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サカダイ編
1257.任務の遂行と死への覚悟
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チジクが鳥の妖魔を倒して式札に戻した後、副組長ヒサトも『王連』との戦闘が開始されたのが、彼の耳に戦闘音が聞こえてきた事で理解した。
しかし彼はそちらに視線を向けず、自分には自分のやるべき仕事が残されているとばかりに刀を強く握りしめる。
――そしてチジクのオーラの色が『天色』から『瑠璃』へと変貌を遂げて行く。
その瞬間にこれまでとは動く速度が一気に変わり、妖魔召士を殺す為に移動を開始する――。
魔力に乏しい妖魔退魔師はここぞというべき以外のところでは、たとえ『瑠璃』のオーラを纏う事が出来ても長時間運用が出来る魔力がもたない為に『天色』で戦う事を選択する。
とくにこれだけ数的不利な状況であれば、チジクが『瑠璃』のオーラを使ったとしても、その妖魔召士達を全滅させる前に確実に自分の時間が尽きる事は明白であった。しかしそれでも彼は『瑠璃』のオーラを選び行動を開始したのである。
妖魔召士達は出している『式』達に『チジク』を狙うように指示を出し、何とか生き延びようと右往左往しながらも『魔瞳』や『捉術』を用いる為に手印を行い続ける。
チジクはそんな妖魔召士達を追いかけながら、盾となるように立ち塞がる妖魔達を次々と斬り裂いて行く。
ランク『4』 ランク『5』 ランク『5.5』とあらゆる妖魔達を僅かな時間の間に斬って斬って斬り続けていく『チジク』だったが、そこでガクンッと態勢を崩してしまう。
恐るべき妖魔退魔師の動く速度、防御力が単なる『青』とは比較にならない程に上昇していた『チジク』はまるで高速で動く鉄壁の要塞のような存在となって、更には殺傷能力までついているという『化け物』となっていたが、その燃料がきれたかのように完全に動きが止まってしまった。
――魔力枯渇であった。
「……あーあ、終わっちまったか」
チジクは残念そうにそう呟くと、そこでようやく憂うような表情をしながら尊敬する副組長『ヒサト』を見る。そこではあの大天狗の『王連』に馬乗りにされて殴られているヒサトが見えた――。
「魔力はないが、残った命を燃やし尽くせば数十秒は再び力を宿せるか……? もう同志達はキョウカ様の元へ向かえたようだし、任務上では俺の役目は終えられただろうな――」
チジクがそう独り言ちている間にも、妖魔召士達が動かなくなった彼を殺すように『式』に襲うように指示する声が耳に入ってくる。
「だったら……、後は俺の好きに動いていいだろう……」
新たに使役された『式』の『幽鬼』や『狗神』がチジクの元に次々と迫って来るが、そちらを一瞥すらもせずに、天狗の『王連』の技によって空に巻き上げられていく『ヒサト』を眺め続けるチジクだった。
――そしてそこで大きく溜息を吐いたかと思うと、チジクの身体を再び『瑠璃色』のオーラが纏われ始めて行く。
「尊敬するヒサト様の為に、この身を捧げさせてもらう――!」
「グルルッッ!!」
「グオオオッッ!」
妖魔召士に使役された妖魔達が、チジクを殺そうと迫ってきた瞬間にその場で回転をするように刀を振り切ると、一瞬でランク『4』の妖魔達を斬り伏せたかと思うと、次の瞬間にはその場から忽然とチジクの姿が消えた――。
――否、あまりの速度の所為で消えた様に見えただけであった。
しかしあまりの速度に『妖魔召士』達は自分の使役した『式』達が突然式札に戻されたところだけしか目に映らず、目標とした妖魔退魔師『チジク』の姿が突然に消え去った為に、その場所を必死に探し始める。
「ど、どこへいった!?」
「わ、わからん……! や、奴は魔力が枯渇して動きを止めたのではなかったのか!?」
口々に喋り始める仲間の妖魔召士の声を聞いていた指揮官の『ジンゼン』もチジクの姿を見失っていた。
「ば、馬鹿な……! 本当に奴は何処へ逃げたのだ? 我々と違い奴らの『魔力』など雀の涙程しかない筈だ、あれだけ暴れまわればもう魔力枯渇して、そのまま倒れていてもおかしくはない筈だというのに……!」
