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イダラマの同志編

1457.扇動

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「ゲンロクは自身が長の間に『妖魔召士』組織を『改革派』に染め上げてしまおうと目論み、自らが引退した後であっても上手く『組織』を操る為に地盤を固めようと企んでいたのだろう。そこでゲンロクは一度は袂を分かつに至った『妖魔退魔師』組織と上手く折り合いをつけるために当代の総長である『シゲン』殿と談合を行い『妖魔山』の管理権を餌に、邪魔者となった『ヒュウガ』とその一派の連中を片付けさせたというわけだ! 全ては『妖魔召士』組織を自分の思い通りに動かす為の絵図をしたためてきていたのだろうよ!」

 サクジの演説はとてもではないが『まとも』とは言い難い内容だった。

 彼がかつて組織から爪弾きにされた事によって『はぐれ』となり、対して下に見ていた『改革派』のゲンロクが、次代の『妖魔召士』組織の暫定の長となった事が彼には気に食わなかったのだろう。

 先程のサクジの演説は、単なるやっかみのようなモノが過分に含まれている内容であり、信ぴょう性なども皆無といえる程であった。

 しかしそれでも先程の『妖魔退魔師』に対しての不満を爆発させていたこの場の空気の中では、そのサクジが一石を投じた言葉だけで気持ちが盛り上がっていた『妖魔召士』達は、その流れに身を投じようとしていくのであった。

「サクジ殿の話を全て鵜呑みにするわけではないが……、確かに当代の『妖魔退魔師』組織の『シゲン』殿は『妖魔山』に入りたがっているという話を聞いたことがある。もしかすると『シゲン』殿から『ゲンロク』に話を持ち掛けたという可能性はあるかもしれぬな……」

「ゲンロクは自分の思い通りになる『妖魔召士』組織を作る事が出来れば、仮に自分が引退した後も色々と意見を陰から通す事も可能であるし、そうなれば次代も安泰の立場になれる。そして『シゲン』殿の方も長年『妖魔召士』組織が管理してきたせいで入る事が叶わなかった待望の『妖魔山』の管理を組織で行えるとなれば、組織の総長である『シゲン』殿もこれ幸いと自由に入る事が出来る。確かに『サクジ』殿の言う通り、奴らが談合を行っていてもおかしくはない話だな」

 少し冷静になって考えればそんな筈はないだろうと気づける事ではあったが、この場の空気はすでに現状に対しての『愚痴』を口にしたり、聴いたりしている者達が大勢居て、色々と『妖魔退魔師』組織や自分達を『はぐれ』の立場へと追いやった『妖魔召士』組織の現体制に対しての『不満』が充満している状態である。

 もちろん『サクジ』はその『同志』達の怒りを逆手にとって、この場に現れた『ライゾウ』と『フウギ』の助けの声に他の者達にも耳を傾けさせようと、そして救出に向かわせようという狙いがあるのだろう。

 そしてその『サクジ』の目論み通りに大勢の『妖魔召士』の『同志』達が息まいている状態であった。

 イダラマは『サクジ』の言葉と思惑に乗せられる事はなかったが、それでもこの場で反論を行えば他の『同志』達の心証が悪くなるどころか、逆に自分の目的を果たす事が出来なくなると判断して無言を貫くのであった。

(確か『サクジ』殿が『妖魔召士』組織を抜ける理由となったのは重要な任務の時に『組織』よりも『同志』を優先するような行動と言動を行い続けたが故に『組織』から追い立てられたのだったか。あの時はまだ今の『ゲンロク』の『妖魔召士』組織のように『派閥』の存在が大きかったわけではないが、それでも『サクジ』殿の行為は目に余るものがあったのは確かだ。どうやら彼は自分の大事な『仲間』に対しては必要以上に目をかけるが、それ以外の事に対しての優劣の差が激しい)

「別に『ヒュウガ』の肩を持つ気はないが、ヒュウガを信じてついていったこの『同志』達である『ライゾウ』と『フウギ』が『テツヤ』と『タケル』を救出したいと必死にこの場まできて伝えてきたのだ。ここは彼らの気持ちを汲んで力を貸してやってはどうだろうか『同志』諸君!」

 そしてイダラマの思った通り『サクジ』はこの場に集まっている『妖魔召士』の『同志』達に『妖魔退魔師』組織へ襲撃に向かわせようと扇動を始めるのであった。
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