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サカダイ編
1279.傷つけられた自尊心
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「色々と興味が尽きないようだけど、残念ながら貴方が好奇心を満たす前に死んでもらうことにするわ」
キョウカが王連に対して討伐の意思を口にすると『王連』は厭味な笑みを浮かべた。
「カッカッカ! お主にそれが出来るかね? どうやらお主も妖魔を討伐することを生業としている人間のようだが、儂はそこらの妖魔共とは違うぞ? お主がこの世に生を受ける何百年も前から儂は生きてきたのだ。そう簡単に儂をとれると思わぬことだな」
『青』を纏っている今のキョウカを前にしても彼は少しも怯む様子は無く、むしろ余裕綽々といった態度でキョウカに上からモノを言う『王連』であった。
「戦う前から勝ち誇った顔でぐちぐち言う妖魔って、大抵が大した事は無いのだけど、あなたはどうなのかしら?」
その言葉を発した直後、忽然とキョウカの姿が消えた――。
「むっ!」
――否。正しくは消えたのではなく、常人には見えない程の速度で移動を行ったのであった。
流石の王連もキョウカの移動速度に目を見張ったようで、懐から羽団扇を取り出すと迫りくるキョウカに視線を向けながら、風を巻き起こし始めるのだった。
既に互いの間にあった距離は大きく縮まっており、もうあと少しで王連の場所に届くといったところだったが、王連は先程起こした風に自らを巻き上げ始めると、そこから自分で空を飛び始めて行く。
「ちっ!」
キョウカはあと一歩で斬れるといったところで王連を空へ逃してしまい舌打ちをする。
「大したものよ……。儂の知る人間達の中でもお主は五指に入る程に速かったぞ。だがこれはお主の後ろに居る人間にも告げたことだが、残念ながらお主ら人間は空を自在に飛べぬ。地上では如何に強者を誇ろうともひとたび空へ舞い上がればこれ程までに容易に倒せる『種』も居ないのだ!」
カッカッカと高笑いをしながら再び王連は『魔力』を羽団扇に込め始める。
「それは空を飛べないからこそ、人間は貴方達に勝てないと言いたいのかしら?」
「カッカッカ! 最初から儂はそう告げたつもりだが?」
徐々に『王連』の持つ羽団扇が煌々と光を照らし始める。どうやらヒサト達に放った時のように、あの大天狗『王連』は大掛かりな突風を巻き起こすつもりなのだろう。
――その様子を地上から見ていたキョウカは薄く笑った。
「その言い分だと逆に人間が空を飛べたなら、貴方達は我々人間には敵わないと貴方自身が言っているようにもとれるわよね?」
『隻眼』と呼ばれる妖魔退魔師の『三組組長』である『キョウカ』は、空に居る大天狗『王連』に対してそう言い放ったのであった。
「……」
王連の持つ羽団扇だけでは無く、団扇を持っている王連自体も可視化が出来る程の『魔力』が纏われていく。
――どうやら王連はまたもや、ヒサトに続いてキョウカに対しても苛立ちを隠しきる事が出来なかったようである。
「現代の妖魔退魔師共は、どうにも礼儀というモノがないらしいな……! 儂らは『天狗』じゃぞ? 妖魔を討伐することを生業とするお主らに敬えとまでは言わぬが、せめて実力差というモノを少しは理解することから始めた方が良いと儂は……」
「御託はいいからさっさとやりなさいな? どうせ私と真っ向からぶつかるのが怖くて、安全なところから攻撃する以外に戦えないんでしょう? それしか出来ないんだから、いちいち偉そうに大物ぶってんじゃないわよ。どこまでもみっともないわね……!」
どうやら大事な組の仲間達をやられたことで、自分の戦闘に影響を及ぼさないと見極められるギリギリのところまで感情を露にしてキョウカは腹に据えかねる思いを安全地帯に居る『王連』にぶつけるのだった。
「……な、舐めよってからに、こ、この……、こ、小娘が!」
どうやら自尊心の塊と言える『王連』という天狗は、妖魔と比べれば僅かと言えるような寿命しか持たない人間。それもその中でもまだ二十年そこそこ程度しか生きてきていないであろう小娘が、妖魔の中でも神に近いとされる天狗。更にその天狗界でも一目置かれるような『王連』という大天狗に対してへのあるまじき物言いに王連は、目を見開きながら団扇を持つ手を振るわせて激昂するのだった。
「は……、はは! あの天狗……、俺が挑発した時より余程に頭にきているようだ」
後ろで戦闘を見ていた『三組』の副組長である『ヒサト』は、虚仮脅しで行った自分の挑発とは違い、あくまで実力が伴った『キョウカ』組長が、本心から告げたであろう煽り言葉に、まさに効果覿面と言った様子で激昂している王連を見て震えが走るのであった。
(しかしいくら相手が冷静さを欠いたとしても、地上でしか攻撃が出来ないキョウカ様では流石に天狗相手には分が悪い事には変わりがない。キョウカ様は一体どうなさるおつもりなのだろうか……?)
ヒサトは『王連』の魔力が込められて、煌々と空の上で周囲を照らし始めている羽団扇を見ながら、キョウカの戦いぶりをこれまで以上に真剣に注視し始めるのだった。
キョウカが王連に対して討伐の意思を口にすると『王連』は厭味な笑みを浮かべた。
「カッカッカ! お主にそれが出来るかね? どうやらお主も妖魔を討伐することを生業としている人間のようだが、儂はそこらの妖魔共とは違うぞ? お主がこの世に生を受ける何百年も前から儂は生きてきたのだ。そう簡単に儂をとれると思わぬことだな」
『青』を纏っている今のキョウカを前にしても彼は少しも怯む様子は無く、むしろ余裕綽々といった態度でキョウカに上からモノを言う『王連』であった。
「戦う前から勝ち誇った顔でぐちぐち言う妖魔って、大抵が大した事は無いのだけど、あなたはどうなのかしら?」
その言葉を発した直後、忽然とキョウカの姿が消えた――。
「むっ!」
――否。正しくは消えたのではなく、常人には見えない程の速度で移動を行ったのであった。
流石の王連もキョウカの移動速度に目を見張ったようで、懐から羽団扇を取り出すと迫りくるキョウカに視線を向けながら、風を巻き起こし始めるのだった。
既に互いの間にあった距離は大きく縮まっており、もうあと少しで王連の場所に届くといったところだったが、王連は先程起こした風に自らを巻き上げ始めると、そこから自分で空を飛び始めて行く。
「ちっ!」
キョウカはあと一歩で斬れるといったところで王連を空へ逃してしまい舌打ちをする。
「大したものよ……。儂の知る人間達の中でもお主は五指に入る程に速かったぞ。だがこれはお主の後ろに居る人間にも告げたことだが、残念ながらお主ら人間は空を自在に飛べぬ。地上では如何に強者を誇ろうともひとたび空へ舞い上がればこれ程までに容易に倒せる『種』も居ないのだ!」
カッカッカと高笑いをしながら再び王連は『魔力』を羽団扇に込め始める。
「それは空を飛べないからこそ、人間は貴方達に勝てないと言いたいのかしら?」
「カッカッカ! 最初から儂はそう告げたつもりだが?」
徐々に『王連』の持つ羽団扇が煌々と光を照らし始める。どうやらヒサト達に放った時のように、あの大天狗『王連』は大掛かりな突風を巻き起こすつもりなのだろう。
――その様子を地上から見ていたキョウカは薄く笑った。
「その言い分だと逆に人間が空を飛べたなら、貴方達は我々人間には敵わないと貴方自身が言っているようにもとれるわよね?」
『隻眼』と呼ばれる妖魔退魔師の『三組組長』である『キョウカ』は、空に居る大天狗『王連』に対してそう言い放ったのであった。
「……」
王連の持つ羽団扇だけでは無く、団扇を持っている王連自体も可視化が出来る程の『魔力』が纏われていく。
――どうやら王連はまたもや、ヒサトに続いてキョウカに対しても苛立ちを隠しきる事が出来なかったようである。
「現代の妖魔退魔師共は、どうにも礼儀というモノがないらしいな……! 儂らは『天狗』じゃぞ? 妖魔を討伐することを生業とするお主らに敬えとまでは言わぬが、せめて実力差というモノを少しは理解することから始めた方が良いと儂は……」
「御託はいいからさっさとやりなさいな? どうせ私と真っ向からぶつかるのが怖くて、安全なところから攻撃する以外に戦えないんでしょう? それしか出来ないんだから、いちいち偉そうに大物ぶってんじゃないわよ。どこまでもみっともないわね……!」
どうやら大事な組の仲間達をやられたことで、自分の戦闘に影響を及ぼさないと見極められるギリギリのところまで感情を露にしてキョウカは腹に据えかねる思いを安全地帯に居る『王連』にぶつけるのだった。
「……な、舐めよってからに、こ、この……、こ、小娘が!」
どうやら自尊心の塊と言える『王連』という天狗は、妖魔と比べれば僅かと言えるような寿命しか持たない人間。それもその中でもまだ二十年そこそこ程度しか生きてきていないであろう小娘が、妖魔の中でも神に近いとされる天狗。更にその天狗界でも一目置かれるような『王連』という大天狗に対してへのあるまじき物言いに王連は、目を見開きながら団扇を持つ手を振るわせて激昂するのだった。
「は……、はは! あの天狗……、俺が挑発した時より余程に頭にきているようだ」
後ろで戦闘を見ていた『三組』の副組長である『ヒサト』は、虚仮脅しで行った自分の挑発とは違い、あくまで実力が伴った『キョウカ』組長が、本心から告げたであろう煽り言葉に、まさに効果覿面と言った様子で激昂している王連を見て震えが走るのであった。
(しかしいくら相手が冷静さを欠いたとしても、地上でしか攻撃が出来ないキョウカ様では流石に天狗相手には分が悪い事には変わりがない。キョウカ様は一体どうなさるおつもりなのだろうか……?)
ヒサトは『王連』の魔力が込められて、煌々と空の上で周囲を照らし始めている羽団扇を見ながら、キョウカの戦いぶりをこれまで以上に真剣に注視し始めるのだった。
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