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妖魔山編

1686.輝鏡と次元を合わせた技法

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「私の言っている『魔』の分野と、お前の考えている『魔』の分野の意味が違う。お前が言っている他分野の概念は『透過とうか』とは全く異なる『魔』の概念の事を指しているのだろうが、あくまで私の言っている他分野とは『透過』の研究の範疇内にある別分野の概念を示しているのだ」

 ようやく神斗にも目の前の存在が、何を言おうとしているかを察する事が出来たようである。

「私の言っている内容の理解が及んだようだな? 『透過』を『魔』の概念の根本に捉えようと考えているのであれば、少しは私の『空間魔法』に対して、あらゆる法則を探ってみる事だ。そうする事でこれから私が行おうとする事に、いずれお前も行き着く事だろう」

 そう言って再びそのナニカの『魔力』が膨れ上がるのを確認した神斗は、改めて『透過』で行おうとする事象を解除しようと『透過』の準備を始める。

「確かに君が言っていた事は、耳を傾けるに十分に値する内容であった。とくに君が使っているというその面妖な術式、確か『空間魔法』といったか? それは私の『透過』を更に高みへと導くヒントと考えられる程だ。だけど所詮は絵空事に過ぎない。君の話す理論は一考の余地はあるものだけど何も根拠がない。その証拠に先程の君の『空間魔法』は私の『透過』で打ち消されただろう?」

「だったらまた試してみるといい。そうすれば本当の『魔』の概念の奥深さというモノを、お前も知る事になるだろう」

 そう言ってそのナニカは用意していた『魔力』を用いて、再び先程のような事象を起こそうとする。

 それこそがナニカが呼んでいた『空間魔法』と呼ばれるものなのだろうとアタリをつけた神斗は、先程と同じ通りに『透過』技法を用いて強引に掻き消そうと手を伸ばしたが、寸でのところでその腕をおろすのだった。

「何だ? そのまま手を出していれば『魔』の真理にまた一つ近づけただろうに」

 どうやらナニカは先程の言葉通り、神斗の『透過』から身を守る為に大きく平面な鏡が出現をさせたようだったが、神斗が手をおろした事で狙い通りとまではいかず、溜息をついて今度こそ『空間魔法』を悠々と用い始めるのだった。

「最後にお前がどういう反応を見せるのか楽しみだったのだが、残念な事だ……」

 その場に居た筈のナニカの実体が薄れていき、静かに姿が消え去ると同時に、ナニカの反響する声だけが最後に残り、やがては何もかもが空の上から消え去るのであった。

 神斗の視線の先、先程までナニカが居た場所に、何やら緑色の光に包まれた鏡が出現していたが、ナニカが消え去って少し経つと同時に平面な鏡は、こちらも最初からその場にはなかったかの如く消え去った。

 もし神斗が『空間魔法』に用いるつもりだった『透過』技法をこの鏡にぶつけていた場合、どういった効力が生じていたかまでは分からないが、まず間違いなく後悔させられていたであろうという確かな実感が彼にはあった。

 そしてその神斗の予測通り、先程のナニカが出した平面な鏡が割れるような事があれば、今頃神斗は自身の『魔力』が、決して取り返す事が出来ない空間の中に、永劫封じ込められてしまっていただろう。

 ――それは『輝鏡ききょう』と呼ばれる鏡であり、ナニカが作り出した『ことわり』から生み出された『魔法』であった。

 本来はいくつもの鏡を展開し、その鏡を何らかの形で対象者に割らせる事で、数多の鏡の中に『魔力』を分断させて封じ込めるというものであったが、このナニカが生み出した今の『輝鏡』は、たった一つでも割る事になれば、複数の『輝鏡ききょう』以上に効力が発揮されてしまっていた事だろう。

「全く、最後まで何者か分からなかったけど、こんな禍々しいモノはこの山でも見たことがなかったな。正体を暴けなかったのは非常に残念だけど、私の『魔』の概念には色々と得られた。それだけでも収穫はあったとみるべきかな」

 神斗は自身の展開しているオーラを消し去ると、再び大きく溜息を吐くのであった。
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