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イダラマの同志編
1452.多くの情報を持つ、はぐれの妖魔召士達
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イダラマ達が『同志』のコウエン達と共に入った建物は、元々前時代の『最上位妖魔召士』達が使っていたコウヒョウの一角にある蔵屋敷であった。
前時代までの『最上位妖魔召士』は町奉行や『コウヒョウ』の名主とも裏でも表でも繋がっていた為に、今回のイダラマ達のように内密で大きな話をする時などには、前もって名主達に伝えておくことで自由に出入りすることが許されていた。
現在は『コウヒョウ』の町を管理する者達の世襲が変わったことに加えて『妖魔召士』組織から完全に一つの組織として独立を果たした『妖魔退魔師』組織が政面で『力』を持つようになった。
そして下部組織である『予備群』が全国に護衛として常設される事が当然となった今では、町の治安維持を行う者達が『予備群』の護衛達となり、その護衛達から報告を受けて各々の町役人が『上』へ通達を行うという業務形態へと成り立っていき、こういった町の蔵屋敷を利用してきた『妖魔召士』組織の者達も居なくなり、現在では表向きの利用以外では使われてはいなかった。
しかし最近になって前時代の『妖魔召士』組織の『上』の者達が『はぐれ』を集めて集う場所として使われるようになり、その繋がりで『イダラマ』達も利用するに至っているのであった。
直ぐに利用される米穀品が置かれている場所から、更に奥へと進んでいき物産品などが無造作に並べられている場所から薄い壁を挟んだ隠し扉を開くと、だらりと上の階から吊るされている梯子があった。
イダラマ達はその梯子をのぼって蔵屋敷の表向きの二階との間くらいにある、開けた隠し部屋に腰を下ろすのだった。
「一応『結界』は張ってあるが、念のためにお主らは入口側を見張っていてくれ」
イダラマは『アコウ』と『ウガマ』に向けてそう告げると、両者はこくりと頷いて言われた通りに収納梯子が見える程に入口に近づいてその場で腰を下ろすのだった。
「さて、少しばかり予定は狂ったが、ひとまず今後の事の話をさせて頂きたい」
イダラマがそう告げると『コウエン』や『同志』達も腰を下ろして軽く頷きを見せる。
エヴィもイダラマの横に腰をおろしてはいるが、真面目に話を聴くつもりがないのか『金色のメダル』を嬉しそうに眺めていた。
コウエンはその様子を見て苦笑いを浮かべたが、もうエヴィに対しては注意をするつもりもないようで視線をイダラマに向ける。
「まず今回我々が貴方がた『同志』の方々と合流を行いたいと思い立った理由として、現在『妖魔召士』組織が崩れかけている事を踏まえた上で『妖魔山』に入る好機の機会が訪れた事を伝えるべく連絡を致しました」
すでに双方『妖魔山』を目的とする事でこの場に集まったのだが、イダラマはそれを重々承知の上で場所を移した事も相まって、確認を行うつもりで最初から話を始めるようであった。
「イダラマ。我々もかつては『妖魔召士』組織に属していた者達だ。独自に間諜を持っておるし、すでに当代の『妖魔退魔師』組織と『妖魔召士』組織のある程度の情報は得ておる。肝心なところだけを話してくれればよいぞ」
そう口にしたのは先代の時代の『妖魔召士』組織に属していた『サクジ』と名乗る『妖魔召士』であった。
彼は破門された『はぐれ』ではあるが『サクジ』も前時代の『妖魔召士』組織に属せるだけあって、ランク『6』の妖魔を『式』に出来る程の『上位妖魔召士』であった。
彼は『コウエン』より若くはあるが、それでも『イダラマ』や『エイジ』よりも相当上の年齢ではある。
「承知致した。では端を折らせて頂くとして、現在『妖魔山』の管理権は、当代の『妖魔召士』組織の暫定の長であった『ゲンロク』達がヘマをした事で『妖魔退魔師』達につけ込まれてしまい、すでに『妖魔召士』組織から『妖魔退魔師』組織へと移っております」
