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イダラマの同志編

1560.大魔王ソフィの収まらぬ怒り

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「「!?」」

 最後にソフィが放った『魔力』の恐ろしさを感じられた者は、この場では三名だけだった。

 まさに『魔』を司る『力』の頂点と謂わざるを得ない程の『魔力』の到達点――。

 それを直に感じた『ヌー』『エイジ』『ゲンロク』はその全員が一様に同じ表情になる。

 そしてソフィの『魔力』を感じられなかった『妖魔退魔師』達もまた、副総長『ミスズ』だけではなく、最高幹部の三人もソフィの『魔力』の部分以外から、ソフィという存在の強さを感じ取ってしまうのであった。

 まず、最初に唖然とした表情を変えたのは、大魔王ヌーだった。

 もうソフィこそが『最強』だと信じて疑っていないヌーは、呆れながらも超える壁としての高さを再確認して、邪悪な笑みを浮かべた。

 次に『ゲンロク』と『エイジ』は自身達もまた、最上位の『妖魔召士』として『魔』に携わる者達として、そのソフィの到達している『魔力』が如何に凄まじいものなのかを改めて理解したようで、真顔でソフィを見ていた。

 そして『魔力』というモノをあまり感じられない『妖魔退魔師』は、ソフィの今の膨大な『力』で『サクジ』を一瞬で戦闘不能に変えたところを見た事で、総長シゲン以外の『ミスズ』『ヒノエ』『スオウ』『キョウカ』という『妖魔退魔師』の最高幹部達は、ソフィという存在を妖魔ランク『8』より下はないと確信を持つのだった。

 ――総長シゲンだけは、この場面を見る前からソフィの強さを認めており、最低でも『8.5』、下手をすれば自身と同等であろうというラインである『9』に至っていると理解していたために、ミスズ達が感じたような驚きは一切なかった。

「さ、先程ソフィ殿が何をやられていたのかは分かりませんが、そ、そこの赤い狩衣を着た『妖魔召士』達が倒れているという事は、ここに襲撃に来た『妖魔召士』を相手に止めて頂いたという認識で、よ、よろしいのでしょうか?」

 部屋の地面と天井の間に浮いていたソフィは、ゆっくりと地に降りて来るとミスズの方に視線だけを向けた。

「うっ!」

 ミスズに対しては『妖魔召士』に向けていたような『殺意』が視線には孕んでいなかったが、その本来の『大魔王』としての『威圧』だけは出ていたままであったため、真っ向からその『威圧』を向けられたミスズは身震いを起こしながら無意識に刀の鞘に手を宛ててしまっていた。

「はっ! そんな甘い話じゃねぇよ。この目の前に倒れている奴や、遠くから感じられていたこいつら人間たち全員の『魔力』が完全に消えちまっているところをみると、この場に襲撃に来た『妖魔召士』とかいう奴は全員が死んでいやがるぜ」

「そ、そうなのですか!? と、という事はつまり残っていたであろう『ヒュウガ』殿の一派の者達は、全滅したとみてよろしいのですね……」

「さぁな。それは『牢』に居る本人にそいつの死体を見せて改めて聞けばいいんじゃねぇか? それよりもよ、ソフィ。てめぇ、? お前がそこまで激昂するって事は、その馬鹿がセルバスに手をかけやがったって事なんだろう? 報復を先にしようっていう気持ちは理解出来るが、何故よみがえらせようとする素振りすらみせねぇんだ?」

 本来のソフィの性格であれば、報復を優先する事までは理解が出来るが、目的を達成した後であれば直ぐに蘇生を行う筈であろうに、未だに『魔法』を使う素振りを見せないソフィに疑問を持ったヌーであった。

「……」

 ソフィは無言で右手に『魔力』を集約させると、僅かコンマ数秒で先程『サクジ』達に放った『終焉エンド』と同規模の『魔力値』まで高め始める。

 ――神聖魔法、『救済ヒルフェ』。

「……」

 ――神聖魔法、『救済ヒルフェ』。

「……」

 ――神聖魔法、『救済ヒルフェ』。

 ――神聖魔法、『救済ヒルフェ』。

 ――神聖魔法、『救済ヒルフェ』。

 何かにとりつかれたかのように無表情のままで、更には無言でひたすらに『魔法』を使い続けるソフィに『救済』では『セルバス』の意識が戻らない事を理解したヌーだが、それ以上に攻撃ではなく、回復をするための『魔法』を使っているだけだというのに、これまで見てきたどのソフィよりも恐ろしく、肌が粟立つ程に強烈な印象を感じ取ってしまうのであった。

「な、治りやがらねぇのか? 他に『代替身体だいたいしんたい』を用意していないのならば『呪縛の血カース・サングゥエ』でも使われて『死神』に魂を強引に奪われねぇでもしない限りは、身体に魂が残っている筈なんだがよ……」

 今のソフィを前にして何処か怯える様子を見せながら、この状態のソフィを逆撫でしないように、ゆっくりと反応を見ながら言葉を選ぶヌーであった。

「ああ、我もそう思ったのだ。死神に魂を奪われぬよう『魔神』にセルバスの様子を見てもらい、そして『妖魔召士』達の使う『捉術』が関係して妨害などを行っているのかと思い、我はコイツに事情を聞こうとしたのだがな」

 そう言ってソフィは、その冷酷な視線を死んでいるサクジに向ける。

 未だにセルバスを殺めた『妖魔召士』達を許せない様子であり、倒れているサクジに向けている視線に、流石のヌーであっても背筋に冷たいものが流れる感覚を味わうのであった。

「ソフィ殿、小生達の扱う『捉術』には、他者の『魔』に対する効力を明確に妨害するモノは存在しないぞ……」

 じっとソフィとヌーのやり取りを傍で見ていた『エイジ』が、自分達の扱う『捉術』に『回復』などの妨害を行う『捉術』が存在しない事を伝えるのであった。
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