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イダラマの同志編
1580.まさか
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「セルバスよ、お主が夢の中に出てきたという『ミラ』はお主に何と言っておった?」
「え……? い、いきなり、どうしたんですかい?」
突然にそんな事を言い始めたソフィにセルバスは困惑の言葉を口にする。
しかしじっと見つめるソフィの視線に、返答を待っているのだと気付いたセルバスは思い出し始める。
「えっと……。ミラ様には最初、俺が旦那についていく決心をした事を話したんですよ。旦那に殺められたミラ様が、そんな俺の事を裏切者だと思っているだろうと思って謝罪も兼ねて。そしたらミラ様はそんな俺に『お前の事を裏切者だと思うわけがないだろう』と言ってくれて、最後には『死ぬな』と言ってくれました……」
「死ぬな……か」
意識の狭間で覚えている出来事を口にするセルバスに、ソフィは目を閉じて考え始めるのだった。
(本当に夢に出てきたミラが生前の奴であったのかどうかは分からぬが、こうしてセルバス自身がそういう夢を見たという事は、どうやらあの大賢者の奴も、大事な仲間には存外に優しい一面を持っていたのかもしれぬな)
ソフィは『煌聖の教団』とその総帥である『ミラ』に大事な仲間であるレアを二度も狙われた事で、決して許せる存在ではなかったが、あくまでそれはソフィから見た『ミラ』であり、この新たに仲間となった『セルバス』から見た『ミラ』の姿はまた、違った印象を抱いているのだと改めて理解を深めるのであった。
(もう少し『ミラ』が話の分かる奴であったのならば、未来は変わったものであったかもしれぬな……)
大魔王ソフィは大賢者ミラを報復の対象として見ていたが、それでも大賢者ミラの持っていた『カリスマ性』や『力』に関しては少なからず認めていた。
あれだけの組織を作り上げて、そして何千年も総帥として君臨するだけの資質である。
目の前に居るセルバスもまた『大魔王』として恥じない実力を有しており、そんなセルバスからの『ミラ』への信頼の厚さも接していてよく見て取れるソフィは、更にセルバスから今の話を聞いて『ミラ』という存在を改めて認めた様子であった。
「あ、そういえばミラ様は他にも気になる事を言っていたんですよ。途中で目を覚ましちまったから、どういう事かは聞きそびれちまったんですけど……」
ミラの事を考えていたソフィだが、セルバスの言葉に再び意識をそちらに向ける。
「気になる事?」
「はい。もう俺が目を覚ます寸前だったんですけど、その時にミラ様は『現世に戻ったら私と同じ姿をした者に気をつけろ、私はもう現世に戻ることはないのだから惑わされるな』と言っていたんです。あの時に見たミラ様の表情は決して冗談を言っているような顔ではなかったんですよ」
夢の中の出来事なので、俺の勝手な妄想かもしれないんですが、と付け加えて呟いているセルバスだが、ソフィにはその言葉にふと思い当たる存在がおり、他者の身体を奪って強引に自分の『代替身体』のように扱う『魔族』の顔が思い浮かぶのであった。
――その思い当たった者の名は『レキ・ヴェイルゴーザ』。
かつて『ヴェルマー』大陸で『代替身体』の姿で現れた『リラリオ』の『魔族』の始祖と口にしていた男である。
「いや、まさか……な?」
あの時にソフィはミラを葬る瞬間まで間近で見ていたのだから、身体を乗っ取る時間などなかった筈だと思い直し、そもそもセルバスの話も夢か現か分からぬ状況で耳にしただけに過ぎないため、確実性など何もない話だと強引に頭から『レキ』の姿を追い出してそう口にするのだった。
――だが、この時のソフィの思いつきは決して間違ってはおらず、現実に『レキ』は『ミラ』の身体を奪い、その『煌聖の教団』の部下だった魔族を従えて、着々と知識を蓄え続けていた。
すでにミラの『神聖魔法』の『発動羅列』を読み解き、彼の居る『リラリオ』の世界の『理』に置き換えて『神聖魔法』を作り変えたりと、ソフィのように感覚的に既存の『魔』を進化させていた。
――彼の現在の目標は、大魔王『ソフィ』を抹殺する事。
その為に使えるモノは『魔』であろうが、かつての『煌聖の教団』の配下だろうが、何でも使ってやろうと考えて、この『ノックス』の世界でソフィがエヴィを捜し求めている間にも、大魔王『レキ』は恐ろしい速度で強くなっているのであった。
――もしも、この大魔王『レキ』が、セルバスに向けて用いたとみられる『ミラ』の『力』に行き着けば、彼もまた『代替身体』の身から本来の姿へと戻ってしまうだろう。
そうなれば大魔王『レキ』は、これまで奪ってきたあらゆる存在の『力』を自在に扱い、更には『神聖魔法』を含めた『ミラ』の数多くの大賢者としての『力』、それを加えた本来の『リラリオ』の始祖としての『大魔王』の『力』を用いて、大魔王『ソフィ』を消滅させるために如何なる手段をも使おうと考えるだろう。
『リラリオ』の世界の事を考えれば、今すぐにでも大魔王『レキ』を消滅させるのが最善なのであろうが、その近いところまで思いあたったソフィはすでに考えすぎだと思い直してしまい、更には『ノックス』の世界に居るであろう『エヴィ』を探す事を優先してしまい、もう大魔王『レキ』が行ったであろう可能性を、頭から消してしまっているのであった。
「え……? い、いきなり、どうしたんですかい?」
突然にそんな事を言い始めたソフィにセルバスは困惑の言葉を口にする。
しかしじっと見つめるソフィの視線に、返答を待っているのだと気付いたセルバスは思い出し始める。
「えっと……。ミラ様には最初、俺が旦那についていく決心をした事を話したんですよ。旦那に殺められたミラ様が、そんな俺の事を裏切者だと思っているだろうと思って謝罪も兼ねて。そしたらミラ様はそんな俺に『お前の事を裏切者だと思うわけがないだろう』と言ってくれて、最後には『死ぬな』と言ってくれました……」
「死ぬな……か」
意識の狭間で覚えている出来事を口にするセルバスに、ソフィは目を閉じて考え始めるのだった。
(本当に夢に出てきたミラが生前の奴であったのかどうかは分からぬが、こうしてセルバス自身がそういう夢を見たという事は、どうやらあの大賢者の奴も、大事な仲間には存外に優しい一面を持っていたのかもしれぬな)
ソフィは『煌聖の教団』とその総帥である『ミラ』に大事な仲間であるレアを二度も狙われた事で、決して許せる存在ではなかったが、あくまでそれはソフィから見た『ミラ』であり、この新たに仲間となった『セルバス』から見た『ミラ』の姿はまた、違った印象を抱いているのだと改めて理解を深めるのであった。
(もう少し『ミラ』が話の分かる奴であったのならば、未来は変わったものであったかもしれぬな……)
大魔王ソフィは大賢者ミラを報復の対象として見ていたが、それでも大賢者ミラの持っていた『カリスマ性』や『力』に関しては少なからず認めていた。
あれだけの組織を作り上げて、そして何千年も総帥として君臨するだけの資質である。
目の前に居るセルバスもまた『大魔王』として恥じない実力を有しており、そんなセルバスからの『ミラ』への信頼の厚さも接していてよく見て取れるソフィは、更にセルバスから今の話を聞いて『ミラ』という存在を改めて認めた様子であった。
「あ、そういえばミラ様は他にも気になる事を言っていたんですよ。途中で目を覚ましちまったから、どういう事かは聞きそびれちまったんですけど……」
ミラの事を考えていたソフィだが、セルバスの言葉に再び意識をそちらに向ける。
「気になる事?」
「はい。もう俺が目を覚ます寸前だったんですけど、その時にミラ様は『現世に戻ったら私と同じ姿をした者に気をつけろ、私はもう現世に戻ることはないのだから惑わされるな』と言っていたんです。あの時に見たミラ様の表情は決して冗談を言っているような顔ではなかったんですよ」
夢の中の出来事なので、俺の勝手な妄想かもしれないんですが、と付け加えて呟いているセルバスだが、ソフィにはその言葉にふと思い当たる存在がおり、他者の身体を奪って強引に自分の『代替身体』のように扱う『魔族』の顔が思い浮かぶのであった。
――その思い当たった者の名は『レキ・ヴェイルゴーザ』。
かつて『ヴェルマー』大陸で『代替身体』の姿で現れた『リラリオ』の『魔族』の始祖と口にしていた男である。
「いや、まさか……な?」
あの時にソフィはミラを葬る瞬間まで間近で見ていたのだから、身体を乗っ取る時間などなかった筈だと思い直し、そもそもセルバスの話も夢か現か分からぬ状況で耳にしただけに過ぎないため、確実性など何もない話だと強引に頭から『レキ』の姿を追い出してそう口にするのだった。
――だが、この時のソフィの思いつきは決して間違ってはおらず、現実に『レキ』は『ミラ』の身体を奪い、その『煌聖の教団』の部下だった魔族を従えて、着々と知識を蓄え続けていた。
すでにミラの『神聖魔法』の『発動羅列』を読み解き、彼の居る『リラリオ』の世界の『理』に置き換えて『神聖魔法』を作り変えたりと、ソフィのように感覚的に既存の『魔』を進化させていた。
――彼の現在の目標は、大魔王『ソフィ』を抹殺する事。
その為に使えるモノは『魔』であろうが、かつての『煌聖の教団』の配下だろうが、何でも使ってやろうと考えて、この『ノックス』の世界でソフィがエヴィを捜し求めている間にも、大魔王『レキ』は恐ろしい速度で強くなっているのであった。
――もしも、この大魔王『レキ』が、セルバスに向けて用いたとみられる『ミラ』の『力』に行き着けば、彼もまた『代替身体』の身から本来の姿へと戻ってしまうだろう。
そうなれば大魔王『レキ』は、これまで奪ってきたあらゆる存在の『力』を自在に扱い、更には『神聖魔法』を含めた『ミラ』の数多くの大賢者としての『力』、それを加えた本来の『リラリオ』の始祖としての『大魔王』の『力』を用いて、大魔王『ソフィ』を消滅させるために如何なる手段をも使おうと考えるだろう。
『リラリオ』の世界の事を考えれば、今すぐにでも大魔王『レキ』を消滅させるのが最善なのであろうが、その近いところまで思いあたったソフィはすでに考えすぎだと思い直してしまい、更には『ノックス』の世界に居るであろう『エヴィ』を探す事を優先してしまい、もう大魔王『レキ』が行ったであろう可能性を、頭から消してしまっているのであった。
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