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イダラマの同志編
1445.シゲンの判断
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ユウゲの提案にミヤジは当然首を縦に振って同意を示した。
そもそもミヤジは『イツキ』を救出しようと『妖魔退魔師』組織の本部で『ユウゲ』に近づいた男であり、彼もまた元『煌鴟梟』の『サノスケ』よりも『退魔組』の『ユウゲ』を選んだくらいである。
そして『ユウゲ』もまた『退魔組』よりも『イツキ』を選んだ者である為、両者ともに元々は違う組織同士の人間ではあるが、志を同じくする『同志』と呼べる間柄となっている。
更にそのユウゲに恋慕の感情を抱く『ヤエ』は、イツキの事は正直どうでもいいと考えているが、ユウゲがそうしたいというのであれば、それに従いたいと考えているためにこちらも両名の行動に是とするのであった。
「では『ケイノト』へ向かうのは取りやめて、ライゾウ様達が『同志』達を連れてここに戻ってくるまで、近くの『旅籠町』を拠点にするとしよう」
「ああ……。それは別に構わないんだが、ユウゲ殿。ちょっといいか? 俺達は一応イツキ様のおかげで『自由』の身にはなれたが、それでも『妖魔退魔師』組織の者達に見張られている筈だ。ずっとこの『妖魔退魔師』本部のある『サカダイ』近くの『旅籠町』に身を置くとなると、何か疑いをかけられないか?」
ユウゲはそのミヤジの言葉に感心するような視線を送るのだった。
(ほう。流石は『煌鴟梟』で幹部だった男だ。戦闘に関しては頭数に入れられぬが、ミヤジ殿はとても思慮深い人間だな。他人に流されずにしっかりと疑問を口に出来る存在は貴重だ。今後はワシも考えが行き詰まらないとも限らぬ。そこにこうして疑問を正直に口にしてくれた方が、こちらも視野を広げて考えさせてもらえるというものだ)
ユウゲはミヤジの評価を高めると、再びその口を開き始める。
「それには心配は及ばぬよ、ミヤジ殿。あくまで我々は『退魔組』という組織や『煌鴟梟』という組織から離れたばかりのそれも『捕らわれの身』から解放されたばかりの人間達だ。少しの間『旅籠町』で休暇を取りつつ今後の仕事や身の振り方を考えているというところをみせておれば、怪しまれることもないだろう。それに今はワシらについていた『監視』の目も見当たらぬ。どうやらワシが『結界』を張ってこの場に来たことは彼らは気づけておらぬようだし、このまま『結界』を解いて何食わぬ顔で『旅籠町』へ移動すれば、再び『監視』はワシらに気づいてついてくるだろう。そこで今回の『襲撃』があった事を知らぬ存ぜぬで普段通りに振舞っておれば怪しまれる事はない。だから『ミヤジ』殿に『ヤエ』よ。ワシらはここで『ヒイラギ』達が亡骸に変えられた事を今後は絶対に顔に出さず、何食わぬ顔で行くことを心掛けてもらいたい」
「あ、ああ……。アンタはイツキ様の件もあるし信用出来る。言われた通りに行動する」
「わ、私もです。ユウゲ様に従います!」
二人の言葉に再びユウゲは首を縦に振るのであった。
(後は『ライゾウ』様達の様子や『妖魔退魔師』組織の動向を窺いながら、機をみて行動を開始するとしよう。あとは我々についているであろう『監視』がどれだけの規模で動いているかも把握しておく事も忘れてはならぬな)
元『退魔組』の『特別退魔士』にして、サテツからもイツキからも認められていた『ユウゲ』は、その力を如何なく発揮するかの如く、今後の行動を見据え始めるのであった――。
……
……
……
そしてその『ユウゲ』や『ミヤジ』達が必死に救出をしようとしている対象である『イツキ』は、たった一人だけ入れられている『牢』の中で静かに目を閉じて瞑想を行っていた。
彼は『ヒュウガ一派』達のように『目隠し』をされているわけでも、手足を拘束されているわけでもなかった。
当然一部屋挟んで別の部屋からイツキの居る『牢』の監視を行う妖魔退魔師は居るが、特別厳重に警戒態勢を敷かれているわけでもなく、イツキが本気で脱獄を行おうとするのであれば、可能だろうと思われる程の『監視』の態勢であった。
――こういう扱いになったのは『総長』である『シゲン』の命令によるものであった。
どうやらシゲンは『牢』から彼が逃げ出すという心配をしていないのか、それとも逃げ出しても構わないというような何か別の思惑があるのか、そこまではミスズも分かってはいなかったようだが、ミスズはシゲンの態度から『心底イツキという青年を信頼している』ように感じられたために、彼の扱いは普通の『牢』と変わらないモノとなった。
(あのヌーって野郎! この俺を雑魚呼ばわりしやがって! 何が猿真似だけじゃ役に立たねぇだ! クソッ……! でも確かに今の俺じゃアイツには逆立ちしたって勝てねぇってのは直ぐに理解が出来た。あの野郎は間違いなく口だけじゃなく実力が伴っていやがる……。本当に俺を弱いと思っている奴の目をしていやがった。それにあの『ソフィ』って野郎は言うに及ばず『シゲン』って野郎にも何も出来なかった……)
これまで自分が強いのかどうか本当の意味では分からなかったイツキだが、それでも自分より弱い奴らを見てきたことで、それなりに自分は強いのだろうと自信を持っていた。
それだけにここ最近の連敗続きでその自信は脆くも崩れ去り、挙句に直接戦ってもいない『ヌー』という男にボロクソに言い負かされて彼は自尊心が粉々になってしまっているのであった。
確かにこんな精神状態ではこれまでのようにやりたい事をしようとは思えず、イツキは自分の自信を取り戻そうという考えにようやく『牢』の中で至ったようである。
そしてヌーに対しての雑念交じりではあるが、強くなろうと決心を行って出来る事からと瞑想を行うように目を閉じて、まずは明確に自分が出来る事と出来なさそうな事を頭の中で整理をするところから始めたようである。
どうやらイツキがこの考えに至るだろうと『シゲン』は理解し、ある種彼を信頼していたようで、このような『牢』の処置を行ったようであった。
そもそもミヤジは『イツキ』を救出しようと『妖魔退魔師』組織の本部で『ユウゲ』に近づいた男であり、彼もまた元『煌鴟梟』の『サノスケ』よりも『退魔組』の『ユウゲ』を選んだくらいである。
そして『ユウゲ』もまた『退魔組』よりも『イツキ』を選んだ者である為、両者ともに元々は違う組織同士の人間ではあるが、志を同じくする『同志』と呼べる間柄となっている。
更にそのユウゲに恋慕の感情を抱く『ヤエ』は、イツキの事は正直どうでもいいと考えているが、ユウゲがそうしたいというのであれば、それに従いたいと考えているためにこちらも両名の行動に是とするのであった。
「では『ケイノト』へ向かうのは取りやめて、ライゾウ様達が『同志』達を連れてここに戻ってくるまで、近くの『旅籠町』を拠点にするとしよう」
「ああ……。それは別に構わないんだが、ユウゲ殿。ちょっといいか? 俺達は一応イツキ様のおかげで『自由』の身にはなれたが、それでも『妖魔退魔師』組織の者達に見張られている筈だ。ずっとこの『妖魔退魔師』本部のある『サカダイ』近くの『旅籠町』に身を置くとなると、何か疑いをかけられないか?」
ユウゲはそのミヤジの言葉に感心するような視線を送るのだった。
(ほう。流石は『煌鴟梟』で幹部だった男だ。戦闘に関しては頭数に入れられぬが、ミヤジ殿はとても思慮深い人間だな。他人に流されずにしっかりと疑問を口に出来る存在は貴重だ。今後はワシも考えが行き詰まらないとも限らぬ。そこにこうして疑問を正直に口にしてくれた方が、こちらも視野を広げて考えさせてもらえるというものだ)
ユウゲはミヤジの評価を高めると、再びその口を開き始める。
