1,334 / 1,985
サカダイ編
1317.再びケイノトへ
しおりを挟む
「い、いつ見てもすげぇ! ほ、ほらほら、お前らこれが私が言っていた『魔法』って奴だよ! ばしゅーって飛んで行くんだよ! な? ミスズ様もあのクソガキも一瞬で消えただろう!?」
「ほ、本当に、消え、ましたね……!」
興奮気味にヒノエ組長が騒ぎ始めたかと思えば『一組』の自分の隊士達に凄いだろうと自慢を始める。
これまでヒノエ組長から話だけは聞かされていた彼らだったが、今こうして目の前で自分の目で『魔法』を確かめた事で、彼女があれだけ何度も同じ話をしたのも無理はないと考えるのであった。
「な、なんだよこりゃ……」
『煌鴟梟』の幹部であったサノスケもこの場で非現実的な光景を目の当たりにして、驚きの声をあげる。
ソフィはこれまでこの世界で一緒であった『ヌー』が、最後にセルバスに見せた友想いの言葉を思い出して満足そうな表情を浮かべていた。
(クックック! あの『死神』のテアに食事をさせようとしたり、色々と世話を焼いているのを見た時から考えていたことだが、あやつはやはり根は真っすぐでいい奴だったのだろうな。これまであの特殊な環境ともいえる『アレルバレル』の世界にある『魔界』で、戦争や戦闘に明け暮れて、裏切りや騙し打ちの連続の中に身を置いてきたことで、自分以外は信用出来ないと思うようになってしまってああいう性格になったのだろう。あやつにテアという理解者が出来たことは、奴にとっては何物にも代えがたい貴重な体験になったのだろうな)
元々ヌーは『第一次魔界全土戦争』の時から、ああいう性格で『魔界』だからとかいう理由ではなく、単に闘争心と自尊心しかないような魔族であったが、ソフィの言う通りにこの世界にきてからは彼も変わったとみて良いだろう。
――そこには確かに、少なからず『死神』の影響があることも否定は出来なかった。
「さて、それではこちらも『ケイノト』の町へ向かうが、準備はいいかな?」
ソフィが最初にシゲンの顔を見ると小さく頷くのが見えた。
「あ、ああ! ソフィ殿、いつでも飛ばしてくれて構わないぜ!? やば、緊張してきた……! 空を飛ぶ時に景色とか見れるのかな? そ、空を移動するときに、まるで泳ぐように手を伸ばした方が良いかな?」
「いや何もせずとも構わぬよ。空から地上を見下ろすことは出来るが、一瞬ではあるからそこまで景色を眺める余裕はないとは思うが……。あとは飛ぶ時に我の近くに居て貰えた方が助かる。理由は先程ヌーが言っていたように、飛ばす人数が多ければ多い程に気を付けていても魔力の余波が出るのは仕方のないことだからな」
「そ、そうか! とりあえず空から落ちるのを想像するとこえぇから、アンタにしがみついてていいか?」
どうやら余程に緊張しているのだろう。ヒノエは自分の胸を押さえながら、震えるような声でソフィに訊ねるのであった。
「うむ……。それは別に構わぬが、行き先の『ケイノト』の町の事だが、裏路地が我の『ケイノト』のイメージなのだが、そこに飛んでも構わぬだろうか?」
「ああ! ケイノトに飛んでくれるならどこでも構わねぇよ! あ、そうだ。ちょっと待ってくれ」
ヒノエは何やら思い出したとばかりに、自分の隊士達の居る方を向く。
そこにはじっとヒノエに視線を送りながら、付き従うように立っていた女性が居た。
「ヒナギク。最初に申していた通りだが、お前に本部付けの妖魔退魔師衆達の担当を任せる。それと分かっているな?」
「はい、分かっています。しかし今回も私は貴方のお傍につかせてもらえないのですね」
いつものようにヒノエが『一組』の副組長である『ヒナギク』に、本部付けの妖魔退魔師衆と予備群の管理を任せようとすると、ヒノエを責めるような鋭い言葉が投げかけられるのだった。
「いつも悪いと思ってるよ。けど今回は仕方ないだろう? あのクソガキも当たり前のように『サシャ』を連れて行きやがったし、総長は色々とやることも多くて忙しいだろうし、お前しか頼めるやつがいねぇんだ」
「私を頼りにしてくれているんですね……?」
「当たり前だろ! お前だから頼んでるんじゃねぇか!」
ヒナギクはヒノエにそう言われて嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
「分かりました。それでは後の事は私にお任せください。しっかりと見張っておきます」
「頼んだぜ?」
そう言ってヒノエはヒナギクの頭を撫でるのだった。
「お戯れを……!」
頭を撫でられたヒナギクだが、言葉ではやめるようなことを口にしたが、払いのけるような真似をせずにされるがまま顔を赤くしていた。
「よし! じゃあソフィ殿、よろしく頼むよ!」
「うむ。では此処に居る者達を連れて『ケイノト』へ向かうが、もうやり残したことや忘れ物はないな?」
ソフィの言葉に『ヒノエ』を含む『一組』の隊士達は全員が頷くのだった。
「では、行くぞ」
――「『高等移動呪文』」。
ヌーの時と同様にソフィの詠唱によって、魔法陣が高速回転を始めたかと思うと、効力を発揮してその場に居た『ケイノト』へ向かう予定の者達を飛ばすのであった。
……
……
……
「ほ、本当に、消え、ましたね……!」
興奮気味にヒノエ組長が騒ぎ始めたかと思えば『一組』の自分の隊士達に凄いだろうと自慢を始める。
これまでヒノエ組長から話だけは聞かされていた彼らだったが、今こうして目の前で自分の目で『魔法』を確かめた事で、彼女があれだけ何度も同じ話をしたのも無理はないと考えるのであった。
「な、なんだよこりゃ……」
『煌鴟梟』の幹部であったサノスケもこの場で非現実的な光景を目の当たりにして、驚きの声をあげる。
ソフィはこれまでこの世界で一緒であった『ヌー』が、最後にセルバスに見せた友想いの言葉を思い出して満足そうな表情を浮かべていた。
(クックック! あの『死神』のテアに食事をさせようとしたり、色々と世話を焼いているのを見た時から考えていたことだが、あやつはやはり根は真っすぐでいい奴だったのだろうな。これまであの特殊な環境ともいえる『アレルバレル』の世界にある『魔界』で、戦争や戦闘に明け暮れて、裏切りや騙し打ちの連続の中に身を置いてきたことで、自分以外は信用出来ないと思うようになってしまってああいう性格になったのだろう。あやつにテアという理解者が出来たことは、奴にとっては何物にも代えがたい貴重な体験になったのだろうな)
元々ヌーは『第一次魔界全土戦争』の時から、ああいう性格で『魔界』だからとかいう理由ではなく、単に闘争心と自尊心しかないような魔族であったが、ソフィの言う通りにこの世界にきてからは彼も変わったとみて良いだろう。
――そこには確かに、少なからず『死神』の影響があることも否定は出来なかった。
「さて、それではこちらも『ケイノト』の町へ向かうが、準備はいいかな?」
ソフィが最初にシゲンの顔を見ると小さく頷くのが見えた。
「あ、ああ! ソフィ殿、いつでも飛ばしてくれて構わないぜ!? やば、緊張してきた……! 空を飛ぶ時に景色とか見れるのかな? そ、空を移動するときに、まるで泳ぐように手を伸ばした方が良いかな?」
「いや何もせずとも構わぬよ。空から地上を見下ろすことは出来るが、一瞬ではあるからそこまで景色を眺める余裕はないとは思うが……。あとは飛ぶ時に我の近くに居て貰えた方が助かる。理由は先程ヌーが言っていたように、飛ばす人数が多ければ多い程に気を付けていても魔力の余波が出るのは仕方のないことだからな」
「そ、そうか! とりあえず空から落ちるのを想像するとこえぇから、アンタにしがみついてていいか?」
どうやら余程に緊張しているのだろう。ヒノエは自分の胸を押さえながら、震えるような声でソフィに訊ねるのであった。
「うむ……。それは別に構わぬが、行き先の『ケイノト』の町の事だが、裏路地が我の『ケイノト』のイメージなのだが、そこに飛んでも構わぬだろうか?」
「ああ! ケイノトに飛んでくれるならどこでも構わねぇよ! あ、そうだ。ちょっと待ってくれ」
ヒノエは何やら思い出したとばかりに、自分の隊士達の居る方を向く。
そこにはじっとヒノエに視線を送りながら、付き従うように立っていた女性が居た。
「ヒナギク。最初に申していた通りだが、お前に本部付けの妖魔退魔師衆達の担当を任せる。それと分かっているな?」
「はい、分かっています。しかし今回も私は貴方のお傍につかせてもらえないのですね」
いつものようにヒノエが『一組』の副組長である『ヒナギク』に、本部付けの妖魔退魔師衆と予備群の管理を任せようとすると、ヒノエを責めるような鋭い言葉が投げかけられるのだった。
「いつも悪いと思ってるよ。けど今回は仕方ないだろう? あのクソガキも当たり前のように『サシャ』を連れて行きやがったし、総長は色々とやることも多くて忙しいだろうし、お前しか頼めるやつがいねぇんだ」
「私を頼りにしてくれているんですね……?」
「当たり前だろ! お前だから頼んでるんじゃねぇか!」
ヒナギクはヒノエにそう言われて嬉しそうな表情を浮かべるのだった。
「分かりました。それでは後の事は私にお任せください。しっかりと見張っておきます」
「頼んだぜ?」
そう言ってヒノエはヒナギクの頭を撫でるのだった。
「お戯れを……!」
頭を撫でられたヒナギクだが、言葉ではやめるようなことを口にしたが、払いのけるような真似をせずにされるがまま顔を赤くしていた。
「よし! じゃあソフィ殿、よろしく頼むよ!」
「うむ。では此処に居る者達を連れて『ケイノト』へ向かうが、もうやり残したことや忘れ物はないな?」
ソフィの言葉に『ヒノエ』を含む『一組』の隊士達は全員が頷くのだった。
「では、行くぞ」
――「『高等移動呪文』」。
ヌーの時と同様にソフィの詠唱によって、魔法陣が高速回転を始めたかと思うと、効力を発揮してその場に居た『ケイノト』へ向かう予定の者達を飛ばすのであった。
……
……
……
0
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。
いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。
元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。
登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。
追記 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる