最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

イダラマの同志編

1571.自分の魔法の進化に驚く大魔王

「お主らは……！」

「こやつらは確か……」

　ソフィの前に強制的に転移させられた『イダラマ』の『同志』だった者達は、突然の出来事に慌てふためいていたが、そこで『エイジ』と『ゲンロク』の両名が直ぐに彼らを見て反応を示すのだった。

「この町から遠ざかろうとしていた大きな『魔力』を持った者達を呼び寄せたが、どうやらお主らと同じ服装をしておるところを見ると襲撃を行った『妖魔召士』達で間違いはなさそうだな？」

「あ、ああ……。ソフィ殿の言う通りに『妖魔召士』で間違いはない……のだが」

「こ、これは驚いた。まさか再びその恰好をしている貴方がたを、この目で見る事になるとは……」

　どうやら赤い狩衣を着ている事で『妖魔召士』で間違いはない様子だったのだが、どうやらゲンロク達の反応を見るに、少しばかり思っていた者達とは違っていたようである。

「ゲンロクにお主はエイジか……。どうやらサクジ殿が申されていた通り、お主ら当代の『妖魔召士』組織は裏で『妖魔退魔師』組織と繋がっていたという事なのだな……」

　ライゾウやフウギはまだ慌てている様子を見せていたが、そんな中で前時代の『守旧派』の『妖魔召士』達はある程度落ち着きを取り戻して、その中の一人がそう告げるのだった。

「何を勘違いされているのか分からぬが、ワシらが『シゲン』殿達と共に居る理由は、今いちど『妖魔山』の調査を両組織で行う事に相成ったからだ。そんな事より、お主らこそどうしてこんな真似を行ったのか、それを詳しく説明してもらおうか！」

　ゲンロクがそう口にすると、先程ゲンロク達とシゲン達『妖魔退魔師』との関係性を呟いた、一人の『妖魔召士』が鼻で笑って見せるのだった。

「そんな事は決まっているだろう！　お主らが懇意にしておる『妖魔退魔師』共に、ワシらの『同志』が捕縛されたと聞いて黙ってられずに乗り込んだまでだ！」

「これは驚いた。前時代の『妖魔召士』組織を支えられた方々が『妖魔召士』組織の裏切者であるヒュウガを『同志』とお呼びなさるか？　一体奴とどういう接点があったのか、詳しく聞かせてもらいたいですな」

　まるで落ちぶれた、かつての英雄を揶揄するような言い草でゲンロクは、小馬鹿にする態度でそう告げるのだった。

「ワシらが解放をしようとした『同志』をヒュウガなどと誰が言ったのだ？　勘違いしてもらっては困るな、ゲンロクよ」

「ほう？　では貴方がたの口にする『同志』とは一体誰の事なのか、この場で明確にして頂けませんか？」

　これまで成り行きを見守っていた『ミスズ』が、彼らの話に強引に割って入るのであった。

「お前は当代の『妖魔退魔師』組織の副総長のミスズだとかいったか？　小娘が誰に向かって口を利いておるつもりなのだ！　我ら『妖魔召士』の単なる護衛風情であった主らが、一体何様のつも……」

　ミスズの事を小娘と口にした『妖魔召士』は、その小娘から恐ろしい程の殺意を向けられて口ごもる。

「一体、何時の話をしておられるのですか？　それに今はそんな話をしているのではありません。貴方の『同志』とは誰の事を指しているのか、明らかにして頂けませんか？」

　ミスズはズレ落ちそうになる眼鏡をくいっと上げながら、冷徹な視線を向けてそう告げるのだった。

「こ、この小娘がっ！　調子に乗りおってぇっ！！」

　その殺意が混ざったミスズの視線を受けて、衝動的に男は無意識に自衛を行おうと『魔力』を行使してしまうのだった。

　この場はすでに『ソフィ』の『魔力吸収の地』の影響内であるというのに――。

　――僧全捉術、『魔波空転まはくうてん』。

　次の瞬間、捉術を放った『妖魔召士』から根こそぎ『魔力』が奪われていき、当然に放った捉術の効力は反映されず、更には進化を遂げている『魔力吸収の地』の本来の効果が発揮されてしまい――。

　『――』（魔波空転）。

　妖魔召士が放とうとした『捉術』と、同規模の効力が別世界の『理ことわり』が刻まれた『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』によって発動されてしまい、その『妖魔召士』の男の身体をズタズタに引き裂いていき、何が起きたか理解する間もなく、その『妖魔召士』は身体や首が引き千切れて即座に絶命してしまうのだった。

　どうやら『妖魔召士』が普段から持っている『耐魔力』は、その全てが『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』の効力によって根本にある『魔力』を全て奪われてしまい、男は何もかも失われている状態で、自身の放った『僧全捉術』規模の『魔波空転まはくうてん』を自らに受けてしまったのであった。

「ひ、ひぃっ！？」

「う、うわああっっ！？」

「な、なっ！？」

　ライゾウにフウギ、それに他の『妖魔召士』達も何が起きたのか全く分からず、突如として『同志』が無残な姿で絶命をする瞬間を目の当たりにしてしまい、パニック状態に陥ってしまうのであった――。

　これには殺気を向けていたミスズも驚き、慌ててソフィに視線を向ける。

「うむ……、すまぬ。どうやらこれは我の『結界』の影響のようだ」

（これはいったい、何が起きたというのだ……？）

　この『魔法』の『結界』を張った張本人である大魔王は、全く身に覚えのない進化した自身の『結界』の効力に内心驚きながらも『ミスズ』には、そう告げるのだった。

　……
　……
　……