最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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サカダイ編

1356.性格に難のある妖魔召士

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「流石にこれだけ奴らに入り込まれてしまえば、ここに留まり続けるのも危険か」

 加護の森の奥側の洞穴の中で一人、結界を張りながら『退魔組』の者達を待ち続けていたヒュウガは、そう独り言ちるのであった。

 この暗い森の中で彼ら『妖魔召士』側だけが、一方的に『妖魔退魔師』の居場所を突き止められて、その上で多くの『妖魔召士』達の使役する『式』の戦力を仕向けられる。

 その上で『捉術』や『魔瞳』を扱える『上位妖魔召士』の同志達と共に、あの天才である『イツキ』や『王連おうれん』に『黄雀こうじゃく』を使役出来る『ジンゼン』に『キクゾウ』。

 そして彼自身が全力で戦えば、あの『妖魔退魔師』組織を壊滅させるとまではいかなくとも、今後数か月から数年の間は、甚大な被害を出させる事が出来て時間を稼げると考えていた。

 その間に総崩れとなっている『妖魔召士』組織を完全に手中に収めた上で、イツキの『煌鴟梟こうしきょう』時代の後援者団体や繋がりのある組織と協力を関係を構築して、この『ノックス』の世界を牛耳ろうと考えていた『ヒュウガ』だった。

 しかし全ての計画がオシャカになったわけではないが、それでもイツキと合流が出来なかった事は相当に痛手となってしまっているのであった。

 ここである程度は片が付くと考えていたが、イツキが居なければまず副総長のミスズや、組長格の連中を全員戦闘不能にさせることは難しいだろう。

 下手なリスクを背負いこむくらいならば、ここはもう相手にある程度の損壊を出せた時点で、この場での決着は諦めて、次の機会を待つ方が理想だと思考を到達させたヒュウガだった。

「ジンゼンと『王連』は、どれくらいの損害を出させたのでしょうか。ひとまずはここに居ても意味はありませんからね。キクゾウに待機を申しつけていた洞穴に向かい経過を聞くとしましょうか。そういえば先に合流していてもらっていた『退魔組』の彼らはもう必要ありませんね。イツキに少しでも警戒心を失くしてもらうために集まってもらいましたが、合流出来なさそうならば、もう役に立ちそうも無いですし……。この森で少しでも役立ってもらってから居なくなってもらいましょうか」

 ヒュウガは同志となれる、ある程度役に立つ者達にはそれなりの尊重をするが、自分の理想に届かない中途半端な戦力の役に立たない者達に関しては、使えるだけは使っておいてその後は使い捨ててしまおうと考える残虐な『妖魔召士』のようであった。

 しかし今の『ノックス』の世界に生きる『妖魔退魔師』や『妖魔召士』達の考え方では、このヒュウガの考え方は残酷でどうしようもないクズと考えるだろうが、本来の『妖魔召士』とは今のこの『ヒュウガ』の合理性を最優先に考えて、妖魔を退治したり使役したりする事で、世に生きる人間達を守る事を最優先に考えるように教育されてきている。

 確かにヒュウガ自体の性格も決して褒められるようなものではないが、妖魔から人間を守れるのならば、同じ組織に居る仲間を犠牲にしても良しと考える者達なのであった。

 つまりこのヒュウガの考え方が妖魔に対して向いている時に限った話ならば、一概に間違っている考えともいえずに本来の『妖魔召士』達の考え方としては至極当然といえた。

 但し今回の場合は私情が多く含まれている上に対象は妖魔ではなく、妖魔退魔師が相手なのだから、結局は彼に問題があるという事に関しては反論の余地もなく、また否めないのであるが――。

 今後の『退魔組』に対しての措置を考えながらキクゾウが居るであろう洞穴の元へ向かったヒュウガだが、実際にその洞穴の中にまで彼が辿り着いた時に、その場に居る筈のキクゾウの姿はなく、この周囲に近づけさせないように『王連』を使役している筈であろう『ジンゼン』が居たことで、ヒュウガは目に見えて驚く事になるのであった。

 …………

 洞穴の中で『退魔組』の『特別退魔士とくたいま』達が、緊張感に包まれながらもある程度はリラックスして会話を行っているのを聴きながら、自身の魔力の回復に努めていた『ジンゼン』は、ようやく『王連』を少しの間であれば、再び使役が出来るくらいにまで『魔力』が回復してきたのを感じて息を吐いた。

 しかしそこにまさかの人物が登場した事で、ほっとしていた彼は慌てて立ち上がると、洞穴の入り口へと駆け始めるのだった。

 ……
 ……
 ……
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