上 下
1,423 / 1,906
サカダイ編

1406.妖魔退魔師ミスズの制止を振り切る悪魔達

しおりを挟む
 ヌーやテア達が別の場所でそれぞれ戦い始めた頃。

 妖魔退魔師の副総長ミスズも目の前で起きている『退魔組』の頭領である『サテツ』と悪魔と呼ばれる者達をこの場に使役した『セルバス』の戦いを止めようと動き出していた。

 …………

 そのミスズがまだ彼らの姿を見せる前。数多の襲い掛かってくる『悪魔』を蹴散らし続けていたサテツは、その『悪魔』のあまりの多さに辟易しながらも必死に数を減らしていたが、そこで『悪魔』達の行動が変わり、次々と自分に向かってきた後に自爆まがいの特攻を仕掛けられるのであった。

 それでも何とか耐える『サテツ』の前に、遂にしびれを切らしたのか悪魔達の指揮官であろう男が自分に向かって飛び掛かってくる。

 それを見たサテツは逆に好機だと判断してその『悪魔』を優先的に攻撃を行い消滅させたのだった。

 ――しかし。その瞬間に『サテツ』のこれまでの頑張り、その全て無駄にされるような出来事が生じるのだった。

 『悪魔』達の指揮官であると『サテツ』が判断した『悪魔』を確実に仕留めた筈だというのに、何やら光りに包まれたかと思うと、その指揮官の『悪魔』が完全復活を遂げてみせたのであった。

「ば、馬鹿な……!? た、確かにこの俺がこの手で……っ!」

「ひゃはっ! ひゃははは!!」

 蘇った悪魔は何かをサテツに告げていたが、その言葉は全くサテツの耳には入ってこなかった。

 そして再びその『ロイトープ』と名乗っていた悪魔がサテツに向けて襲い掛かってくるが、再びサテツは『捉術』を用いて確実に殺してみせたが……――。

 また光りに包まれて『ロイトープ』と名乗る指揮官の『悪魔』は笑いながら蘇ってくるのだった。

 そしてそれだけではなく、最初に倒した筈の『悪魔』二体も完全に回復した状態で姿を現すと、今度は聴こえなくてもいいというのに、満面の笑みを浮かべていた『ロイトープ』の笑い声がサテツの耳に入ってくるのだった。

「も、もう勘弁してくれぇっ!」

 そして再び戦闘が再開されて苦痛に歪みながらも次々と襲い掛かってくる『悪魔』の相手をさせられる『サテツ』だったが、そこに一人の人間が乱入してくるのだった――。

 …………

「セルバス殿! サテツ殿! どちらも矛を収めて頂きたい。ヌー殿達の協力もあり『ヒュウガ』殿の捕縛に成功し、今回の任務は完全に果たしたものと私は判断しました!!」

「ミスズ殿……! おい『ロイトープ』! 襲わせている悪魔達を止めろ!」

「ふははは! 何を冗談を仰っているのですか、セルバス様! 先程までこの愉悦を貴方も楽しんでおられたではないですか! 我々『悪魔』の性分は『大魔王』の貴方もご存じの筈……! 私は最後まで楽しませていただきます!! さぁ、お前達、存分にやっておしまいなさい!」

「ちっ……! この馬鹿が……!」

 契約内容がどういうモノかは契約を行っている張本人同士にしか分からないが、どうやら『セルバス』と契約関係を結んでいるこの『悪魔皇帝』は、少々厄介な性格をしているようであった。

 サテツはミスズが乱入してきて口にした言葉の内容を信じられなかったが、ひとまずこの地獄のような展開は止まるかもしれないと淡い期待を抱いていた。

 しかしどうやらそう上手くはいかなかったようで、これまで以上に『悪魔』達の襲撃の激しさが増したことで脂汗を流しながら『サテツ』は舌打ち交じりに、悪魔達を返り討ちにしようと再び『魔力』を拳に込め始めた。

 ――そんな時であった。

「さぁ、ペレアータにオグルエ! さっさと倒してし……まい?」

「――貴方がた悪魔という者達は、何度でも蘇るのでしたね? それでしたらもう容赦は致しません」

 静かにミスズがそう口にしたかと思うと、得の刀に『瑠璃』を纏わせて『霞の構え』を取り始める。

 そして上位悪魔の二体が同時に『サテツ』に襲い掛かっていった瞬間、一瞬で背後からその二体の手足を吹き飛ばしたかと思うと『サテツ』の前に立ちはだかるのだった。

「なっ……! み、ミスズ……殿!?」

 『サテツ』は襲撃に備えて構えた拳を止めて、驚いた様子で敵である筈の妖魔退魔師の副総長の小柄な背中を見るのだった。

「ギッ……!!」

 手足を跳ね飛ばされた上位悪魔達は、辛そうに顔を歪めながらもミスズを睨みつけていた。

「おい……、分かっただろ? そいつらの手足は俺が治してやるからもうやめとけ。その人は今の俺や、てめぇ如きが相手に出来る相手じゃねぇんだ。まだやるっていうならもうてめぇとの契約を切るぞ? てめぇに名付けを行っているのは俺だ。その俺が契約を切るって事がどういう事か分からねぇお前じゃねぇだろ?」

「わ、分かりました……。セルバス様の言う通りにします。お、お許しください……!」

 『悪魔皇帝』の『ロイトープ』はそう告げると、一斉にこの場の悪魔達の姿が消えていき、その場には『ロイトープ』と、先程の上位悪魔二体だけが残されるのだった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...