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妖魔山編
1762.最強の妖狐の存在
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この『妖魔山』の中腹を管理している『天狗族』は、古くから『三大妖魔』と呼ばれており、今も尚、その『三大妖魔』の中でも筆頭と呼べる程にこの『妖魔山』で隆盛を極めていた。
その理由として、他の『三大妖魔』とされている『鬼人』や『妖狐』は種族を束ねるそのトップ達が、すでに種族を離れている事が大きい。
鬼人族ではかつての長であった『悟獄丸』が『妖魔神』となり、種族の長の立場を離れると、次に『殿鬼』もまた自由を得るために長の座を降りて去ってしまった。
残されていた将来有望とされていた女鬼人の『紅羽』もまた、人間達が『妖魔団の乱』と呼ぶ異変を起こした後に妖魔召士の『サイヨウ』の『式』となって、この『妖魔山』から姿を去ってしまい、今では鬼人族は現役を離れて久しい長老と呼べる程に長く生きている『玉稿』が、その知恵を活かしながら他の鬼人達を束ねている。
――つまり戦士として他の種族と真っ向から戦う程の力は現在の『鬼人族』には残されていないのが実状なのであった。
そして残されている『三大妖魔』である『妖狐』だが、今もまだトップである九尾の『王琳』が健在であるが、表立っての縄張りというものを持っておらず、そのトップである『王琳』が、妖魔神である『神斗』の『魔』の概念に魅了されてしまっていて、今更に他種族と揉め事を起こそうという気は毛頭なくなっている。
つまりは『妖狐』という種族自体はこの山にまだ残ってはいるが、他の種族を動かすような権力などは一切持ち合わせていない状況なのであった。
しかしだからといって『王琳』を従えようとする妖魔はこの山には居ない。それどころか何も山に対して権力といった物を持たない『王琳』に対して他の力ある妖魔達が遠慮を行う程である。
そしてそれは当然に『天狗族』や『鬼人族』も同様である――。
本来であれば種族としての力が弱まれば、他の種族が自分達の縄張りを広げようとしたり、種族の配下に組み込もうと動きを見せるものが摂理と呼べるものであるが、この『妖狐』に限ってはその摂理には当てはまらない。
何故なら最初にも述べた通り、その『妖狐』の長である『王琳』が、今もまだこの山に健在だからである。
『三大妖魔』の『妖狐』の代表格で、すでに幾度となく転生を繰り返している九尾の『王琳』。
今でも活動拠点は『妖魔山』だけではあるが、この王琳が行く先々で揉め事はほとんど起きる事はなく、また王琳の直属の部下といえる『七耶咫』や『六阿狐』それに『五立楡』といった王琳に忠誠を使う妖狐に対しても、他の『禁止区域』に居るような妖魔達は口出しする事さえもほとんど皆無であり、それらの『妖狐』達が連れている者達でさえも顔を覚えられれば、妖狐、延いては王琳の客として扱われて手厚く保護、若しくは他種族の縄張りの中であっても、直接の影響がない限りは無視される事が多い。
――それ程までに『王琳』の影響力は妖魔山では強いのであった。
何故王琳がここまで影響力を持っているのかだが、それは単純明快な理由であった。
彼があまりにも強すぎて過去に彼に逆らった数多の種族の族長たちが、王琳の手によって悉く死を遂げていることが理由である。
そしてこの王琳の最も厄介なところとは、興味のない事には何一つ目もくれない事である。
その王琳の考え方と生き方はまさに筋金入りであり、かつて妖魔神である『神斗』や『悟獄丸』から妖魔山の中腹付近の管理を命令された事もあったのだが、キッパリと断った過去を持つ。
本来であれば『神斗』や『悟獄丸』といった『妖魔神』の命令に背けば死が待っているところなのだが、王琳はその『神斗』と『悟獄丸』を同時に相手どって戦う事も辞さないといった態度を堂々と両者に向けて、真正面から命令を拒否したのである。
これには『神斗』は心の底から愉快だと笑い、悟獄丸は『妖狐』という種族の印象を根底の部分から変えるに至った。
この命令以降、妖魔神に気に入られた『妖狐』の『王琳』は、好き勝手に『妖魔山』で生きる事を許された特例の存在となった。
いつ如何なる時にも『妖魔神』の居る山の頂に姿を見せようが、勝手に山を下りようが文句は言われない。
そして誰が『王琳』に喧嘩を売ろうが、返り討ちにされて死を遂げようが、山に生きる妖魔は『妖魔神』を含めて誰も文句を言ってこない。
仮定の話ではあるが『三大妖魔』といわれた『妖狐』、その種族の筆頭とされる代表である『王琳』が『妖魔山』の中腹付近を管理する事を受け入れていたのであれば、現在の『三大妖魔』の筆頭種族は『天狗族』ではなくなっていた可能性は否めない。
それも天狗族とは違い、妖狐の王琳はたった一体で『妖魔神』二体を相手に堂々と喧嘩を売れる気概を持っており、更にその態度を裏付ける実力も同時に内包しているのである。
もしも彼が本気で『妖魔山』の管理に意欲的で、今の彼が『魔』の概念に向けているような興味を持っていたのであれば、今頃は『鬼人族』と『天狗族』の『三大妖魔』と呼ばれる両種族を従属させて、この『妖魔山』に絶対的な立ち位置を築いて君臨していたかもしれない。
すでにこの妖魔山で一対一で『王琳』に勝てる者は居らず、禁止区域と人間達から呼ばれている場所で何十年にも渡って『敵』となる存在を待ち受け続けている彼は、そろそろこの生き方を止めて、人間達の育成に真摯に向き合ってみようかと山を下りる覚悟を抱き始めていたのだが――。
大魔王ソフィという存在が、彼の代わりに山の中腹の管理を行った『天狗族』を消滅させる瞬間を目撃する事となったが為に、妖狐の『王琳』は大魔王ソフィに興味を抱く事となった。
――そしてこの時の事がきっかけになり、魔族であるソフィの内包する大魔王としての本質が、これまで以上に表に出て来る事となるのだが、それはこの時にはまだ誰も知る由がなかった。
……
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その理由として、他の『三大妖魔』とされている『鬼人』や『妖狐』は種族を束ねるそのトップ達が、すでに種族を離れている事が大きい。
鬼人族ではかつての長であった『悟獄丸』が『妖魔神』となり、種族の長の立場を離れると、次に『殿鬼』もまた自由を得るために長の座を降りて去ってしまった。
残されていた将来有望とされていた女鬼人の『紅羽』もまた、人間達が『妖魔団の乱』と呼ぶ異変を起こした後に妖魔召士の『サイヨウ』の『式』となって、この『妖魔山』から姿を去ってしまい、今では鬼人族は現役を離れて久しい長老と呼べる程に長く生きている『玉稿』が、その知恵を活かしながら他の鬼人達を束ねている。
――つまり戦士として他の種族と真っ向から戦う程の力は現在の『鬼人族』には残されていないのが実状なのであった。
そして残されている『三大妖魔』である『妖狐』だが、今もまだトップである九尾の『王琳』が健在であるが、表立っての縄張りというものを持っておらず、そのトップである『王琳』が、妖魔神である『神斗』の『魔』の概念に魅了されてしまっていて、今更に他種族と揉め事を起こそうという気は毛頭なくなっている。
つまりは『妖狐』という種族自体はこの山にまだ残ってはいるが、他の種族を動かすような権力などは一切持ち合わせていない状況なのであった。
しかしだからといって『王琳』を従えようとする妖魔はこの山には居ない。それどころか何も山に対して権力といった物を持たない『王琳』に対して他の力ある妖魔達が遠慮を行う程である。
そしてそれは当然に『天狗族』や『鬼人族』も同様である――。
