1,267 / 1,906
サカダイ編
1250.生と死の瀬戸際
しおりを挟む
先程仲間を助けに行こうとした同志に忠告を行った妖魔退魔師は、迫りくる妖魔を何とか倒し凌ぎながら、大きく距離取るために跳躍をして見せたが、その時に仲間が首を捻り潰されて絶命してしまうところを見てしまうのだった。
「て、てめぇ……! 許さねぇ!」
結局忠告を無視して同志を助けに行ってしまったが故に殺されたのだから自業自得とはいえ、悪いのは救出に向かった男ではなく、ましてや直接手に掛けた妖魔でもなく、全てはヒュウガ一派の『妖魔召士』が全ての原因である。
それを理解している妖魔退魔師の男は、同志を手に掛けた妖魔ではなく、先程まで目を青くしながら、魔瞳を使って動きを止めていたであろう『ジンゼン』を睨みつけながらそう言葉を吐き捨てるのだった。
「ふふっ、今更何を仰っているのやら。我々に刀を向けた時点で我々と貴方がたはもう戦争をしていたのですよ? それだというのに仲間の命を奪われてそこまで怒るとは驚きですねぇ? 妖魔退魔師ともあろう方々が少しばかり覚悟が足りていないのではないですか?」
「な、何だと……!?」
周囲に居た『幽鬼』をようやく片付けたその妖魔退魔師の男は、勝手な事を宣っているジンゼンに更に激昂するのだった。
しかしそんな男を嘲笑うかの如く、上位の妖魔召士達は更に続々と『式』を出しながら、数少なくなった妖魔退魔師の『三組』の幹部達を取り囲み始める。
十数名居た妖魔退魔師『三組』の組員達は、もはやその半数以下まで数を減らしていた。
更に副組長である『ヒサト』はランク『6』の妖魔である『野槌』の体内に仲間を助けに入ったきり出て来ておらず、この『三組』の組長『キョウカ』の姿もこの場には居ない。
流石の達人揃いの妖魔退魔師の幹部達とはいっても、指揮官も居ない状況下で『上位妖魔召士』を同時にこれだけ相手をしながら戦うのは無理があったようである。
覚悟が足りていなかったのではないかと煽られるように告げられた妖魔退魔師の男だったが、乗せられるままに怒るのではなく、現状を冷静に省みて確かに自分達は『妖魔召士』という者達に対して驕りのようなモノがあったのだろうと自覚するのであった。
(妖魔召士達は『魔瞳』さえ気をつければ、後は『式』を頼りに戦うだけしか出来ない者達だと思っていた……。しかし実際に戦ってみて気づいたが、魔瞳に捉術、それに『式』に術式を織り交ぜて集団で襲い掛かって来たならば、これ程に脅威的なのだと思い知らされた……。彼ら妖魔召士は『禁術』と『妖魔』だけに頼った戦い方しか出来ないと思っていたが、決してそんな事はなかったわけだ)
妖魔と戦ってきた歴史を持つ人間は、彼ら『妖魔退魔師』だけではなく『妖魔召士』も同じなのだという事を仲間を半数以下まで減らされた事で、彼はようやく『妖魔召士』の強さというモノを自覚したのだった。
「だが、まだ負けたわけじゃない!」
妖魔退魔師の男はそう口にした後に『青』のオーラを刀に纏わせて、妖魔召士を強敵だと認めた上で覚悟を決めるのだった。
「もう勝敗は決したと思いますが、まだ諦めてはいないようですね? いやはや結構な事ですよ、存分に最後まで足掻いて下さい。そうなさって頂ければ新たなヒュウガ様の『妖魔召士』組織の名が上がり評価されるのですから」
そう言ってジンゼンは残り僅かとなっている妖魔退魔師『三組』の幹部の男に告げるのであった。
「せめてヒサト様達を呑み込んだその『蛇』の化け物だけは……! 必ず斬ってやる!」
その言葉を放って男が『野槌』に向かって突っ切っていくと、周りに居た妖魔退魔師達も『幽鬼』や他の妖魔を無視して男に続いた。
「『野槌』! 残りの連中も呑み干してやれ!」
ジンゼンの命令を聞いた『野槌』は、オーラを纏いながら迫って来る妖魔退魔師達の方に体を向け始める。
――しかしそこで『野槌』に異変が生じた。
「しゅ、しゅるるるっ!!」
突然『野槌』が慌てるような声を上げだしたかと思うと、その場でグルグルとまわり出したのである。
更に『野槌』は苦しみ始めたかと思うと、奇妙な声をあげながらジンゼン達の居る方へ向けて移動してくるのであった。
「な、何を!?」
「しゅるるるっっ!!」
突然の異変に奇行な動きを見せた『野槌』は助けを求めるようにジンゼンの方へ向かってくるが、そのジンゼンに辿り着く前に動きを止めたかと思うと、次の瞬間には身体が体内から引き裂かれながら血を噴き出し始めた。
「な、なな!?」
「くっ! ジンゼン殿、離れなされよ!」
ジンゼンは驚きに目を丸くしていたが、直ぐに危険を察知した他の『妖魔召士』達が、一斉に『野槌』と『ジンゼン』の居る方へと移動を開始してそう告げるのだった。
そしてのたうち回っていた『野槌』の体内から二人の男が抜け出て来たかと思うと、恐ろしい形相を見せる
彼は最初に野槌に呑み込まれた男の手を自身の肩にかけながら、周囲の妖魔召士に殺気立った視線を向ける。
「うっ……!」
その『ヒサト』から視線を向けられた妖魔召士達は、ジンゼンを守り立ったままで、ヒサトの視線に怯みながら後退った。
「ひ、ヒサト副組長!! ご無事で!」