しかしそこで自分の言葉で違和感に気づくジンゼン。
「魔力……枯渇? ま、まさか!?」
そしてジンゼンはこの場に居る他の妖魔召士の誰よりも早く、魔力がなくなった状態で『捉術』や『魔瞳』を用いる時に、代わりに使うモノ――『生命力』を『魔力』の代わりに使って発動を可能にするという事に気づいた。
そしてそうする理由に思い当たる事など限られている――。
この場に最後まで残ったあの妖魔退魔師が、今更自分の命の為に逃げ延びるとは考えられない以上、誰かを助けるために動いたのだろうと察した。
――それはつまり、彼自身が使役している『王連』と戦う一人の妖魔退魔師を助けようと動いたのだと理解したのであった。
そしてジンゼンが見上げる先、青い光が地上から発生している上昇気流を器用に乗りこなすようにして、空へと舞い上がって行く姿が視界に入った。
何とチジクは『王連』の技によって発生している風を利用して、巻き上げられている『ヒサト』を追って空を飛翔していっているのであった。
「そ、そんな馬鹿な事が……! お、おい! 王連、下だ! 下を見ろぉ!!」
…………
王連は挑発を行ったヒサトにトドメを刺す最後の瞬間を前に、意識がそちら以外には向いておらずに、下からグングンと竜巻状態の上昇気流に乗って駆けあがってきている存在にも、そして彼と契約を果たしている『ジンゼン』の声にも気付かずにいた。
「カッカッカ! 口ほどにも無いな人間! その程度でえらく大層な口を利いたものよ!」
そしてそう告げた『王連』は、矮小な存在が自分を馬鹿にした罪を償わせようと、その命を奪おうと『技』を用いようとした次の瞬間だった――。
「うおおおおっっ!!!」
「ぬっ!?」
一筋の青い光が恐るべき速度で下から昇って来たかと思うと、そのまま『王連』の背中を斬りつけながら、そのままの勢いを殺さずに『王連』の肩を足場に更に蹴り上がって、その上空に風で巻き上がられている『ヒサト』を両手で大事に抱き抱えると、そのままの勢いをもったまま大空を大きく跳躍を果たして無事に地面に着地。
チジクは振り返らずにそのまま王連からグングンと距離を取るように離れて行くのだった――。
しかし彼はそちらに視線を向けず、自分には自分のやるべき仕事が残されているとばかりに刀を強く握りしめる。
――そしてチジクのオーラの色が『天色』から『瑠璃』へと変貌を遂げて行く。
その瞬間にこれまでとは動く速度が一気に変わり、妖魔召士を殺す為に移動を開始する――。
魔力に乏しい妖魔退魔師はここぞというべき以外のところでは、たとえ『瑠璃』のオーラを纏う事が出来ても長時間運用が出来る魔力がもたない為に『天色』で戦う事を選択する。
とくにこれだけ数的不利な状況であれば、チジクが『瑠璃』のオーラを使ったとしても、その妖魔召士達を全滅させる前に確実に自分の時間が尽きる事は明白であった。しかしそれでも彼は『瑠璃』のオーラを選び行動を開始したのである。
妖魔召士達は出している『式』達に『チジク』を狙うように指示を出し、何とか生き延びようと右往左往しながらも『魔瞳』や『捉術』を用いる為に手印を行い続ける。
チジクはそんな妖魔召士達を追いかけながら、盾となるように立ち塞がる妖魔達を次々と斬り裂いて行く。
ランク『4』 ランク『5』 ランク『5.5』とあらゆる妖魔達を僅かな時間の間に斬って斬って斬り続けていく『チジク』だったが、そこでガクンッと態勢を崩してしまう。
恐るべき妖魔退魔師の動く速度、防御力が単なる『青』とは比較にならない程に上昇していた『チジク』はまるで高速で動く鉄壁の要塞のような存在となって、更には殺傷能力までついているという『化け物』となっていたが、その燃料がきれたかのように完全に動きが止まってしまった。
――魔力枯渇であった。
「……あーあ、終わっちまったか」
チジクは残念そうにそう呟くと、そこでようやく憂うような表情をしながら尊敬する副組長『ヒサト』を見る。そこではあの大天狗の『王連』に馬乗りにされて殴られているヒサトが見えた――。
