1,412 / 1,915
サカダイ編
1395.戦いたくのない相手
しおりを挟む
圧倒的な力を以てランク『8』の妖魔である『黄雀』を倒したヌーだったが、倒した瞬間からもうその笑みは消えて自身が放った『禍』の『魔法』の黒い球体が消える瞬間を眺めていた。
(やはり全力で『禍』を放てば相当な魔力の消費を感じられるな。戦闘中に使うならやはり弱らせてから使う以外にないか。使い勝手を考えるならば『禍』よりは、やはり『闇の閃日』だな……。さっきの野郎はこの世界でも相当な実力者のような口ぶりだった。それでも実際に目の当たりにした感覚的には『闇の閃日』と『天雷一閃』を効率よく当てる事が出来れば十分倒せる相手だった。今の俺が『禍』を全力で放つ必要性がある奴はそうそういないと見ていいだろう)
大魔王『ヌー』はこの世界に来てから大きく変わった点がある――。
それはもちろん強さという一点も変わったといえる点だが、それ以上に変わった点というのは『ヌー』自身に驕りがなくなった事であった。
これまでならば『黄雀』を圧倒的な強さで屠った時点で満足していたところだろうが、今のヌーは勝負を終えて直ぐに自分の勝ち方に対して反省点を見つけて結論を出している。
それはこの世界に来た事で周囲のレベルの高さを知った事で『ヌー』自身が反省を必要と考えるようになったからであるといえよう。
この世界に来る前もソフィを『仮想敵』とするようになってからは、それまでのヌーとは一新するような反省を行ってきてはいたが、この世界に来てからは明確にやる事を覚えたようで、これまでとは『反省』の仕方が変わっていた。
ヌーがこれまでよりも強くなる為に必要な『反省』の仕方を学んだ証拠である。
『黄雀』を倒した事で『魔神域魔法』のより精密な魔力の使い方を覚えたヌーは、今後は戦闘の中で『魔神域魔法』をより効率的に、そしてその効率の中にも『最善』を求めるようになっていくだろう。
――今、大魔王『ヌー』は恐るべき速度で強くなっている最中である。
そしてその事をヌー自身が理解しているという事が重要な点であった。
また一つ『武器』を携える事に成功したヌーは、自身が定めた『仮想敵』の居る頂を見据えながら強くなろうと考えている。
そしてこれからも大魔王『ヌー』は強くなり続けていくだろう。
彼の見据える先に居る『アレルバレル』の世界最強の大魔王『ソフィ』が居る限り――。
……
……
……
『黄雀』と大魔王『ヌー』がまだ戦っている頃、少し離れた場所で『ヒュウガ』と『ミスズ』も戦闘態勢に入りかけているところであった。
――『妖魔退魔師』の多くの隊士を束ねる立場にある副総長『ミスズ』。
そのミスズが戦闘態勢に入ろうとしているところをみた『ヒュウガ』は舌打ちをしながら眺めていた。
こうなってしまった以上は、この化け物である『ミスズ』と戦う以外に選択肢は残されてはいないだろう。
しかし『ヒュウガ』にとっては、このミスズと戦う事は是が非でも避けたい事なのであった。
ハッキリと言って『ヒュウガ』にとっては『ミスズ』の存在は、あの袂を分かつ事となった『妖魔召士』の暫定の長であった『ゲンロク』と戦う事よりも厄介な事だと思っているからである。
ゲンロクも『妖魔召士』組織に所属する『妖魔召士』の中でもズバ抜けた『魔力』を有しているが、戦闘ともなれば『ヒュウガ』もまたそのゲンロクとある程度は渡り合える事が出来る。
ゲンロクもヒュウガも『最上位妖魔召士』と呼ばれる程の膨大な『魔力』を有しており、互いに『式』を必要とせずに自らの『魔力』を使った『捉術』を主戦場とする戦い方に秀でている。
素の『魔力値』が高いという事は、その『魔力』を活かした戦い方を可能とするという事であり、それは『捉術』一つを取っても『最上位妖魔召士』とその他の『妖魔召士』達とでは大きな差が生じるのである。
当代の『妖魔召士』組織に所属する『妖魔召士』で『最上位妖魔召士』として活動を行っている者は『ゲンロク』『ヒュウガ』『エイジ』『イダラマ』の僅か四人だけであった。
そして妖魔ランクが『8』以上の妖魔と直接戦える『妖魔召士』は、この『最上位妖魔召士』達だけとされているのだが、今の目の前に居る『ミスズ』という『妖魔退魔師』もまた、そのランク『8』の妖魔と身一つで戦える存在なのである。
これまでは『妖魔召士』と『妖魔退魔師』の組織同士で争いがなかった為に、直接『妖魔召士』と『妖魔退魔師』が手を合わせる事はなかったが、互いに間接的に高ランクの妖魔と渡り合ってきた者同士である。
つまり直に戦えばある程度はどうなるかが予想がつくというものであった。
ヒュウガが『ミスズ』と戦いたくない最大の理由とは、そのランクが『8』に到達している妖魔達に対して『魔力』ではなく、物理的に渡り合えるという点にあった。
何故なら、ランク『8』の妖魔達の持つ『魔力値』と、ヒュウガのような『最上位妖魔召士』達の持つ『魔力値』はそこまで大差がないのである。
つまり『魔力』を主体にして戦う『妖魔召士』である『ヒュウガ』にとっては、その『魔力』を使った戦いを行うにしても、ある程度は使う『捉術』の種類を絞らなければ、ミスズには通用しないだろうと予測付いているといえるのであった。
確かに実際に手を合わせてみないことには、本当に通用するかどうかは分からない。
しかし一つ一つ試していく余裕がある筈もなく、命のやり取りを行う以上は隙の少ない攻撃を使って臨機応変に戦いを強いられる事になるのは間違いない。
他の『妖魔退魔師』達が相手であっても、決して余裕をもって戦えるというわけではないが、それでもこの『ミスズ』と『シゲン』の両名だけは直接戦いたくはないと、ヒュウガは常日頃思っていたのだが。
その日が遂に来てしまったヒュウガであった――。
(やはり全力で『禍』を放てば相当な魔力の消費を感じられるな。戦闘中に使うならやはり弱らせてから使う以外にないか。使い勝手を考えるならば『禍』よりは、やはり『闇の閃日』だな……。さっきの野郎はこの世界でも相当な実力者のような口ぶりだった。それでも実際に目の当たりにした感覚的には『闇の閃日』と『天雷一閃』を効率よく当てる事が出来れば十分倒せる相手だった。今の俺が『禍』を全力で放つ必要性がある奴はそうそういないと見ていいだろう)
大魔王『ヌー』はこの世界に来てから大きく変わった点がある――。
それはもちろん強さという一点も変わったといえる点だが、それ以上に変わった点というのは『ヌー』自身に驕りがなくなった事であった。
これまでならば『黄雀』を圧倒的な強さで屠った時点で満足していたところだろうが、今のヌーは勝負を終えて直ぐに自分の勝ち方に対して反省点を見つけて結論を出している。
それはこの世界に来た事で周囲のレベルの高さを知った事で『ヌー』自身が反省を必要と考えるようになったからであるといえよう。
この世界に来る前もソフィを『仮想敵』とするようになってからは、それまでのヌーとは一新するような反省を行ってきてはいたが、この世界に来てからは明確にやる事を覚えたようで、これまでとは『反省』の仕方が変わっていた。
ヌーがこれまでよりも強くなる為に必要な『反省』の仕方を学んだ証拠である。
『黄雀』を倒した事で『魔神域魔法』のより精密な魔力の使い方を覚えたヌーは、今後は戦闘の中で『魔神域魔法』をより効率的に、そしてその効率の中にも『最善』を求めるようになっていくだろう。
――今、大魔王『ヌー』は恐るべき速度で強くなっている最中である。
そしてその事をヌー自身が理解しているという事が重要な点であった。
また一つ『武器』を携える事に成功したヌーは、自身が定めた『仮想敵』の居る頂を見据えながら強くなろうと考えている。
そしてこれからも大魔王『ヌー』は強くなり続けていくだろう。
彼の見据える先に居る『アレルバレル』の世界最強の大魔王『ソフィ』が居る限り――。
……
……
……
『黄雀』と大魔王『ヌー』がまだ戦っている頃、少し離れた場所で『ヒュウガ』と『ミスズ』も戦闘態勢に入りかけているところであった。
――『妖魔退魔師』の多くの隊士を束ねる立場にある副総長『ミスズ』。
そのミスズが戦闘態勢に入ろうとしているところをみた『ヒュウガ』は舌打ちをしながら眺めていた。
こうなってしまった以上は、この化け物である『ミスズ』と戦う以外に選択肢は残されてはいないだろう。
しかし『ヒュウガ』にとっては、このミスズと戦う事は是が非でも避けたい事なのであった。
ハッキリと言って『ヒュウガ』にとっては『ミスズ』の存在は、あの袂を分かつ事となった『妖魔召士』の暫定の長であった『ゲンロク』と戦う事よりも厄介な事だと思っているからである。
ゲンロクも『妖魔召士』組織に所属する『妖魔召士』の中でもズバ抜けた『魔力』を有しているが、戦闘ともなれば『ヒュウガ』もまたそのゲンロクとある程度は渡り合える事が出来る。
ゲンロクもヒュウガも『最上位妖魔召士』と呼ばれる程の膨大な『魔力』を有しており、互いに『式』を必要とせずに自らの『魔力』を使った『捉術』を主戦場とする戦い方に秀でている。
素の『魔力値』が高いという事は、その『魔力』を活かした戦い方を可能とするという事であり、それは『捉術』一つを取っても『最上位妖魔召士』とその他の『妖魔召士』達とでは大きな差が生じるのである。
当代の『妖魔召士』組織に所属する『妖魔召士』で『最上位妖魔召士』として活動を行っている者は『ゲンロク』『ヒュウガ』『エイジ』『イダラマ』の僅か四人だけであった。
そして妖魔ランクが『8』以上の妖魔と直接戦える『妖魔召士』は、この『最上位妖魔召士』達だけとされているのだが、今の目の前に居る『ミスズ』という『妖魔退魔師』もまた、そのランク『8』の妖魔と身一つで戦える存在なのである。
これまでは『妖魔召士』と『妖魔退魔師』の組織同士で争いがなかった為に、直接『妖魔召士』と『妖魔退魔師』が手を合わせる事はなかったが、互いに間接的に高ランクの妖魔と渡り合ってきた者同士である。
つまり直に戦えばある程度はどうなるかが予想がつくというものであった。
ヒュウガが『ミスズ』と戦いたくない最大の理由とは、そのランクが『8』に到達している妖魔達に対して『魔力』ではなく、物理的に渡り合えるという点にあった。
何故なら、ランク『8』の妖魔達の持つ『魔力値』と、ヒュウガのような『最上位妖魔召士』達の持つ『魔力値』はそこまで大差がないのである。
つまり『魔力』を主体にして戦う『妖魔召士』である『ヒュウガ』にとっては、その『魔力』を使った戦いを行うにしても、ある程度は使う『捉術』の種類を絞らなければ、ミスズには通用しないだろうと予測付いているといえるのであった。
確かに実際に手を合わせてみないことには、本当に通用するかどうかは分からない。
しかし一つ一つ試していく余裕がある筈もなく、命のやり取りを行う以上は隙の少ない攻撃を使って臨機応変に戦いを強いられる事になるのは間違いない。
他の『妖魔退魔師』達が相手であっても、決して余裕をもって戦えるというわけではないが、それでもこの『ミスズ』と『シゲン』の両名だけは直接戦いたくはないと、ヒュウガは常日頃思っていたのだが。
その日が遂に来てしまったヒュウガであった――。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる