1,564 / 1,915
イダラマの同志編
1547.自制
しおりを挟む
『サカダイ』の町を襲撃した『妖魔召士』達は、あっさりと本部以外の『予備群』と『妖魔退魔師衆』を片付けてしまい、ここに集まった『妖魔召士』全員が大した被害も出さぬままで、目的地である『妖魔退魔師』の本部へと入っていくのであった。
「ユウゲ殿、俺達も急いで中に入ろう!」
ここまでの戦闘で『妖魔退魔師』組織と『妖魔召士』達の勝負はついたと判断したミヤジは、自分達も『イツキ』の元へ向かおうとユウゲを急かす。
しかしユウゲは歩を進めようとしたミヤジの肩を強引に掴んで止めるのだった。
「気が逸る気持ちは分かるが、少し落ち着くのだミヤジ殿」
「だ、だが……!」
「ミヤジさん、ここはユウゲ様の言う通りにするべきです。今、このまま直ぐに向かうのは非常に危険かと存じますので」
「え?」
ここまで数多くの『サカダイ』の町の護衛ともいえる『妖魔退魔師』組織の者達が『妖魔召士』や使役する『妖魔』達にやられていくところを目の当たりにしていたミヤジは、ようやくイツキの元に行けると確信して勇んでいたのだが、ユウゲとヤエに止められた事でようやく、これから向かう場所が一体どういうところなのかに思い至るのだった。
「『妖魔退魔師』の総長や副総長達を含めた最高幹部はこの町を離れている可能性は確かに高いが、ヒュウガ様の一派の連中と『イツキ』様を『牢』に入れたまま、幹部の組員達も全員連れてこの町の戦力を『予備群』と『妖魔退魔師衆』だけにするとは考え難い。つまりこれからが本番だと考えるのが必然だ。我々が乗り込むのは、もう少し様子を見てからでも遅くはあるまい?」
「あ、ああ……。その通りだな……」
――ユウゲの説明は、とても理に適ったものであった。
先程までのミヤジはイツキの元に行きたい気持ちが先走ってしまっていたが、こうしてユウゲやヤエの言葉を聞いてようやくこの『妖魔退魔師』の本部がどういった場所なのかを思い出し、大人しく従うように頷くのだった。
(しかし本当に『ライゾウ』様と『フウギ』様の連れてきた『同志』とやらは恐ろしいな……。主戦力の最高幹部達が本当に町から離れていたのだとしても、全国に隊士達を派遣する『妖魔退魔師』組織が拠点を置く『サカダイ』の町で、たったあれだけの人数でここまで見事な快進撃をして見せたのだ。これは本当に『ヒュウガ』様の一派の仕業なのだろうか?)
もしこれが本当に『ヒュウガ一派』だけの所業なのだというのであれば、少し前までの『ゲンロク』が暫定の長を務めていた時代の『妖魔召士』組織全体と比較しても、そこまで遜色がない程の戦力が集まっていると考えてもいいかもしれない。
胸中でそう呟くと『結界』に綻びが出ないように周囲を警戒を行い、再び『ライゾウ』達の連れてきた『妖魔召士』達の事を思案するのだった。
この『サカダイ』の町で暴れている『サクジ』達が『守旧派』と呼ばれる前時代の『妖魔召士』組織で活躍をした者達だと知らぬユウゲでは仕方はないが、彼は未だにこの『妖魔召士』の集団を『ヒュウガ一派』の可能性があると考えている様子であった。
そしてそれから少しの時間が過ぎた――。
あの後に『ユウゲ』は『本部』と『二の門』があった場所の中間地点の木陰で『結界』を維持しながら時間が過ぎるのをじっくりと待っていた。
彼自身も早くイツキの元に向かいたいという気持ちを当然ながらに持ってはいたが、急いては事を仕損じるという事をいくつもの『退魔組』に居た時の任務で理解していたため、何とか自制を続ける事が出来ていたのだった。
「よし……! まずワシが中の様子を探ってくる。ミヤジ殿はひとまず合図があるまでここで待機を頼む」
「わ、分かった……!」
「ユウゲ様、危険です! まずは私が様子を探ってまいりますので、ユウゲ様もミヤジ殿とここに居て下さい!」
ユウゲが先陣を切って『本部』へ向かおうとするのを止める護衛のヤエであった。
「ヤエ、気持ちは嬉しいが『結界』がなければ『妖魔召士』達の魔力を用いる感知の索敵に引っかかり、一瞬であの世行きだ。ワシであれば目の前で待たれているというわけでもなければ、少しの間であれば持たせられる」
「それでしたら私も連れて行ってください! 貴方に何かあれば……、私は!」
ヤエの覚悟を決めている目を見たユウゲは溜息を吐いた。
――ここで自分が断れば、目の前で自決しかねない危うさを感じ取ったようであった。
「分かった……。しかしまずは入り口の様子を探るだけだ。何を見ても先走るような真似をせず、ワシの指示に従うと誓えよ?」
「は、はい! ありがとうございます!!」
目を潤ませながら喜び、感謝の言葉を口にするヤエであった。
「ではミヤジ殿……」
「あ、ああ、分かっている。ここで大人しくしているよ。生きている人間はもう全員、避難を済ませているだろうし、この周辺はもう静かなもんだしな……」
先程まで戦っていた『予備群』や『妖魔退魔師衆』、それに『本部』近くで戦っていた『妖魔退魔師』らしき女性の亡骸を見ながら静かにそう告げるミヤジだった。
……
……
……
「ユウゲ殿、俺達も急いで中に入ろう!」
ここまでの戦闘で『妖魔退魔師』組織と『妖魔召士』達の勝負はついたと判断したミヤジは、自分達も『イツキ』の元へ向かおうとユウゲを急かす。
しかしユウゲは歩を進めようとしたミヤジの肩を強引に掴んで止めるのだった。
「気が逸る気持ちは分かるが、少し落ち着くのだミヤジ殿」
「だ、だが……!」
「ミヤジさん、ここはユウゲ様の言う通りにするべきです。今、このまま直ぐに向かうのは非常に危険かと存じますので」
「え?」
ここまで数多くの『サカダイ』の町の護衛ともいえる『妖魔退魔師』組織の者達が『妖魔召士』や使役する『妖魔』達にやられていくところを目の当たりにしていたミヤジは、ようやくイツキの元に行けると確信して勇んでいたのだが、ユウゲとヤエに止められた事でようやく、これから向かう場所が一体どういうところなのかに思い至るのだった。
「『妖魔退魔師』の総長や副総長達を含めた最高幹部はこの町を離れている可能性は確かに高いが、ヒュウガ様の一派の連中と『イツキ』様を『牢』に入れたまま、幹部の組員達も全員連れてこの町の戦力を『予備群』と『妖魔退魔師衆』だけにするとは考え難い。つまりこれからが本番だと考えるのが必然だ。我々が乗り込むのは、もう少し様子を見てからでも遅くはあるまい?」
「あ、ああ……。その通りだな……」
――ユウゲの説明は、とても理に適ったものであった。
先程までのミヤジはイツキの元に行きたい気持ちが先走ってしまっていたが、こうしてユウゲやヤエの言葉を聞いてようやくこの『妖魔退魔師』の本部がどういった場所なのかを思い出し、大人しく従うように頷くのだった。
(しかし本当に『ライゾウ』様と『フウギ』様の連れてきた『同志』とやらは恐ろしいな……。主戦力の最高幹部達が本当に町から離れていたのだとしても、全国に隊士達を派遣する『妖魔退魔師』組織が拠点を置く『サカダイ』の町で、たったあれだけの人数でここまで見事な快進撃をして見せたのだ。これは本当に『ヒュウガ』様の一派の仕業なのだろうか?)
もしこれが本当に『ヒュウガ一派』だけの所業なのだというのであれば、少し前までの『ゲンロク』が暫定の長を務めていた時代の『妖魔召士』組織全体と比較しても、そこまで遜色がない程の戦力が集まっていると考えてもいいかもしれない。
胸中でそう呟くと『結界』に綻びが出ないように周囲を警戒を行い、再び『ライゾウ』達の連れてきた『妖魔召士』達の事を思案するのだった。
この『サカダイ』の町で暴れている『サクジ』達が『守旧派』と呼ばれる前時代の『妖魔召士』組織で活躍をした者達だと知らぬユウゲでは仕方はないが、彼は未だにこの『妖魔召士』の集団を『ヒュウガ一派』の可能性があると考えている様子であった。
そしてそれから少しの時間が過ぎた――。
あの後に『ユウゲ』は『本部』と『二の門』があった場所の中間地点の木陰で『結界』を維持しながら時間が過ぎるのをじっくりと待っていた。
彼自身も早くイツキの元に向かいたいという気持ちを当然ながらに持ってはいたが、急いては事を仕損じるという事をいくつもの『退魔組』に居た時の任務で理解していたため、何とか自制を続ける事が出来ていたのだった。
「よし……! まずワシが中の様子を探ってくる。ミヤジ殿はひとまず合図があるまでここで待機を頼む」
「わ、分かった……!」
「ユウゲ様、危険です! まずは私が様子を探ってまいりますので、ユウゲ様もミヤジ殿とここに居て下さい!」
ユウゲが先陣を切って『本部』へ向かおうとするのを止める護衛のヤエであった。
「ヤエ、気持ちは嬉しいが『結界』がなければ『妖魔召士』達の魔力を用いる感知の索敵に引っかかり、一瞬であの世行きだ。ワシであれば目の前で待たれているというわけでもなければ、少しの間であれば持たせられる」
「それでしたら私も連れて行ってください! 貴方に何かあれば……、私は!」
ヤエの覚悟を決めている目を見たユウゲは溜息を吐いた。
――ここで自分が断れば、目の前で自決しかねない危うさを感じ取ったようであった。
「分かった……。しかしまずは入り口の様子を探るだけだ。何を見ても先走るような真似をせず、ワシの指示に従うと誓えよ?」
「は、はい! ありがとうございます!!」
目を潤ませながら喜び、感謝の言葉を口にするヤエであった。
「ではミヤジ殿……」
「あ、ああ、分かっている。ここで大人しくしているよ。生きている人間はもう全員、避難を済ませているだろうし、この周辺はもう静かなもんだしな……」
先程まで戦っていた『予備群』や『妖魔退魔師衆』、それに『本部』近くで戦っていた『妖魔退魔師』らしき女性の亡骸を見ながら静かにそう告げるミヤジだった。
……
……
……
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる