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妖魔山編
1601.大魔王による魔力吸収の地に対する考察
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ソフィの今回の検証に対しての結びとなる言葉を聞いた事で、大魔王ヌーは釈然とせず、苛立ちを覚えてしまうのだった。
(ちっ! 軽い気持ちでついてくるんじゃなかったぜ! この『化け物』は一体何なんだ!? 今回のように別世界の『理』同士を理論的にではなく、直感的に混ぜ合わせる事を可能にして『魔法』を独自に進化させたかと思えば、今度は知りもしない筈の世界の『理』を自動的に反射させた挙句、更に俺でも知り得ねぇ『魔法』の進化を本人が気付かぬ内に体現させるなどと、そんな事を『いち魔族』が可能と出来るものなのかよ!?)
大魔王ヌーはもう『ソフィ』が自身と同じ単なる『魔族』ではなく、全く異質のナニかではないかと考え始めるのだった。
――そのヌーが感じ取った異質のナニかとは、具体的にいえば彼の隣に立つ『力の魔神』のような、神格を有するような『神々』の存在の事である。
最早、ソフィという存在は『最強の魔王』という言葉で一括り出来る範疇に収まっているとは思えず、いずれは世界そのものを創造、もしくは再構築を可能とすらしそうだと、現実主義といえるヌーにさえ、空想家の理念を抱かせてしまうのであった。
今後ソフィが『世界の根幹を少しだけ変えてみようと思う』とか言い出し始めて、世界の在るべき姿を捻じ曲げてしまったとしても、ヌーは驚きはしても信用をしてしまいそうだと、あまりに荒唐無稽な想像をして更に苛立ちを募らせると共に、彼は新たな感情として『焦り』を覚え始めるのだった。
今の彼はもう『最強』の存在である大魔王ソフィを上回る事以外に、興味が失せてしまっている。
それは一つの世界の支配などでは、もはや満足が出来ない程までに、自分が力を手にしているという事を自覚してしまっているのである。
他の『魔神級』に達していない大魔王領域の『魔族』達から見れば、それは考えられない事かもしれないが、もう『魔神級』として立派に胸を張れる程の強さを手にしているヌーは、大魔王領域に居る『魔族』が支配する世界程度であれば容易に奪い取り、その世界の幾万の軍勢が報復を行うために自分に向かってきたとしても、その全てを返り討ちに出来るだろうという自信が生まれてしまっている。
そしてそれは自惚れや慢心といった、自分の力を過信してしまっているという事でもない。本当の意味で今のヌーは『魔神級』に到達した『魔族』と呼べる存在となっているのである。
そんな彼にとっては、大魔王ソフィを乗り越える事こそが、彼が唯一達成感を感じられる事なのである。
しかしそんな越えるべき壁であり、成し遂げる目標である大魔王ソフィは、どんどんと自分の手の届かないところに向かっている。
元々ソフィが強いという事は理解しているが、ここにきて更に強くなるところを目の当たりにしてしまい、彼は非常に焦り始めているのであった。
(ここで諦めたら二度と追いつけなくなる……! てめぇが何処まで強くなりやがろうと絶対に逃さねぇよ!)
