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妖魔山編
1769.妖魔召士シギンが着目する存在
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「な、何が起きているんだ?」
シギンと出会った事でようやくこの『妖魔山』で冷静さを取り戻せたウガマ達は、イダラマが目を覚ますのを待ってから山を下りようと決意したところであったが、再び天狗の大群が戻ってきた為に、どうしようかと悩んだ様子を見せていたが、シギンが『結界』を張るのを条件に天狗達の様子を見たいと口にしたことでウガマ達は『天狗族』の縄張りにある岩陰からこっそりと様子を窺っていた。
――しかしそこで目の当たりにした光景は、まさに地獄絵図であった。
当初は天狗族と共にこの場に現れた人間達の中に、あの妖魔退魔師の総長である『シゲン』に副総長の『ミスズ』。更には組長格の三人の姿があった事で、元本部付けの『予備群』であったウガマはそちらに目を奪われていたのだが、その僅かものの数分程で全く見たことがない人間が、何やら『真っ白な光の束』を出現させたかと思えば、あれだけ大勢居た妖魔ランクが『6』以上は確実だろうと思わせる程の天狗の軍勢が次々と絶命していく姿を見せられてしまい、もはやウガマは『シゲン』達のことなど忘れたかのように、その人間に見えるソフィに目を釘付けにされてしまって、気が付けば本音が口から漏れ出てしまっていたのだった。
そしてそのウガマの呟きに返事をするかのように、この場でもう気配がバレないように『結界』を張ってくれていた『シギン』が口を開くのだった。
「どうやら発動羅列の記述をみるに、あれは『理』が用いられている。間違いなく別世界で『魔法』と呼ばれる代物のようだ」
「ま、魔法……? そ、それは『捉術』とはまた異なるものなのですか?」
「『魔力』を使うという点では『捉術』も『魔法』と変わらぬのだが、その効力の有り様としての範囲の広さは『捉術』とは比べ物にならぬな。いわば『捉術』とは妖魔と戦う事に対して特化した『魔』の概念だが、あの『魔法』というものは攻撃だけではなく、お主らのように刀に『青』を纏わせて能力を向上させるのと同様に、自分の力を高めたりする事にも使えたりするのだ」
シギンの今告げた言葉は間違ったものではないが、退魔士ですらない元予備群のウガマに『魔』の概念を事細やかに説明しても理解が追い付かないだろうと判断して、予備群や妖魔退魔師が行う『青』のオーラを題材にして『魔法』で出来る事の一部を例に挙げながら説明を行ったのであった。
「し、シギン様! その……、今あやつが使っている『白い光の束』は『魔力』を消費する事で使えているようですが『魔法』とは、あ、あのように高ランクである『天狗』を相手に、あっさりと低ランクの妖魔のように薙ぎ倒す事が可能なのですか!?」
今度はイダラマの護衛の退魔士の一人が、シギンに質問をぶつけてくる。どうやら同じ『魔力』を使う退魔士として『魔法』に深く興味を抱いたのであろう。
「『魔法』を扱えたからといって『天狗族』の持つ耐魔力をあのようにあっさりと貫けるものではない。あの背中から羽を生やしている人間の青年に見える男が戦闘に使っている『魔力』は、生半可な妖魔召士達より遥かに上だろう」
「「!?」」
他でもない妖魔召士の最高峰に居る筈のシギンが、妖魔召士よりも魔力値が上だと口にした事で質問を行った退魔士や、他の退魔士達も唖然とするのであった。
この場に居る退魔士達は妖魔召士と比べれば数段劣るのは否めないが、それでもこれまで妖魔達と戦い続けて生き残る事の出来た優秀な退魔士達である。
そんな退魔士達であっても、少なく見積もっても妖魔ランクが『6』以上はあるのは間違いない『天狗族』を相手にする事は不可能である。
驚きの表情を浮かべた彼らだが、現実にこうしてあれだけの天狗を一方的に薙ぎ倒していく姿を見せられた以上は、シギンの言葉は真実なのだと強引に理解させられる退魔士達であった。
そしてソフィの一方的な戦闘を眺めていた彼らだが、あれだけいた天狗族の大群が絶命していき、遂には『天従十二将』と呼ばれる『力』ある天狗族までもがあっさりと全て屠られて、その場に天狗族の首領である『帝楽智』と、副首領の『華親』のみが残されたところでようやく、シギンも感心したような目を浮かべ始めるのだった。
(あれは一体何なのだろうか? 背中から羽を生やすような存在である以上は人間ではないのだろうが、しかしあんな妖魔の種類を見たことがない。それに近くに居る者達の中に居るのは間違いなく『ゲンロク』と『エイジ』だろうが、あやつらもあの存在には相当気を許していると見える。しかしそれでもどうみても奴らが『式』にしたにしては、あの存在は強すぎる。あやつらが『式』に出来るとは思えぬし、そもそも妖魔が『魔法』を扱っているワケもあるまい? 『理』も俺やサイヨウが使っているモノとも違うし、別世界の存在であることは間違いないのだろうが、どういう経緯でここに居るのかも気に掛かる。神斗もそろそろ俺を探してこちらにやってきそうではあるが、もう少しだけここで様子を見る他あるまい……)
