最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
1,442 / 1,989
サカダイ編

1425.模倣の領域

しおりを挟む
 退魔組の者達が『サシャ』から今後の説明を受けている頃、再びイツキは『牢』からシゲンの元へ呼び出されて戻ってきていた。

「交渉対象となった『退魔組』の者達は、全員この場所から解放してくれたのか?」

 シゲンの前に立ったイツキは開口一番にそう口にするのだった。

「安心しろ。お主との交渉は守るさ。お主もソフィ殿と戦った感想などを頼む。出来れば俺と手を合わせた時とどちらがやり辛かったかも交えて口にしてくれると有難い」

「分かった。あくまで俺が双方と戦った時の印象であるからな。実際は全然違うかったなどと後から文句は言わないでくれよ?」

 イツキがソフィと戦った時の印象の中で、一番重要視するべきなのは『魔力』を使った攻撃方法に対して、ソフィが実際に抵抗を行った時の内容だと判断し、イツキは『ケイノト』の裏路地の一室で動きを止めた辺りから説明を行い始める事にするのだった――。

 …………

「――という感じでアイツも俺と同じ湯気……。アンタの言葉を借りるなら『金色のオーラ』とやらを使っていた時に俺の『捉術』の発動タイミングをズラしてきたんだ。最初は俺が『魔力』を使い損ねて『捉術』を使う事に失敗をしたんだと思ったが、アンタの『体現者』とやらが扱う不思議な『力』をソフィ殿が使ったんだとしたら確かに合点がいく内容だと判断出来る。多分あれはソフィ殿の体現者『特有』の力なんだと思うよ」

「うむ。。すなわち『』と呼ばれる力だ。しかしその話が本当だとすると、ソフィ殿の『特異』は相当に強力なものだ……。相手の『魔力』の道筋を変えて『発動』自体を詠唱者からタイミングを奪うだけではなく、その『発動』のタイミングをソフィ殿の任意で発動させられるのだとしたら、お主ら『退魔士』はお手上げだろうな……」

「いや、そもそもだな……。その『特異』の力がどうこうの前に俺が殺すつもりで本気でソフィ殿の首を掴んで『動殺是決どうさつぜけつ』を使ったにも拘わらず、何事もなく笑みを浮かべながら無傷で反撃してくる事自体がお手上げなんだよな……」

 どうやらイツキは説明を行う為にあの戦闘を回想して恐怖心が蘇ったのだろう。

 何もしていないというのにシゲンの前で唐突に手が震え始めて、慌ててもう片方の手でぎゅっと握りしめるのだった。

「ありゃ、マジでどうしようかと思ったぜ? しかもその後にさっきも話した通り、更にソフィ殿の速度や力が比べものにならなくなって、さっきアンタと戦った時の俺の状態でもあっさり意識を失わされちまった。ありゃ間違いなく『化け物』だ。まぁいっちゃ悪いがアンタも似たような化け物なんだけどな……」

 ――そう告げるイツキの言葉は、紛う事なく本音であった。

 イツキがこの部屋でシゲンと戦った時、その時のイツキもまた彼の『特異』でソフィの『特異』を『ラーニング』して放ってみせたが、シゲンもまた『金色のオーラ』を纏った事であっさりと対処されたのである。

 確かにイツキの『特異』である『ラーニング』では、即座に本物と同一の代物が模倣出来るわけではなく、かつての『妖魔退魔師』の『天色』のオーラを模倣した時と同様に、研鑽が必要である為に、ソフィと同じ『力』を放てたわけではないが、それでもその型となる基本の『型枠』は、シゲンに放つときにイツキは完全に模倣が出来ていた。

 つまり模倣の領域でいうならば、それは成立していたという事に他ならない。

 ――だからこそあの時シゲンは、咄嗟に『金色』を纏わせざるを得ないと判断したのであった。

(俺ではソフィ殿のあの『化け物』のような『力』には対抗出来なかったが、同様に俺の力を無力化してみせた、こっちの『化け物』ならば、あの時の結果はどうなっていたかな……)

 イツキは胸中であの時に自分ではなく、シゲンという『妖魔退魔師』の『総長』が相手であったならば、結果はどうなっていただろうかと思案するのだった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...