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妖魔山編
1712.仕方のない事
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『妖魔山』に足を踏み入れたソフィ達は、百鬼の案内で迷う事もなく山を登っていく。
ここまでは『エイジ』や『ゲンロク』による『結界』によって、山に居る妖魔達から見つかる事もなく安全に先へと進める事が出来ていた。
まだまだ山の麓といっても差し支えない道中ではあるが、すでにユウゲ達のような『退魔組』に属する『特別退魔士』達が見張りを行っていた地点からはだいぶ進んでおり、全体的には中腹と呼べるところまでは辿り着く事が出来ていたのだった。
そして丁度この辺りで先に妖魔山へと登ってきていた『イダラマ』や『エヴィ』達が、鬼人たちにその存在を見つけられた地点であり、つまりはここからが『妖魔召士』の張る『結界』であっても、その存在を妖魔達に悟られるランク帯に入るという事でもあった。
「そろそろ俺達『鬼人』の縄張りに入る。まだまだ目的の集落は遠いが、ここら辺からは同胞達の見張りも見かける頃合いだと思う。俺が居る事が分かれば鬼人の同胞達は攻撃をしてこない筈だが、一応は注意をしておいてくれ」
ここまで道案内をしてくれていた百鬼が、後ろを振り返って一行にそう告げると、各々は首を縦に振って頷くのだった。
「よくよく考えれば我達は、人間と直接契約を交わしていない妖魔達を見るのは今回が初だな」
ソフィがそう告げると、どうやらその事実に皆が色々と思うところがあったようで、他の者達も足を止めてソフィの方を振り向くのだった。
「ふむ、そういえばソフィ達は別世界から訪れたのだったか。本来は『式』となっている妖魔よりも野良の妖魔の方が多いのだがな……」
ソフィの言葉にエイジが直ぐにそう返事をするのだった。
「ククッ! それは仕方ねぇよ、エイジ。何せ俺やソフィはな、この世界に来て直ぐに『妖魔』共を従える人間達に襲われたり、テアを攫いやがった馬鹿共のアジトでてめぇら妖魔召士にも襲われて、更には加護の森とかいうところでもヒュウガって野郎が使役した『式』共に襲われた。それにこいつに至ってはお前らの町や、セルバスを襲いやがった連中に次から次に狙われやがったんだ。ハッキリいって契約を行っていない妖魔がこの世界に本当に居るのかと思うくらい、俺達にとっちゃ『式』にされてやがる連中しか見た事がねぇよ!」
そう言ってヌーは笑っているが、その言葉には色々と人間、それも妖魔召士であるエイジやゲンロクに向けた皮肉がこれでもかと込められていたのだった。
どうやらセルバスを妖魔召士達に狙われた事で彼もまた、腹に据えかねる思いがあったという事だろう。
最終的には無事に生き返る事が出来たセルバスだが、もしソフィが居なければ、妖魔召士達を直接処理したのは、この大魔王ヌーであったことは間違いない。
普段の彼はセルバスと言い争いをしたり、彼を小馬鹿にする事もあるが、それでもセルバスが襲われてしまえば、その狙ってきた相手を消滅させる程度には、常にセルバスの事を気に掛けている。
大魔王ヌーの中ではテア程にはないにせよ、セルバスの事も大事な仲間だと認識しているようであった。
「ソフィ殿にヌー殿、本当に迷惑をかけてすまなかった。それは大半がワシらの組織に関係がある事だ……」
ゲンロクはそう言って本心から謝罪を行うのだった。
「ゲンロク殿、気にしないでくれ。そもそも『煌鴟梟』のアジトの事や、加護の森の事もヒュウガとやらが起こした出来事だったのだろう? お主が直接悪いというわけではないのだしな」
「かたじけない……」
ゲンロクがそう言って更にソフィに頭を下げている背後で、イツキとユウゲは互いに視線を交わし合っていた。どうやら『煌鴟梟』の名が出た事で、色々と思うところがあったのだろう。
『煌鴟梟』は元々このイツキが作った組織であり、ユウゲもまた煌鴟梟の多くの幹部と親しい間柄であった。こちらも直接はソフィの襲撃に関与を行っていたわけではないが、元を辿っていけばゲンロクと同様に関係があるといえるのだった。
そしてふいにそんな事を考えていたイツキと、エイジの目が合った。互いにこれまで面識があったわけではないが、ここにきて何故か互いに互いの事が気に掛かった様子であった。
(ソフィ殿達から色々と話は聞かせてもらったが、どうやらこのイツキ殿とやらは、妖魔召士ではないようだが、決して侮れぬ魔力を有しているように感じる。少し警戒を強めた方が良さそうだ)
(こいつがゲンロクの爺さんの代わりに組織の長となったエイジって野郎か。成程、確かにそれなりにやりそうだ)
そしてここにきて両者は戦ってもいないというのに、互いに互いを強者と認識して意識をし始めるのだった。
ここまでは『エイジ』や『ゲンロク』による『結界』によって、山に居る妖魔達から見つかる事もなく安全に先へと進める事が出来ていた。
まだまだ山の麓といっても差し支えない道中ではあるが、すでにユウゲ達のような『退魔組』に属する『特別退魔士』達が見張りを行っていた地点からはだいぶ進んでおり、全体的には中腹と呼べるところまでは辿り着く事が出来ていたのだった。
そして丁度この辺りで先に妖魔山へと登ってきていた『イダラマ』や『エヴィ』達が、鬼人たちにその存在を見つけられた地点であり、つまりはここからが『妖魔召士』の張る『結界』であっても、その存在を妖魔達に悟られるランク帯に入るという事でもあった。
「そろそろ俺達『鬼人』の縄張りに入る。まだまだ目的の集落は遠いが、ここら辺からは同胞達の見張りも見かける頃合いだと思う。俺が居る事が分かれば鬼人の同胞達は攻撃をしてこない筈だが、一応は注意をしておいてくれ」
ここまで道案内をしてくれていた百鬼が、後ろを振り返って一行にそう告げると、各々は首を縦に振って頷くのだった。
「よくよく考えれば我達は、人間と直接契約を交わしていない妖魔達を見るのは今回が初だな」
ソフィがそう告げると、どうやらその事実に皆が色々と思うところがあったようで、他の者達も足を止めてソフィの方を振り向くのだった。
「ふむ、そういえばソフィ達は別世界から訪れたのだったか。本来は『式』となっている妖魔よりも野良の妖魔の方が多いのだがな……」
ソフィの言葉にエイジが直ぐにそう返事をするのだった。
「ククッ! それは仕方ねぇよ、エイジ。何せ俺やソフィはな、この世界に来て直ぐに『妖魔』共を従える人間達に襲われたり、テアを攫いやがった馬鹿共のアジトでてめぇら妖魔召士にも襲われて、更には加護の森とかいうところでもヒュウガって野郎が使役した『式』共に襲われた。それにこいつに至ってはお前らの町や、セルバスを襲いやがった連中に次から次に狙われやがったんだ。ハッキリいって契約を行っていない妖魔がこの世界に本当に居るのかと思うくらい、俺達にとっちゃ『式』にされてやがる連中しか見た事がねぇよ!」
そう言ってヌーは笑っているが、その言葉には色々と人間、それも妖魔召士であるエイジやゲンロクに向けた皮肉がこれでもかと込められていたのだった。
どうやらセルバスを妖魔召士達に狙われた事で彼もまた、腹に据えかねる思いがあったという事だろう。
最終的には無事に生き返る事が出来たセルバスだが、もしソフィが居なければ、妖魔召士達を直接処理したのは、この大魔王ヌーであったことは間違いない。
普段の彼はセルバスと言い争いをしたり、彼を小馬鹿にする事もあるが、それでもセルバスが襲われてしまえば、その狙ってきた相手を消滅させる程度には、常にセルバスの事を気に掛けている。
大魔王ヌーの中ではテア程にはないにせよ、セルバスの事も大事な仲間だと認識しているようであった。
「ソフィ殿にヌー殿、本当に迷惑をかけてすまなかった。それは大半がワシらの組織に関係がある事だ……」
ゲンロクはそう言って本心から謝罪を行うのだった。
「ゲンロク殿、気にしないでくれ。そもそも『煌鴟梟』のアジトの事や、加護の森の事もヒュウガとやらが起こした出来事だったのだろう? お主が直接悪いというわけではないのだしな」
「かたじけない……」
ゲンロクがそう言って更にソフィに頭を下げている背後で、イツキとユウゲは互いに視線を交わし合っていた。どうやら『煌鴟梟』の名が出た事で、色々と思うところがあったのだろう。
『煌鴟梟』は元々このイツキが作った組織であり、ユウゲもまた煌鴟梟の多くの幹部と親しい間柄であった。こちらも直接はソフィの襲撃に関与を行っていたわけではないが、元を辿っていけばゲンロクと同様に関係があるといえるのだった。
そしてふいにそんな事を考えていたイツキと、エイジの目が合った。互いにこれまで面識があったわけではないが、ここにきて何故か互いに互いの事が気に掛かった様子であった。
(ソフィ殿達から色々と話は聞かせてもらったが、どうやらこのイツキ殿とやらは、妖魔召士ではないようだが、決して侮れぬ魔力を有しているように感じる。少し警戒を強めた方が良さそうだ)
(こいつがゲンロクの爺さんの代わりに組織の長となったエイジって野郎か。成程、確かにそれなりにやりそうだ)
そしてここにきて両者は戦ってもいないというのに、互いに互いを強者と認識して意識をし始めるのだった。
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