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妖魔山編
1654.願いを口にした末に
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「思いの他つまらねぇ願いだったな。聞いて損した」
イダラマの願いを聞く前とは打って変わり、まるっきり興味を失くした様子の悟獄丸は、そっぽを向きながらそう吐き捨てるのだった。
「まぁそう言わないでやってよ悟獄丸。彼ら人間にとっては、これは確かに何物にも代えがたい願いだろうからね」
悟獄丸とは違って神斗は少しだけ、人間の立場に理解を示す言葉を口にするのだった。
「だけど叶えてやることは難しいかな。そもそもさっきも言ったけど、私達は山の者達に命令をする事は可能だけど別に考えを押し付けるつもりもないし。それに君達の願いを叶える利点を私達には感じられないからね。悪いけど諦めて帰ってくれるかな?」
神斗はそう言って視線をイダラマから、ここまで連れてきた『七尾の妖狐』に向けるのだった。
妖狐は神斗の言葉に頷き、イダラマ達に向けて声を投げかけようとするが、その前にイダラマが言葉を発するのだった。
「やはり思った通り、言葉での交渉は難しいようだ。まぁそれも当然といえば当然なのだろうがな」
突如としてイダラマはそう口にすると『魔力』を纏い始めるのだった。
イダラマの纏う『魔力』は膨大であり、まず間違いなくランク『8』は下らないと『妖魔召士』であれば口を揃えて断言するだろう。
だが、そんなイダラマの纏う『魔力』を見た『妖魔神』の『神斗』と『悟獄丸』、それに七尾の妖狐は驚く様子も見せずに、イダラマに視線を向けただけだった。
「ここでそんな『魔力』を纏わせてどういうつもりなのかな? まさか私達と戦うつもりってわけじゃないよね?」
「もちろん私に戦うつもりなどはなかったさ。貴方がたが素直に私の願いを聞いてくれていたのであればね」
イダラマの返答を聴いた『妖魔神』達は溜息を吐いた。どうやらイダラマが自分達と本気で戦うつもりだという事を理解したからだろう。
「無駄な事は止めた方が良いと告げておくよ人間。そんな矮小な『魔力』では私達は倒せないよ」
「神斗の言う通りだ。主が人間達の中でどれ程強いのかは存ぜぬが、この山では主程度の強さの奴なぞごまんと居る。今ならばまだ冗談で済ませてやってもよいが、続けるというのであれば……、消すぞ」
唐突に戦闘態勢を取ったイダラマに、神斗と悟獄丸はこれまでとは違う空気を出し始める。もしこのままイダラマが攻撃を行うつもりであれば、悟獄丸たちは躊躇なくイダラマに反撃をするだろう。
「やめておきなさい人間。貴方達程度が敵う相手ではない」
『妖魔神』達だけではなく、七尾の妖狐もまた戦闘態勢を解除するようにイダラマに告げるのだった。
「確かに正攻法で挑んだところで主らに勝てる道理はないだろう。しかし『魔』というモノは、必ずしも倒し倒されるという分かりやすい結果を生むだけの代物ではない!」
――僧全捉術、『魔波空転』。
啖呵を切ったイダラマは、制止する妖魔達の言葉に耳を傾けずに、自身の膨大な『魔力』を込めた『捉術』を放つのであった。
見た限りでは神斗と悟獄丸に『結界』などを張る様子もなく、また避ける動作すらも見せなかった。
――しかし。
「やれやれ……。人間ってのはもう少し賢い生き物だと思っていたんだがな」
「私もそう思っていたよ悟獄丸。弱いからこそ何とか強い者に取り入ろうと頭を使う。だからこそ、これまで絶滅せずに生きてこれたのだろうに……」
イダラマの放った『捉術』で神斗達の居た場所は砂煙が立ちこめていたが、その場所から神斗と悟獄丸の声だけがハッキリと聴こえてくるのだった。
そして砂煙が完全に晴れていき、その場には無傷のままの『神斗』と『悟獄丸』の姿が再び現れる。先程纏っていたイダラマの『魔力』がそっくりそのまま『捉術』として放たれたというのに、直撃してなお無傷であった。
「今のは私の全力だったのだが、掠り傷さえ負ってはおらぬか」
イダラマは目の前の二人にそう告げる。彼はどうやら今ので自分と神斗達の力の差をよく理解した様子であった。
「だから最初にそう言っただろう? 忠告を無視して攻撃を行う以上は何か用意しているのだろうと、さっきの君の発言からも期待をしてはいたのだけど、何もなかったみたいだね……」
神斗はもう容赦をするつもりはないようで、イダラマに向けて手を翳し始めるのだった。
「この長い年月で少しは変わったかと思ったけど、君達人間は何も変わってはいないらしい。次の機会を期待しているよ」
次の機会というのは『イダラマ』の事ではないらしく、どうやらまた何百年後に現れるかもしれない『人間』の事を指し示した発言のようであった。
「それじゃあね」
そして『神斗』の右手から『魔力』が込められた『魔力波』が放たれるのであった。