「魔力はないが、残った命を燃やし尽くせば数十秒は再び力を宿せるか……? もう同志達はキョウカ様の元へ向かえたようだし、任務上では俺の役目は終えられただろうな――」
チジクがそう独り言ちている間にも、妖魔召士達が動かなくなった彼を殺すように『式』に襲うように指示する声が耳に入ってくる。
「だったら……、後は俺の好きに動いていいだろう……」
新たに使役された『式』の『幽鬼』や『狗神』がチジクの元に次々と迫って来るが、そちらを一瞥すらもせずに、天狗の『王連』の技によって空に巻き上げられていく『ヒサト』を眺め続けるチジクだった。
――そしてそこで大きく溜息を吐いたかと思うと、チジクの身体を再び『瑠璃色』のオーラが纏われ始めて行く。
「尊敬するヒサト様の為に、この身を捧げさせてもらう――!」
「グルルッッ!!」
「グオオオッッ!」
妖魔召士に使役された妖魔達が、チジクを殺そうと迫ってきた瞬間にその場で回転をするように刀を振り切ると、一瞬でランク『4』の妖魔達を斬り伏せたかと思うと、次の瞬間にはその場から忽然とチジクの姿が消えた――。
――否、あまりの速度の所為で消えた様に見えただけであった。
しかしあまりの速度に『妖魔召士』達は自分の使役した『式』達が突然式札に戻されたところだけしか目に映らず、目標とした妖魔退魔師『チジク』の姿が突然に消え去った為に、その場所を必死に探し始める。
「ど、どこへいった!?」
「わ、わからん……! や、奴は魔力が枯渇して動きを止めたのではなかったのか!?」
口々に喋り始める仲間の妖魔召士の声を聞いていた指揮官の『ジンゼン』もチジクの姿を見失っていた。
「ば、馬鹿な……! 本当に奴は何処へ逃げたのだ? 我々と違い奴らの『魔力』など雀の涙程しかない筈だ、あれだけ暴れまわればもう魔力枯渇して、そのまま倒れていてもおかしくはない筈だというのに……!」
しかしそこで自分の言葉で違和感に気づくジンゼン。
「魔力……枯渇? ま、まさか!?」
そしてジンゼンはこの場に居る他の妖魔召士の誰よりも早く、魔力がなくなった状態で『捉術』や『魔瞳』を用いる時に、代わりに使うモノ――『生命力』を『魔力』の代わりに使って発動を可能にするという事に気づいた。
そしてそうする理由に思い当たる事など限られている――。
この場に最後まで残ったあの妖魔退魔師が、今更自分の命の為に逃げ延びるとは考えられない以上、誰かを助けるために動いたのだろうと察した。
――それはつまり、彼自身が使役している『王連』と戦う一人の妖魔退魔師を助けようと動いたのだと理解したのであった。
そしてジンゼンが見上げる先、青い光が地上から発生している上昇気流を器用に乗りこなすようにして、空へと舞い上がって行く姿が視界に入った。
何とチジクは『王連』の技によって発生している風を利用して、巻き上げられている『ヒサト』を追って空を飛翔していっているのであった。
「そ、そんな馬鹿な事が……! お、おい! 王連、下だ! 下を見ろぉ!!」
…………
王連は挑発を行ったヒサトにトドメを刺す最後の瞬間を前に、意識がそちら以外には向いておらずに、下からグングンと竜巻状態の上昇気流に乗って駆けあがってきている存在にも、そして彼と契約を果たしている『ジンゼン』の声にも気付かずにいた。
「カッカッカ! 口ほどにも無いな人間! その程度でえらく大層な口を利いたものよ!」
そしてそう告げた『王連』は、矮小な存在が自分を馬鹿にした罪を償わせようと、その命を奪おうと『技』を用いようとした次の瞬間だった――。
「うおおおおっっ!!!」
「ぬっ!?」
一筋の青い光が恐るべき速度で下から昇って来たかと思うと、そのまま『王連』の背中を斬りつけながら、そのままの勢いを殺さずに『王連』の肩を足場に更に蹴り上がって、その上空に風で巻き上がられている『ヒサト』を両手で大事に抱き抱えると、そのままの勢いをもったまま大空を大きく跳躍を果たして無事に地面に着地。
チジクは振り返らずにそのまま王連からグングンと距離を取るように離れて行くのだった――。
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