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サカダイ編
1297.突然のキョウカの言葉
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「だ、大丈夫……! そ、それより貴方はこのまま近くの旅籠町で休んでいなさい。私がケイノトから離れてからも貴方達は戦い続けていたのでしょう? これ以上の無理はよくない……」
そう言ってキョウカは抱いているチジクの顔を見つめるたが、その顔はヒサトから見て少し複雑そうな表情をしているように見えるのだった。
「キョウカ組長はどうなさるおつもりですか?」
「私はひとまず『ケイノト』に戻るわ。貴方達が戦った門前の様子も見ておきたいしね」
「それでしたら俺も一緒に……」
「無理は良くないって言っているでしょ? それにもう残っているとは思えないけど、まだ妖魔召士達が居るかもしれない」
それは暗に今の状況で妖魔召士に会えば、今度こそ全滅する恐れがあるとキョウカは告げているのであった。
「それでしたら余計に俺を連れて行ってください。まだあの天狗が居たとしたら、また動けなくされるかもしれな……」
そこで眼光を鋭くしたキョウカに視線を向けられたことでヒサトは口を噤むのであった。
「あの天狗にはまだ戦う意思はあるかもしれないけれど、当分戦うことは無い筈よ。天狗を使役していた『妖魔召士』は私を恐れていたからね。それに万が一にも戦うことがあったとしても、今度こそ私はあの天狗を倒して見せる。二度と動けなくなんてされないわ」
――もう、一度見たからね。
そのキョウカの視線を見ながら、直接に言葉を聞いた者であれば、この発言を強がりで言っているとは誰も思えないだろう。
どうやらキョウカは本当に『王連』の神通力に対して、もう通用しないという明確な自信を持っているようであった。
「わ、分かりました……。ではここから一番近い旅籠で休ませてもらいます」
納得はいっていないようだが、どうやらキョウカの意図を汲んで渋々と頷いたようであった。
…………
そしてチジクを森の中で埋葬したあと、供養の祈りを捧げ終えた二人は立ち上がった。
「それじゃあ、私はケイノトへ行くわね」
「はい、どうかお気を付けください」
キョウカはその言葉に頷いた後、ゆっくりとケイノトに向けて歩き始めて行く。
「ヒサト。もし私が組長の立場を退いたら……」
「え、何て言いました?」
どうやらキョウカの言いかけた言葉は、ヒサトには聞こえなかったようであった。
「いや、ケイノトの様子を見終わったら、貴方が休んでいる旅籠に向かうといったの。もし数日中に私と合流出来なければ、そのまま本部へ戻っていてちょうだい。私もそうするわ」
「あ、はい。分かりました……」
ゆっくりとその場から離れて行くキョウカの後ろ姿を見守りながら、本当はキョウカが言いかけた言葉をしっかりと聞いていたヒサトは不安そうな表情を浮かべるのだった。
(今はキョウカ組長にもゆっくりする時間が必要だ。このままケイノトで何も起きなければいいが……)
「ひとまず今は旅籠町へ移動するか」
ヒサトは懸念を抱きながらもひとまず旅籠町で身体を休めようと、キョウカの向かう方向とは逆の方向へと歩き始めていくのであった。
…………
森でキョウカが王連と戦っていた頃、ケイノトの町にある『退魔組』の前で行われていたある戦いもまた、決着が着こうとしていたのであった。
「ぐっ……!」
「はぁっはぁっ……、クソしぶてぇ野郎だった。流石は妖魔退魔師衆の連中だな……」
額の汗を手で拭いながら『サテツ』は、自分がいま目の前で倒した妖魔退魔師衆の男の顔を見ながらそう口にする。
妖魔召士にしては単純な腕力や『力』が強い退魔組の頭領の『サテツ』だが、真っ向からぶつかり合えば『妖魔退魔師衆』に勝てないと理解している彼は、数多の捉術を用いて少しずつ相手の動きを削っていき、やがて『魔瞳』で動きを封じて最後は全力で殴り飛ばして意識を失わせたのであった。
「この俺が妖魔退魔師衆一人を相手に、こんなに苦労させられるたぁな……! ヒュウガ様やゲンロク様が表立って『妖魔退魔師』組織の連中と『妖魔団の乱』以降に戦争を起こさなかった理由がよく分かったぜ」
サテツが今倒して見せた『妖魔退魔師衆』は『予備群』やランク『4』の妖魔よりも圧倒的に強い存在で間違いはないが、それでも『組』に属する幹部連中の妖魔退魔師や、その上に居る最高幹部の組長達は妖魔退魔師衆の比ではない猛者達である。
更にそれだけでも戦争となれば『妖魔召士』組織側は旗色が悪いというのに、向こうにはまだそこから規格外の『副総長』や『総長』が居るのだから、戦争になって勝ち目はないのは明白だろう。
「ヒュウガ様はいったい何を考えているんだろうな。このままほとぼりが冷めるまで隠れるにしたって、どっちの組織も敵に回している以上はどうにもならねぇと思うんだがな……」
そんなことを口にしながらもサテツは、目の前で意識を失って倒れている男を縛った後に、自分達の『退魔組』の中へと放り投げて後ろ手に『退魔組』の戸を閉めるのだった。
「まぁもう賽は投げられたんだ、なるようになると思うしかねぇな。さて、俺も『加護の森』へ向かうとするか」
そこでふと他の妖魔退魔師衆を引き付けて、先に出て行った『イツキ』のことを思い出すサテツだった。
「少し路地裏の方を覗いて見るか? いや、結果は分かってんだ、見る必要はねぇか。隻眼がいつまたここに戻って来るかもわからねぇんだ、こっちも急がねぇとな……」
サテツは自分の補佐を務めるイツキに感謝の言葉を胸中で呟きながら、彼の行いを現実以上の武勇伝に仕立てあげて彼のために『ヒュウガ』に報告しようと心に決めて『加護の森』へ歩き始めるのだった。
……
……
……
そう言ってキョウカは抱いているチジクの顔を見つめるたが、その顔はヒサトから見て少し複雑そうな表情をしているように見えるのだった。
「キョウカ組長はどうなさるおつもりですか?」
「私はひとまず『ケイノト』に戻るわ。貴方達が戦った門前の様子も見ておきたいしね」
「それでしたら俺も一緒に……」
「無理は良くないって言っているでしょ? それにもう残っているとは思えないけど、まだ妖魔召士達が居るかもしれない」
それは暗に今の状況で妖魔召士に会えば、今度こそ全滅する恐れがあるとキョウカは告げているのであった。
「それでしたら余計に俺を連れて行ってください。まだあの天狗が居たとしたら、また動けなくされるかもしれな……」
そこで眼光を鋭くしたキョウカに視線を向けられたことでヒサトは口を噤むのであった。
「あの天狗にはまだ戦う意思はあるかもしれないけれど、当分戦うことは無い筈よ。天狗を使役していた『妖魔召士』は私を恐れていたからね。それに万が一にも戦うことがあったとしても、今度こそ私はあの天狗を倒して見せる。二度と動けなくなんてされないわ」
――もう、一度見たからね。
そのキョウカの視線を見ながら、直接に言葉を聞いた者であれば、この発言を強がりで言っているとは誰も思えないだろう。
どうやらキョウカは本当に『王連』の神通力に対して、もう通用しないという明確な自信を持っているようであった。
「わ、分かりました……。ではここから一番近い旅籠で休ませてもらいます」
納得はいっていないようだが、どうやらキョウカの意図を汲んで渋々と頷いたようであった。
…………
そしてチジクを森の中で埋葬したあと、供養の祈りを捧げ終えた二人は立ち上がった。
「それじゃあ、私はケイノトへ行くわね」
「はい、どうかお気を付けください」
キョウカはその言葉に頷いた後、ゆっくりとケイノトに向けて歩き始めて行く。
「ヒサト。もし私が組長の立場を退いたら……」
「え、何て言いました?」
どうやらキョウカの言いかけた言葉は、ヒサトには聞こえなかったようであった。
「いや、ケイノトの様子を見終わったら、貴方が休んでいる旅籠に向かうといったの。もし数日中に私と合流出来なければ、そのまま本部へ戻っていてちょうだい。私もそうするわ」
「あ、はい。分かりました……」
ゆっくりとその場から離れて行くキョウカの後ろ姿を見守りながら、本当はキョウカが言いかけた言葉をしっかりと聞いていたヒサトは不安そうな表情を浮かべるのだった。
(今はキョウカ組長にもゆっくりする時間が必要だ。このままケイノトで何も起きなければいいが……)
「ひとまず今は旅籠町へ移動するか」
ヒサトは懸念を抱きながらもひとまず旅籠町で身体を休めようと、キョウカの向かう方向とは逆の方向へと歩き始めていくのであった。
…………
森でキョウカが王連と戦っていた頃、ケイノトの町にある『退魔組』の前で行われていたある戦いもまた、決着が着こうとしていたのであった。
「ぐっ……!」
「はぁっはぁっ……、クソしぶてぇ野郎だった。流石は妖魔退魔師衆の連中だな……」
額の汗を手で拭いながら『サテツ』は、自分がいま目の前で倒した妖魔退魔師衆の男の顔を見ながらそう口にする。
妖魔召士にしては単純な腕力や『力』が強い退魔組の頭領の『サテツ』だが、真っ向からぶつかり合えば『妖魔退魔師衆』に勝てないと理解している彼は、数多の捉術を用いて少しずつ相手の動きを削っていき、やがて『魔瞳』で動きを封じて最後は全力で殴り飛ばして意識を失わせたのであった。
「この俺が妖魔退魔師衆一人を相手に、こんなに苦労させられるたぁな……! ヒュウガ様やゲンロク様が表立って『妖魔退魔師』組織の連中と『妖魔団の乱』以降に戦争を起こさなかった理由がよく分かったぜ」
サテツが今倒して見せた『妖魔退魔師衆』は『予備群』やランク『4』の妖魔よりも圧倒的に強い存在で間違いはないが、それでも『組』に属する幹部連中の妖魔退魔師や、その上に居る最高幹部の組長達は妖魔退魔師衆の比ではない猛者達である。
更にそれだけでも戦争となれば『妖魔召士』組織側は旗色が悪いというのに、向こうにはまだそこから規格外の『副総長』や『総長』が居るのだから、戦争になって勝ち目はないのは明白だろう。
「ヒュウガ様はいったい何を考えているんだろうな。このままほとぼりが冷めるまで隠れるにしたって、どっちの組織も敵に回している以上はどうにもならねぇと思うんだがな……」
そんなことを口にしながらもサテツは、目の前で意識を失って倒れている男を縛った後に、自分達の『退魔組』の中へと放り投げて後ろ手に『退魔組』の戸を閉めるのだった。
「まぁもう賽は投げられたんだ、なるようになると思うしかねぇな。さて、俺も『加護の森』へ向かうとするか」
そこでふと他の妖魔退魔師衆を引き付けて、先に出て行った『イツキ』のことを思い出すサテツだった。
「少し路地裏の方を覗いて見るか? いや、結果は分かってんだ、見る必要はねぇか。隻眼がいつまたここに戻って来るかもわからねぇんだ、こっちも急がねぇとな……」
サテツは自分の補佐を務めるイツキに感謝の言葉を胸中で呟きながら、彼の行いを現実以上の武勇伝に仕立てあげて彼のために『ヒュウガ』に報告しようと心に決めて『加護の森』へ歩き始めるのだった。
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