そう言ってシギンは口元に手をあてながら、天狗と戦う謎の存在を観察し続けるのであった――。
……
……
……
シギンと出会った事でようやくこの『妖魔山』で冷静さを取り戻せたウガマ達は、イダラマが目を覚ますのを待ってから山を下りようと決意したところであったが、再び天狗の大群が戻ってきた為に、どうしようかと悩んだ様子を見せていたが、シギンが『結界』を張るのを条件に天狗達の様子を見たいと口にしたことでウガマ達は『天狗族』の縄張りにある岩陰からこっそりと様子を窺っていた。
――しかしそこで目の当たりにした光景は、まさに地獄絵図であった。
当初は天狗族と共にこの場に現れた人間達の中に、あの妖魔退魔師の総長である『シゲン』に副総長の『ミスズ』。更には組長格の三人の姿があった事で、元本部付けの『予備群』であったウガマはそちらに目を奪われていたのだが、その僅かものの数分程で全く見たことがない人間が、何やら『真っ白な光の束』を出現させたかと思えば、あれだけ大勢居た妖魔ランクが『6』以上は確実だろうと思わせる程の天狗の軍勢が次々と絶命していく姿を見せられてしまい、もはやウガマは『シゲン』達のことなど忘れたかのように、その人間に見えるソフィに目を釘付けにされてしまって、気が付けば本音が口から漏れ出てしまっていたのだった。
そしてそのウガマの呟きに返事をするかのように、この場でもう気配がバレないように『結界』を張ってくれていた『シギン』が口を開くのだった。
「どうやら発動羅列の記述をみるに、あれは『理』が用いられている。間違いなく別世界で『魔法』と呼ばれる代物のようだ」
「ま、魔法……? そ、それは『捉術』とはまた異なるものなのですか?」
「『魔力』を使うという点では『捉術』も『魔法』と変わらぬのだが、その効力の有り様としての範囲の広さは『捉術』とは比べ物にならぬな。いわば『捉術』とは妖魔と戦う事に対して特化した『魔』の概念だが、あの『魔法』というものは攻撃だけではなく、お主らのように刀に『青』を纏わせて能力を向上させるのと同様に、自分の力を高めたりする事にも使えたりするのだ」
シギンの今告げた言葉は間違ったものではないが、退魔士ですらない元予備群のウガマに『魔』の概念を事細やかに説明しても理解が追い付かないだろうと判断して、予備群や妖魔退魔師が行う『青』のオーラを題材にして『魔法』で出来る事の一部を例に挙げながら説明を行ったのであった。
「し、シギン様! その……、今あやつが使っている『白い光の束』は『魔力』を消費する事で使えているようですが『魔法』とは、あ、あのように高ランクである『天狗』を相手に、あっさりと低ランクの妖魔のように薙ぎ倒す事が可能なのですか!?」
今度はイダラマの護衛の退魔士の一人が、シギンに質問をぶつけてくる。どうやら同じ『魔力』を使う退魔士として『魔法』に深く興味を抱いたのであろう。
「『魔法』を扱えたからといって『天狗族』の持つ耐魔力をあのようにあっさりと貫けるものではない。あの背中から羽を生やしている人間の青年に見える男が戦闘に使っている『魔力』は、生半可な妖魔召士達より遥かに上だろう」
「「!?」」
他でもない妖魔召士の最高峰に居る筈のシギンが、妖魔召士よりも魔力値が上だと口にした事で質問を行った退魔士や、他の退魔士達も唖然とするのであった。
この場に居る退魔士達は妖魔召士と比べれば数段劣るのは否めないが、それでもこれまで妖魔達と戦い続けて生き残る事の出来た優秀な退魔士達である。
そんな退魔士達であっても、少なく見積もっても妖魔ランクが『6』以上はあるのは間違いない『天狗族』を相手にする事は不可能である。
驚きの表情を浮かべた彼らだが、現実にこうしてあれだけの天狗を一方的に薙ぎ倒していく姿を見せられた以上は、シギンの言葉は真実なのだと強引に理解させられる退魔士達であった。
そしてソフィの一方的な戦闘を眺めていた彼らだが、あれだけいた天狗族の大群が絶命していき、遂には『天従十二将』と呼ばれる『力』ある天狗族までもがあっさりと全て屠られて、その場に天狗族の首領である『帝楽智』と、副首領の『華親』のみが残されたところでようやく、シギンも感心したような目を浮かべ始めるのだった。
(あれは一体何なのだろうか? 背中から羽を生やすような存在である以上は人間ではないのだろうが、しかしあんな妖魔の種類を見たことがない。それに近くに居る者達の中に居るのは間違いなく『ゲンロク』と『エイジ』だろうが、あやつらもあの存在には相当気を許していると見える。しかしそれでもどうみても奴らが『式』にしたにしては、あの存在は強すぎる。あやつらが『式』に出来るとは思えぬし、そもそも妖魔が『魔法』を扱っているワケもあるまい? 『理』も俺やサイヨウが使っているモノとも違うし、別世界の存在であることは間違いないのだろうが、どういう経緯でここに居るのかも気に掛かる。神斗もそろそろ俺を探してこちらにやってきそうではあるが、もう少しだけここで様子を見る他あるまい……)
そう言ってシギンは口元に手をあてながら、天狗と戦う謎の存在を観察し続けるのであった――。
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