大魔王ヌーは焦りを抱きながらも、決して諦める事をせずに乗り越えてやろうと気を引き締め直すのであった。
「すまぬな、ミスズ殿。時間を取らせてしまったようだ」
「えっ? いえいえ、とんでもない!」
ソフィがそう口にすると、訓練場の入口で茫然と眺めていたミスズが意識を戻すと、慌ててソフィに言葉を返すのであった。
彼女は少しだけソフィの様子を見届けようとしていただけだったのだが、結局は最後までこの場で見届けてしまっていた。如何に自分がソフィに対して興味を抱いているかを自覚したのだった。
「では私はこれで失礼をします。部屋を出る時もそのまま『特務』の者達に知らせずに退室して頂いて結構です! それではまた『コウエン』殿達の足取りが分かりましたら、改めてお伝えしますので!」
そしてミスズはソフィ達にそう告げると、足早にその場を去っていった。
「ふむ。忙しい時に頼んで申し訳なかったな……」
「まぁ、理由は別にあるんだろうがな」
急いで戻っていくミスズの後ろ姿を見ながらソフィがそう告げると、ヌーはミスズの心境に見覚えがあるのか静かにそう口にするのだった。
ソフィとヌーが会話をしている横でセルバスは、じっとソフィの『魔力吸収の地』の張っていた場所を見つめていた。
(旦那の進化した『死の結界』の効力は、相手が『結界』の影響下で『魔』を行使する事でその術者の『魔』の効果を完全に打ち消し、そしてその術者が行使した『魔』に必要な『魔力』分を吸い取り、更にはその『魔』の効力をそっくりそのまま相手に跳ね返す。ここまでがどうやら本来の『死の結界』の進化の結果なのだろう。あくまで最後のヌーの『ヨールゲルバ』の世界の『理』を使った『魔法』から新たな進化を遂げた『魔法』は、一過性の現象と捉えるべきだろうな。次にヌーがこの『死の結界』中で『揺煌三河口』を使役したとして、同じ効力を持つのかどうかは未確定だろう。むしろ旦那のその時の『魔力値』に影響して効力が発揮される可能性が高いな)
大魔王セルバスは自身の本来の『魔力』が戻ったことで、これまで以上に『魔』に対する考察が捗った様子であった。
彼は本来『煌聖の教団』の中でも『魔』に対しては一際執着心を持つ『魔族』であり、エルシスやフルーフ程までに『魔』に対して追随を許さないというわけではないが、単なる『大賢者』階級程であれば、知識の上でも上回る程に『魔』に精通している。
そんな彼は本来の『魔力』を手にした事で、自分ならばあの『魔法』を使う時にどれくらいの分量を用いればよいか、そして他者が用いる『魔法』の『発動羅列』を見ただけで、その世界の『理』の完成度が如何程までに成立しているかをある程度把握する事が可能なのであった。
セルバスはソフィの一連の検証を省みて、もう一度発動した場合にどういう結果を齎すか、ヌーと同様に予測立てて影響などを考察するのであった。
(ちっ! 軽い気持ちでついてくるんじゃなかったぜ! この『化け物』は一体何なんだ!? 今回のように別世界の『理』同士を理論的にではなく、直感的に混ぜ合わせる事を可能にして『魔法』を独自に進化させたかと思えば、今度は知りもしない筈の世界の『理』を自動的に反射させた挙句、更に俺でも知り得ねぇ『魔法』の進化を本人が気付かぬ内に体現させるなどと、そんな事を『いち魔族』が可能と出来るものなのかよ!?)
大魔王ヌーはもう『ソフィ』が自身と同じ単なる『魔族』ではなく、全く異質のナニかではないかと考え始めるのだった。
――そのヌーが感じ取った異質のナニかとは、具体的にいえば彼の隣に立つ『力の魔神』のような、神格を有するような『神々』の存在の事である。
最早、ソフィという存在は『最強の魔王』という言葉で一括り出来る範疇に収まっているとは思えず、いずれは世界そのものを創造、もしくは再構築を可能とすらしそうだと、現実主義といえるヌーにさえ、空想家の理念を抱かせてしまうのであった。
今後ソフィが『世界の根幹を少しだけ変えてみようと思う』とか言い出し始めて、世界の在るべき姿を捻じ曲げてしまったとしても、ヌーは驚きはしても信用をしてしまいそうだと、あまりに荒唐無稽な想像をして更に苛立ちを募らせると共に、彼は新たな感情として『焦り』を覚え始めるのだった。
今の彼はもう『最強』の存在である大魔王ソフィを上回る事以外に、興味が失せてしまっている。
それは一つの世界の支配などでは、もはや満足が出来ない程までに、自分が力を手にしているという事を自覚してしまっているのである。
他の『魔神級』に達していない大魔王領域の『魔族』達から見れば、それは考えられない事かもしれないが、もう『魔神級』として立派に胸を張れる程の強さを手にしているヌーは、大魔王領域に居る『魔族』が支配する世界程度であれば容易に奪い取り、その世界の幾万の軍勢が報復を行うために自分に向かってきたとしても、その全てを返り討ちに出来るだろうという自信が生まれてしまっている。
そしてそれは自惚れや慢心といった、自分の力を過信してしまっているという事でもない。本当の意味で今のヌーは『魔神級』に到達した『魔族』と呼べる存在となっているのである。
そんな彼にとっては、大魔王ソフィを乗り越える事こそが、彼が唯一達成感を感じられる事なのである。
しかしそんな越えるべき壁であり、成し遂げる目標である大魔王ソフィは、どんどんと自分の手の届かないところに向かっている。
元々ソフィが強いという事は理解しているが、ここにきて更に強くなるところを目の当たりにしてしまい、彼は非常に焦り始めているのであった。
(ここで諦めたら二度と追いつけなくなる……! てめぇが何処まで強くなりやがろうと絶対に逃さねぇよ!)
大魔王ヌーは焦りを抱きながらも、決して諦める事をせずに乗り越えてやろうと気を引き締め直すのであった。
「すまぬな、ミスズ殿。時間を取らせてしまったようだ」
「えっ? いえいえ、とんでもない!」
ソフィがそう口にすると、訓練場の入口で茫然と眺めていたミスズが意識を戻すと、慌ててソフィに言葉を返すのであった。
彼女は少しだけソフィの様子を見届けようとしていただけだったのだが、結局は最後までこの場で見届けてしまっていた。如何に自分がソフィに対して興味を抱いているかを自覚したのだった。
「では私はこれで失礼をします。部屋を出る時もそのまま『特務』の者達に知らせずに退室して頂いて結構です! それではまた『コウエン』殿達の足取りが分かりましたら、改めてお伝えしますので!」
そしてミスズはソフィ達にそう告げると、足早にその場を去っていった。
「ふむ。忙しい時に頼んで申し訳なかったな……」
「まぁ、理由は別にあるんだろうがな」
急いで戻っていくミスズの後ろ姿を見ながらソフィがそう告げると、ヌーはミスズの心境に見覚えがあるのか静かにそう口にするのだった。
ソフィとヌーが会話をしている横でセルバスは、じっとソフィの『魔力吸収の地』の張っていた場所を見つめていた。
(旦那の進化した『死の結界』の効力は、相手が『結界』の影響下で『魔』を行使する事でその術者の『魔』の効果を完全に打ち消し、そしてその術者が行使した『魔』に必要な『魔力』分を吸い取り、更にはその『魔』の効力をそっくりそのまま相手に跳ね返す。ここまでがどうやら本来の『死の結界』の進化の結果なのだろう。あくまで最後のヌーの『ヨールゲルバ』の世界の『理』を使った『魔法』から新たな進化を遂げた『魔法』は、一過性の現象と捉えるべきだろうな。次にヌーがこの『死の結界』中で『揺煌三河口』を使役したとして、同じ効力を持つのかどうかは未確定だろう。むしろ旦那のその時の『魔力値』に影響して効力が発揮される可能性が高いな)
大魔王セルバスは自身の本来の『魔力』が戻ったことで、これまで以上に『魔』に対する考察が捗った様子であった。
彼は本来『煌聖の教団』の中でも『魔』に対しては一際執着心を持つ『魔族』であり、エルシスやフルーフ程までに『魔』に対して追随を許さないというわけではないが、単なる『大賢者』階級程であれば、知識の上でも上回る程に『魔』に精通している。
そんな彼は本来の『魔力』を手にした事で、自分ならばあの『魔法』を使う時にどれくらいの分量を用いればよいか、そして他者が用いる『魔法』の『発動羅列』を見ただけで、その世界の『理』の完成度が如何程までに成立しているかをある程度把握する事が可能なのであった。
セルバスはソフィの一連の検証を省みて、もう一度発動した場合にどういう結果を齎すか、ヌーと同様に予測立てて影響などを考察するのであった。
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