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イダラマの同志編

1502.集うコウヒョウの予備群の護衛隊

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「先程からそこの物陰に隠れている者、出て来るがよい」

 先頭を歩いていた体格が大きく長い髭を携えた男がそう告げると、他の者達も『予備群』の男が隠れている場所に追従するように視線を向けるのだった。

(仕方あるまい……)

 男は大人しく『コウエン』に従って、物陰から姿を現すのであった。

 出てきた『予備群』の男を見て『サクジ』が眉を寄せる。

「『コウエン』殿。どうやらこやつは『サカダイ』の町の『妖魔退魔師』組織の『予備群』のようだ……」

「『予備群』か。しかしワシらも細心の注意を払ったとまではいわぬが『結界』は間違いなく機能を果たしていたように思うが、最近の『予備群』共はそこまで優れておるという事か?」

「どうでしょう……。それは直接聞いてみなければ分かりませんが」

 コウエンとサクジは自分達を追って来ていた『予備群』を見て、蔵屋敷の中で行われた会合の事や『妖魔山』に『サカダイ』襲撃の内容を知られて追われたかどうかを確かめようと考えるのだった。

 しかしサクジ達がそれ以上何かをする前に、先に『予備群』の男が口を開くのであった。

「お主達を『妖魔召士』の方々とお見受けするが、失礼を承知で訊ねさせて頂く! 『コウヒョウ』の中で暴れている『妖狐』はお主達の仕業なのか!」

 ……
 ……
 ……

 コウエン達の元に『予備群』の男が接触をした頃、もう一人の『予備群』の男は、自分達の屯所から応援を連れて再び北側の門の『妖狐』が居る所に向かっていた。

 ――現場に向かっている『予備群』の数は十五人。

 この『コウヒョウ』の町は『ノックス』の世界では一番と呼べる程に重要な商い場という事もあるが、それだけではなく、この世界で最初に『妖魔』が出現をしたといわれる『妖魔山』が近くにあるという事もあって、本部から派遣されてきている護衛隊は、他の町や『旅籠町』などに比べて多く派遣はされている。

 町の中央で起きた騒ぎなどで出ている被害などを納めていた『予備群』達もまた、町役人達に任せる事で合流をしており、この場には町に派遣されてきている護衛隊達の半数以上が『妖狐』の居る北側の門の現場に向かっているのであった。

 そして応援の部隊が北側の門に辿り着いた時、すでに最初に居た隊長を含めた護衛隊の『予備群』達は全員が意識を失わされてその場に倒されているのであった――。

「た、隊長!!」

 応援を呼びに行った『予備群』の男が叫ぶと『妖狐』を『式』にしているとみられる赤い狩衣を着た『妖魔召士』が、後ろを振り返るのであった。

「ふフフっ……。どウヤら狙い通リに数ヲ集メテきてクレたようダな」

「こ、こいつがあの『妖狐』を使役した者なのか!?」

「い、今さら野良の『妖狐』が山から下りてくるのはおかしい事だとは思ったが、それにしても何故『妖魔召士』がこんな真似を……!」

 口々にこの場に集まった『サカダイ』の『妖魔退魔師』組織所属の『予備群』達は、訝しるように『妖魔召士』の男を睨みつけながら口にするのであった。

 言葉にしながらもこの場に集まった『予備群』達は、一時も『妖狐』から視線を外してはおらず、いつ襲ってこられてもいいように戦闘態勢を維持したままである。

「ナぜこンな真似ヲだと……? そんナ事ハ分かり切っテいル事だろウ! お前タち『サカダイ』の連中ガ、我々が管理ヲ行っテきてイた『妖魔山』ヲ横から掠めトろうとしたカラだ! 当代ノ『妖魔召士』組織ガ、いかナ事を企み、お主ラ『妖魔退魔師』組織と結託ヲはたソうが、伝統アる『保守本流』ノ『妖魔召士』達は納得ヲしはシない……!」

 何処か不安になるような瞳を『予備群』達に向けながら、その『妖魔召士』は一枚の式札を取り出すと、その場に放り投げるのだった。

「くっ! な、何かをするつもりだ! お主達も気を抜くな!」

「「お、応!!」」

 ひらひらと舞っていた『式札』はボンッという音と共に、先程出していた『鳥』の『妖魔』が再び出現したかと思うと『妖魔召士』はその『妖魔』に乗り始める。

「コレはワレら『はぐれ』とナッた『妖魔召士』達の報復ダとオモえ!」

 『妖魔召士』はそう言葉を発すると、再び『妖狐』は『予備群』達の居る方向へと口から火を吐き始める。

「よ、避けろ!!」

「う、うわああっ!?」

 数人の『予備群』が『妖狐』のあまりに速い火を避け切れずに身体を炎上させるが、周囲に居る『予備群』の仲間達が、その炎上している身体の火を消そうと、必死に地面に転がせ始める。

「ハハハハッ! イくぞ!」

 そして『妖魔召士』の男は『妖狐』に北口の門を壊させると、そのまま一気に『妖魔山』のある方へと飛び出していくのであった。
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