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サカダイ編

1325.ソフィVSイツキ2

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 ソフィに殴り飛ばされて長屋を突き破って移動させられていくイツキだが、ソフィの位置を正確に測るように視線をソフィに向け続けていたが、このままだとソフィの告げたように追い打ちを無抵抗で受けてしまうと判断したイツキは、行動を起こそうと右手で何処かを掴もうとするのだった。

 しかしそこで先程無意識に脱臼を起こした右肩を庇おうとしてしまい、慌てて左手に変えるがその僅かな時間でさえ、今のソフィからすれば大きな時間の無駄となってしまうのだった。

 壁を左手で掴んで勢いを殺そうとしたイツキの左手をがしっと掴んだソフィは、口角を吊り上げて見開いて血走った目がイツキを捉える。

 単なる人間が今のソフィを見ると戦慄してしまい、身体が強張って動きが止められてしまう程の悪魔の笑みだった。

「こ、この! 離しやがれ!」

 右手に『魔力』を集約してイツキの左手を掴んでいるソフィの顔に向けて、魔力圧をぶつけようとする。

「ふははは!! そんなモノを当てられるものなら、当ててみるがよい!」

 イツキの放った魔力圧は当然ソフィには当たらず、ドンっという音と共に長屋の壁を粉々に破壊するだけの結果となった。

「なっ!?」

 身体と身体が密着するかという程の至近距離から殺すつもりで放った『魔力波』だが、それでもソフィには当てることが出来なかった。

 そしてイツキの目の前に居るソフィの姿がぼやけ始めたかと思うと、いつの間にか自分の腕を掴んでいたソフィの手が離されていて、忽然と姿が消えてしまった。

 しかし今の一撃によってここまで吹っ飛ばされた勢いは完全に失って、両足をしっかりと空き家の長屋の地にようやく足をつけられたのだが、ソフィの姿が見えなくなったせいでイツキは全く落ち着けなかった。

「後ろか!」

 自身の背後から気配を感じたイツキは、振り返り様に再び『魔力波』を放つが、ソフィの姿は無かった。

「クックック! 残念。上だぁっ!」

 長屋の天井付近からソフィの言葉が聴こえたかと思えば、イツキの頭を押さえつけるようにソフィはイツキを地面に押し付け始める。

 地面に倒されたイツキはソフィに乗っかかられて、心底嬉しそうな表情で笑うソフィに顔を殴りつけられる。

 それも単発ではなく、本当に止むのかと思わされる程に、恐るべき速度で連続して左右から殴りつけてくるのであった。

「クックック! そらそらどうしたのだ? 徐々に力を強めて行くぞ? まずはその鼻を折り曲げてみせようか! 抵抗を見せねば顔の原型が変わってしまうぞ! ハーハッハッハ!!」

 口で煽るような言葉を出すソフィだが、先程のイツキ程の『魔力』と『オーラ』の練度を考えれば、この程度ではダメージなど大しては負わないだろうと理解した上で、早く本気になれと急かしているのだった。

 ソフィとしては早くイツキに本気になってもらって、この戦闘の全体のレベルをこんな程度ではなく、もっと上げたいと考えていたのであった。

 既にソフィも第二の形態となっており『真なる大魔王化』も果たして『三色の併用』を纏っている。イツキも『青』と『金色』を纏っていて互いに戦力値は5500億を越えているのだが、ソフィはどうやらもうこんな程度では納得出来ない程に気分が高揚してしまっていて、更なる多幸感に包まれたい、もっと痛みを与えられて倍にしてやり返したい。

 ――そして誰もが一度は抱いてきたのであろう『死』という恐怖心を自分にも与えて欲しいという欲求が、ソフィを包み込んでいくのであった。

「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 ソフィに好き勝手に顔を殴られ続けたイツキは『瑠璃』の『青』を纏っているにも拘わらず、顔は腫れあがって鼻からは出血をしてダラダラと流れていたが、戦闘前とは違って本気でソフィを殺そうと目を細めて下からソフィを殴り返した。

 ソフィも防御などお構いなしで殴り続けていたために、下から繰り出されたイツキの一撃をまともに顔に受けるのだった。

「クックック! 効かぬなぁ。お主の力はそんなものなのか? あまりガッカリさせずにさっさと本気になってくれぬか?」

 そう言ってソフィは、全体重を自身の右肘に乗せるつもりで、そしてイツキの鼻を潰すつもりで突き落とすのだった。

 イツキにとっては絶体絶命と思えるこの状況である筈だが、下に組み伏せられているイツキはほくそ笑むのだった。

 ソフィはイツキの腫らしたその顔の中の目がギラリと光ったのを見たが、すでに攻撃を行おうと行動してしまっている。止められない右手がイツキに向けて振り下ろされたその瞬間だった。

 ――、『動殺是決どうさつぜけつ』。

 密着した状態から更にソフィが肘を落とすために全体重をかけて自分に迫って来る瞬間に、イツキは強引に顔を思いきり捻ってソフィの肘を間一髪躱すと、カウンターで下からソフィの首を掴んでの『捉術そくじゅつ』を放つのであった――。
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