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サカダイ編
1269.一大決心
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イツキとかいう男を重要視していたサノスケから明確な反論がなかった事で、ヒノエはここまでかと考えて立ち上がろうとする。
「ま、待て! お、俺が知っているイツキ様の話はまだある! か、過去に『ケイノト』の町に妖魔団が襲撃してきた時の事だ!」
必死に逃してなるものかとばかりにサノスケは、立ち上がったヒノエを呼び止めるかのように大声で言葉を発すると、どうやら妖魔団の名が出た事で彼女は興味を引いたのか、再び畳に腰を下ろした。
「妖魔団の乱がどうしたって?」
どうやら興味を引けた様子のヒノエを見てサノスケは安堵の表情を浮かべると、過去に『煌鴟梟』のボスをトウジに譲り渡した直後のイツキの事を話始めるのだった。
「こ、これは同じ幹部だった『ミヤジ』から聞いた話で、イツキ様が『煌鴟梟』のボスの立場を退かれた後のケイノトの町で新たに拠点を構えられた直後あたりの頃の話なんだが……」
「ほう」
ヒノエは『煌鴟梟』という目の前に居る男が所属していた犯罪集団のボスが、現在の『退魔組』に退魔士として居るという話を聞いた時からイツキという男に興味を見出していた。
妖魔団と呼ばれる妖魔の集団がケイノトの町へ襲撃に来た時、ヒノエはまだ『妖魔退魔師』組織の幹部にすらなっていなかった頃の話で、まだ妖魔召士の方が『組織』として遥かに上の存在であり、討伐を行う取り決めや指示を出すのも『妖魔召士』の仕事であり、妖魔退魔師は決められた任務に従い彼ら妖魔召士の命を守る為の護衛として働いていた。
当然そんな頃の『ケイノト』の話を持ち出されては気にならないわけもなく、そのイツキという男がどう『妖魔団の乱』に関わっていたのかと、興味深々と言った具合に腕を組んでヒノエはサノスケの話に耳を傾けるのだった。
…………
『退魔組』を見張っていた妖魔退魔師衆を倒した後、ユウゲの契約している『式』にその身体を生きたまま呑み込ませて証拠を現場に一切残さずに処理した後、イツキはユウゲと共に裏路地にある自分の長屋に向かっていた。
「表通りは大変な騒ぎになっていますね」
イツキの隣を歩いていたユウゲが視線を表通りの方へ向けながらそう言うと、イツキもつられるように同じ方向へと視線を向けながら口を開いた。
「まぁ仕方ないだろうな。町の中には入ってきてはいないとはいっても、町の直ぐ傍でヒュウガ殿達の一派が門前でドンパチ始めたんだとしたら、大勢の『式』が外側中に溢れかえっているだろうし、目撃者も決して少なくは無いだろうし騒ぎ立てるのも無理ねぇよ。その上この町の住民が頼りにしている『退魔組』の退魔士様は誰一人として町の避難を誘導したりしてねぇんだぜ? 治安もへったくれもなけりゃ、そりゃあ騒ぎ立てるのも無理ねぇよ」
まるで他人事のように話しているが、彼もその『退魔組』の頭領補佐の立場に居る筈であるというのに、我関せずとばかりに自分の長屋へとのんびり歩いているのだからどうしようもない。
しかしそんな事を考えているユウゲもまた、人の事は言えないと自覚している為にイツキの言葉に頷く他無かった。
「そ、それにしても先程は驚きましたよ。イツキ様が妖魔退魔師達のような湯気のようなモノを纏えるということは存じておりましたが、あのように別の色と混ぜ合わせる事も可能としていたのですね。ワシ程度ではイツキ様の魔力が如何ほどなのかを測れやしませんでしたが、大幅に上昇していたのは理解できました」
イツキが『金色』のオーラを纏えるという事は、前々から協力関係を築く上で教えてもらっていたが、先程のような青色のオーラや、その金色と青の別々の色同士が混ざりあっていくところをみるのはこれが初めてだったために、ユウゲは演技ではなくイツキに話した言葉通りに本当に心の底から驚いていたのだった。
「ああ。俺も仕組みはよく分かってねぇんだがよ? お前が前に言っていた妖魔召士居ただろう? ボンサイだか、ドンクサイだか言う妖魔召士だ」
「さ、サイヨウ様の事でしょうか?」
『サイヨウ』という男はユウゲのような『特別退魔士』だけではなく、彼自身と同じ『妖魔召士』達から見ても雲の上の存在と思われている程の『最上位・妖魔召士』であり、尊敬される事はあってもこんな風に馬鹿にするように名前を間違える者を未だかつてユウゲは見た事も聞いたことも無かった。
「ああ『サイヨウ』な? それでそいつの護衛を務めていた妖魔退魔師がこの『青色』のオーラを使っているところを見て、何気なく俺も見様見真似で試したら使えたんだ」
(よ、妖魔退魔師の使っている技法を教えられたわけでもなく、み、見様見真似で!?)
ユウゲはイツキの信じられない言葉に、目を丸くして驚くのだった。
「まぁそれでも最初は金色の方よりは大した事無かったから使えねぇなと思っていたんだが、色々試してみると魔力の上げ幅が変わったり、俺の魔力の消耗速度を変えられたりして面白かったからよ、ちょっとだけ色々試してみたんだよ。そしたら『こっち』と『コッチ』で『魔力』の分量を上手く分散操作しながら『1』と『2』と『2』と『1』の『進み』と『戻り』の瞬間に、自分の魔力を『具現』と『削除』のタイミングを合わせてみたら、上手く魔力が混ざって爆発的な『魔力値』そのものが膨れ上がったから、きっとこうやって使うもんなんだってようやく理解したんだよな。俺はお前らと違って『基本』を知らねぇから、こういったモンは無知で苦労したんだぜ?」
――お前ら『特別退魔士』様達なら、もっと凄いことも出来るんだろうなぁ。
そう言ってまるで世間話をするかのように、何でもない事かのように笑いながら歩いていくイツキの背中を見て、ユウゲは再び足を止めて立ち尽くすのだった。
(か、神だ! こ、この方は天が遣わせた現人神なのだ! き、決めた、決めたぞ!? わ、ワシはもう『退魔組』や『妖魔召士』の組織なんてどうでもいい! こ、この方に生涯付き従って生きて行く事をいま決めた!!)
『魔』に人生を費やしてきたユウゲにとって、目の前を歩く若き『魔』の天才を神だと信じ込んで、この日この時を以て、一大決心をするユウゲであった。
「ま、待て! お、俺が知っているイツキ様の話はまだある! か、過去に『ケイノト』の町に妖魔団が襲撃してきた時の事だ!」
必死に逃してなるものかとばかりにサノスケは、立ち上がったヒノエを呼び止めるかのように大声で言葉を発すると、どうやら妖魔団の名が出た事で彼女は興味を引いたのか、再び畳に腰を下ろした。
「妖魔団の乱がどうしたって?」
どうやら興味を引けた様子のヒノエを見てサノスケは安堵の表情を浮かべると、過去に『煌鴟梟』のボスをトウジに譲り渡した直後のイツキの事を話始めるのだった。
「こ、これは同じ幹部だった『ミヤジ』から聞いた話で、イツキ様が『煌鴟梟』のボスの立場を退かれた後のケイノトの町で新たに拠点を構えられた直後あたりの頃の話なんだが……」
「ほう」
ヒノエは『煌鴟梟』という目の前に居る男が所属していた犯罪集団のボスが、現在の『退魔組』に退魔士として居るという話を聞いた時からイツキという男に興味を見出していた。
妖魔団と呼ばれる妖魔の集団がケイノトの町へ襲撃に来た時、ヒノエはまだ『妖魔退魔師』組織の幹部にすらなっていなかった頃の話で、まだ妖魔召士の方が『組織』として遥かに上の存在であり、討伐を行う取り決めや指示を出すのも『妖魔召士』の仕事であり、妖魔退魔師は決められた任務に従い彼ら妖魔召士の命を守る為の護衛として働いていた。
当然そんな頃の『ケイノト』の話を持ち出されては気にならないわけもなく、そのイツキという男がどう『妖魔団の乱』に関わっていたのかと、興味深々と言った具合に腕を組んでヒノエはサノスケの話に耳を傾けるのだった。
…………
『退魔組』を見張っていた妖魔退魔師衆を倒した後、ユウゲの契約している『式』にその身体を生きたまま呑み込ませて証拠を現場に一切残さずに処理した後、イツキはユウゲと共に裏路地にある自分の長屋に向かっていた。
「表通りは大変な騒ぎになっていますね」
イツキの隣を歩いていたユウゲが視線を表通りの方へ向けながらそう言うと、イツキもつられるように同じ方向へと視線を向けながら口を開いた。
「まぁ仕方ないだろうな。町の中には入ってきてはいないとはいっても、町の直ぐ傍でヒュウガ殿達の一派が門前でドンパチ始めたんだとしたら、大勢の『式』が外側中に溢れかえっているだろうし、目撃者も決して少なくは無いだろうし騒ぎ立てるのも無理ねぇよ。その上この町の住民が頼りにしている『退魔組』の退魔士様は誰一人として町の避難を誘導したりしてねぇんだぜ? 治安もへったくれもなけりゃ、そりゃあ騒ぎ立てるのも無理ねぇよ」
まるで他人事のように話しているが、彼もその『退魔組』の頭領補佐の立場に居る筈であるというのに、我関せずとばかりに自分の長屋へとのんびり歩いているのだからどうしようもない。
しかしそんな事を考えているユウゲもまた、人の事は言えないと自覚している為にイツキの言葉に頷く他無かった。
「そ、それにしても先程は驚きましたよ。イツキ様が妖魔退魔師達のような湯気のようなモノを纏えるということは存じておりましたが、あのように別の色と混ぜ合わせる事も可能としていたのですね。ワシ程度ではイツキ様の魔力が如何ほどなのかを測れやしませんでしたが、大幅に上昇していたのは理解できました」
イツキが『金色』のオーラを纏えるという事は、前々から協力関係を築く上で教えてもらっていたが、先程のような青色のオーラや、その金色と青の別々の色同士が混ざりあっていくところをみるのはこれが初めてだったために、ユウゲは演技ではなくイツキに話した言葉通りに本当に心の底から驚いていたのだった。
「ああ。俺も仕組みはよく分かってねぇんだがよ? お前が前に言っていた妖魔召士居ただろう? ボンサイだか、ドンクサイだか言う妖魔召士だ」
「さ、サイヨウ様の事でしょうか?」
『サイヨウ』という男はユウゲのような『特別退魔士』だけではなく、彼自身と同じ『妖魔召士』達から見ても雲の上の存在と思われている程の『最上位・妖魔召士』であり、尊敬される事はあってもこんな風に馬鹿にするように名前を間違える者を未だかつてユウゲは見た事も聞いたことも無かった。
「ああ『サイヨウ』な? それでそいつの護衛を務めていた妖魔退魔師がこの『青色』のオーラを使っているところを見て、何気なく俺も見様見真似で試したら使えたんだ」
(よ、妖魔退魔師の使っている技法を教えられたわけでもなく、み、見様見真似で!?)
ユウゲはイツキの信じられない言葉に、目を丸くして驚くのだった。
「まぁそれでも最初は金色の方よりは大した事無かったから使えねぇなと思っていたんだが、色々試してみると魔力の上げ幅が変わったり、俺の魔力の消耗速度を変えられたりして面白かったからよ、ちょっとだけ色々試してみたんだよ。そしたら『こっち』と『コッチ』で『魔力』の分量を上手く分散操作しながら『1』と『2』と『2』と『1』の『進み』と『戻り』の瞬間に、自分の魔力を『具現』と『削除』のタイミングを合わせてみたら、上手く魔力が混ざって爆発的な『魔力値』そのものが膨れ上がったから、きっとこうやって使うもんなんだってようやく理解したんだよな。俺はお前らと違って『基本』を知らねぇから、こういったモンは無知で苦労したんだぜ?」
――お前ら『特別退魔士』様達なら、もっと凄いことも出来るんだろうなぁ。
そう言ってまるで世間話をするかのように、何でもない事かのように笑いながら歩いていくイツキの背中を見て、ユウゲは再び足を止めて立ち尽くすのだった。
(か、神だ! こ、この方は天が遣わせた現人神なのだ! き、決めた、決めたぞ!? わ、ワシはもう『退魔組』や『妖魔召士』の組織なんてどうでもいい! こ、この方に生涯付き従って生きて行く事をいま決めた!!)
『魔』に人生を費やしてきたユウゲにとって、目の前を歩く若き『魔』の天才を神だと信じ込んで、この日この時を以て、一大決心をするユウゲであった。
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