だが、対象である『イダラマ』が笑みを浮かべている事には、放った『神斗』もその様子を見ていた『悟獄丸』も最後まで気づく事はなかったようである。
イダラマの願いを聞く前とは打って変わり、まるっきり興味を失くした様子の悟獄丸は、そっぽを向きながらそう吐き捨てるのだった。
「まぁそう言わないでやってよ悟獄丸。彼ら人間にとっては、これは確かに何物にも代えがたい願いだろうからね」
悟獄丸とは違って神斗は少しだけ、人間の立場に理解を示す言葉を口にするのだった。
「だけど叶えてやることは難しいかな。そもそもさっきも言ったけど、私達は山の者達に命令をする事は可能だけど別に考えを押し付けるつもりもないし。それに君達の願いを叶える利点を私達には感じられないからね。悪いけど諦めて帰ってくれるかな?」
神斗はそう言って視線をイダラマから、ここまで連れてきた『七尾の妖狐』に向けるのだった。
妖狐は神斗の言葉に頷き、イダラマ達に向けて声を投げかけようとするが、その前にイダラマが言葉を発するのだった。
「やはり思った通り、言葉での交渉は難しいようだ。まぁそれも当然といえば当然なのだろうがな」
突如としてイダラマはそう口にすると『魔力』を纏い始めるのだった。
イダラマの纏う『魔力』は膨大であり、まず間違いなくランク『8』は下らないと『妖魔召士』であれば口を揃えて断言するだろう。
だが、そんなイダラマの纏う『魔力』を見た『妖魔神』の『神斗』と『悟獄丸』、それに七尾の妖狐は驚く様子も見せずに、イダラマに視線を向けただけだった。
「ここでそんな『魔力』を纏わせてどういうつもりなのかな? まさか私達と戦うつもりってわけじゃないよね?」
「もちろん私に戦うつもりなどはなかったさ。貴方がたが素直に私の願いを聞いてくれていたのであればね」
イダラマの返答を聴いた『妖魔神』達は溜息を吐いた。どうやらイダラマが自分達と本気で戦うつもりだという事を理解したからだろう。
「無駄な事は止めた方が良いと告げておくよ人間。そんな矮小な『魔力』では私達は倒せないよ」
「神斗の言う通りだ。主が人間達の中でどれ程強いのかは存ぜぬが、この山では主程度の強さの奴なぞごまんと居る。今ならばまだ冗談で済ませてやってもよいが、続けるというのであれば……、消すぞ」
唐突に戦闘態勢を取ったイダラマに、神斗と悟獄丸はこれまでとは違う空気を出し始める。もしこのままイダラマが攻撃を行うつもりであれば、悟獄丸たちは躊躇なくイダラマに反撃をするだろう。
「やめておきなさい人間。貴方達程度が敵う相手ではない」
『妖魔神』達だけではなく、七尾の妖狐もまた戦闘態勢を解除するようにイダラマに告げるのだった。
「確かに正攻法で挑んだところで主らに勝てる道理はないだろう。しかし『魔』というモノは、必ずしも倒し倒されるという分かりやすい結果を生むだけの代物ではない!」
――僧全捉術、『魔波空転』。
啖呵を切ったイダラマは、制止する妖魔達の言葉に耳を傾けずに、自身の膨大な『魔力』を込めた『捉術』を放つのであった。
見た限りでは神斗と悟獄丸に『結界』などを張る様子もなく、また避ける動作すらも見せなかった。
――しかし。
「やれやれ……。人間ってのはもう少し賢い生き物だと思っていたんだがな」
「私もそう思っていたよ悟獄丸。弱いからこそ何とか強い者に取り入ろうと頭を使う。だからこそ、これまで絶滅せずに生きてこれたのだろうに……」
イダラマの放った『捉術』で神斗達の居た場所は砂煙が立ちこめていたが、その場所から神斗と悟獄丸の声だけがハッキリと聴こえてくるのだった。
そして砂煙が完全に晴れていき、その場には無傷のままの『神斗』と『悟獄丸』の姿が再び現れる。先程纏っていたイダラマの『魔力』がそっくりそのまま『捉術』として放たれたというのに、直撃してなお無傷であった。
「今のは私の全力だったのだが、掠り傷さえ負ってはおらぬか」
イダラマは目の前の二人にそう告げる。彼はどうやら今ので自分と神斗達の力の差をよく理解した様子であった。
「だから最初にそう言っただろう? 忠告を無視して攻撃を行う以上は何か用意しているのだろうと、さっきの君の発言からも期待をしてはいたのだけど、何もなかったみたいだね……」
神斗はもう容赦をするつもりはないようで、イダラマに向けて手を翳し始めるのだった。
「この長い年月で少しは変わったかと思ったけど、君達人間は何も変わってはいないらしい。次の機会を期待しているよ」
次の機会というのは『イダラマ』の事ではないらしく、どうやらまた何百年後に現れるかもしれない『人間』の事を指し示した発言のようであった。
「それじゃあね」
そして『神斗』の右手から『魔力』が込められた『魔力波』が放たれるのであった。
だが、対象である『イダラマ』が笑みを浮かべている事には、放った『神斗』もその様子を見ていた『悟獄丸』も最後まで気づく事はなかったようである。
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