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妖魔山編
1671.ランク10の存在が放つ魔力波
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「うーん、アイツが『透過』を何処まで使いこなせているかで変わってくるけど、ひとまず先にアレを何とかしないとこっちが危ないしね。色々と試してみようか」
そう言ってエヴィは指を鳴らすと、用意した人形達を一斉に遠くに居る『神斗』に向けて放った。
まだ完全に砂塵が晴れていない為、あれだけ離れている場所からであれば、エヴィの姿までは見えてはいないだろう。
『魔力探知』か『魔力感知』でこちらのある程度の居場所を掴み、そして誘き出す為に『魔力波』を放ったに違いない。
――つまり、姿がばれていない状態を利用して相手の懐に入り込む。
…………
神斗は遠く離れた空から、大爆発が生じた山の頂に視線を送っていた。あの砂塵が舞っている場所に青い髪の少年が居る事は『魔力感知』で分かっている。
その『魔力感知』である程度の少年の魔力総量を把握は出来ているため、このまま接近して殺傷能力のある攻撃で仕留めても良かったのだが、彼は色こそは違うが自分と同じ二つの色の『オーラ』を体現して、同時にその二つのオーラを併用させてみせていた。つまり『魔』の力をある程度コントロールする事に長けている証左であり、近づけば思わぬ手痛い一撃を見舞われてしまう可能性がある。
『魔』という概念の中では、戦力値や魔力値などたいした指標にすらならない。そしてどのような『魔力』が低い者が相手であろうが、その『魔』の力を一定以上に携わっている場合は決して侮ってはならない。
――そんな事は長年生きてきた『妖魔神』の『神斗』にしてみれば、百も承知の事である。
この世界では『二色の併用』という言葉でオーラの併用の事を指してはいないが、それでも人間達がランク『9』や『10』と呼んでいる妖魔の多くが、この『二色の併用』を扱う事を可能としている。
しかしこれがランク『8』以下ともなれば使える者は限られてくる。身近にランク『9』以上の存在が居なければ、まず『オーラ』を纏わせられる事など不可能である。
つまり『神斗』はまだ戦い始めて少ししか経っていないが、すでにあの青い髪の少年をこの『禁止区域』と人間達が呼ぶ場所に居る、多くの強者の部類に入る同胞達と同列だと判断して警戒心を強めたという事に他ならなかった。
神斗はそう考えてあえて近づく選択肢を頭から振り払い、遠くからの『魔力波』による一撃を選んだ。
しかし遠くから放つ神斗の一撃は、接近して行う攻撃より劣っているというわけでもなく、耐魔力がランク『7』以下程度の者であれば、直接被弾せずともその『魔力波』の余波だけで粉々にしてしまう程の威力を有する。
(※ランク『7』では戦力値が8300億から8700億程となり、魔力値は種族や『魔』の研鑽にもよるが、ここでの神斗の攻撃の一例に該当するランク『7』の存在では、耐魔力が3000億程と仮定する)
――つまりは『神斗』の遠くから放った『魔力波』がまともに直撃すれば、大魔王エヴィであっても、跡形もなく消し飛ぶという事である。
だが、神斗はこの『魔力波』の一撃で勝負がつくとは流石に考えてはいない。如何に速度と殺傷能力が高い『魔力波』だとはいっても、この距離から放ってあっさりと勝負がつく程の相手であれば、まずここまで『妖魔山』を登ってこれる筈がないからである。
『魔』の研鑽をある程度積んでいる者、それも『二色の併用』を扱う事が出来ている時点で何らかの防衛手段の心得がある筈であり、下手をすればこの勝負を決められる『魔力波』の一撃を逆手にとって利用し、逆に刃を突きつける者も居るだろう。
だからこそ神斗はこの『魔力波』を試金石に、あの青い髪の少年を砂塵から誘き出して姿を現させて、彼が取る行動を観察しようとしているのである。
そしてその神斗の思惑通りに、何者かが砂塵から飛び出してくるところが見えた。
「現れたか……。さて、どうする? 先程のように不思議な術で私の攻撃を凌ぐか?」
しかし砂塵が舞う山の上から飛び出してきた人影は、その『魔力波』を避けようともせずに真っすぐに突っ込んでいった。
「な、何だと……?」