「それには心配は及ばぬよ、ミヤジ殿。あくまで我々は『退魔組』という組織や『煌鴟梟』という組織から離れたばかりのそれも『捕らわれの身』から解放されたばかりの人間達だ。少しの間『旅籠町』で休暇を取りつつ今後の仕事や身の振り方を考えているというところをみせておれば、怪しまれることもないだろう。それに今はワシらについていた『監視』の目も見当たらぬ。どうやらワシが『結界』を張ってこの場に来たことは彼らは気づけておらぬようだし、このまま『結界』を解いて何食わぬ顔で『旅籠町』へ移動すれば、再び『監視』はワシらに気づいてついてくるだろう。そこで今回の『襲撃』があった事を知らぬ存ぜぬで普段通りに振舞っておれば怪しまれる事はない。だから『ミヤジ』殿に『ヤエ』よ。ワシらはここで『ヒイラギ』達が亡骸に変えられた事を今後は絶対に顔に出さず、何食わぬ顔で行くことを心掛けてもらいたい」
「あ、ああ……。アンタはイツキ様の件もあるし信用出来る。言われた通りに行動する」
「わ、私もです。ユウゲ様に従います!」
二人の言葉に再びユウゲは首を縦に振るのであった。
(後は『ライゾウ』様達の様子や『妖魔退魔師』組織の動向を窺いながら、機をみて行動を開始するとしよう。あとは我々についているであろう『監視』がどれだけの規模で動いているかも把握しておく事も忘れてはならぬな)
元『退魔組』の『特別退魔士』にして、サテツからもイツキからも認められていた『ユウゲ』は、その力を如何なく発揮するかの如く、今後の行動を見据え始めるのであった――。
……
……
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そしてその『ユウゲ』や『ミヤジ』達が必死に救出をしようとしている対象である『イツキ』は、たった一人だけ入れられている『牢』の中で静かに目を閉じて瞑想を行っていた。
彼は『ヒュウガ一派』達のように『目隠し』をされているわけでも、手足を拘束されているわけでもなかった。
当然一部屋挟んで別の部屋からイツキの居る『牢』の監視を行う妖魔退魔師は居るが、特別厳重に警戒態勢を敷かれているわけでもなく、イツキが本気で脱獄を行おうとするのであれば、可能だろうと思われる程の『監視』の態勢であった。
――こういう扱いになったのは『総長』である『シゲン』の命令によるものであった。
どうやらシゲンは『牢』から彼が逃げ出すという心配をしていないのか、それとも逃げ出しても構わないというような何か別の思惑があるのか、そこまではミスズも分かってはいなかったようだが、ミスズはシゲンの態度から『心底イツキという青年を信頼している』ように感じられたために、彼の扱いは普通の『牢』と変わらないモノとなった。
(あのヌーって野郎! この俺を雑魚呼ばわりしやがって! 何が猿真似だけじゃ役に立たねぇだ! クソッ……! でも確かに今の俺じゃアイツには逆立ちしたって勝てねぇってのは直ぐに理解が出来た。あの野郎は間違いなく口だけじゃなく実力が伴っていやがる……。本当に俺を弱いと思っている奴の目をしていやがった。それにあの『ソフィ』って野郎は言うに及ばず『シゲン』って野郎にも何も出来なかった……)
これまで自分が強いのかどうか本当の意味では分からなかったイツキだが、それでも自分より弱い奴らを見てきたことで、それなりに自分は強いのだろうと自信を持っていた。
それだけにここ最近の連敗続きでその自信は脆くも崩れ去り、挙句に直接戦ってもいない『ヌー』という男にボロクソに言い負かされて彼は自尊心が粉々になってしまっているのであった。
確かにこんな精神状態ではこれまでのようにやりたい事をしようとは思えず、イツキは自分の自信を取り戻そうという考えにようやく『牢』の中で至ったようである。
そしてヌーに対しての雑念交じりではあるが、強くなろうと決心を行って出来る事からと瞑想を行うように目を閉じて、まずは明確に自分が出来る事と出来なさそうな事を頭の中で整理をするところから始めたようである。
どうやらイツキがこの考えに至るだろうと『シゲン』は理解し、ある種彼を信頼していたようで、このような『牢』の処置を行ったようであった。
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