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イダラマの同志編

1490.組織を束ねる者同士の対話

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「シゲン殿、遅くなってすまない。ミスズ殿から言伝を預かってきたのだが」

「ソフィ殿か、入ってくれ」

 部屋の主であるシゲンの言葉を聞いたソフィは、静かに部屋の中に入るのであった。

 ソフィはシゲンの部屋を見渡すが、どうやら今回はミスズや他の隊士の姿もなくシゲンだけであった。

 シゲンはそのソフィの視線を見た後に自分の椅子から立ち上がり、対面が出来るソファーの方へ移動を行いながら、ソフィにも自分の前へ座るように促すのだった。

「ふむ。お主と二人だけで話をするのは今回が初めての事だな」

「そう言えばそうだったか。ここ最近は『妖魔召士』組織の者達とのいざこざが原因で副総長のミスズには、普段の職務を一旦棚上げしてこちらを優先してもらっていたからな」

「なるほど。しかしこの組織に居る者達は本当に優秀な者が揃っているのだな。これだけの逸材をお主はどうやって集めたのかな?」

 傍から見れば単に先程の話の延長上でソフィは訊ねたように見えるが、実はこの質問はずっとソフィがシゲンにの一つなのであった。

 この『サカダイ』の町に初めて訪れた頃、ソフィは『スオウ』の町案内で『特務』の建物内を歩いている時に、これだけの戦力が揃っている『妖魔退魔師』組織で、何故誰も野心を見せずに素直にシゲンという男に従っているのかと『スオウ』に問いかけた事があった。

 その時に『スオウ』は総長のシゲンに刃向かおうと考える者すら、自分が幹部になってから見た事も聞いたこともないと答えていた。

 ――曰く、妖魔退魔師総長のシゲンという男は、この強者揃いの組織の中でも『別格』なのだという。

 それは勿論、戦闘を行う為の力の強さという観点から『別格』と思われているのだろうが、これまでソフィがこの組織に身を寄せてから、あらゆる猛者達をその目で見てきた。

 ソフィ自身がこの組織の中で興味を持った『ナギリ』という『特務』所属の隊士や『三色併用』の力を会得したばかりとはいっても『魔神級』に匹敵する大魔王を即座に意識を失わせてみせた組織の組長格の『スオウ』。

 そして四翼の戦闘特化形態の姿となって尚、ソフィが戦闘内で縛っていた『魔法』を無理矢理に使わされる事となった組織の『副総長』である『ミスズ』。

 その他にも実際にソフィ自身は戦闘を行うところを見てはいないが『スオウ』と同じ組長格の『キョウカ』や『ヒノエ』もまた他者に簡単に従うような者には見えない程に自分というモノをしっかりと持っているように思える。

 これだけの幹部や力ある者たちを見ていても、誰もシゲンを『総長』である事に疑いを持っておらず、従っている。

 その理由を他の誰かからではなく、ソフィは直接『総長』の立場に居る目の前の男から訊いてみたいと考えたようであった。

「無論。それは『妖魔山』に向かう時に必要だと考えていたからだ。目的があればそれを叶える為に必要な力を集める事は当然の事であろう?」

「確かにまず目標を掲げる事で主軸を決める事は大事だが、定まった目標に向けて事を為すというのは思い描いていた頃より遥かに難しいだろう? お主の場合であれば『妖魔山』が目標となる目的だったのだろうが、その目的の為に人材を集めるのもまた難しかった筈だ。実現に至るまでに何か秘訣があったのだろうか」

 シゲンはソフィの言葉を聴いて何やら思案するように、身体を背もたれに預けながら腕を組み始めた。

「どうやらソフィ殿も何かを抱えて生きているようだな。それも相当に大きなものなのだろうと感じるが……」

 シゲンが思案していたのは、ソフィの質問の答えではなく、どうやらソフィ自身がそういった質問を行った理由を考えていたようである。

「お主達にも告げたと思うが、我は別世界からこの世界にきたのだが、その元に居た世界では我々『魔族』と『人間』の間には大きな確執があってな。その世界の人間達はお主達のような強さを持ってはおらず、戦争ともなればあっさりと『魔族』達にやられてしまうだろうから、我がそれを阻止しようと動いて現状を維持している状態なのだが、どうやら我の行いに人間達も不満を抱いているようで、このままでは行かぬと考えているところなのだ」

 ソフィは『』とは呼ばずに』と言い換えて、極力自らの行う『統治』という言葉を使わずに、何とか事情をシゲンに伝えようとするのであった。

「成程。ソフィ殿はその『魔族』側の支配者という立場に居るようだが、相手側の人間達の政も端的にいえば掌握している立場にあるという事か」

「うむ……。その通りだ」

 ――しかし、シゲンはソフィが暈して伝えようとしていた内容を短い会話の中でしっかりと把握したようだった。
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