「何百年も我々『妖魔召士』組織が管理してきたモノが、あっさりと『妖魔退魔師』側に移るか……。此度の度重なる失態は間諜を通して我々も情報を得てはいるが、それでももう少し何とかならなかったのじゃろうか」
すでに『組織』から抜けている『サクジ』達だが、それでも長年在籍していた前時代の『妖魔召士』組織の人間である。
相当に思うところがあったのだろう。どこか不機嫌そうにそう告げたのだった。
「確かに……。サクジ殿の言う通りだ。ワシが得た情報では『加護の森』から先に通じる道から入る『サカダイ』の管理する森へ不法に侵入した事と、当代の若い『妖魔召士』連中が、奴らの下部組織の『予備群』が『煌鴟梟』なる犯罪集団のアジトで多少揉めた事が原因だと聞いたが、そんなことで『妖魔山』の管理権を移すとは、ゲンロクやヒュウガはそんなにも交渉の面では無能だったという事か?」
「いやいや、ワシは他にも『旅籠町』の『予備群』の屯所を襲撃したという話を耳にしたぞ。それも行ったのはヒュウガ達だったらしい。流石に当代の『妖魔召士』組織の大幹部であった筈のヒュウガが本当にそんな事件を起こしたというのであれば、その責任は確かに大きいものだと思われるが?」
「いや、その前に何故ヒュウガが里を出て『旅籠町』の『予備群』を襲撃したというのだ?」
「ああ。それはあくまで私が得た情報ではあるが、ヒュウガの小僧は自分が組織の長になろうと野心を持っておったそうでな。陰でゲンロクが創設した『退魔組』の連中と手を組んで、ゲンロクを嵌めようとしていたそうなのだが、その件がばれてゲンロクと争ったそうだ。しかしヒュウガは無残にもゲンロクにやられた末に、自分の派閥共と一緒に里を出ておったらしい」
「ワシもその話は聞いたことがあるな。その『煌鴟梟』とかいう奴らのアジトで『予備群』と争った『妖魔召士』達というのも元々はヒュウガの遣いであったらしいぞ。それで『予備群』に捕縛された『ヒュウガ』の遣いの者達を解放する為に『ヒュウガ』が旅籠町の『予備群』の屯所を襲ったそうだ」
流石にこの場に居る『同志』達は、それぞれが『力』を有する『妖魔召士』達なだけはあり、まだ表にあまり明るみになっていない情報をそれぞれが、それぞれの間諜を通じてあらゆる情報を得ているというのは間違いなさそうであった。
前時代までの『最上位妖魔召士』は町奉行や『コウヒョウ』の名主とも裏でも表でも繋がっていた為に、今回のイダラマ達のように内密で大きな話をする時などには、前もって名主達に伝えておくことで自由に出入りすることが許されていた。
現在は『コウヒョウ』の町を管理する者達の世襲が変わったことに加えて『妖魔召士』組織から完全に一つの組織として独立を果たした『妖魔退魔師』組織が政面で『力』を持つようになった。
そして下部組織である『予備群』が全国に護衛として常設される事が当然となった今では、町の治安維持を行う者達が『予備群』の護衛達となり、その護衛達から報告を受けて各々の町役人が『上』へ通達を行うという業務形態へと成り立っていき、こういった町の蔵屋敷を利用してきた『妖魔召士』組織の者達も居なくなり、現在では表向きの利用以外では使われてはいなかった。
しかし最近になって前時代の『妖魔召士』組織の『上』の者達が『はぐれ』を集めて集う場所として使われるようになり、その繋がりで『イダラマ』達も利用するに至っているのであった。
直ぐに利用される米穀品が置かれている場所から、更に奥へと進んでいき物産品などが無造作に並べられている場所から薄い壁を挟んだ隠し扉を開くと、だらりと上の階から吊るされている梯子があった。
イダラマ達はその梯子をのぼって蔵屋敷の表向きの二階との間くらいにある、開けた隠し部屋に腰を下ろすのだった。
「一応『結界』は張ってあるが、念のためにお主らは入口側を見張っていてくれ」
イダラマは『アコウ』と『ウガマ』に向けてそう告げると、両者はこくりと頷いて言われた通りに収納梯子が見える程に入口に近づいてその場で腰を下ろすのだった。
「さて、少しばかり予定は狂ったが、ひとまず今後の事の話をさせて頂きたい」
イダラマがそう告げると『コウエン』や『同志』達も腰を下ろして軽く頷きを見せる。
