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妖魔山編
1767.王琳が興味を抱いた存在
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「お、王琳様……! こ、これは一体……?」
山の頂に建てられている『神斗』の小屋付近の崖から中腹付近で戦っているソフィ達を見下ろしていた神斗達だが、ソフィが放った『魔法』の数々を見て、七尾の七耶咫が驚きの声を上げながら、彼女の主である九尾の『王琳』に声を掛けるのだった。
「……」
だが、王琳はその七耶咫に返事をせずに、獲物を見つけたとばかりに笑みを浮かべるのみであった。
「これは驚いたな……。あの人間の他にもこんな奴が山に紛れていたとは」
だんまりを貫き続ける王琳の代わりに妖魔神の『神斗』がそう呟くと、直ぐに七耶咫は視線を彼に向け直す。
「まずいな、あのままだと間違いなく『帝楽智』を含めた『天狗族』が絶滅してしまう……。悟獄丸に行ってもらいたいところだったけど、彼も未だに姿を見せないし、これは困った事になった」
神斗はそう言って顎傍に手を持っていきながら、これはどうしたものかと静かに考え始めるのだった。
「神斗様は、悟獄丸様の様子を見に行きたいんでしょう? だったら『天魔』の方は俺に任せちゃもらえないですかね?」
「ん? 君が行ってくれるのなら私も有難いところだけど……」
王琳の申し出に最初は嬉しそうな笑みを浮かべた神斗だが、徐々にその表情を浮かないモノへと変貌させていくのだった。
「出来れば生かして彼らをここに連れてきて欲しいんだけど、その顔は無理そうだね……」
この表情からも分かる通り、今の王琳は言って聞かせられる状態ではない。それは先程まで『帝楽智殿』と口にしていた王琳が、今はもう『天魔』と彼女の事を単なる天狗として呼んでいた事からも理解が出来るのだった。
こうして神斗達が会話を行っている間も山の中腹での戦闘は続いており、ちょうど神斗が王琳に彼らを連れてきて欲しいと口にする瞬間に、帝楽智の『魔力波』があっさりと跳ね返されてしまうのだった。
そしてそれを見た王琳が邪悪な笑みを浮かべているのを横目に、神斗は溜息を吐いて先程の言葉を撤回するかの如く、諦めの言葉を代わりに吐き始めるのだった。
「すみませんね、アナタには悪いが……。アレとはつまらぬ考えを捨てて全力でぶつかってみたいんで」
――九尾の『王琳』が妖魔神の『神斗』の命令に背く事は珍しい。
確かに『出来れば』連れてきて欲しいという神斗の言葉ではあったが、それでも王琳はその言葉に従うつもりが最初から毛程にもない事が、その表情から伝わってくるのであった。
「まぁいいよ、君の好きにすると良い。私は私で悟獄丸が戻ってこれない理由を作ったであろうあの『人間』の方へ向かわなくてはならないからね」
どうやら神斗も明確に『悟獄丸』が殺られたと理解しているようで、天魔の方を『王琳』が受け持ってくれるというのであれば、先にシギンの方を優先しようという考えているようで、すんなりと王琳の行動を認めるのであった。
「ふふっ、ありがとうございます。そっちの話もまた後でじっくり聞かせて下さい」
「ああ、君もね? それじゃ、また後で」
王琳にそう口にすると、先に神斗が山の頂から姿を消すのであった。
完全に気配が消え去ったのを確認した後、王琳はもう我慢が出来ないとばかりに『オーラ』を纏わせながら、口角を吊り上げて邪悪な笑みを作り始める。
「七耶咫、俺達も行くぞ」
「は、ははっ!」
王琳の恐ろしい笑みを見て言葉を失っていた七耶咫だったが、彼女は主から自分に向けられた言葉には、直ぐに返事をして恭しく礼を取るのであった。
……
……
……
山の頂でソフィ達の動向を監視していた神斗達と同様に、天狗族達が行った大移動によってこの『妖魔山』に居る多くの妖魔達が『大魔王』の行いに注目をし始めていた。
そんな中、洞穴の中でこれまで過去の『妖魔召士』によってその身を封じられていた『存在』もまた動きを見せ始めているのだった。
「また膨大な『魔力』の奔流を感じたな。この『結界』のせいで外の事は長い間分からなかったが、もしかすると今の時代の人間の妖魔召士達は、皆一様にこれ程までに力をつけているという事なのか? だとしたら非常に面倒だな。少しばかり外に出て妖魔共から情報を引き出してくるか? しかし妖魔召士の存在もあるからな……。下手に俺が外に出る事で藪蛇になる可能性もある。せっかくこうして『結界』の代用を作ったのだから、もう少し様子を見るか……」
鬼人の殿鬼の姿をしたその『存在』は、札が取り除かれて『結界』の役目が無駄になってしまった洞穴の奥でそう独り言ちると、再びゆっくりと目を閉じて瞑想を始めるのだった。
こうして『妖魔山』の中腹付近で行われ始めた大魔王ソフィと天狗族の争いを皮切りに、この『妖魔山』の中で色々な思惑が入り乱れる事になるのであった。
……
……
……
山の頂に建てられている『神斗』の小屋付近の崖から中腹付近で戦っているソフィ達を見下ろしていた神斗達だが、ソフィが放った『魔法』の数々を見て、七尾の七耶咫が驚きの声を上げながら、彼女の主である九尾の『王琳』に声を掛けるのだった。
「……」
だが、王琳はその七耶咫に返事をせずに、獲物を見つけたとばかりに笑みを浮かべるのみであった。
「これは驚いたな……。あの人間の他にもこんな奴が山に紛れていたとは」
だんまりを貫き続ける王琳の代わりに妖魔神の『神斗』がそう呟くと、直ぐに七耶咫は視線を彼に向け直す。
「まずいな、あのままだと間違いなく『帝楽智』を含めた『天狗族』が絶滅してしまう……。悟獄丸に行ってもらいたいところだったけど、彼も未だに姿を見せないし、これは困った事になった」
神斗はそう言って顎傍に手を持っていきながら、これはどうしたものかと静かに考え始めるのだった。
「神斗様は、悟獄丸様の様子を見に行きたいんでしょう? だったら『天魔』の方は俺に任せちゃもらえないですかね?」
「ん? 君が行ってくれるのなら私も有難いところだけど……」
王琳の申し出に最初は嬉しそうな笑みを浮かべた神斗だが、徐々にその表情を浮かないモノへと変貌させていくのだった。
「出来れば生かして彼らをここに連れてきて欲しいんだけど、その顔は無理そうだね……」
この表情からも分かる通り、今の王琳は言って聞かせられる状態ではない。それは先程まで『帝楽智殿』と口にしていた王琳が、今はもう『天魔』と彼女の事を単なる天狗として呼んでいた事からも理解が出来るのだった。
こうして神斗達が会話を行っている間も山の中腹での戦闘は続いており、ちょうど神斗が王琳に彼らを連れてきて欲しいと口にする瞬間に、帝楽智の『魔力波』があっさりと跳ね返されてしまうのだった。
そしてそれを見た王琳が邪悪な笑みを浮かべているのを横目に、神斗は溜息を吐いて先程の言葉を撤回するかの如く、諦めの言葉を代わりに吐き始めるのだった。
「すみませんね、アナタには悪いが……。アレとはつまらぬ考えを捨てて全力でぶつかってみたいんで」
――九尾の『王琳』が妖魔神の『神斗』の命令に背く事は珍しい。
確かに『出来れば』連れてきて欲しいという神斗の言葉ではあったが、それでも王琳はその言葉に従うつもりが最初から毛程にもない事が、その表情から伝わってくるのであった。
「まぁいいよ、君の好きにすると良い。私は私で悟獄丸が戻ってこれない理由を作ったであろうあの『人間』の方へ向かわなくてはならないからね」
どうやら神斗も明確に『悟獄丸』が殺られたと理解しているようで、天魔の方を『王琳』が受け持ってくれるというのであれば、先にシギンの方を優先しようという考えているようで、すんなりと王琳の行動を認めるのであった。
「ふふっ、ありがとうございます。そっちの話もまた後でじっくり聞かせて下さい」
「ああ、君もね? それじゃ、また後で」
王琳にそう口にすると、先に神斗が山の頂から姿を消すのであった。
完全に気配が消え去ったのを確認した後、王琳はもう我慢が出来ないとばかりに『オーラ』を纏わせながら、口角を吊り上げて邪悪な笑みを作り始める。
「七耶咫、俺達も行くぞ」
「は、ははっ!」
王琳の恐ろしい笑みを見て言葉を失っていた七耶咫だったが、彼女は主から自分に向けられた言葉には、直ぐに返事をして恭しく礼を取るのであった。
……
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山の頂でソフィ達の動向を監視していた神斗達と同様に、天狗族達が行った大移動によってこの『妖魔山』に居る多くの妖魔達が『大魔王』の行いに注目をし始めていた。
そんな中、洞穴の中でこれまで過去の『妖魔召士』によってその身を封じられていた『存在』もまた動きを見せ始めているのだった。
「また膨大な『魔力』の奔流を感じたな。この『結界』のせいで外の事は長い間分からなかったが、もしかすると今の時代の人間の妖魔召士達は、皆一様にこれ程までに力をつけているという事なのか? だとしたら非常に面倒だな。少しばかり外に出て妖魔共から情報を引き出してくるか? しかし妖魔召士の存在もあるからな……。下手に俺が外に出る事で藪蛇になる可能性もある。せっかくこうして『結界』の代用を作ったのだから、もう少し様子を見るか……」
鬼人の殿鬼の姿をしたその『存在』は、札が取り除かれて『結界』の役目が無駄になってしまった洞穴の奥でそう独り言ちると、再びゆっくりと目を閉じて瞑想を始めるのだった。
こうして『妖魔山』の中腹付近で行われ始めた大魔王ソフィと天狗族の争いを皮切りに、この『妖魔山』の中で色々な思惑が入り乱れる事になるのであった。
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