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妖魔山編
1652.奇妙な違和感
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「人間共、着いたぞ。この先が『神斗』様と『悟獄丸』様の御神域となる。決して失礼のないようにしろ」
「あ、ああ……」
七つの尾を持つ妖狐の案内で連れられてきた場所は、九尾の妖狐が居た『禁止区域』の入り口からそう遠くはない場所にあったが、目の前に立っている一際大きな木を境に、何やら明らかにこちら側と流れる空気が違うのをイダラマは感じ取るのだった。
更に次の瞬間、イダラマがその木の向こう側に続いている道を凝らして見てみると、何やら眩暈のような感覚を覚え始める。
すると二、三回、トンッ、トンッと頭の中で何か自分の頭が揺れたようなというべきか、脳が受動的に動き始めたような奇妙な感覚を受けたと同時、何処か懐かしさというのだろうか、来た事もない場所だというのに、ここが幼少期の頃に受けた感覚、まさにノスタルジーな気持ちが衝動的にイダラマの身に襲い掛かるのだった。
(な、何だ? 今、一瞬ふらふらと眩暈がしたかと思うと、耳の後ろ辺りに痺れを感じて、何処か意識が遠のくような、気が遠くなるような感覚があった。それに、それでいて同時に何やら懐かしさを感じた……)
何か攻撃を受けたのかとばかりにイダラマは、自分の後ろに居る仲間達を振り返る。
しかし背後に居る『エヴィ』を担いだままの『アコウ』に『ウガマ』、それに護衛の退魔士達は何も感じ取れてはいないようで、急に立ち止まって自分達を見始めたイダラマを見て不思議そうに首を傾げたりしていた。
イダラマが突然に頭を押さえながら何やらブツブツと独り言を言い始めた為に、アコウやウガマ達はここに来た事で何かあったのではないかと心配になるのだった。
「ど、どうかしたんですか、イダラマ様?」
「いや……。何でもない、気のせいだろう」
「「?」」
やはりここに来てから今までと何かが違うというのを感じ取る『アコウ』と『ウガマ』だったが、その理由が何か分からず、本人に何でもないと言われた以上、それ以上どうしようもなくなるのであった。
「どうした? 何やら気分が優れない様子なのは見て取れるが……」
「いや、失礼した。案内を続けてくれ……」
「分かった……。では、行くぞ」
七尾の妖狐は訝しむようにイダラマを見ていたが、やがて前を向いて木の向こう側へと足を踏み入れていくのであった。
…………
先程通った大きな木を越えた辺りから、全く違う空気が流れているように感じる。山の上という事もあって、ひんやりとした空気が流れているのだが、それとは別にまるで異界の空気というべきか、普通の山の頂き付近を登っていて感じるようなモノではなく、まるで全身を刺すような厳かな空気がイダラマ達を襲っているのであった。
目の前を歩いていた七尾の妖狐が立ち止まる。どうやら目的地についたのかとイダラマは前方に目を凝らして見るが、その先には霧が立ち込めていてよく見えなかった。しかしそこに誰も居る様子はなく、イダラマは改めて妖狐に『神斗』達の居る場所に辿り着いたのかと尋ねようと口を開きかけた。
――その時であった。
「ここに生身の人間が姿を見せるのは何年ぶりだろうな」
「ふっ、紛い者ならばよく見かけるがな」
誰も居ないと思っていた場所から唐突に、会話を行う二人の声がイダラマ達に聴こえてくるのであった。
「い、イダラマ様! 下がってください!!」
危険を感じた『アコウ』と『ウガマ』がイダラマを下がらせると、護衛の退魔士達も『魔力』を伴いながら戦闘態勢に入るのだった。
「静まれ人間共、妖魔神様達の前だぞ!」
七尾の妖狐は怒鳴るわけでもなく、小さくアコウ達に向けて注意を促すと、たったそれだけで護衛達が纏わせていた『魔力』、それにアコウやウガマの『青』が雲散していき、強制的に掻き消されてしまった。
七尾の妖狐に何をされたのか理解が出来ず、アコウ達が驚きの表情を見せていると、再び厳かな声が聴こえてきた。
「ふふっ、別に取って食おうというわけじゃない。楽にしていいよ」
「ガハハハッ、俺は別に荒々しいのも嫌いじゃないがな?」
やがて七尾の妖狐に『妖魔神』と呼ばれていた『妖魔』が二体、イダラマ達の前にその姿を見せるのであった。
「あ、ああ……」
七つの尾を持つ妖狐の案内で連れられてきた場所は、九尾の妖狐が居た『禁止区域』の入り口からそう遠くはない場所にあったが、目の前に立っている一際大きな木を境に、何やら明らかにこちら側と流れる空気が違うのをイダラマは感じ取るのだった。
更に次の瞬間、イダラマがその木の向こう側に続いている道を凝らして見てみると、何やら眩暈のような感覚を覚え始める。
すると二、三回、トンッ、トンッと頭の中で何か自分の頭が揺れたようなというべきか、脳が受動的に動き始めたような奇妙な感覚を受けたと同時、何処か懐かしさというのだろうか、来た事もない場所だというのに、ここが幼少期の頃に受けた感覚、まさにノスタルジーな気持ちが衝動的にイダラマの身に襲い掛かるのだった。
(な、何だ? 今、一瞬ふらふらと眩暈がしたかと思うと、耳の後ろ辺りに痺れを感じて、何処か意識が遠のくような、気が遠くなるような感覚があった。それに、それでいて同時に何やら懐かしさを感じた……)
何か攻撃を受けたのかとばかりにイダラマは、自分の後ろに居る仲間達を振り返る。
しかし背後に居る『エヴィ』を担いだままの『アコウ』に『ウガマ』、それに護衛の退魔士達は何も感じ取れてはいないようで、急に立ち止まって自分達を見始めたイダラマを見て不思議そうに首を傾げたりしていた。
イダラマが突然に頭を押さえながら何やらブツブツと独り言を言い始めた為に、アコウやウガマ達はここに来た事で何かあったのではないかと心配になるのだった。
「ど、どうかしたんですか、イダラマ様?」
「いや……。何でもない、気のせいだろう」
「「?」」
やはりここに来てから今までと何かが違うというのを感じ取る『アコウ』と『ウガマ』だったが、その理由が何か分からず、本人に何でもないと言われた以上、それ以上どうしようもなくなるのであった。
「どうした? 何やら気分が優れない様子なのは見て取れるが……」
「いや、失礼した。案内を続けてくれ……」
「分かった……。では、行くぞ」
七尾の妖狐は訝しむようにイダラマを見ていたが、やがて前を向いて木の向こう側へと足を踏み入れていくのであった。
…………
先程通った大きな木を越えた辺りから、全く違う空気が流れているように感じる。山の上という事もあって、ひんやりとした空気が流れているのだが、それとは別にまるで異界の空気というべきか、普通の山の頂き付近を登っていて感じるようなモノではなく、まるで全身を刺すような厳かな空気がイダラマ達を襲っているのであった。
目の前を歩いていた七尾の妖狐が立ち止まる。どうやら目的地についたのかとイダラマは前方に目を凝らして見るが、その先には霧が立ち込めていてよく見えなかった。しかしそこに誰も居る様子はなく、イダラマは改めて妖狐に『神斗』達の居る場所に辿り着いたのかと尋ねようと口を開きかけた。
――その時であった。
「ここに生身の人間が姿を見せるのは何年ぶりだろうな」
「ふっ、紛い者ならばよく見かけるがな」
誰も居ないと思っていた場所から唐突に、会話を行う二人の声がイダラマ達に聴こえてくるのであった。
「い、イダラマ様! 下がってください!!」
危険を感じた『アコウ』と『ウガマ』がイダラマを下がらせると、護衛の退魔士達も『魔力』を伴いながら戦闘態勢に入るのだった。
「静まれ人間共、妖魔神様達の前だぞ!」
七尾の妖狐は怒鳴るわけでもなく、小さくアコウ達に向けて注意を促すと、たったそれだけで護衛達が纏わせていた『魔力』、それにアコウやウガマの『青』が雲散していき、強制的に掻き消されてしまった。
七尾の妖狐に何をされたのか理解が出来ず、アコウ達が驚きの表情を見せていると、再び厳かな声が聴こえてきた。
「ふふっ、別に取って食おうというわけじゃない。楽にしていいよ」
「ガハハハッ、俺は別に荒々しいのも嫌いじゃないがな?」
やがて七尾の妖狐に『妖魔神』と呼ばれていた『妖魔』が二体、イダラマ達の前にその姿を見せるのであった。
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