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サカダイ編
1292.絶体絶命の状況
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大天狗『王連』の魔力が込められたその木々達は、動けないキョウカの元に次々と向かってくる。
単なる木であれば『青のオーラ』の上位領域である『天色』や『瑠璃』を纏える『妖魔退魔師』であれば、大したダメージにはなり得ないだろうが、既にこの場に居ない王連が残した『魔力』は生半可な代物ではなく、妖魔召士として活動を許されている者達の大半であっても『王連』の魔力には到底敵わない程である。
この世界には『理』を生み出す『精霊族』や『魔族』といった存在も居ないために、偏りと狭まった『魔』しか存在をしてはいないが、もしこういったランク『7』を上回る程の魔力を持っている天狗達が、ソフィ達が存在していた『アレルバレル』といった世界に生息していたとしたならば『エルシス』が生み出した『理』を使って彼らも『神域魔法』の領域を越える『魔法』を軽々と扱えていたであろう。
『理』の知識がないが『魔』の心得は在る以上、こうして木に対して自分達の魔力を付与させて、相手にぶつけるという原始的な『創成付与』の擬き的な使用方法は心得ている。
――神域位階や魔神域位階の魔法を生み出せるだけの魔力を木々に『付与』している以上は、相手側がそんな王連の魔力を上回る程の魔力を持っているか、それとも即座にやられない程度の防御力を有していなければ、あっさりと王連の魔力にやられてしまうのである。
だが、今王連の神通力で動けなくなっているキョウカの前には、この世界の刀の達人と呼べる『妖魔退魔師』が立ちはだかっている。
彼は魔力自体は大したことがないが、長年培われてきた『青のオーラ』の研鑽によって『瑠璃』にまでオーラの位階は至っている。そんな『瑠璃』を纏う彼であれば、一度くらいならばまともに受ける事となっても死にはしないだろう。
「うおおっ……!!」
チジクは遂に目の前まで迫った一本目の木を後ろに居るキョウカの元へ辿り着かせないために、木を逸らすことをせずに、真っ向からぶつかる覚悟で得の刀に力を込めて木を真っ二つにしようと振り切るのだった。
チジクの刀と王連の魔力が施された木が正面からぶつかり合うが、その木は『妖魔退魔師』が本気で斬りつけたにも拘わらず切断する事が出来なかった。
木はチジクが本気で切断しようと力を込めた一撃によって、それでもそのままキョウカの居る方角とは違う方向へと逸らして跳ね返すだけが精一杯の結果となった。
そしてチジクはそのまま後ろに居るキョウカの身体の前まで吹っ飛ばされてしまうのだった。
「な、何て……! 何て、か、硬さなのだ!!」
ジンジンと刀を持つ手が震えるのを我慢しながらチジクは静かに言葉を漏らすのだった。
更にそんな悠長にチジクが独り言ちて感想を述べている間にも、前から更に今のと同じ『紫色』をした『王連』の魔力が伴った木が今度はまとめて数本近づいてきている。
「くっ……! くそっ!」
想像以上に厄介だった木々を前に、こんな筈では無かったとばかりに舌打ちをするチジクだが、今更どうすることもできない。既にキョウカを守ると誓っている以上、退路は残されていない。
ここでチジクが迫りくる木々から退いた場合、背後で動けずに成り行きを見守るしか出来ないキョウカは、無抵抗のままであの木々に身体を貫かれて絶命してしまうためである。
――彼はランク『7』以上の大天狗『王連』という妖魔の恐ろしさを身に染みて知る結果となった。
(も、もういい……! 私はもう死を受け入れる覚悟は出来ているから……! これ以上私を守ろうとすれば、死ななくてもいい貴方までもが、道ずれになって死んでしまう!)
キョウカも先程のチジクと木のぶつかりを見ていたことで、あの王連とかいう大天狗の魔力が伴った木々は、どうやら『瑠璃』を纏うチジクの刀でも斬る事はかなわないと知った。
あれはどうやら自分であっても容易に斬ることは難しいだろう。
――この『王連』の魔力が付与された物質とまともに妖魔退魔師組織で渡り合えるのは、暴力的なまでの攻撃力を有する『ヒノエ』組長か、若しくは『超越する剣技』を持つ『シゲン』総長くらいのものだろう。
単純な『力』という領域分では腕力が他の組長にさえ劣る自分や、その自分と同じように『技』に頼って戦う副総長のミスズでも逸らすことが精一杯であると、背後で動けずに観察をするだけしか出来なかったキョウカは理解するのだった。
妖魔退魔師の組長階級でさえ、そう思わせる大天狗『王連』の魔力が宿った物質である。
キョウカを守りながら戦うことで『回避』を抑えられた『チジク』では、迫りくる何本もの木々を相手にすることは出来ないだろう。今のように一本だけならば、何とか逸らす事は出来るだろうが、こちらに向かってきている木々はあと十数本程も向かってきているのである。
――このままでは共倒れになって終わりである。
(せ、せめて、自分が動ける状態であったなら……! い、いや、そもそも動けなくされる前に私があの天狗を仕留められていたならば、こんなことには……!!)
妖魔退魔師の最高幹部と呼ばれる程にまでなった彼女だが、自分のあまりの無力さに、そして他にもやりようはあった筈なのにと後悔と自責の念に苛まれるのだった。
しかしそんな風に考えていた彼女とチジクの耳に、慣れ親しんだ者からの声が入ってくる。
「きょ、キョウカ組長! チジク!!」
その声の主は『三組副組長』である『ヒサト』のものであった――。
単なる木であれば『青のオーラ』の上位領域である『天色』や『瑠璃』を纏える『妖魔退魔師』であれば、大したダメージにはなり得ないだろうが、既にこの場に居ない王連が残した『魔力』は生半可な代物ではなく、妖魔召士として活動を許されている者達の大半であっても『王連』の魔力には到底敵わない程である。
この世界には『理』を生み出す『精霊族』や『魔族』といった存在も居ないために、偏りと狭まった『魔』しか存在をしてはいないが、もしこういったランク『7』を上回る程の魔力を持っている天狗達が、ソフィ達が存在していた『アレルバレル』といった世界に生息していたとしたならば『エルシス』が生み出した『理』を使って彼らも『神域魔法』の領域を越える『魔法』を軽々と扱えていたであろう。
『理』の知識がないが『魔』の心得は在る以上、こうして木に対して自分達の魔力を付与させて、相手にぶつけるという原始的な『創成付与』の擬き的な使用方法は心得ている。
――神域位階や魔神域位階の魔法を生み出せるだけの魔力を木々に『付与』している以上は、相手側がそんな王連の魔力を上回る程の魔力を持っているか、それとも即座にやられない程度の防御力を有していなければ、あっさりと王連の魔力にやられてしまうのである。
だが、今王連の神通力で動けなくなっているキョウカの前には、この世界の刀の達人と呼べる『妖魔退魔師』が立ちはだかっている。
彼は魔力自体は大したことがないが、長年培われてきた『青のオーラ』の研鑽によって『瑠璃』にまでオーラの位階は至っている。そんな『瑠璃』を纏う彼であれば、一度くらいならばまともに受ける事となっても死にはしないだろう。
「うおおっ……!!」
チジクは遂に目の前まで迫った一本目の木を後ろに居るキョウカの元へ辿り着かせないために、木を逸らすことをせずに、真っ向からぶつかる覚悟で得の刀に力を込めて木を真っ二つにしようと振り切るのだった。
チジクの刀と王連の魔力が施された木が正面からぶつかり合うが、その木は『妖魔退魔師』が本気で斬りつけたにも拘わらず切断する事が出来なかった。
木はチジクが本気で切断しようと力を込めた一撃によって、それでもそのままキョウカの居る方角とは違う方向へと逸らして跳ね返すだけが精一杯の結果となった。
そしてチジクはそのまま後ろに居るキョウカの身体の前まで吹っ飛ばされてしまうのだった。
「な、何て……! 何て、か、硬さなのだ!!」
ジンジンと刀を持つ手が震えるのを我慢しながらチジクは静かに言葉を漏らすのだった。
更にそんな悠長にチジクが独り言ちて感想を述べている間にも、前から更に今のと同じ『紫色』をした『王連』の魔力が伴った木が今度はまとめて数本近づいてきている。
「くっ……! くそっ!」
想像以上に厄介だった木々を前に、こんな筈では無かったとばかりに舌打ちをするチジクだが、今更どうすることもできない。既にキョウカを守ると誓っている以上、退路は残されていない。
ここでチジクが迫りくる木々から退いた場合、背後で動けずに成り行きを見守るしか出来ないキョウカは、無抵抗のままであの木々に身体を貫かれて絶命してしまうためである。
――彼はランク『7』以上の大天狗『王連』という妖魔の恐ろしさを身に染みて知る結果となった。
(も、もういい……! 私はもう死を受け入れる覚悟は出来ているから……! これ以上私を守ろうとすれば、死ななくてもいい貴方までもが、道ずれになって死んでしまう!)
キョウカも先程のチジクと木のぶつかりを見ていたことで、あの王連とかいう大天狗の魔力が伴った木々は、どうやら『瑠璃』を纏うチジクの刀でも斬る事はかなわないと知った。
あれはどうやら自分であっても容易に斬ることは難しいだろう。
――この『王連』の魔力が付与された物質とまともに妖魔退魔師組織で渡り合えるのは、暴力的なまでの攻撃力を有する『ヒノエ』組長か、若しくは『超越する剣技』を持つ『シゲン』総長くらいのものだろう。
単純な『力』という領域分では腕力が他の組長にさえ劣る自分や、その自分と同じように『技』に頼って戦う副総長のミスズでも逸らすことが精一杯であると、背後で動けずに観察をするだけしか出来なかったキョウカは理解するのだった。
妖魔退魔師の組長階級でさえ、そう思わせる大天狗『王連』の魔力が宿った物質である。
キョウカを守りながら戦うことで『回避』を抑えられた『チジク』では、迫りくる何本もの木々を相手にすることは出来ないだろう。今のように一本だけならば、何とか逸らす事は出来るだろうが、こちらに向かってきている木々はあと十数本程も向かってきているのである。
――このままでは共倒れになって終わりである。
(せ、せめて、自分が動ける状態であったなら……! い、いや、そもそも動けなくされる前に私があの天狗を仕留められていたならば、こんなことには……!!)
妖魔退魔師の最高幹部と呼ばれる程にまでなった彼女だが、自分のあまりの無力さに、そして他にもやりようはあった筈なのにと後悔と自責の念に苛まれるのだった。
しかしそんな風に考えていた彼女とチジクの耳に、慣れ親しんだ者からの声が入ってくる。
「きょ、キョウカ組長! チジク!!」
その声の主は『三組副組長』である『ヒサト』のものであった――。
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