最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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妖魔山編

1628.最初から織り込み済み

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「それではこちらの組織から『妖魔山』へ向かう者達全員が揃いましたので、改めて今後の説明を行わせて頂きます」

 ミスズはずれ落ちてくる眼鏡を正しながらそう告げた。

『妖魔退魔師』組織から『妖魔山』へ向かう者は、シゲン、ミスズ、ヒノエ、スオウ、キョウカ。その同行者としてソフィ、ヌー、テア、イツキ、ヤエ、ユウゲ、そして『動忍鬼どうにんき』を探す為に行動を共にする『鬼人』が加わり、ここに『妖魔召士』組織から『ゲンロク』と『エイジ』の両名が加わり、合計で14人(体)となる。

「まず、最初に大きな懸念であった『はぐれ』とされる『妖魔召士』達の新たな『サカダイ』の町の襲撃の可能性ですが、前回の襲撃の主犯とされる旗頭の『サクジ』殿と数日前まで行動を共にしていた『コウエン』殿が、ここから遠く離れた『コウヒョウ』の町に滞在している事が確認された事から、以後の襲撃の可能性は極めて低いと判断するに至りました。当然に万全を喫するために、今回は各組の副組長を含めた幹部達も町に残って警備を行って頂く事となります」

 本来であればシゲンは『副組長』達も同行させて幹部達を『妖魔山』の中腹付近で駐留指示を出して『禁止区域』と山の麓、そしてコウヒョウの予備群や本部と中継させながら情報を共有するつもりであった。

 しかし前回の襲撃の反省を活かす事とし、限りある人員を少しでも警備に回して安全を優先する策を取らざるを得なくなった。

 シゲンにとってみれば、最高戦力で『妖魔山』の『禁止区域』を含めた『全域』を今回で明らかにしたかったのだが、あくまで今回の調査では『禁止区域』に重点を置き、回を重ねて調査を継続する事で少しずつ明るみに出して行こうと行動指針を変更させたのだった。

 ミスズは『妖魔召士』の襲撃の件について意見や、質問などがないのを辺りを見回しながら確認すると、再び口を開いた。

「では、次に我々の『妖魔山』の調査目標の話に移らせて頂きます。まず、今回の我々『妖魔退魔師』組織としての最終目標は『禁止区域』の調査を重点的に置く事になり、具体的にはランク『9』や『10』の妖魔の種類、及びそのランクに到達している妖魔達の明確な数、更には人間達に対する脅威がどれ程までのモノかを把握する事を主に調査したいと考えています」

「副総長、質問なんですがランク『9』や『10』に居る妖魔の種族や、そのある程度の居る数までは確かに誰かが生き残れば伝える事も可能かもしれませんが、最後の人間達に対する脅威まで知ろうと言うのであれば、実際にそれは戦闘を余儀なくされる可能性が高いでしょう? 最初から戦う前提で話を進めるとなりゃ、ゲンロク殿達との間で交わした約束を反故にしかねませんかねぇ? 今回の調査においてはあくまで戦闘に於ける『討伐』は見送るというカタチで山の『管理権』を頂いちまったワケだし」

 ヒノエは大きく背もたれに身体を預けながら、頭の後ろで腕を組みつつ『ミスズ』にそう質問するのだった。

「『妖魔山』の『禁止区域』で何が起こるかは、誰にも分からない事です。我々はあくまで今後組織に活かす為の調査を行う為に『妖魔山』へ向かいますが、その道中及び未開の区域で思わぬ戦闘が生じる可能性は否定出来ません。何度も言いますが、あくまで我々は『禁止区域』の調査を行う為に向かうのです。しかしゲンロク殿達との約束に対して誠に遺憾ではありますが、取り決めに語弊が生じる可能性もまた否めないでしょうね」

 ミスズの淡々とした説明だが、ヒノエはそのミスズの表情をじっくりと観察していても、全く本心が読めなかった為に、言葉通りの意味としてまずは受け取る事とした。

 人読みの観点からものを申すとするならば、まず間違いなく『総長』と『副総長』は『禁止区域』内で戦闘を行う事は織り込み済みだろう。

 山の中に入ってさえしてしまえば、あとはもう如何様にも誤魔化せるだろうし、元々風下に立っている『妖魔召士』組織からすれば、どうこう言える立場にないのだから、たとえ約束を反故にされたとしても、それはどうしようもないだろう。

 ヒノエも子供ではなく、ここで文句の一つも言う気はないが、それでもこの場に『妖魔召士』組織の者が居ない状況下であっても仮面を外さずに、質問に対して淡々と説明をしてみせたミスズに薄ら寒さを覚えるのだった。

「そう……、ですね。仰る通りでした。話の腰を折っちまってすいません」

 ヒノエのその言葉を聴いたミスズは、目を閉じてズレ落ちてくる眼鏡をくいっと上げた。

「結構。では、次は同行をして下さいます皆様方の目標の確認に移らせて頂きます」

 妖魔召士組織というより、個人的にゲンロクを認めている彼女にとっては色々と思う事はあるヒノエだったが、それを口にしたところでどうしようもないと呑み込んで、大人しく場を回す事にするのだった。
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