最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
1,411 / 1,966
サカダイ編

1394.大魔王ヌーの新たな境地

しおりを挟む
 『魔神級』に大魔王ヌーが至った事によって、夢想する『理想』の強さの高さを知る。その彼が思う頂に居る存在――。

 ――大魔王『ソフィ』という最高にして最強の存在が君臨する頂。

 大魔王『ヌー』は、大魔王『ソフィ』の居る頂の高さを『成長』する事で知り、そこに至る為に必要な『三色併用』という『成長』を促す『武器』と、その『武器』の仕組みである『瑠璃るり』という『青』の原理。

 そして『紅』という魔族が最初に覚える事となる『オーラ』を潤滑油じゅんかつゆにする事によって組み合わせる事で新たな『』を得た。

 ――彼の目指す頂の高さと、そこへ向かう為の手立て。

 そしてそこを目指す為に必要な『潜在能力』に『成長』の一途を支える『武器』。

 その全てを携えた彼の準備は、全てが整ったといえるだろう。

 ――さぁ、後は登るだけだ。大魔王『ソフィ』の居る『いただき』に――。

 単に『紅』というオーラの『練度』を1.7にする事が重要なのではない。何故1.7にする必要があったのか。

 そしてその『紅』という『オーラ』の潤滑油を注す必要性が示す『瑠璃』という『青』の極地――。

 『魔族』という種族と『ノックス』の世界の『技法』。

 その組み合わせは、果たして本当に偶然だったのだろうか。まるでこの『魔族』の為にあったような『青』の完成形は魔族が扱う『紅』の『オーラ』によって真の意味で完成する。

 ――紅『1.7』 青『5.0』からなる ――二色の併用。

 そしてそこに金色が交わる事で『柘榴色ざくろいろ』と『瑠璃色るりいろ』の併用のオーラは更に輝きを増して『三色併用』に至る。

 ――カチリとヌーの中で音が鳴った気がした。

 大魔王『ヌー』の中でこれまで閉ざされていた扉が開かれて、貯蔵されていた魔力が全て部屋の中から溢れ出て、ヌーの体中を駆け巡る感覚が伝わっていくのであった。

「ふ、ふふっ……、フハハハ!!」

 大魔王『ヌー』の持つ本来の感性と、相反する彼の持つ冷静沈着な理性。

 何処までも迸る『潜在する魔力』を一瞬でその全てを制御する事の出来る全能感。

 信じられない程の膨大な魔力を手にしたヌーだが、その全ての魔力の細部に至るまでを完全に掌握していた。

 このヌーの限界をまた一つ乗り越えた感覚は、過去に大魔王『シス』も同一の経験を行った事があった。

 それは『シス』の元を離れようと『ユファ』が、最後の挨拶を『シス』にしようと姿を見せた時の事である。

 『代替身体だいたいしんたい』の身体から本来の『災厄の大魔法使い』である大魔王『ユファ』の姿で『シス』の元を訪れた時に、シスは『潜在する力』の一部を開放して、強引に『ユファ』の『概念跳躍アルム・ノーティア』を膨大な『魔力』を用いて強制解除を行い、そして『ユファ』を動けなくさせたのだ。

 あの時の『シス』もまた一時的に『魔神級』へと変貌を遂げた大魔王『シス』となっていたが、その時のシスはまだ本来のその『力』に振り回されてしまっていて、全てを完全にコントロールする事は出来てはいなかった。

 しかし今の『ヌー』はその時の『シス』の『魔神級』の状態を上回っている状態で、更に完全に自分の思い通りに全ての『魔力』のコントロール』が行えているのである。

 ――どちらの方が『魔力』が上なのかという話をしているのではなく、このヌーの凄さを表すとするならば、その示すモノに対して最大限度の掌握を可能としているのは、この状態に至る理由ともなった『武器』となる全ての『オーラ』『魔力』『潜在能力』を完璧に管理下に置いて、思い通りにコントロール出来ているという事なのである。

 当然『黄雀こうじゃく』はこの今のヌーの魔力を感知出来ている。だからこそ彼もまた激昂している状態から、普段通りの冷静な状態に戻れたのであった。

 今の大魔王『ヌー』の纏う『三色併用』が齎している膨大な『魔力』に『黄雀こうじゃく』が驚いていると、そこにヌーが笑みを浮かべながら『黄雀こうじゃく』に手を翳し始めた。

「むっ!?」

「さて、試させてもらうか……」

 『黄雀こうじゃく』はヌーに手を向けられて訝しそうに眉を寄せていたが、次の瞬間に『ドンッ!』という衝撃音と共に、その場から強引に吹き飛ばされてしまうのであった――。

「なっ!?」

 『加護の森』の上空を強引に吹き飛ばされた『黄雀こうじゃく』は、森の奥側の出口付近に張られている『結界』まで一気に吹き飛ばされてしまうのだった。

 何とか『結界』の外側へと出る前に『黄雀』は上空で態勢を戻す事に成功したが、もう前を向き直す瞬間には『ヌー』が目の前にまで迫ってきていた。

「ば、馬鹿な……! く、クソッ!!」

「はっ! 逃すかよ!」

 迫ってきたヌーに悪態をついた『黄雀こうじゃく』がその場から強引に離れようとしたところに、今度はヌーが真下に向けて手を振り下ろした。

 直接ヌーが『黄雀こうじゃく』を触ったわけでもないというのに、可視化出来る程の『魔力』を強引にぶつけられた『黄雀こうじゃく』は、そのヌーの思うがままに身体を支配されたかの如く動かされて猛速度で落とされたかと思うと、地面に激突するのだった。

「さっさと動かねぇと、痛い目を見るぜ?」

 ――魔神域魔法、『闇の閃日ダーク・アナラービ・フォス』。

 ――魔神域魔法、『天雷一閃ルフト・ブリッツ』。

 恐るべき速度で放たれた閃光と雷光が『魔力の檻』というべき『ヌー』の放った衝撃波の後を追うように、空から降り注がれていく。

 その二つの魔法もまた、これまでの『神域』程度の魔法とは威力が異なっていた――。

 大魔王『ヌー』はまだ全然本気ではないが、その放たれた二つの『魔法』は『魔神域』に到達しており、あの『リラリオ』の世界でソフィが直接戦った『代替身体だいたいしんたい』の『レキ』程度の耐魔力であれば、瞬時に粉々にしてしまえる程の『魔力』が込められていた。

「な、舐めるなぁっ!! こ、この程度でこの俺を殺れるとは思わぬ事だ 小童がぁっ!!」

 流石ランク『8』の妖魔だけあって、全く本気ではないとはいっても『魔神域』に到達している大魔王『ヌー』の無詠唱で同時に放たれた魔法をまともに受けて、甚大なるダメージを負ってはいるが、即座に絶命をするでもなく上空へと舞い戻ってくるのであった。

 近くまで『黄雀』の接近を許したヌーだが、全く焦らずに腕を組んだまま笑みを浮かべている。

 ――そしてお返しとばかりに今度は『黄雀こうじゃく』が攻撃を放った。

 その攻撃は幾度となく敵を葬ってきた絶大な力を持った神通力と呼べる程の恐ろしい『呪詛』であった。

 あの『妖魔退魔師』の『カヤ』を一瞬で止めてみせたその恐るべき『呪詛』が大魔王『ヌー』に襲い掛かる。

 ――しかし。

「残念だったなぁ。そんなモン全く効かねぇよ、ゴミ屑!」

「そ、そん……なっ、ばっ……!?」

 『そんな馬鹿な』と叫ぼうした『黄雀こうじゃく』だったが、再びヌーに手を翳された瞬間に『黒い球体』が出現して、そのまま驚いた顔を浮かべていた『黄雀こうじゃく』は呑み込まれてしまうのだった。

「くたばりやがれっ!!」

 ――魔神域魔法、『エビル』。

 先程の『魔神域』の魔法とは違って、今度こそ大魔王『ヌー』のの『』によって『黄雀こうじゃく』は完全にこの世から消し去られてしまうのだった。

「クックックック! 馬鹿めが! これ程までに俺の『魔力』が上がっているという事は、同様に『耐魔力』もこれまでとは比べもんにならねぇほど上がっているという事だ。てめぇ如きのな『魔力』でもう、俺をどうこう出来るわけがねぇだろうが!」

 これまで『特務とくむ』を含めた『妖魔退魔師』達を苦しめてきたランク『8』の『黄雀こうじゃく』だったが、別世界の大魔王である『ヌー』の手によって、あっさりとこの世から葬られてしまうのであった――。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【完結】追放された実は最強道士だった俺、異国の元勇者の美剣女と出会ったことで、皇帝すらも認めるほどまで成り上がる

岡崎 剛柔
ファンタジー
【あらすじ】 「龍信、貴様は今日限りで解雇だ。この屋敷から出ていけ」  孫龍信(そん・りゅうしん)にそう告げたのは、先代当主の弟の孫笑山(そん・しょうざん)だった。  数年前に先代当主とその息子を盗賊団たちの魔の手から救った龍信は、自分の名前と道士であること以外の記憶を無くしていたにもかかわらず、大富豪の孫家の屋敷に食客として迎え入れられていた。  それは人柄だけでなく、常人をはるかに超える武術の腕前ゆえにであった。  ところが先代当主とその息子が事故で亡くなったことにより、龍信はこの屋敷に置いておく理由は無いと新たに当主となった笑山に追放されてしまう。  その後、野良道士となった龍信は異国からきた金毛剣女ことアリシアと出会うことで人生が一変する。  とある目的のためにこの華秦国へとやってきたアリシア。  そんなアリシアの道士としての試験に付き添ったりすることで、龍信はアリシアの正体やこの国に来た理由を知って感銘を受け、その目的を達成させるために龍信はアリシアと一緒に旅をすることを決意する。  またアリシアと出会ったことで龍信も自分の記憶を取り戻し、自分の長剣が普通の剣ではないことと、自分自身もまた普通の人間ではないことを思い出す。  そして龍信とアリシアは旅先で薬士の春花も仲間に加え、様々な人間に感謝されるような行動をする反面、悪意ある人間からの妨害なども受けるが、それらの人物はすべて相応の報いを受けることとなる。  笑山もまた同じだった。  それどころか自分の欲望のために龍信を屋敷から追放した笑山は、落ちぶれるどころか人間として最悪の末路を辿ることとなる。  一方の龍信はアリシアのこの国に来た目的に心から協力することで、巡り巡って皇帝にすらも認められるほど成り上がっていく。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

処理中です...