1,525 / 1,982
イダラマの同志編
1508.物事の順序と、その先にある大望
しおりを挟む
「「お、お前達は……!!」」
コウエンが背後から迫ってくるイダラマ達に視線を送った頃、他の妖魔召士達もイダラマに気づいて声を出すのであった。
「やはりこやつがおかしくなったのは、お主の仕業だったのだな」
「さて、何の事やら。それよりも『サカダイ』の町に乗り込むと息巻いていた貴方がたが我々よりも先に『妖魔山』に辿り着いていたとは驚きだ。やはりコウエン殿は『妖魔山』を優先したいと考えられたのかな?」
コウヒョウの町からここまでは一本道であり、あれ程の騒ぎを起こした同志の『妖魔召士』が『妖狐』を連れ立ってここに向かってきたのである。
先にこの道を通っていた筈のイダラマ達がその事に気づかぬわけもない筈だというのに、白々しくもそのような事を口にしたのを聞いた『妖魔召士』達は、額に青筋を浮かべるのであった。
「い、イダラマ!! お主が全て仕組んだ事だったのか! お主のせいでこやつは『コウヒョウ』襲撃犯にされてしまったのだぞ! どう責任をとるつもりだイダラマ!」
あれだけの騒ぎを起こして『予備群』達に手を掛けた上に、現場を多くの町民にもみられてしまった以上、このまま何もお咎め無しで済ませられる筈もなく、今後は『コウヒョウ』だけではなく『サカダイ』の『妖魔退魔師』本部もこの『同志』を捕縛する為に動き出すであろう。
つまりそれは『ヒュウガ』達と同様に、長い期間捕らえられる事になるというワケであった。
「いやはや……。そのように一方的に身に覚えのない事で私のせいにされても困りますな。我々がどうやってその男にやらせたというのですか? 彼も『上位妖魔召士』でしょう? 『魔瞳』などの力では強引に言う事を聞かせられるわけがないでしょうに。それに目の前に張本人がいるのですから、直接彼に聞いてみれば良いではないですか。そして真実を知ってもらって……」
「もういいだろう、イダラマ。シラを切るのもその辺にしておけ。確かにワシらの『魔瞳』や『捉術』の類で強制的に従わせられる事は出来ぬが、お主の隣に居る少年であれば別であろう? あれだけの面妖な力を持っておるのだから、他者を操る何らかの『力』を持っていても何もおかしくはない。それに『コウヒョウ』の蔵屋敷でこやつがお主に襲い掛かった時、何やらその少年の目が『金色』に輝いておっただろう? あの時にこやつを洗脳や意識の支配などを行う技法か何かを仕込んだのではないか?」
「!」
エヴィの『魔瞳』の力くらいまではコウエンであれば、もしかしたら勘付くかもしれないと考えていたイダラマだったが、まさかあの時にエヴィを自分の背後に回らせて陰ながら『魔瞳』を使わせた事にもに気付かれていたと知って、演技ではなく本当に驚いた表情を見せるのであった。
「驚いたな……。貴方は麒麟児の『力』と実際にあの蔵屋敷で行った行動の真意に気付いていながら、あっさりと『サクジ』殿と共に去ろうとしていたというのか。貴方はあの『妖魔山』に挑む身でありながら、これだけの好条件が揃って尚、我らと行動を取らずに『同志』とやらの為に破滅の道へ向かうとは、本当に貴方は『妖魔山』の『妖狐』を倒そうと考えておられるのか? どうも貴方の行動に一貫性が見受けられず中途半端に映るのだが。全くもって私には理解が出来ぬよ、コウエン殿」
心底呆れるようにそう告げたイダラマは、大きく溜息を吐いて見せるのだった。
「ふっ。今更そこまで齢を重ねたお主を諭そうとは思わぬが、物事には順序というモノが存在するのだ。いくら成し遂げたい事の為に、長年腰を据えた『組織』から離れたワシでも『順序』を間違えては全てが水泡になるという事くらいは分かっておる。あの『組織』を離れて『はぐれ』となったワシらだが、その『はぐれ』には『はぐれ』なりにもルールというものが存在する。その一つがある意味で『妖魔召士』組織の心構えでもあり、大元の理念にもあった『同志』を大切にするというルールなのだ。今では『改革派』に『守旧派』と思想自体に開きが出来てしまってはいるが、そこを忘れてはならぬ。何をするにも『同志』と足並みを揃えろとまでは言わぬが、見据えた先の『大望』に必要な事であればそこに辿り着くまでの順序を理解せずに履き違えては、いつまでも求める願望には手は届かぬのだ『イダラマ』よ」
イダラマはコウエンの言葉を頭から否定するのではなく、しっかりと言葉の意味を噛み砕くように、そしてその言葉の本質を理解をしようと努力を行うように、目を閉じて考えている様子を見せるのであった。
コウエンが背後から迫ってくるイダラマ達に視線を送った頃、他の妖魔召士達もイダラマに気づいて声を出すのであった。
「やはりこやつがおかしくなったのは、お主の仕業だったのだな」
「さて、何の事やら。それよりも『サカダイ』の町に乗り込むと息巻いていた貴方がたが我々よりも先に『妖魔山』に辿り着いていたとは驚きだ。やはりコウエン殿は『妖魔山』を優先したいと考えられたのかな?」
コウヒョウの町からここまでは一本道であり、あれ程の騒ぎを起こした同志の『妖魔召士』が『妖狐』を連れ立ってここに向かってきたのである。
先にこの道を通っていた筈のイダラマ達がその事に気づかぬわけもない筈だというのに、白々しくもそのような事を口にしたのを聞いた『妖魔召士』達は、額に青筋を浮かべるのであった。
「い、イダラマ!! お主が全て仕組んだ事だったのか! お主のせいでこやつは『コウヒョウ』襲撃犯にされてしまったのだぞ! どう責任をとるつもりだイダラマ!」
あれだけの騒ぎを起こして『予備群』達に手を掛けた上に、現場を多くの町民にもみられてしまった以上、このまま何もお咎め無しで済ませられる筈もなく、今後は『コウヒョウ』だけではなく『サカダイ』の『妖魔退魔師』本部もこの『同志』を捕縛する為に動き出すであろう。
つまりそれは『ヒュウガ』達と同様に、長い期間捕らえられる事になるというワケであった。
「いやはや……。そのように一方的に身に覚えのない事で私のせいにされても困りますな。我々がどうやってその男にやらせたというのですか? 彼も『上位妖魔召士』でしょう? 『魔瞳』などの力では強引に言う事を聞かせられるわけがないでしょうに。それに目の前に張本人がいるのですから、直接彼に聞いてみれば良いではないですか。そして真実を知ってもらって……」
「もういいだろう、イダラマ。シラを切るのもその辺にしておけ。確かにワシらの『魔瞳』や『捉術』の類で強制的に従わせられる事は出来ぬが、お主の隣に居る少年であれば別であろう? あれだけの面妖な力を持っておるのだから、他者を操る何らかの『力』を持っていても何もおかしくはない。それに『コウヒョウ』の蔵屋敷でこやつがお主に襲い掛かった時、何やらその少年の目が『金色』に輝いておっただろう? あの時にこやつを洗脳や意識の支配などを行う技法か何かを仕込んだのではないか?」
「!」
エヴィの『魔瞳』の力くらいまではコウエンであれば、もしかしたら勘付くかもしれないと考えていたイダラマだったが、まさかあの時にエヴィを自分の背後に回らせて陰ながら『魔瞳』を使わせた事にもに気付かれていたと知って、演技ではなく本当に驚いた表情を見せるのであった。
「驚いたな……。貴方は麒麟児の『力』と実際にあの蔵屋敷で行った行動の真意に気付いていながら、あっさりと『サクジ』殿と共に去ろうとしていたというのか。貴方はあの『妖魔山』に挑む身でありながら、これだけの好条件が揃って尚、我らと行動を取らずに『同志』とやらの為に破滅の道へ向かうとは、本当に貴方は『妖魔山』の『妖狐』を倒そうと考えておられるのか? どうも貴方の行動に一貫性が見受けられず中途半端に映るのだが。全くもって私には理解が出来ぬよ、コウエン殿」
心底呆れるようにそう告げたイダラマは、大きく溜息を吐いて見せるのだった。
「ふっ。今更そこまで齢を重ねたお主を諭そうとは思わぬが、物事には順序というモノが存在するのだ。いくら成し遂げたい事の為に、長年腰を据えた『組織』から離れたワシでも『順序』を間違えては全てが水泡になるという事くらいは分かっておる。あの『組織』を離れて『はぐれ』となったワシらだが、その『はぐれ』には『はぐれ』なりにもルールというものが存在する。その一つがある意味で『妖魔召士』組織の心構えでもあり、大元の理念にもあった『同志』を大切にするというルールなのだ。今では『改革派』に『守旧派』と思想自体に開きが出来てしまってはいるが、そこを忘れてはならぬ。何をするにも『同志』と足並みを揃えろとまでは言わぬが、見据えた先の『大望』に必要な事であればそこに辿り着くまでの順序を理解せずに履き違えては、いつまでも求める願望には手は届かぬのだ『イダラマ』よ」
イダラマはコウエンの言葉を頭から否定するのではなく、しっかりと言葉の意味を噛み砕くように、そしてその言葉の本質を理解をしようと努力を行うように、目を閉じて考えている様子を見せるのであった。
0
お気に入りに追加
439
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

眠り姫な私は王女の地位を剥奪されました。実は眠りながらこの国を護っていたのですけれどね
たつき
ファンタジー
「おまえは王族に相応しくない!今日限りで追放する!」
「お父様!何故ですの!」
「分かり切ってるだろ!おまえがいつも寝ているからだ!」
「お兄様!それは!」
「もういい!今すぐ出て行け!王族の権威を傷つけるな!」
こうして私は王女の身分を剥奪されました。
眠りの世界でこの国を魔物とかから護っていただけですのに。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる