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サカダイ編

1341.セルバスの悪魔召喚

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「ようやく来たか」

 その大男は腕を組んで森の入り口に立っていた。

 どうやらその口ぶりからここに人がやってくる事を男は前もって分かっていたようであり、退魔組の者達はその大男の凄みを肌で感じたようで、怯んだ様子を見せるのであった。

「な、何なんだお前は! 俺達は退魔組の退魔士だぞ!」

 確かに彼らは退魔組に所属する退魔士で間違いはないが、そのほとんどが部屋住みと呼ばれる若い衆で、実際には大した事はない。

 この中で一番力を有している者でも精々が、ランク『1』の妖魔を使役出来る程度であった。

「退魔組……か」

 森に現れた男達から『退魔組』という言葉を聞いたセルバスは、どうやらこの連中が偶然この森に来たのではなく、直接の関係はないにしても『ヒュウガ一派』と繋がりはあると判断するのだった。

「それで?」

「は……?」

「お前らが退魔組の退魔士だという事は分かった。だからそれが何だとこっちは聞いてんだよ」 

「「!?」」

 この『ケイノト』近辺で『退魔組』の名を出せば、どれだけ凄みの有る奴らでも慌てて道を空ける筈だというのに、この体格の大きな男は怯える様子も見せずに堂々としているために、彼らはハッタリが通用しないと知って互いに仲間同士で顔を見合わせるのだった。

 そしてその多く居る退魔組の中の一人が、セルバスに向けて口を開いた。

「う、嘘じゃねぇぞ? こ、これをみろ!」

 そう言って男は懐から式札を取り出して放り投げた。
 式札はヒラヒラと宙を舞ったかと思うと、ボンッという音と共に契約している妖魔が姿を見せるのであった。

 【小鬼 魔力値:20 戦力値120万】。

「ギギギギ……」

 下位の退魔士によって使役された小鬼の妖魔だが、どうやら人型も取れないランク『1』の妖魔であった。

 当然この退魔士は『下位』に位置する退魔士であり、妖魔と契約は行える魔力は有しているようだが『ゲンロク』が編み出した『禁術』などを扱える程までではないため、当然通常の『妖魔』を使役する事しか出来ないようであった。

「俺がこの世界に初めて来た時に、この世界は大した事は無いと結論づけたものだが、それはこういった存在がこの世界の主軸の存在だと勘違いしたからだったのだな。ソフィの旦那と戦っていた奴らや、あの『煌鴟梟こうしきょう』のアジトでの連中を見た後だと、よく俺はこの世界を無事に生きて過ごせていたなと思えるぜ」

 退魔士達が使役した小鬼の妖魔を見ながら、セルバスはしみじみと独り言ちるのだった。

「な、何を一人でごちゃごちゃ言っていやがる! 今更妖魔を見てビビっても遅いんだよ。殺されたくなかったらさっさとそこをどきやがれ。俺達は急いでるんだよ!」

「あ?」

 セルバスが独り言を漏らし始めたのを見て、恐怖心で怯えたと勘違いをした『下位退魔士』が意気揚々とそう口にした瞬間――。

 セルバスは明確な殺意を孕んだ視線をその『式』を使役した退魔士に放つのだった。

「うっ!?」

 現在のセルバスは『代替身体』の身ではあるが、それでも元々は『煌聖の教団こうせいきょうだん』の最高幹部だった大魔王である。その堂に入った殺意の視線でいとも容易く退魔士の人間の動きを硬直させるのだった。

 ――そして次の瞬間。

 セルバスはその場から忽然と姿を消したかと思えば、小鬼の目の前に一瞬で移動する。

「ギ……!?」

 退魔士に使役された小鬼の妖魔は、いきなり目の前に現れたセルバスに驚きの声をあげた。
 そして無言でセルバスは右手に『青』を纏って『魔力』を集約させると、思いきり小鬼の腹に突き入れてみせる。

「ギ……、ギギァ……!」

 ぼんっという音と共に、出て来た時と同じように妖魔は『式札』に戻されてヒラヒラと宙を舞っていき、やがて地に落ちた。

「えっ……!?」

「「う、うわああっっ!!」」

 退魔組の若い衆達は、目の前で使役された妖魔がやられたのを見て、慌ててセルバスから逃げ出そうと、来た道を一目散に駆けて行った。

 そして『下位』の退魔士だけがその場に取り残されて、足をガクガクと震わせながらセルバスを見続ける。

「あーめんどくせぇ。ミスズ殿にこっちは任せろと言った手前、一人も逃がすわけにはいかねぇんだよな」

 散っていく人間達の背中を見ながら、セルバスは溜息を吐いてそう告げた。

「うっ……、ううっ!」

「まぁ、とりあえずお前はそこで寝てろや」

 キィイインという音と共にセルバスの眼光が鋭く金色に光り輝くと、身体を震わせて怯えていた退魔士は白目を剥いてその場に倒れるのだった。

「ちっ! 散り散りに逃げやがった連中を探すのは骨だ。仕方ねぇな、俺もを呼び出すか」

 そう言うとセルバスは魔力回路から『魔力』を放出すると同時に『詠唱』を始めると、この世界とも『アレルバレル』の世界とも違う世界の文字の『発動羅列』が刻まれた魔法陣が出現する。

「出ろ」

 そしてその魔法陣に向けて『魔力回路』から放出して『スタック』させていた『魔力』が、魔法陣に吸い込まれていくと同時に『魔法陣』は高速回転を始めて周囲を光が包み込む。

 ――やがて、その光りがおさまっていき、魔法陣の中から一体の『悪魔』が出現する。

「お呼びですかな? 我が主」

 セルバスを主と呼ぶのは、こことは別世界に存在する『悪魔』で、セルバスと契約を交わして『ロイトープ』と名付けられた『悪魔皇帝デーモン・エンペラー』であった。

 【種族:デーモン族 名前:悪魔皇帝・ロイトープ(名付けネームド)年齢:7107歳
 魔力値:4400万 戦力値:5億1500万 所属:大魔王セルバスの配下】。

「ここから散り散りに逃げ出した人間どもを一人残らずここに連れてこい」

「御意」

 セルバスが命令を下すと、悪魔皇帝の『ロイトープ』は直ぐに返事をした後に『魔力』を用い始めた。
 その様子をセルバスは腕を組んで見守っていると、先程セルバスが『ロイトープ』を呼び出した時と同様に、その世界の『ことわり』が刻まれた『発動羅列』が描かれた魔法陣が出現し始める。

 『悪魔皇帝ロイトープ』による更なる配下を呼び出す『』であった――。

 そして新たに二体の『悪魔』が出現したかと思うと、直ぐにその場で跪いてセルバスと悪魔皇帝ロイトープに頭を下げるのだった。

「それでは行って参ります」

「ああ。南の方へ向かった筈だ。分かっていると思うが、誰も殺すなよ」

「お任せください」

 悪魔皇帝がそう告げると他二体の悪魔も頷いて、その場から一斉に姿を消すのだった。

 【種族:デーモン族 名前:上位悪魔・ペレアータ(名付けネームド)年齢:2522歳
 魔力値:1400万 戦力値:1億1000万 所属:『大魔王』セルバスの配下】。

 【種族:デーモン族 名前:上位悪魔・オグルエ(名付けネームド)年齢:2991歳
 魔力値:1200万 戦力値:1億1300万 所属:『大魔王』セルバスの配下】。

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