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サカダイ編

1330.ソフィを信用するキョウカ組長

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 大きく息を吐いたキョウカは刀を収める。

「どうやら貴方の言っている事に嘘はないようね。確かに私達は『妖魔退魔師』よ。ヒノエ組長もここに来ているのね? つまり貴方が抱えている『退魔組』の狩衣を着ている退魔士と一悶着があって、貴方が倒したということかしら?」

「うむ。そんなところだ。ヒノエ殿も『ケイノト』の裏路地でこやつと同じ恰好をした者と居る筈だ。どうなっておるかは見に行ってみなくては分からないがな」

「そう……。ヒノエ組長が居るのならば、このまま私達も『ケイノト』にいっても問題なさそうね」

 ソフィから視線を隣に居る男に向けながらキョウカがそう告げると、隣に居た彼女の仲間の男も神妙に頷くのであった。

「行き先が同じだというのであれば、我がお主らも連れて行ってやろう」

「え? そ、それは行き先は同じだけど。連れて行くというのはいったい……?」

「うむ。行き先が同じならばそれでよい。話すより実際に見た方が早いだろう。我に近づくとよいぞ」

 そう言ってソフィは浮いている状態から地面の上に足をつけたかと思うと、そのままキョウカ達に近づいてくる。

「きょ、キョウカ組長!」

 慌てて彼女の隣に居た隊士が、彼女の前に出てきて刀を構え始める。

「勘違いをするでない。我はお主らを傷つけるつもりはないぞ」

 そう言ってソフィは敵意がないことを示すように『オーラ』を完全に消して『通常状態』に戻る。
 バチバチと火花がオーラの至るところで弾けていたが、それすらも全て消えるのだった。

「何をするつもりかは分からないけれど、貴方は信用が出来る気がする。貴方のしようとすることを受け入れるわ」

「キョウカ組長……! わ、分かった。俺もアンタらを信用することにするよ」

 サブロウは自分の信頼する『キョウカ』組長が、目の前のよく分からない存在達を信用すると口にしたために、自分も信用することにするのであった。

「うむ。それでは我に摑まるがよい」

 おっかなびっくりとキョウカとサブロウは、ソフィの肩口の裾を掴み始める。

「それでは向かうが、魔神よお主はもう戻ってもらって構わぬよ?」

「――?」(分かった。でもまたすぐに呼んでちょうだいね?)

「うむ。今回もお主のおかげで助かったぞ。本当に感謝しておる」

「――!」(まぁ! 貴方にそう言ってもらえたら、大変気分が良いわ!)

 何を喋っているか分からないキョウカだったが、じっと魔神の方を観察し続けるが、どうやら魔神と彼に呼ばれたこの白い存在は、顔を綻ばせてソフィを見ていた。

 どうやら彼女……といっていいのかどうか分からない魔神とやらは、この青年に相当な好意を寄せているのだろうとキョウカは察する。

 そしてその魔神が嬉しそうにしながら右手を軽く上げると、何もない空にいきなり亀裂が入ったかと思うと、空とは違う真っ白い色の空間が出来上がり、そこへと入ると同時に姿が消え去るのだった。

「「なっ……!?」」

 キョウカとサブロウは信じられないものを見るような驚いた目を浮かべて、魔神が消える瞬間を見届ける。

「うむ。それでは行くが準備は良いかな?」

「え、ええ……」

 上の空でソフィに返事をするキョウカの言葉を聴いたソフィは、頷いて何やら呟き始める。

 ――「『高等移動呪文アポイント』」。

 ――次の瞬間。

 ばしゅんっという音と共に、ソフィはキョウカ達を『ケイノト』の裏路地へと運ぶのであった。

 ……
 ……
 ……

 そしてそのソフィが向かった『ケイノト』の裏路地では、既にヒノエ組長が『ユウゲ』の出した『式』を全て『式札』へと戻した後に、ゆっくりとユウゲの前まで歩いていく。

 この場では戦闘員としてはとても数えられない『ミヤジ』は、尻餅をつきながら近づいてくる『ヒノエ』を見て怯えるのだった。

「お前、まだ抵抗するか? 分かっているとは思うがお前が何を『使役』しようが、私には傷を一つもつけられねぇぜ? ただ単にお前の心証が悪くなる一方になるが、諦めきれねぇならどんどん出してくれて構わねぇよ? 全部私がたたっ斬って完膚無きまでにお前の精神を折ってやるからよ!」

 恐ろしい程の威圧を放ちながら『一組組長』である『ヒノエ』は威嚇をするように、得の刀をブンブンと振り回しながら退魔組の『特別退魔士とくたいま』であるユウゲに、そう告げるのであった。

 妖魔ランク『6』や『6.5』に達する防御力を誇る『鬼人』であっても、一刀両断にして屠る怪力を誇るヒノエは、相手が『退魔組』の『特別退魔士とくたいま』程度が契約を行える『式』程度であれば、何が出てきても一発で消し飛ばせる自信があるのであった。

「わ、分かりましたよ……。もうイツキ様も何処かへ行ってしまわれたし。あんたに俺の契約している『式』は全てやられちまって、抵抗する気は残っていませんよ」

 溜息を吐いてヒノエに諦観の意思を見せるユウゲであった。

「そうかい? まぁそれが賢明だ。逃げねぇとは思うが一応は手足を縛らさせてもらうぜ?」

「勝手にされるがよかろうて……」

 イツキの居る時とはまるっきり言葉遣いが変わり、何やら爺めいた口調になったなとばかりに『ヒノエ』は内心で考えたが、大人しく捕縛されてくれるならば何でもいいとばかりに彼らを縛り始めるのであった。

 空を何かが飛んでいるのが見えたヒノエは空を見上げる。

「おっ……! あれは!!」

 そして彼らを大人しくさせた直後、あの『イツキ』という男と共にこの場から姿を消した『ソフィ』が、あの人を運ぶ稀有な『魔法』と呼ばれる現象を表しながら、この場に飛んでくるのを見届けるのであった。
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