だが、それでも決してランク『10』として数えられる妖魔達の中では、神斗の『魔』の概念を行使する瞬間を除き、本気となった彼に実力で戦闘を行い勝てる者は皆無といえるだろう。
そんな九尾の王琳は、大魔王ソフィの三色のオーラを纏う姿を見て、その実力を直ぐに認めた様子であった。
既にこの王琳はオーラを纏っており、いつでも戦闘態勢に入れる状態のままであった。どうやら王琳はソフィの膨大な『魔力』を感知した事で相当の興味を抱いたようであり、一刻も早くソフィの元へ向かいたいと考えているのだろう。
そんな王琳の後を必死に追いかけている七耶咫もまた、王琳とは異なり『青』だけではあるが、決して離されないようにと全力を出して、山の整備もされていない『禁止区域』の中にある森を駆け抜けていた。
先に山の頂から悟獄丸やイダラマを追って下りてきたシギンは『空間魔法』を扱える為に例外とはなるが、この王琳と七耶咫が山を下る速度は異常な程であり、決して妖魔ランクが『8』以下の者達では追いつける者ではない程の速度であった。
(は、速すぎですよ……! こ、ここまで王琳様が誰かに執着するのを見たのは久方ぶりだ。確かにあの羽付きが『天従十二将』をたった一人で相手に出来ているのは凄いと思うけど、それでも『天魔』や副首領の『華親』を除けば我々『妖狐』でもあっさりと制圧できる程度の存在が『天狗族』だ。実際にあの羽付きがどこまでやれるかは分からないけど、王琳様がそこまで意識される意味がよく分からない)
この時はまだ七尾の『七耶咫』はソフィの事を侮っており、妖狐と同じ『三大妖魔』である『天狗族』に対しても下に見ている為、たとえ『天狗族』よりあの羽付きが強いとしても、王琳様が注目する程でもない存在だと本気で考えている様子であった。
しかしこの彼女の考えは、実際に天狗族の縄張りが目に見えた辺りから、あっさりと印象を変えるのであった。
……
……
……
(な、何だこれは……!?)
整備などされていない山の道を慣れた足取りで下ってきた『王琳』と『七耶咫』は、遂に天狗族の縄張りが目前に迫った近くの崖の上で姿と魔力を認識されないように『結界』を施しながら足を止めた。
そこからは、遠くからは何故か感じられなかった信じられない程の『魔力』で張られている『結界』を感じ取ってしまい、七耶咫は愕然とした表情を浮かべながら、内心ではその表情と照らし合わせたかのような言葉が吐かれるのだった。
「ククッ! おい七耶咫、見ろよ? あの天狗の魔王と呼ばれた『帝楽智』殿が、アイツの殺意に当てられてビビって動けなくなっていやがる。これは長い歴史の中でも相当珍しい場面に居合わせる事が出来たな……!」
『結界』に意識を向けていた七耶咫は、主の王琳の言葉に顔を上げると、確かに震えているように見える『帝楽智』の姿と、舌打ち交じりに睨みつけている『華親』の姿を視界に収める事が出来たのだった。
「ま、まさか……! あの羽付き、たった一人で『天従十二将』を含めた天狗達を!?」
そこで視線の先で大勢の倒れている天狗達と、謎の白い鎖が空の上で一体の天狗を串刺しにしたままで、グルグルと円を描くように廻り続けているのが見えた。
(あ、あれは一体何なんだ……? あんな悍ましいものは見たことがないが、信じられない程の『魔』の密度が感じられる。あれに触れたら最後だと私の本能が感じ取っている……!)
どうやら七尾として『妖狐』の中でも相当の地位に居る力を有する七耶咫は、一目見ただけでソフィの放った『絶殲』のヤバさを本能で理解した様子であった。
「あの中に居る連中は、どいつもこいつも大した力を持っているようだが、やはりあの羽付きの男だけは別格だな。あれだけの『魔力』を放出してやがるのに、全く身体に負担がかかっているようには見えぬ。間違いなくアイツはこちら側の存在だ。下手をすれば『悟獄丸』殿よりも強いかもな?」
顎を手で擦りながら王琳は、何事もなくそう言い放った。
――この場には自分の忠実な配下である七耶咫しかいないため、わざわざ『妖魔神』にして目上の存在である筈の『悟獄丸』に様と呼ばずに殿と明言した王琳であった。
妖魔神である『悟獄丸』は確かにこの山に居る妖魔達より強い存在であり、恐れられている存在ではあるが、それでも同じくらい古くからこの山に存在して、幾度となく転生を繰り返して気が遠くなる程の年数を生きてきた九尾の妖狐である『王琳』は、そんな妖魔神の『悟獄丸』より強い――。
数多くの妖魔を従えるのが面倒だという理由で『妖魔神』を名乗る事は避けた王琳だが、それでも決してランク『10』として数えられる妖魔達の中では、神斗の『魔』の概念を行使する瞬間を除き、本気となった彼に実力で戦闘を行い勝てる者は皆無といえるだろう。
そんな九尾の王琳は、大魔王ソフィの三色のオーラを纏う姿を見て、その実力を直ぐに認めた様子であった。
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