上 下
1,538 / 1,915
イダラマの同志編

1521.新たな妖魔召士の長

しおりを挟む
 突然のエイジの表明にこの場に少しの間沈黙が訪れたが、ミスズとシゲンが同時に拍手を行い、やがては『妖魔退魔師』組織の組長を含めた、幹部達全員から拍手が巻き起こるのだった。

、エイジ殿」

「『改革派』の中の『妖魔召士』の里の中から、かつての『保守本流』を正当に引き継ぐエイジ殿が選ばれるとはな。ゲンロク殿も思い切ったものだ。しかしその実力があったからこその推薦であろう。これから色々とよろしく頼むぞ、エイジ殿」

 自分の認めている男が『妖魔召士』の長となった事で、素直に祝いの言葉を向けた『妖魔退魔師』副総長のミスズ。

 そして『妖魔退魔師』総長のシゲンはまず、このゲンロクが築いた里で『改革派』しか居なかった『妖魔召士』組織から『守旧派』であった『エイジ』を選んだ『ゲンロク』。その『改革派』のトップであった『ゲンロク』に、GOサインを出させた類まれなる『天才妖魔召士』の『エイジ』の実力を改めて認めるに至り、これから自身の『妖魔退魔師』組織と対をなす大組織の『妖魔召士』の長となったエイジに拍手を送るのであった。

 『妖魔退魔師』組織の総長、副総長から同時に祝いの言葉が送られると、エイジは堂々とした振舞いを見せながら軽く頭を下げるのだった。

「ははっ! やっぱり『ゲンロク』殿は、最初に私が思った通り、大した御仁だったようだな!」

 片膝を立てながら嬉しそうな表情を浮かべたヒノエは、流石だとばかりにその英断を下したゲンロクに対して、手を叩きながら褒めたたえるのだった。

「そっか。やっぱりエイジ殿は俺の思った通り、凄い御方だったって事だね。サカダイの町の前で貴方を見た時に、昔と何も変わらなかったと俺は思っていたんだよ」

 ゲンロクの下した英断を褒めるヒノエ組長と対照的に、スオウ組長は少し前に一度だけ『サカダイ』の町の前でソフィ達を送り届けた『エイジ』の姿から、こうなるだろうと思っていたと口にして『エイジ』殿はやはり凄いとその印象を更に強くさせてみせるのだった。

「うむ。道理に適っておるとしてもそれが素直に実現するとは限らぬのが世の常であり、秀でた者がこうして素直に選ばれて、あるべき場所に収まるというのはやはり素晴らしい事だ……な?」

 自分の言葉にふと、何やらを感じたソフィだったが、今は自分の事は後回しにすべきだと判断した彼はエイジに拍手を送るのだった。

「まぁ、当然だな。俺にあれだけ意識させられる野郎だ。その気があるなら、世界すら動かせるような器で間違いねぇだろう」

「ほう? お主がそこまで人間に対して認める発言を行う事は珍しいではないか」

「まぁな。そこに居る眼鏡の女もエイジも侮れねぇ力をもってやがる事は確かだ。種族なんかで本当の強さは計れねぇってのは認めてやるよ」

「ふむ」

 眼鏡の女というのは『ミスズ』殿の事だろうという事は直ぐに分かったソフィだが、真に驚いたことはこのヌーが『エイジ』の名前を直ぐに出した事であった。

 『アレルバレル』の世界に居た頃のヌーは、同じ魔族であっても名前で呼ぶ事は珍しく、それこそ余程に認めている者しか呼ばない程であった。

 それがまさか魔族でもない人間に対して、それも自ら強い者は種族は関係ないと断言するような事を口にしたヌーを見て、ソフィは感心したような目を向けるのであった。

(この世界に来て我はこやつの変化に何度も驚かされたものだが、こやつが人間に対して抱いていた感情がまるっきり変わっている事に、一番驚かされたかもしれぬな)

 強さに種族は関係ない――。

 その事に気づいた以上、今後の大魔王ヌーは人間に対しても色眼鏡で見る事なく、そして決めつけなどもしないだろう。

 そしてこの大魔王ヌーは、自分より強いと思った者に対しては対策を取ろうと執念深く研究を行う。

 大魔王『ソフィ』は大魔王『ヌー』を見てと、この時にまた一つ確信を抱くのであった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...