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サカダイ編
1379.多勢に無勢
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「やっと追いつきましたよ『ジンゼン』様!」
「勝手に行かないでくださいよ! 我々護衛は『式』なんてモノは使えないんですからね!」
後から追いついてきた『退魔組』のヒイラギとクキの護衛剣士の『サキ』がジンゼンに向けて口を開くのだった。
「はぁ……。そうは言うがなお主ら、妖魔退魔師は人を一人運んでいようが『式』を使わずともお構いなしに尋常ならざる速度で移動をするのだから仕方がなかろう? あのまま見失っておればヒュウガ様に咎められるだけだったのだぞ?」
「うっ……。確かにそっちの方が嫌かも」
黒のツインテールが印象的な『サキ』は、舌を出して心底嫌がるような表情を浮かべるのだった。
「嫌というか、下手をすればヒュウガ様に殺されるところだったかも」
「ああ……。それも連帯責任だろうから全員やばかったかもしれないな……」
サキの言葉に頷く『ヒイラギ』と『クキ』の二人の『特別退魔士』達だった。
「ユウゲ様とはぐれたまんまで死ぬのはお断りね」
ぼそりとユウゲの護衛剣士を務める『ヤエ』が独り言ちる。
「まぁ、とりあえずここで目の前に居る『妖魔退魔師』様を皆で仕留める事が出来れば、逆にお手柄ってことでしょ? 相手は手負いを抱えながらみたいだし、さっさとやってしまいませんか?」
そして最後に『ヒイラギ』の護衛剣士である『ミナ』が得の刀を抜きながらそう口にすると、退魔組の者たちは気を引き締め直して『ナギリ』に向けて視線を送り始める。
「お前たち。やる気十分なのはいいことだが、妖魔退魔師を甘く見るなよ? 予備群や妖魔退魔師衆を相手にするような感覚でいれば、あっさりとあの世行きだという事を忘れるな」
退魔組の者たちがいつものように会話を始めた事で、ジンゼンは喝を入れるつもりでそう口にするのだった。
「分かっていますって。当然手を抜くような真似はしませんよ」
ヒイラギはそう告げると自身の『式』を使役し始める。
妖魔召士達のようなランク『5』を越える妖魔達の姿は一体も見受けられないが、それでも人型を取っているところをみると、現れた『式』達はランクが『3』を上回る者達で間違いはないだろう。
そしてこの『ヒイラギ』だけではなく、もう一人の白い狩衣を着ている男も同様に妖魔を使役し始める。
どうやらこちらの男も退魔組の『特別退魔士』なのだろう。
ヒイラギと同規模の人型の取れる妖魔が一体と、後はランク『2』以下程の妖魔を次々と使役し始めていく。
「ちっ……」
ナギリは抱えている『ヤヒコ』を床に寝かせて得の刀を抜こうかとも考えたが、この場でヤヒコを放置して戦えば必ず奴らはヤヒコを狙ってくるだろう。
動けないヤヒコを庇い戦いながら『上位妖魔召士』の『魔瞳』や『捉術』、それに退魔組の護衛剣士や『特別退魔士』をたった一人で相手にするのは現実的ではない。
仕方なくこの場は再び逃げを選択しようとナギリは踵を返して走り出すのであった。
「あ、待ちやがれ!!」
ヒイラギがそう叫ぶと、他の者達も一斉にナギリの後を追いかけ始めるのだった。
その場に残された『ジンゼン』は、再び走り出したナギリの前方に視線を送り、罠かどうかを見極めようとする。
「この先に他の仲間が待ち伏せしているような『魔力』の気配はない……か。それにこちらに追いついてくる後続の気配もない。どうやら単にこの局面を多勢に無勢と見て、闇雲に走り出しただけというわけか」
そこまで考えて独り言ちた『ジンゼン』もまた、鳥の妖魔に跨って空を飛びながら追いかけ始めるのだった。
…………
『加護の森』の中を『ヤヒコ』を抱えたまま駆けるナギリは、追ってくるジンゼン達を見て苦い表情を浮かべる。
いくら『王連』のような手に負えない高ランクの『妖魔』はいないとはいっても、人を一人抱えたままで戦力値が1000億を越えるランク『3』の妖魔や、退魔組の退魔士やその護衛を相手にするのは厳しい。
更には少し遅れる形ではあるが、ジンゼンも追ってきている。
王連を使役して魔力に余裕が残されてはいないであろうジンゼンだが、それでも一回分くらいは『ナギリ』であっても面倒だと思える程の『捉術』を使用できる状態にはあるだろうし、何より『魔瞳』が非常に厄介なのであった。
もしヤヒコが普段通りに動けているのであれば、妖魔召士の『魔瞳』を回避する事に不安はないが、この状況下であれば十分に脅威に値する。
まだもう少しであれば、このまま逃げ続ける事も十分に可能だろうが、いつまでも逃げ続けられる保証はない。
もしかすると他にも潜伏している『妖魔召士』がいるかもしれないと考えれば余裕など持てる状態にはなかった。
「くそ……! スオウ組長、早く王連を何とかしてください!」
ヤヒコを抱えたまま、王連と戦っているであろうスオウに懇願するナギリであった――。
……
……
……
「勝手に行かないでくださいよ! 我々護衛は『式』なんてモノは使えないんですからね!」
後から追いついてきた『退魔組』のヒイラギとクキの護衛剣士の『サキ』がジンゼンに向けて口を開くのだった。
「はぁ……。そうは言うがなお主ら、妖魔退魔師は人を一人運んでいようが『式』を使わずともお構いなしに尋常ならざる速度で移動をするのだから仕方がなかろう? あのまま見失っておればヒュウガ様に咎められるだけだったのだぞ?」
「うっ……。確かにそっちの方が嫌かも」
黒のツインテールが印象的な『サキ』は、舌を出して心底嫌がるような表情を浮かべるのだった。
「嫌というか、下手をすればヒュウガ様に殺されるところだったかも」
「ああ……。それも連帯責任だろうから全員やばかったかもしれないな……」
サキの言葉に頷く『ヒイラギ』と『クキ』の二人の『特別退魔士』達だった。
「ユウゲ様とはぐれたまんまで死ぬのはお断りね」
ぼそりとユウゲの護衛剣士を務める『ヤエ』が独り言ちる。
「まぁ、とりあえずここで目の前に居る『妖魔退魔師』様を皆で仕留める事が出来れば、逆にお手柄ってことでしょ? 相手は手負いを抱えながらみたいだし、さっさとやってしまいませんか?」
そして最後に『ヒイラギ』の護衛剣士である『ミナ』が得の刀を抜きながらそう口にすると、退魔組の者たちは気を引き締め直して『ナギリ』に向けて視線を送り始める。
「お前たち。やる気十分なのはいいことだが、妖魔退魔師を甘く見るなよ? 予備群や妖魔退魔師衆を相手にするような感覚でいれば、あっさりとあの世行きだという事を忘れるな」
退魔組の者たちがいつものように会話を始めた事で、ジンゼンは喝を入れるつもりでそう口にするのだった。
「分かっていますって。当然手を抜くような真似はしませんよ」
ヒイラギはそう告げると自身の『式』を使役し始める。
妖魔召士達のようなランク『5』を越える妖魔達の姿は一体も見受けられないが、それでも人型を取っているところをみると、現れた『式』達はランクが『3』を上回る者達で間違いはないだろう。
そしてこの『ヒイラギ』だけではなく、もう一人の白い狩衣を着ている男も同様に妖魔を使役し始める。
どうやらこちらの男も退魔組の『特別退魔士』なのだろう。
ヒイラギと同規模の人型の取れる妖魔が一体と、後はランク『2』以下程の妖魔を次々と使役し始めていく。
「ちっ……」
ナギリは抱えている『ヤヒコ』を床に寝かせて得の刀を抜こうかとも考えたが、この場でヤヒコを放置して戦えば必ず奴らはヤヒコを狙ってくるだろう。
動けないヤヒコを庇い戦いながら『上位妖魔召士』の『魔瞳』や『捉術』、それに退魔組の護衛剣士や『特別退魔士』をたった一人で相手にするのは現実的ではない。
仕方なくこの場は再び逃げを選択しようとナギリは踵を返して走り出すのであった。
「あ、待ちやがれ!!」
ヒイラギがそう叫ぶと、他の者達も一斉にナギリの後を追いかけ始めるのだった。
その場に残された『ジンゼン』は、再び走り出したナギリの前方に視線を送り、罠かどうかを見極めようとする。
「この先に他の仲間が待ち伏せしているような『魔力』の気配はない……か。それにこちらに追いついてくる後続の気配もない。どうやら単にこの局面を多勢に無勢と見て、闇雲に走り出しただけというわけか」
そこまで考えて独り言ちた『ジンゼン』もまた、鳥の妖魔に跨って空を飛びながら追いかけ始めるのだった。
…………
『加護の森』の中を『ヤヒコ』を抱えたまま駆けるナギリは、追ってくるジンゼン達を見て苦い表情を浮かべる。
いくら『王連』のような手に負えない高ランクの『妖魔』はいないとはいっても、人を一人抱えたままで戦力値が1000億を越えるランク『3』の妖魔や、退魔組の退魔士やその護衛を相手にするのは厳しい。
更には少し遅れる形ではあるが、ジンゼンも追ってきている。
王連を使役して魔力に余裕が残されてはいないであろうジンゼンだが、それでも一回分くらいは『ナギリ』であっても面倒だと思える程の『捉術』を使用できる状態にはあるだろうし、何より『魔瞳』が非常に厄介なのであった。
もしヤヒコが普段通りに動けているのであれば、妖魔召士の『魔瞳』を回避する事に不安はないが、この状況下であれば十分に脅威に値する。
まだもう少しであれば、このまま逃げ続ける事も十分に可能だろうが、いつまでも逃げ続けられる保証はない。
もしかすると他にも潜伏している『妖魔召士』がいるかもしれないと考えれば余裕など持てる状態にはなかった。
「くそ……! スオウ組長、早く王連を何とかしてください!」
ヤヒコを抱えたまま、王連と戦っているであろうスオウに懇願するナギリであった――。
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