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妖魔山編
1751.大魔王ソフィの怒りによって、生じる事とその結果
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「はっ! 個々として十分な力も持たぬ人間風情が何を言うかと思えばっ……――!?」
『天従十二将』が一体である『邪未』が、青年の姿のソフィを人間と見紛いながら、力を持たぬ存在が口だけは達者だなと告げようとして、彼の目と視線が交わった瞬間の出来事だった。
心臓がどくんっと跳ねた感覚を覚えると同時、邪未の手足が唐突に震え始めた。
「!?」
何が起きたのか邪未には全く分からなかった。視線が交わった瞬間でさえ、その瞬間が来るまでは別段特に何も思わなかった筈なのである。
――しかし、彼自身に言葉が伝わったわけではないが、邪未を見た大魔王ソフィが『殺してやる』と本気で思った瞬間に、邪未はその大魔王の殺意に溺れてしまい、ストレスが要因となって唐突に交感神経が高まり、汗がどっと出始めたのであった。
「ここで貴様を始末すれば、再びこの場に居る者達に迷惑が掛かる。さっさと貴様らが定めた場所へ案内するのだな。言っておくが、我はもう貴様だけで済ませるつもりはない。二度とこの集落に居る者達に危害が及ばぬように、貴様らの種族を一匹残らず根絶やしにしてやろう」
「なっ――!? くっ、くぅぅ……っ! い、言わせておけば……。ちっ! 行くぞ、お前達!」
「は、ははっ!!」
この場を監視していた邪未より位の低い『後従三子』の天狗達は、邪未が飛び去ると同時に共に飛翔し始めるのだった。
どうやら『天従十二将』の中でも『前従五玄孫』や『中従二孫』に『後従三子』と階級が分けられた天狗達は、それぞれが指揮官となる者に従いついていくのが、天狗界の中にある定められたルールのようであった。
もちろん総指揮官と呼べる更に位の高い首領の『帝楽智』や、副首領の『華親』が命じれば、あっさりと指揮系統の順列は更新されるだろうが、今回に至っては『華親』によって、邪未を含めた『後従三子』に残って人間達が逃げぬように監視をするように残れと命ぜられていた為に、彼らは『天魔』や他の天狗達が去った後もこの場に残っていたようである。
しかしどうやら邪未はソフィの目を見て、その言葉通りにこのまま逃げる事はないだろうと判断して、ソフィ達を『帝楽智』の待つ場所まで案内するように先に飛び去ったというわけであった。
やがてソフィはイバキの安否を確認した後、動忍鬼と玉稿達と何やら二、三の会話を交わした後、直ぐにヌーやシゲン達の居る場所へと戻ってきた。
「すまぬが、お主達の望まぬであろう結果を招いてしまった。あまり時間は取らせぬから少しだけ我慢をして欲しい」
こうして話をしてみれば、普段通りに見える優男のような青年の姿のソフィだが、その目を見るだけで決して普段通りではないと、気づける者は直ぐに気づけたようであった。
「ソフィ殿、何も気にしないで欲しい。こういった事を色々と見ておく事が、我々の本来の目的通りなのだから。だからソフィ殿の思う通りに行動してくれて構わない。俺達が主導の調査ではあるが、今回は貴方についていくを約束しよう」
「総長がそう決めた事ですので、我々『妖魔退魔師』組織は、この天狗との一件においては全面的にソフィ殿の行動に従います」
『妖魔退魔師』組織の総長と副総長が口を揃えて、ソフィの行動を咎めるような真似をせずに従うと口にした事で、組長格の面々も笑みを浮かべて頷いて見せるのだった。
当然に『妖魔召士』組織のエイジやゲンロクも反論はないようで、何も言わずにシゲン達の言葉に同調するように頷いていた。
しかし大魔王ヌーだけは、難しい顔をしながらソフィを見ているのだった。
(こいつがここまで激怒する姿はあまりにも珍しい……。確かに奴らがうざってぇ態度を見せた事は間違いねぇ。しかしそれでもこいつがここまでキレるとは思わなかった。まるでセルバスが妖魔召士の連中に殺られた時や、かつて『アレルバレル』の『魔界』で南の大陸の連中が、あの戦争を引き起こした時に近い殺意の高まりをこいつから感じた。まず間違いなくこうなったコイツを元に戻すには、コイツの言った言葉通りに奴ら全員がその命を消滅させられた時だろう。し、しかしマジで今のこいつはやべぇな……。本気でこんな奴とやり合おうと考えていた当時の俺の無鉄砲さに背筋が凍る思いだぜ)
――まさに大魔王ヌーが考えた事は間違ってはいない。
ここまでの怒りを大魔王ソフィが露わにした時、その怒りの対象となった存在は、その全てが数に拘らずに命が消失しているのだから。
アレルバレルの世界で言えば、大魔王ダルダオスとその軍勢や、大魔王ロンダギルアとその軍勢、そして大賢者ミラと『煌聖の教団』が該当し、リラリオの世界では、賢者ルビアに、ラルグ魔国の支配者であったシーマが該当するだろう。
誰一人としてここまでソフィの怒りを買った者だけは、生き延びた者はいない。大魔王ソフィは決して温厚なだけの魔族ではなく、彼の大事な者を傷つけたり、死なせたりした者にだけは容赦がないのである。
ハッキリといってしまえば大魔王ソフィに敵対はしても、怒りだけは買ってはいけないのが世界の摂理と呼べるだろう。
しかしこうなってしまった以上は、妖魔山の歴史はこれより大幅に変わってしまうだろう。
――『三大妖魔』と呼ばれたこの山の中腹付近の管理を任されている天狗という種族が、この日を境に大魔王ソフィの手によって蹂躙されて、この世から一体残らず消え去ってしまうのだから。
『天従十二将』が一体である『邪未』が、青年の姿のソフィを人間と見紛いながら、力を持たぬ存在が口だけは達者だなと告げようとして、彼の目と視線が交わった瞬間の出来事だった。
心臓がどくんっと跳ねた感覚を覚えると同時、邪未の手足が唐突に震え始めた。
「!?」
何が起きたのか邪未には全く分からなかった。視線が交わった瞬間でさえ、その瞬間が来るまでは別段特に何も思わなかった筈なのである。
――しかし、彼自身に言葉が伝わったわけではないが、邪未を見た大魔王ソフィが『殺してやる』と本気で思った瞬間に、邪未はその大魔王の殺意に溺れてしまい、ストレスが要因となって唐突に交感神経が高まり、汗がどっと出始めたのであった。
「ここで貴様を始末すれば、再びこの場に居る者達に迷惑が掛かる。さっさと貴様らが定めた場所へ案内するのだな。言っておくが、我はもう貴様だけで済ませるつもりはない。二度とこの集落に居る者達に危害が及ばぬように、貴様らの種族を一匹残らず根絶やしにしてやろう」
「なっ――!? くっ、くぅぅ……っ! い、言わせておけば……。ちっ! 行くぞ、お前達!」
「は、ははっ!!」
この場を監視していた邪未より位の低い『後従三子』の天狗達は、邪未が飛び去ると同時に共に飛翔し始めるのだった。
どうやら『天従十二将』の中でも『前従五玄孫』や『中従二孫』に『後従三子』と階級が分けられた天狗達は、それぞれが指揮官となる者に従いついていくのが、天狗界の中にある定められたルールのようであった。
もちろん総指揮官と呼べる更に位の高い首領の『帝楽智』や、副首領の『華親』が命じれば、あっさりと指揮系統の順列は更新されるだろうが、今回に至っては『華親』によって、邪未を含めた『後従三子』に残って人間達が逃げぬように監視をするように残れと命ぜられていた為に、彼らは『天魔』や他の天狗達が去った後もこの場に残っていたようである。
しかしどうやら邪未はソフィの目を見て、その言葉通りにこのまま逃げる事はないだろうと判断して、ソフィ達を『帝楽智』の待つ場所まで案内するように先に飛び去ったというわけであった。
やがてソフィはイバキの安否を確認した後、動忍鬼と玉稿達と何やら二、三の会話を交わした後、直ぐにヌーやシゲン達の居る場所へと戻ってきた。
「すまぬが、お主達の望まぬであろう結果を招いてしまった。あまり時間は取らせぬから少しだけ我慢をして欲しい」
こうして話をしてみれば、普段通りに見える優男のような青年の姿のソフィだが、その目を見るだけで決して普段通りではないと、気づける者は直ぐに気づけたようであった。
「ソフィ殿、何も気にしないで欲しい。こういった事を色々と見ておく事が、我々の本来の目的通りなのだから。だからソフィ殿の思う通りに行動してくれて構わない。俺達が主導の調査ではあるが、今回は貴方についていくを約束しよう」
「総長がそう決めた事ですので、我々『妖魔退魔師』組織は、この天狗との一件においては全面的にソフィ殿の行動に従います」
『妖魔退魔師』組織の総長と副総長が口を揃えて、ソフィの行動を咎めるような真似をせずに従うと口にした事で、組長格の面々も笑みを浮かべて頷いて見せるのだった。
当然に『妖魔召士』組織のエイジやゲンロクも反論はないようで、何も言わずにシゲン達の言葉に同調するように頷いていた。
しかし大魔王ヌーだけは、難しい顔をしながらソフィを見ているのだった。
(こいつがここまで激怒する姿はあまりにも珍しい……。確かに奴らがうざってぇ態度を見せた事は間違いねぇ。しかしそれでもこいつがここまでキレるとは思わなかった。まるでセルバスが妖魔召士の連中に殺られた時や、かつて『アレルバレル』の『魔界』で南の大陸の連中が、あの戦争を引き起こした時に近い殺意の高まりをこいつから感じた。まず間違いなくこうなったコイツを元に戻すには、コイツの言った言葉通りに奴ら全員がその命を消滅させられた時だろう。し、しかしマジで今のこいつはやべぇな……。本気でこんな奴とやり合おうと考えていた当時の俺の無鉄砲さに背筋が凍る思いだぜ)
――まさに大魔王ヌーが考えた事は間違ってはいない。
ここまでの怒りを大魔王ソフィが露わにした時、その怒りの対象となった存在は、その全てが数に拘らずに命が消失しているのだから。
アレルバレルの世界で言えば、大魔王ダルダオスとその軍勢や、大魔王ロンダギルアとその軍勢、そして大賢者ミラと『煌聖の教団』が該当し、リラリオの世界では、賢者ルビアに、ラルグ魔国の支配者であったシーマが該当するだろう。
誰一人としてここまでソフィの怒りを買った者だけは、生き延びた者はいない。大魔王ソフィは決して温厚なだけの魔族ではなく、彼の大事な者を傷つけたり、死なせたりした者にだけは容赦がないのである。
ハッキリといってしまえば大魔王ソフィに敵対はしても、怒りだけは買ってはいけないのが世界の摂理と呼べるだろう。
しかしこうなってしまった以上は、妖魔山の歴史はこれより大幅に変わってしまうだろう。
――『三大妖魔』と呼ばれたこの山の中腹付近の管理を任されている天狗という種族が、この日を境に大魔王ソフィの手によって蹂躙されて、この世から一体残らず消え去ってしまうのだから。
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