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サカダイ編

1409.ヌーの気遣い

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 ひとまずソフィの話し合いが落ち着き、この場はひとまず『ヒュウガ一派』の捕縛の件で『妖魔退魔師』組織の今後についての取り決め等々の会議が行われるという事になった為、ソフィ達は先だって宛がわれていた部屋へと通される事となった。

 今後はソフィ達も総長『シゲン』や副総長『ミスズ』達、それに『妖魔召士』組織の『ゲンロク』や『エイジ』殿達を含めて『妖魔山』へ同行をする事になっている為、シゲンやミスズ達の話し合いが終われば再びソフィ達の元に改めて説明や報告が行われる事だろう。

 ソフィやヌー達にとっては直ぐにでも『エヴィ』を探すために『妖魔山』へ向かいたいところではあるが、シゲン達も色々と『組織』として今後について話し合うのも当然の事だとソフィは理解を示した。

 そもそも『妖魔山』へは『妖魔召士』や『妖魔退魔師』の組織の許可が無ければ、ソフィ達は入ることは出来ないのだから、焦っても仕方はないだろうとソフィは考えていたのである。

 ヌーの方も直ぐに向かえない事には難色を示してはいたが、ようやくここまで待って、次が『妖魔山』へ入るという話になったことで渋々ではあるが、こちらも理解を示して広い部屋の床に寝転び天井を見上げながら足を組んで寛いでいた。

「おいセルバス。てめぇはもうここで大人しくしておけよ?」

 唐突に寛いでいたヌーが顔をセルバスの方に向けると、部屋の入り口の方で立っていたセルバスが反応を見せるのだった。

「ああ? 何を言っていやがる。これから旦那達はあの『天衣無縫エヴィ』の奴を探しに『妖魔山』だかに向かうんだろう? だったら俺も行くに決まってるだろうが」

 腕を組みながらヌーの方を見てそう答えるセルバスにヌーは、体を起こして真面目な顔をして口を開いた。

「てめぇは曲がりなりにも『煌聖の教団こうせいきょうだん』の幹部だった大魔王だ。ここの組織の長だとか言っていた『シゲン』とかいう人間を見れば、どれくらいの強さかはある程度理解が出来るだろう? その人間が今回まで手を出さずに自分の部下達に任せておいて、今度の『妖魔山』では率先して自分が行くと抜かしていた。それもご丁寧に『妖魔山』は危険なところだと説明まで加えてだ。更にソフィの奴の実力まで部下に図らせて同行を許可したような野郎がそこまで宣うって事は、間違いなく今のてめぇがついて行けるような場所じゃねぇ。ここで大人しくしておけ」

 どうやらヌーなりにセルバスを心配しての発言であったのだろう。

 有無を言わせぬようなヌーの圧力がそこにはあった。

「本来の俺の身体であってもヌーや、旦那の戦いっぷりをみるに、俺じゃこの世界じゃ太刀打ち出来なかったんだろうけど『代替身体だいたいしんたい』の今の俺じゃ次はない。このままついて行っても迷惑しかかけねぇんじゃ、行く意味ねぇよな……」

 そしてセルバスもまたそんなヌーの真意に気づいたようで、悔しそうな表情を浮かべた後に苦笑いをするのだった。

 もし今のセルバスが本来の身体であったならば、一度は絶命をする事はあっても『代替身体だいたいしんたい』に魂を移せば一度に限り蘇ることができる。

 しかし今のセルバスは既にその『代替身体だいたいしんたい』の身である為、やられてしまえばそれで終わりである。

 それでもセルバスは大魔王としての自尊心を持っているが故に、自分一人がやられるだけであるならば、このままついていくと断言していただろうが、今目の前で忠告を行ってきた『ヌー』の様子から見ても、このまま『妖魔山』について行って自分がやられそうになれば、文句は言いつつも助けてくれそうである。

 自分一人が死ぬのであればそれは別に構わないと考えるセルバスだが、助けようとしてくれるヌーやソフィに迷惑をかけるつもりまではない。

 迷惑をかけてまでついて行きたいとまでは思えないセルバスであった。

「分かった……。ここで大人しく待つことにする」

「ああ、そうしとけ。まぁ安心しろや。全てが片付いたらよ、ちゃんとてめぇを回収しにきてやるからよ」

 ソフィはその様子を見てニヤリと笑う。

 ――それは大魔王ヌーなりのセルバスに対する気遣いであった。

 その言葉はこの世界に来るまでの彼であれば、絶対に出る事はなかったであろう言葉であった。

 強くなったことで気も大きくなり、他者を見下す傾向は変わらないヌーだが、少しずつ自分の周囲の者達に対しては変化が大きくなっていっている事をソフィも、もう明確に理解し始めているのだった。

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