神斗は自身が思案していた考え全てと違う結果が生じた事で、唖然としながら自身の放った『魔力波』で人影が粉々になって、山から散っていくところを見届けるのだった。
そう言ってエヴィは指を鳴らすと、用意した人形達を一斉に遠くに居る『神斗』に向けて放った。
まだ完全に砂塵が晴れていない為、あれだけ離れている場所からであれば、エヴィの姿までは見えてはいないだろう。
『魔力探知』か『魔力感知』でこちらのある程度の居場所を掴み、そして誘き出す為に『魔力波』を放ったに違いない。
――つまり、姿がばれていない状態を利用して相手の懐に入り込む。
…………
神斗は遠く離れた空から、大爆発が生じた山の頂に視線を送っていた。あの砂塵が舞っている場所に青い髪の少年が居る事は『魔力感知』で分かっている。
その『魔力感知』である程度の少年の魔力総量を把握は出来ているため、このまま接近して殺傷能力のある攻撃で仕留めても良かったのだが、彼は色こそは違うが自分と同じ二つの色の『オーラ』を体現して、同時にその二つのオーラを併用させてみせていた。つまり『魔』の力をある程度コントロールする事に長けている証左であり、近づけば思わぬ手痛い一撃を見舞われてしまう可能性がある。
『魔』という概念の中では、戦力値や魔力値などたいした指標にすらならない。そしてどのような『魔力』が低い者が相手であろうが、その『魔』の力を一定以上に携わっている場合は決して侮ってはならない。
――そんな事は長年生きてきた『妖魔神』の『神斗』にしてみれば、百も承知の事である。
この世界では『二色の併用』という言葉でオーラの併用の事を指してはいないが、それでも人間達がランク『9』や『10』と呼んでいる妖魔の多くが、この『二色の併用』を扱う事を可能としている。
しかしこれがランク『8』以下ともなれば使える者は限られてくる。身近にランク『9』以上の存在が居なければ、まず『オーラ』を纏わせられる事など不可能である。
つまり『神斗』はまだ戦い始めて少ししか経っていないが、すでにあの青い髪の少年をこの『禁止区域』と人間達が呼ぶ場所に居る、多くの強者の部類に入る同胞達と同列だと判断して警戒心を強めたという事に他ならなかった。
神斗はそう考えてあえて近づく選択肢を頭から振り払い、遠くからの『魔力波』による一撃を選んだ。
しかし遠くから放つ神斗の一撃は、接近して行う攻撃より劣っているというわけでもなく、耐魔力がランク『7』以下程度の者であれば、直接被弾せずともその『魔力波』の余波だけで粉々にしてしまう程の威力を有する。
(※ランク『7』では戦力値が8300億から8700億程となり、魔力値は種族や『魔』の研鑽にもよるが、ここでの神斗の攻撃の一例に該当するランク『7』の存在では、耐魔力が3000億程と仮定する)
――つまりは『神斗』の遠くから放った『魔力波』がまともに直撃すれば、大魔王エヴィであっても、跡形もなく消し飛ぶという事である。
だが、神斗はこの『魔力波』の一撃で勝負がつくとは流石に考えてはいない。如何に速度と殺傷能力が高い『魔力波』だとはいっても、この距離から放ってあっさりと勝負がつく程の相手であれば、まずここまで『妖魔山』を登ってこれる筈がないからである。
『魔』の研鑽をある程度積んでいる者、それも『二色の併用』を扱う事が出来ている時点で何らかの防衛手段の心得がある筈であり、下手をすればこの勝負を決められる『魔力波』の一撃を逆手にとって利用し、逆に刃を突きつける者も居るだろう。
だからこそ神斗はこの『魔力波』を試金石に、あの青い髪の少年を砂塵から誘き出して姿を現させて、彼が取る行動を観察しようとしているのである。
そしてその神斗の思惑通りに、何者かが砂塵から飛び出してくるところが見えた。
「現れたか……。さて、どうする? 先程のように不思議な術で私の攻撃を凌ぐか?」
しかし砂塵が舞う山の上から飛び出してきた人影は、その『魔力波』を避けようともせずに真っすぐに突っ込んでいった。
「な、何だと……?」
神斗は自身が思案していた考え全てと違う結果が生じた事で、唖然としながら自身の放った『魔力波』で人影が粉々になって、山から散っていくところを見届けるのだった。
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