上 下
1,727 / 1,915
妖魔山編

1710.透過技法、魔力干渉領域

しおりを挟む
「こ、これがこやつの本当の魔力量なのか……っ!!」

 コウエンは目の前の可視化出来る程の王琳の禍々しい紫色の『魔力』を纏うところをみて、驚きの声をあげるのだった。

漏出サーチ』といった『魔法』がないこの世界では、明確に数値で測る事は出来ないが、それでもコウエン程の妖魔召士であれば『魔力感知』を行う事は出来る。

 そしてその王琳の『二色の併用』からなる『魔力』を見た事で、コウエンは自分と王琳の力量差を明確に理解する。

「すでに奴に勝てぬ事は分かってはおったが、こ、こんなにも差があるのならば、初めからワシに勝てる道理などなかったようだ……」

 全盛期の頃であっても目の前に居る『王琳おうりん』という九尾の狐には、足元にも及ばなかったであろう。そしてかつての四天王が、全員掛かりで奴に挑んだとしても、勝てるかどうかという程の差があるとコウエンは考えるのだった。

 これまでこのコウエンという妖魔召士が、その目で見てきた妖魔では、まず間違いなく『王琳』こそが、であった。

 ――そしてまず間違いなく『王琳』は、妖魔ランク『10』の存在であろう。

 しかしコウエンはその『王琳』の『青』と『金色』の二色が交ざり合うオーラを見て、最後に戦う相手に王琳を選んで良かったと、あの日の自分の選択は間違いではなかったとばかりに、この場で笑みを浮かべるのだった。

 この『禁止区域』内に妖魔ランク『10』の存在がどれほど居るかは分からないが、それでもコウエンはこの『王琳』の手でやられるのであれば、自分の生涯に納得がいくと改めて感じた。

「たとえワシは敗れようとも、この場で掠り傷の一つくらいはつけてやろうぞ!」

 そしてコウエンもまた、生涯最期となるであろう渾身の一撃を放つ為に、自らも最大限に『魔力』を高め始めるのだった。

「お前の覚悟を決めたその目が気に入った。お前がまだもう少し若ければ、強くなるまで見逃してやってもよかったが、その年ではもう期待は出来ぬだろう。残念だがこの場で始末させてもらう」

 そして先に『魔力』を高め終えたコウエンは、後先を考えずにその高めた全ての魔力を費やす形で『魔力波』を放って見せた。

 間違いなくそのコウエンの『魔力波』は、彼が全盛期の頃に有していた『魔力』と同規模の威力を誇っており、どうやら威力のみに焦点を絞った事で当時の自身の力の再現を可能としたようである。

「ほう……。最後の最後に自分が出来る最大限を発揮してみせたか。見事だ、よくやったぞ!」

 その『魔力波』を見た王琳は嬉しそうにそう告げると、彼もまた青い火をその『魔力波』に向けて放ち切るのだった。

 その青い火は『七耶咫なやた』が山の頂で『神斗』に向けて放ったものと同一であった為、どうやらこの火は妖狐としての力の一端なのだろう。

 七耶咫が放った時は複数の火であった為、弾幕攻撃と呼ぶに相応しい代物であったが、王琳の放った『隣火』と呼ばれるその青い火は、たった一発だけしか放たれていなかった。

 しかしその青い火の速度は決して侮れないもので、後から放たれた筈のその青い火の玉は、あっさりとコウエンの『魔力波』の元に辿り着くと、あっさりと小さな火の玉はコウエンの『魔力波』を呑み込んでいき、まるでその火の玉に燃料が与えられたかのように、勢いと速度が増してぐんぐんとその『隣火』はコウエンの元に向かっていく。

 迫りくる『隣火』に対してコウエンは、すでにもう大半の魔力を費やしてしまっていた為、二の矢と呼べる『魔力』を有する攻撃を行う事が出来ず、仕方なく軽減目的となる小さな『結界』を僅かに作り出すに留まった。

「ああ。いい機会だから、先程説明した『魔』の使い方というモノをこの場で証明してやろう」

 真っすぐにコウエンの元に向かっていく『隣火』を見ながら王琳は、静かに右手の親指を自分の首にあてると、首を切り落とすジェスチャーを行うように、すっと指を真横にスライドさせた。

 ――『透過』、魔力干渉。

 次の瞬間、コウエンの軽減を目的とした『結界』を『隣火』は擦り抜けると、コウエンの身体全身を青い火が呑み込み一気に爆発するかの如く、火は大きくなり炎のようになって大炎上を行こした。

「ぎ、ぎぃやあああっっ!!」

 コウエンは最期に大きな断末魔を上げると、すぐさま炎に焼かれて絶命してしまうのだった――。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

処理中です...