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サカダイ編
1275.防御なくして攻撃なし
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「さて。お主をさっさと片付けて、儂の大事な羽を切った無礼者の息の根を止めるとしようか」
天狗の『王連』はそう告げると、懐からヤツデの葉のような形をしている羽団扇を取り出した。
(何だあれは? 微弱だがあの団扇から『魔力』を感じる……。一体何をするつもりだ)
ヒサトが王連の出した羽団扇に警戒するように刀を構えると、王連の持つ団扇が煌々と赤色に輝き始める。
「お主ら人間は不便よな? 何せ自分の力だけでは自在に空も飛ぶことが出来ぬのだから!」
王連はそう口にしながら赤く光る羽団扇を空を大きく振り始めた。
次の瞬間、轟轟と大きな音が鳴り響き始める。
「ま、まずいっ!」
その大きな音に聞き覚えがあったヒサトは、ケイノトの門前の事を思い出して直ぐにその場から離れ始めた。
「ふふふっ! どうやら痛い目にあったことを思い出したようだな? だが、儂は逃すつもりはないぞ!」
一直線に木々の間を駆け抜けて走り往くヒサトに向けて王連は、ヤツデの葉のような形をしている羽団扇を思い切り振った――。
その瞬間、逃げるヒサトへ向けて突風が巻き起こったかと思うと、恐るべき力を以て木々をなぎ倒しながら、真っすぐにヒサトへ向かって進んでいくのだった。
「くそっ……! な、何てデタラメな奴だ……!」
…………
王連は風を放った後に大空を飛翔しながら、森の中を駆け抜けて回避を続けるヒサトを追いかけ続ける。
直接自分が森の中へ向かうのではなく、相手が攻撃出来ない安全地帯に身を置きながら一方的に風を巻き起こして、相手の体力を削り弱りきるのをジワジワと待っているようであった。
本来妖魔のランクで『7』とされる『王連』の力量であれば、相手が副組長格の『ヒサト』と真っ向から力でぶつかったとしても不利さを感じることなく渡り合える強さを持っている。
しかしそれでも王連は絶対に『妖魔退魔師』という存在を軽視したりはしない。単なる人間と侮る妖魔が多い中でも『大天狗』や『鬼人』。
それに力有る『妖狐』達は長年に渡って、妖魔退魔師と戦いを続けてきた妖魔達であり、切っても切れない縁と呼べるほどに付き合いは長く、そんな彼らは追い詰めれば追い詰める程に『人間』は足掻きながらも信じられない程の力を示す生き物だと知っている。
だからこそ『王連』はそんな人間に興味を持っていて、そんな面白い人間達を相手にするために、そして新たに自身の立てる戦略を使えるように是正。
更なる高みにそして深みのある知識を少しずつ確実に蓄えて向上させていき、自身の更なる未踏領域の『知』を得る為に、自分から『妖魔召士』と契約を結んでいるのであった。
「逃げてばかりでは儂を倒すことはできぬぞ? それ、どうした、どうしたぁ!」
木々が横倒しに倒れて行く隙間を潜り抜けながら、ヒサトは森の中を移動し続ける。彼とて反撃をしたいと思いながら、一足飛びで王連のところへ届き得る可能性のある高い木を探しながら移動を続けていたのだった。
――しかし王連は絶妙な空の高さで浮いており、まるでそんなヒサトの考えを理解しているかのように移動を繰り返しているのであった。
(空を飛べぬ奴は必ず木々を利用して空に居る儂に下から突き上げる一撃を狙って来るだろう。しかしその時こそが、お主の命運が尽きる時だ!)
相手の攻撃を受ける側の王連にとっては、相手がここぞという時に放つ一撃こそが、最大級の一撃をくれてやる事の出来る最大の好機だと長年の経験で理解をしているようであった。
そしてそれを狙うのは他にも理由があった――。
王連のこれまでの妖魔退魔師との戦闘を行ってきた経験上のことではあるが、彼ら妖魔退魔師に対して少量のダメージを与えて蓄積を行ったとしても動きを鈍くすることは出来ても根本の精神を折ることには繋がらない。
――では効果的に相手のやる気を削ぐにはどうするか。
それはこれしかないという手立ての実行を行わせた上で、完全にその目論みを崩させる事である――。
如何に攻撃力が高かろうとも相手に防御を行う手法が存在する場合に大した効果は得られない。相手を崩すには馬鹿正直に力を全面的に出すだけでは無く、相手に前に出させて狙っているモノや得意な攻撃を行わせた上で通用しないという現実を叩きつけた後に、自前の自慢の一打を送り込めばいいのである。
そうすることによって一発の単調な攻撃が、幾重にも威力が倍増して必殺の一撃へと変貌を遂げる。
つまり相手の原動力が発揮されている時にいくら強力な一撃を送り込んだところで効果の程は知れているという事であり、まずやるべきことは相手にこれしかないという手立てを作らせて誘導してみせて、相手にこれこそが現状を打破する好打の一手だと思わせて動かせた上で、完膚なきまでに叩き潰す事で『王連』の一撃は何乗にも威力が増す事が出来て相手の精神をぽきりと根本からへし折ることに繋げられるのである。
王連は過去の『妖魔退魔師』との戦闘の経験から、わざとそれしかないという状況を自らの手で作り上げて相手を誘い込んで状況を好転させられると勘違いさせて、知らず知らずの内にこちら側の土俵にあげさせた上で、相手が効果的な一撃だと思い込んだその紛い物の付け焼刃を潰して通用しなかったという絶望感を与えた上で、天狗の『神通力』と呼ばれる『王連』の本当の手痛い一撃を送り込もうと手筈を整えて行くのであった――。