玉砕覚悟で『野槌』に向かっていった隊士は、嬉しそうな表情を見せながら『野槌』を体内から突き破って出て来たヒサトに駆け寄って声を掛けるのだった。
「て、てめぇ……! 許さねぇ!」
結局忠告を無視して同志を助けに行ってしまったが故に殺されたのだから自業自得とはいえ、悪いのは救出に向かった男ではなく、ましてや直接手に掛けた妖魔でもなく、全てはヒュウガ一派の『妖魔召士』が全ての原因である。
それを理解している妖魔退魔師の男は、同志を手に掛けた妖魔ではなく、先程まで目を青くしながら、魔瞳を使って動きを止めていたであろう『ジンゼン』を睨みつけながらそう言葉を吐き捨てるのだった。
「ふふっ、今更何を仰っているのやら。我々に刀を向けた時点で我々と貴方がたはもう戦争をしていたのですよ? それだというのに仲間の命を奪われてそこまで怒るとは驚きですねぇ? 妖魔退魔師ともあろう方々が少しばかり覚悟が足りていないのではないですか?」
「な、何だと……!?」
周囲に居た『幽鬼』をようやく片付けたその妖魔退魔師の男は、勝手な事を宣っているジンゼンに更に激昂するのだった。
しかしそんな男を嘲笑うかの如く、上位の妖魔召士達は更に続々と『式』を出しながら、数少なくなった妖魔退魔師の『三組』の幹部達を取り囲み始める。
十数名居た妖魔退魔師『三組』の組員達は、もはやその半数以下まで数を減らしていた。
更に副組長である『ヒサト』はランク『6』の妖魔である『野槌』の体内に仲間を助けに入ったきり出て来ておらず、この『三組』の組長『キョウカ』の姿もこの場には居ない。
流石の達人揃いの妖魔退魔師の幹部達とはいっても、指揮官も居ない状況下で『上位妖魔召士』を同時にこれだけ相手をしながら戦うのは無理があったようである。
覚悟が足りていなかったのではないかと煽られるように告げられた妖魔退魔師の男だったが、乗せられるままに怒るのではなく、現状を冷静に省みて確かに自分達は『妖魔召士』という者達に対して驕りのようなモノがあったのだろうと自覚するのであった。
(妖魔召士達は『魔瞳』さえ気をつければ、後は『式』を頼りに戦うだけしか出来ない者達だと思っていた……。しかし実際に戦ってみて気づいたが、魔瞳に捉術、それに『式』に術式を織り交ぜて集団で襲い掛かって来たならば、これ程に脅威的なのだと思い知らされた……。彼ら妖魔召士は『禁術』と『妖魔』だけに頼った戦い方しか出来ないと思っていたが、決してそんな事はなかったわけだ)
妖魔と戦ってきた歴史を持つ人間は、彼ら『妖魔退魔師』だけではなく『妖魔召士』も同じなのだという事を仲間を半数以下まで減らされた事で、彼はようやく『妖魔召士』の強さというモノを自覚したのだった。
「だが、まだ負けたわけじゃない!」
妖魔退魔師の男はそう口にした後に『青』のオーラを刀に纏わせて、妖魔召士を強敵だと認めた上で覚悟を決めるのだった。
「もう勝敗は決したと思いますが、まだ諦めてはいないようですね? いやはや結構な事ですよ、存分に最後まで足掻いて下さい。そうなさって頂ければ新たなヒュウガ様の『妖魔召士』組織の名が上がり評価されるのですから」
そう言ってジンゼンは残り僅かとなっている妖魔退魔師『三組』の幹部の男に告げるのであった。
「せめてヒサト様達を呑み込んだその『蛇』の化け物だけは……! 必ず斬ってやる!」
その言葉を放って男が『野槌』に向かって突っ切っていくと、周りに居た妖魔退魔師達も『幽鬼』や他の妖魔を無視して男に続いた。
「『野槌』! 残りの連中も呑み干してやれ!」
ジンゼンの命令を聞いた『野槌』は、オーラを纏いながら迫って来る妖魔退魔師達の方に体を向け始める。
――しかしそこで『野槌』に異変が生じた。
「しゅ、しゅるるるっ!!」
突然『野槌』が慌てるような声を上げだしたかと思うと、その場でグルグルとまわり出したのである。
更に『野槌』は苦しみ始めたかと思うと、奇妙な声をあげながらジンゼン達の居る方へ向けて移動してくるのであった。
「な、何を!?」
「しゅるるるっっ!!」
突然の異変に奇行な動きを見せた『野槌』は助けを求めるようにジンゼンの方へ向かってくるが、そのジンゼンに辿り着く前に動きを止めたかと思うと、次の瞬間には身体が体内から引き裂かれながら血を噴き出し始めた。
「な、なな!?」
「くっ! ジンゼン殿、離れなされよ!」
ジンゼンは驚きに目を丸くしていたが、直ぐに危険を察知した他の『妖魔召士』達が、一斉に『野槌』と『ジンゼン』の居る方へと移動を開始してそう告げるのだった。
そしてのたうち回っていた『野槌』の体内から二人の男が抜け出て来たかと思うと、恐ろしい形相を見せる
彼は最初に野槌に呑み込まれた男の手を自身の肩にかけながら、周囲の妖魔召士に殺気立った視線を向ける。
「うっ……!」
その『ヒサト』から視線を向けられた妖魔召士達は、ジンゼンを守り立ったままで、ヒサトの視線に怯みながら後退った。
「ひ、ヒサト副組長!! ご無事で!」
玉砕覚悟で『野槌』に向かっていった隊士は、嬉しそうな表情を見せながら『野槌』を体内から突き破って出て来たヒサトに駆け寄って声を掛けるのだった。
0
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる