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イダラマの同志編

1547.自制

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『サカダイ』の町を襲撃した『妖魔召士』達は、あっさりと本部以外の『予備群』と『妖魔退魔師衆』を片付けてしまい、ここに集まった『妖魔召士』全員が大した被害も出さぬままで、目的地である『妖魔退魔師』の本部へと入っていくのであった。

「ユウゲ殿、俺達も急いで中に入ろう!」

 ここまでの戦闘で『妖魔退魔師』組織と『妖魔召士』達の勝負はついたと判断したミヤジは、自分達も『イツキ』の元へ向かおうとユウゲを急かす。

 しかしユウゲは歩を進めようとしたミヤジの肩を強引に掴んで止めるのだった。

「気が逸る気持ちは分かるが、少し落ち着くのだミヤジ殿」

「だ、だが……!」

「ミヤジさん、ここはユウゲ様の言う通りにするべきです。今、このまま直ぐに向かうのは非常に危険かと存じますので」

「え?」

 ここまで数多くの『サカダイ』の町の護衛ともいえる『妖魔退魔師』組織の者達が『妖魔召士』や使役する『妖魔』達にやられていくところを目の当たりにしていたミヤジは、ようやくイツキの元に行けると確信して勇んでいたのだが、ユウゲとヤエに止められた事でようやく、これから向かう場所が一体どういうところなのかに思い至るのだった。

「『妖魔退魔師』の総長や副総長達を含めた最高幹部はこの町を離れている可能性は確かに高いが、ヒュウガ様の一派の連中と『イツキ』様を『牢』に入れたまま、幹部の組員達も全員連れてこの町の戦力を『予備群』と『妖魔退魔師衆』だけにするとは考え難い。つまりこれからが本番だと考えるのが必然だ。我々が乗り込むのは、もう少し様子を見てからでも遅くはあるまい?」

「あ、ああ……。その通りだな……」

 ――ユウゲの説明は、とても理に適ったものであった。

 先程までのミヤジはイツキの元に行きたい気持ちが先走ってしまっていたが、こうしてユウゲやヤエの言葉を聞いてようやくこの『妖魔退魔師』の本部がどういった場所なのかを思い出し、大人しく従うように頷くのだった。

(しかし本当に『ライゾウ』様と『フウギ』様の連れてきた『同志』とやらは恐ろしいな……。主戦力の最高幹部達が本当に町から離れていたのだとしても、全国に隊士達を派遣する『妖魔退魔師』組織が拠点を置く『サカダイ』の町で、たったあれだけの人数でここまで見事な快進撃をして見せたのだ。これは本当に『ヒュウガ』様の一派の仕業なのだろうか?)

 もしこれが本当に『ヒュウガ一派』だけの所業なのだというのであれば、少し前までの『ゲンロク』が暫定の長を務めていた時代の『妖魔召士』組織全体と比較しても、そこまで遜色がない程の戦力が集まっていると考えてもいいかもしれない。

 胸中でそう呟くと『結界』に綻びが出ないように周囲を警戒を行い、再び『ライゾウ』達の連れてきた『妖魔召士』達の事を思案するのだった。

 この『サカダイ』の町で暴れている『サクジ』達が『守旧派』と呼ばれる前時代の『妖魔召士』組織で活躍をした者達だと知らぬユウゲでは仕方はないが、彼は未だにこの『妖魔召士』の集団を『ヒュウガ一派』の可能性があると考えている様子であった。

 そしてそれから少しの時間が過ぎた――。

 あの後に『ユウゲ』は『本部』と『二の門』があった場所の中間地点の木陰で『結界』を維持しながら時間が過ぎるのをじっくりと待っていた。

 彼自身も早くイツキの元に向かいたいという気持ちを当然ながらに持ってはいたが、急いては事を仕損じるという事をいくつもの『退魔組』に居た時の任務で理解していたため、何とか自制を続ける事が出来ていたのだった。

「よし……! まずワシが中の様子を探ってくる。ミヤジ殿はひとまず合図があるまでここで待機を頼む」

「わ、分かった……!」

「ユウゲ様、危険です! まずは私が様子を探ってまいりますので、ユウゲ様もミヤジ殿とここに居て下さい!」

 ユウゲが先陣を切って『本部』へ向かおうとするのを止める護衛のヤエであった。

「ヤエ、気持ちは嬉しいが『結界』がなければ『妖魔召士』達の魔力を用いる感知の索敵に引っかかり、一瞬であの世行きだ。ワシであれば目の前で待たれているというわけでもなければ、少しの間であれば持たせられる」

「それでしたら私も連れて行ってください! 貴方に何かあれば……、私は!」

 ヤエの覚悟を決めている目を見たユウゲは溜息を吐いた。

 ――ここで自分が断れば、目の前で自決しかねない危うさを感じ取ったようであった。

「分かった……。しかしまずは入り口の様子を探るだけだ。何を見ても先走るような真似をせず、ワシの指示に従うと誓えよ?」

「は、はい! ありがとうございます!!」

 目を潤ませながら喜び、感謝の言葉を口にするヤエであった。

「ではミヤジ殿……」

「あ、ああ、分かっている。ここで大人しくしているよ。生きている人間はもう全員、避難を済ませているだろうし、この周辺はもう静かなもんだしな……」

 先程まで戦っていた『予備群』や『妖魔退魔師衆』、それに『本部』近くで戦っていた『妖魔退魔師』らしき女性タツミの亡骸を見ながら静かにそう告げるミヤジだった。

 ……
 ……
 ……
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