……
……
……
天狗の『王連』はそう告げると、懐からヤツデの葉のような形をしている羽団扇を取り出した。
(何だあれは? 微弱だがあの団扇から『魔力』を感じる……。一体何をするつもりだ)
ヒサトが王連の出した羽団扇に警戒するように刀を構えると、王連の持つ団扇が煌々と赤色に輝き始める。
「お主ら人間は不便よな? 何せ自分の力だけでは自在に空も飛ぶことが出来ぬのだから!」
王連はそう口にしながら赤く光る羽団扇を空を大きく振り始めた。
次の瞬間、轟轟と大きな音が鳴り響き始める。
「ま、まずいっ!」
その大きな音に聞き覚えがあったヒサトは、ケイノトの門前の事を思い出して直ぐにその場から離れ始めた。
「ふふふっ! どうやら痛い目にあったことを思い出したようだな? だが、儂は逃すつもりはないぞ!」
一直線に木々の間を駆け抜けて走り往くヒサトに向けて王連は、ヤツデの葉のような形をしている羽団扇を思い切り振った――。
その瞬間、逃げるヒサトへ向けて突風が巻き起こったかと思うと、恐るべき力を以て木々をなぎ倒しながら、真っすぐにヒサトへ向かって進んでいくのだった。
「くそっ……! な、何てデタラメな奴だ……!」
…………
王連は風を放った後に大空を飛翔しながら、森の中を駆け抜けて回避を続けるヒサトを追いかけ続ける。
直接自分が森の中へ向かうのではなく、相手が攻撃出来ない安全地帯に身を置きながら一方的に風を巻き起こして、相手の体力を削り弱りきるのをジワジワと待っているようであった。
本来妖魔のランクで『7』とされる『王連』の力量であれば、相手が副組長格の『ヒサト』と真っ向から力でぶつかったとしても不利さを感じることなく渡り合える強さを持っている。
しかしそれでも王連は絶対に『妖魔退魔師』という存在を軽視したりはしない。単なる人間と侮る妖魔が多い中でも『大天狗』や『鬼人』。
それに力有る『妖狐』達は長年に渡って、妖魔退魔師と戦いを続けてきた妖魔達であり、切っても切れない縁と呼べるほどに付き合いは長く、そんな彼らは追い詰めれば追い詰める程に『人間』は足掻きながらも信じられない程の力を示す生き物だと知っている。
だからこそ『王連』はそんな人間に興味を持っていて、そんな面白い人間達を相手にするために、そして新たに自身の立てる戦略を使えるように是正。
更なる高みにそして深みのある知識を少しずつ確実に蓄えて向上させていき、自身の更なる未踏領域の『知』を得る為に、自分から『妖魔召士』と契約を結んでいるのであった。
「逃げてばかりでは儂を倒すことはできぬぞ? それ、どうした、どうしたぁ!」
木々が横倒しに倒れて行く隙間を潜り抜けながら、ヒサトは森の中を移動し続ける。彼とて反撃をしたいと思いながら、一足飛びで王連のところへ届き得る可能性のある高い木を探しながら移動を続けていたのだった。
――しかし王連は絶妙な空の高さで浮いており、まるでそんなヒサトの考えを理解しているかのように移動を繰り返しているのであった。
(空を飛べぬ奴は必ず木々を利用して空に居る儂に下から突き上げる一撃を狙って来るだろう。しかしその時こそが、お主の命運が尽きる時だ!)
相手の攻撃を受ける側の王連にとっては、相手がここぞという時に放つ一撃こそが、最大級の一撃をくれてやる事の出来る最大の好機だと長年の経験で理解をしているようであった。
そしてそれを狙うのは他にも理由があった――。
王連のこれまでの妖魔退魔師との戦闘を行ってきた経験上のことではあるが、彼ら妖魔退魔師に対して少量のダメージを与えて蓄積を行ったとしても動きを鈍くすることは出来ても根本の精神を折ることには繋がらない。
――では効果的に相手のやる気を削ぐにはどうするか。
それはこれしかないという手立ての実行を行わせた上で、完全にその目論みを崩させる事である――。
如何に攻撃力が高かろうとも相手に防御を行う手法が存在する場合に大した効果は得られない。相手を崩すには馬鹿正直に力を全面的に出すだけでは無く、相手に前に出させて狙っているモノや得意な攻撃を行わせた上で通用しないという現実を叩きつけた後に、自前の自慢の一打を送り込めばいいのである。
そうすることによって一発の単調な攻撃が、幾重にも威力が倍増して必殺の一撃へと変貌を遂げる。
つまり相手の原動力が発揮されている時にいくら強力な一撃を送り込んだところで効果の程は知れているという事であり、まずやるべきことは相手にこれしかないという手立てを作らせて誘導してみせて、相手にこれこそが現状を打破する好打の一手だと思わせて動かせた上で、完膚なきまでに叩き潰す事で『王連』の一撃は何乗にも威力が増す事が出来て相手の精神をぽきりと根本からへし折ることに繋げられるのである。
王連は過去の『妖魔退魔師』との戦闘の経験から、わざとそれしかないという状況を自らの手で作り上げて相手を誘い込んで状況を好転させられると勘違いさせて、知らず知らずの内にこちら側の土俵にあげさせた上で、相手が効果的な一撃だと思い込んだその紛い物の付け焼刃を潰して通用しなかったという絶望感を与えた上で、天狗の『神通力』と呼ばれる『王連』の本当の手痛い一撃を送り込もうと手筈を整えて行くのであった――。
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