本来であれば種族としての力が弱まれば、他の種族が自分達の縄張りを広げようとしたり、種族の配下に組み込もうと動きを見せるものが摂理と呼べるものであるが、この『妖狐』に限ってはその摂理には当てはまらない。
何故なら最初にも述べた通り、その『妖狐』の長である『王琳』が、今もまだこの山に健在だからである。
『三大妖魔』の『妖狐』の代表格で、すでに幾度となく転生を繰り返している九尾の『王琳』。
今でも活動拠点は『妖魔山』だけではあるが、この王琳が行く先々で揉め事はほとんど起きる事はなく、また王琳の直属の部下といえる『七耶咫』や『六阿狐』それに『五立楡』といった王琳に忠誠を使う妖狐に対しても、他の『禁止区域』に居るような妖魔達は口出しする事さえもほとんど皆無であり、それらの『妖狐』達が連れている者達でさえも顔を覚えられれば、妖狐、延いては王琳の客として扱われて手厚く保護、若しくは他種族の縄張りの中であっても、直接の影響がない限りは無視される事が多い。
――それ程までに『王琳』の影響力は妖魔山では強いのであった。
何故王琳がここまで影響力を持っているのかだが、それは単純明快な理由であった。
彼があまりにも強すぎて過去に彼に逆らった数多の種族の族長たちが、王琳の手によって悉く死を遂げていることが理由である。
そしてこの王琳の最も厄介なところとは、興味のない事には何一つ目もくれない事である。
その王琳の考え方と生き方はまさに筋金入りであり、かつて妖魔神である『神斗』や『悟獄丸』から妖魔山の中腹付近の管理を命令された事もあったのだが、キッパリと断った過去を持つ。
本来であれば『神斗』や『悟獄丸』といった『妖魔神』の命令に背けば死が待っているところなのだが、王琳はその『神斗』と『悟獄丸』を同時に相手どって戦う事も辞さないといった態度を堂々と両者に向けて、真正面から命令を拒否したのである。
これには『神斗』は心の底から愉快だと笑い、悟獄丸は『妖狐』という種族の印象を根底の部分から変えるに至った。
この命令以降、妖魔神に気に入られた『妖狐』の『王琳』は、好き勝手に『妖魔山』で生きる事を許された特例の存在となった。
いつ如何なる時にも『妖魔神』の居る山の頂に姿を見せようが、勝手に山を下りようが文句は言われない。
そして誰が『王琳』に喧嘩を売ろうが、返り討ちにされて死を遂げようが、山に生きる妖魔は『妖魔神』を含めて誰も文句を言ってこない。
仮定の話ではあるが『三大妖魔』といわれた『妖狐』、その種族の筆頭とされる代表である『王琳』が『妖魔山』の中腹付近を管理する事を受け入れていたのであれば、現在の『三大妖魔』の筆頭種族は『天狗族』ではなくなっていた可能性は否めない。
それも天狗族とは違い、妖狐の王琳はたった一体で『妖魔神』二体を相手に堂々と喧嘩を売れる気概を持っており、更にその態度を裏付ける実力も同時に内包しているのである。
もしも彼が本気で『妖魔山』の管理に意欲的で、今の彼が『魔』の概念に向けているような興味を持っていたのであれば、今頃は『鬼人族』と『天狗族』の『三大妖魔』と呼ばれる両種族を従属させて、この『妖魔山』に絶対的な立ち位置を築いて君臨していたかもしれない。
すでにこの妖魔山で一対一で『王琳』に勝てる者は居らず、禁止区域と人間達から呼ばれている場所で何十年にも渡って『敵』となる存在を待ち受け続けている彼は、そろそろこの生き方を止めて、人間達の育成に真摯に向き合ってみようかと山を下りる覚悟を抱き始めていたのだが――。
大魔王ソフィという存在が、彼の代わりに山の中腹の管理を行った『天狗族』を消滅させる瞬間を目撃する事となったが為に、妖狐の『王琳』は大魔王ソフィに興味を抱く事となった。
――そしてこの時の事がきっかけになり、魔族であるソフィの内包する大魔王としての本質が、これまで以上に表に出て来る事となるのだが、それはこの時にはまだ誰も知る由がなかった。
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