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サカダイ編

1346.キクゾウの決断と、気になる事

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 キクゾウは『王連』を使役出来るジンゼンを休ませる事にして、代わりに自分が動く事に決めるのだった。

 ヒュウガの命令では『王連』をここで使って、妖魔退魔師達の動きを妨げようという狙いだろうが、今の魔力が枯渇しかかっているジンゼンを無理に使ったところで、大した成果をあげる前に取り返しのつかない事態になると判断して決断を行ったようである。

「森の入り口から中央付近までは、もう妖魔退魔師達が多く入り込んできている。ここまでは出来るだけ近づけないように私も立ちまわるつもりだが、お主らも警戒だけは怠らぬようにな?」

 キクゾウはジンゼンにではなく、同じ洞穴の中に居てこちらを窺っていた『ヒイラギ』や『クキ』達に視線を向けながら告げるのだった。

「は、はい!」

「わ、分かりました!」

 ヒイラギ達からの返事を聞いたキクゾウは、そのまま洞穴から出ようと入り口に歩き始めたが、そこで再び足を止めたかと思うとヒイラギ達の方を振り返った。

「確か『特別退魔士とくたいま』はもう一人居なかったか?」

 周りには『ヒイラギ』と『クキ』以外にも『退魔組』の人間はいるようだが、恰好から彼女達は護衛の者達だろうと推測してキクゾウはそう言ったようである。

「ゆ、ユウゲ殿の事でしたら、門前で別れたっきりでして。現在はサテツ様と行動を共にして、こちらへ向かってこられているかと」

「確かお前達は『ケイノト』の門前で『退魔組』を見張っていた『隻眼』達を更に、監視をするように告げられていたのだったな? そのユウゲとかいう退魔士は、一体任務中に何の用事でサテツ殿の元へ向かったのだ?」

「そ、それは……」

 普段であれば自分程度の存在に声を掛けられる事もない程の上役である『キクゾウ』という『妖魔召士』の最高幹部に緊張しているのか、頭の中が真っ白になっているヒイラギは、隣に居る同じ仲間達に理由を聞くのであった。

 そしてそんなヒイラギの代わりに『ヤエ』というユウゲの護衛を務めていた女性が口を開くのだった。

「何やら『隻眼』が集まっている妖魔退魔師の元から離れて、一人南の森へと向かったのでその報告を行いにサテツ様の元に向かったのです。その後直ぐにキクゾウ様が『式』になされている妖魔の『黄雀』にこちらへ向かうように告げられた事で、そのまま合流出来ずじまいでした」

「ああ……。そういう事か、間が悪かったのだな」

(門前での一戦が始まる前に移動していたならば、あれから相当な時間が経っている筈だ。もうとっくに森に辿り着いていてもおかしくはないのだがな。サテツ殿は直情すぎる性格だが、戦闘面に関して言えば相当に出来る男の筈だ。流石に『退魔組』を見張っていたであろう連中……。予備群や妖魔退魔師衆にやられるような事は無いと思うが、見張りの人数が多かったのだろうか? こうなると分かっていたならば『黄雀』に奴らを片付けさせておけばよかったか)

「まぁ理由は分かった。お主達はジンゼンの魔力が回復するまでここを頼むぞ」

「「分かりました!」」

「それとこちらの戦闘が激化している間に、サテツ殿や『退魔組』の者達が姿を見せるような事があれば、この先の洞穴で待機をしている『ヒュウガ』様に報告をしてくれ」

 ジンゼンを含めたこの場に居る者達は、キクゾウの言葉に首を縦に振って頷くのであった。

「じゃ、頼んだぞ」

 そう告げて今度こそ『ジンゼン』達の居る洞穴から出て行くキクゾウであった。

「お前。よくキクゾウ様相手にあんな風に、緊張せずに話が出来るな」

「え? え、ええ……。ゆ、ユウゲ様の名誉の為に、が、頑張りました!」

 そう言って『ヤエ』は顔を真っ赤にして、ヒイラギに説明をするのであった。

「ヤエは『ユウゲ』様が大好きだもんねぇ」

「は、はぁ? ち、違うわよ。私はユウゲ様の護衛を務めているから……」

「はいはい。今更隠さなくてもいいから」

 いつものように『退魔組』の『特別退魔士とくたいま』達が会話をするその様子を聴きながら、ジンゼンは横になって体力と魔力の回復に努めるのだった。

 ……
 ……
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