エヴィもイダラマの横に腰をおろしてはいるが、真面目に話を聴くつもりがないのか『金色のメダル』を嬉しそうに眺めていた。
コウエンはその様子を見て苦笑いを浮かべたが、もうエヴィに対しては注意をするつもりもないようで視線をイダラマに向ける。
「まず今回我々が貴方がた『同志』の方々と合流を行いたいと思い立った理由として、現在『妖魔召士』組織が崩れかけている事を踏まえた上で『妖魔山』に入る好機の機会が訪れた事を伝えるべく連絡を致しました」
すでに双方『妖魔山』を目的とする事でこの場に集まったのだが、イダラマはそれを重々承知の上で場所を移した事も相まって、確認を行うつもりで最初から話を始めるようであった。
「イダラマ。我々もかつては『妖魔召士』組織に属していた者達だ。独自に間諜を持っておるし、すでに当代の『妖魔退魔師』組織と『妖魔召士』組織のある程度の情報は得ておる。肝心なところだけを話してくれればよいぞ」
そう口にしたのは先代の時代の『妖魔召士』組織に属していた『サクジ』と名乗る『妖魔召士』であった。
彼は破門された『はぐれ』ではあるが『サクジ』も前時代の『妖魔召士』組織に属せるだけあって、ランク『6』の妖魔を『式』に出来る程の『上位妖魔召士』であった。
彼は『コウエン』より若くはあるが、それでも『イダラマ』や『エイジ』よりも相当上の年齢ではある。
「承知致した。では端を折らせて頂くとして、現在『妖魔山』の管理権は、当代の『妖魔召士』組織の暫定の長であった『ゲンロク』達がヘマをした事で『妖魔退魔師』達につけ込まれてしまい、すでに『妖魔召士』組織から『妖魔退魔師』組織へと移っております」
「何百年も我々『妖魔召士』組織が管理してきたモノが、あっさりと『妖魔退魔師』側に移るか……。此度の度重なる失態は間諜を通して我々も情報を得てはいるが、それでももう少し何とかならなかったのじゃろうか」
すでに『組織』から抜けている『サクジ』達だが、それでも長年在籍していた前時代の『妖魔召士』組織の人間である。
相当に思うところがあったのだろう。どこか不機嫌そうにそう告げたのだった。
「確かに……。サクジ殿の言う通りだ。ワシが得た情報では『加護の森』から先に通じる道から入る『サカダイ』の管理する森へ不法に侵入した事と、当代の若い『妖魔召士』連中が、奴らの下部組織の『予備群』が『煌鴟梟』なる犯罪集団のアジトで多少揉めた事が原因だと聞いたが、そんなことで『妖魔山』の管理権を移すとは、ゲンロクやヒュウガはそんなにも交渉の面では無能だったという事か?」
「いやいや、ワシは他にも『旅籠町』の『予備群』の屯所を襲撃したという話を耳にしたぞ。それも行ったのはヒュウガ達だったらしい。流石に当代の『妖魔召士』組織の大幹部であった筈のヒュウガが本当にそんな事件を起こしたというのであれば、その責任は確かに大きいものだと思われるが?」
「いや、その前に何故ヒュウガが里を出て『旅籠町』の『予備群』を襲撃したというのだ?」
「ああ。それはあくまで私が得た情報ではあるが、ヒュウガの小僧は自分が組織の長になろうと野心を持っておったそうでな。陰でゲンロクが創設した『退魔組』の連中と手を組んで、ゲンロクを嵌めようとしていたそうなのだが、その件がばれてゲンロクと争ったそうだ。しかしヒュウガは無残にもゲンロクにやられた末に、自分の派閥共と一緒に里を出ておったらしい」
「ワシもその話は聞いたことがあるな。その『煌鴟梟』とかいう奴らのアジトで『予備群』と争った『妖魔召士』達というのも元々はヒュウガの遣いであったらしいぞ。それで『予備群』に捕縛された『ヒュウガ』の遣いの者達を解放する為に『ヒュウガ』が旅籠町の『予備群』の屯所を襲ったそうだ」
流石にこの場に居る『同志』達は、それぞれが『力』を有する『妖魔召士』達なだけはあり、まだ表にあまり明るみになっていない情報をそれぞれが、それぞれの間諜を通じてあらゆる情報を得ているというのは間違いなさそうであった。
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