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サカダイ編
1249.傾く形勢
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ケイノトの門前で守っていた『三組』の妖魔退魔師達だが、ヒュウガ一派の『上位妖魔召士』達の連携ある戦術の前に半数の隊士達が戦闘不能に陥っていた。
厳密には怪我などをして戦闘が続行不能というわけでもなく、普段通りの戦闘を行える能力は残されているのだが、厄介な事に相手の妖魔召士達の放った『捉術』によって、幻覚作用と思わしき状況にとらわれてしまっているのだった。
十数名居た妖魔退魔師達だが、この場での現在の指揮官のヒサトは部下を助けるために、自らランク6の妖魔『野槌』の口の中へ入り込んでいってしまい、半数近くが妖魔召士達の『捉術』の餌食となって幻覚の中の妖魔を倒そうと闇雲に攻撃を行っている状況である。
そしてその幻覚を見せられている妖魔退魔師の隊士は、闇雲に攻撃をしていた状況から、明確に人間の呼吸に反応し、そちらに向けて殺意を向け始めるのだった。
更にその殺意を向けられた隊士もまた、幻覚を通して『敵』からの殺意と勘違いを行って、こちらも『三組』の仲間に向けて『天色』のオーラを纏った刀を構えて明確に殺すつもりでその得を振り切った――。
ガキィンという音と共に殺すつもりで振り切られた妖魔退魔師の刀を、同じ妖魔退魔師の刀で弾く音が響き渡った。
幻覚を見せられて正気では無いとはいっても、身体自体は普段通りなのである。つまり妖魔退魔師の幹部であり、高ランクの妖魔を相手に戦い続けて来た刀の達人同士が、抜き身の刀で本気で殺し合いを始めるのだった。
「お、おい!!」
妖魔召士の『捉術』から逃れる事に成功していた隊士は、仲間達が互いを認識出来ずに本気で打ち合っているのを見て、慌てて止めに入ろうとするが――。
そこに数の上でも既に有利差をもぎ取った妖魔召士達が、待ってましたとばかりに更なる行動を取り始める。
仲間達を『捉術』の『結界』の範囲外へと連れ出そうと駆け寄って行った隊士に向けて右手を突き出すと、妖魔召士達は『魔瞳』とは違い、明確に自身の『捉術』を用いる時に使う発動に必要な『魔力』そのものを放った。
放たれた『魔力』の圧の速度は『魔瞳』が放たれる時の魔力の波の襲い掛かる速度とは違い、放出速度が数倍程速くそして威力も桁違いだった。
「くっ……!!」
しかしそこは流石に妖魔退魔師達であった――。
隙を狙って放たれた妖魔召士の魔力を見事に躱せてみせる。
だが、単純な武力の差では妖魔退魔師の方がまだ上ではあるが、既に数の上では逆転をしてしまっている今の状況では、遠距離を主として戦う妖魔召士の方が『戦闘有利』といえた。
「急くな! 同志達を無理に助けようとするとお前もやられるぞ! 奴らの狙いは残った我々が救出に向かおうとしたところを一気に叩くつもりだ!」
「くっそがぁ……!」
同士討ちを行い始めた同志達を助ける為に『結界』内に割って入ろうとした一人の隊士に、今も『幽鬼』や迫りくる妖魔の数々と戦い続ける別の妖魔退魔師達が忠告を行うのだった。
しかしその助けに入ろうとした妖魔退魔師は納得が行かず、いちかばちか『捉術』を放ち続けている数人の『妖魔召士』達を一刀のもとに斬り捨ててやろうと考え始める。
(……奴らは確かに厄介な存在だが、所詮『式』に頼らなければ身一つでは何もできない者達だ。同志達に術を使って隙がある今の内に、全員斬り捨ててやる!)
先程の助けに入ろうとした妖魔退魔師の男はそう決心すると、手に持つ刀に再び青いオーラを纏わせ始めると、一目散に『妖魔召士』達に向けて斬り込んでいった。
それを見た妖魔召士側の指揮官『ジンゼン』は笑みを浮かべたかと思うと、捉術を使っている妖魔召士を一瞥する。
ジンゼンに視線を送られた『上位妖魔召士』はこくりと頷くと、自分に向かって突進してきている男から身を守る為に新たに『式』を数体使役した。
ぼんっ、ぼんっという音と共に、今度は人型をとれる高ランクの妖魔である『鬼人』が出現した。
「……あの迫りくる男の動きを数秒程止めろ。倒せなくてもいいから時間を稼げ」
「……分かった」
その『鬼人』は契約主の『上位妖魔召士』の命令に従うと、刀を持って突っ込んで来ている妖魔退魔師を睨みながら構え始める。
「邪魔をするならお前から先に斬る!」
妖魔退魔師の男は斬ろうとしていた妖魔召士の男の前に出現した『式』にそう言い放つと、目にも止まらぬ速さで『鬼人』の間合いに一気に入り込んだかと思うと『鬼人』の突き出して来た手を掻い潜って刀を振り切った。
「ぐっ……ぬっ!」
鬼人の固い皮膚も何のそのといわんばかりに『天色』の鮮やかな青のオーラに包まれた妖魔退魔師の刀は、あっさりと鬼人の腕を切断して見せた。
「俺達妖魔退魔師を舐めるなよ!」
そして刀を返して今度は袈裟斬りで『鬼人』の肩口から掻っ捌こうとした瞬間、妖魔退魔師の男は動けなくなった。
「なっ……! う、うごか……な!?」
声を出す事は出来るのだが、男の刀を持った手が自分の意志で動かせなくなり、驚愕に目を丸くしていると、片手を斬られた『鬼人』は笑みを浮かべた。
「……残念だったな?」
そして避ける事も防御をする事も出来ずに無防備に立っている妖魔退魔師の男は、その鬼人の斬られていない方の腕で首を掴まれてしまい――。
ぐちゃりっという音と共に、妖魔退魔師の男の首はランク5の『鬼人』の腕で引き千切られてしまうのだった。
「……ふふっ、見事です」
『三組』の幹部の妖魔退魔師の首が取れるところを見たジンゼンは、魔瞳で青くしていた目を通常に戻すとそう告げるのだった。
……
……
……
厳密には怪我などをして戦闘が続行不能というわけでもなく、普段通りの戦闘を行える能力は残されているのだが、厄介な事に相手の妖魔召士達の放った『捉術』によって、幻覚作用と思わしき状況にとらわれてしまっているのだった。
十数名居た妖魔退魔師達だが、この場での現在の指揮官のヒサトは部下を助けるために、自らランク6の妖魔『野槌』の口の中へ入り込んでいってしまい、半数近くが妖魔召士達の『捉術』の餌食となって幻覚の中の妖魔を倒そうと闇雲に攻撃を行っている状況である。
そしてその幻覚を見せられている妖魔退魔師の隊士は、闇雲に攻撃をしていた状況から、明確に人間の呼吸に反応し、そちらに向けて殺意を向け始めるのだった。
更にその殺意を向けられた隊士もまた、幻覚を通して『敵』からの殺意と勘違いを行って、こちらも『三組』の仲間に向けて『天色』のオーラを纏った刀を構えて明確に殺すつもりでその得を振り切った――。
ガキィンという音と共に殺すつもりで振り切られた妖魔退魔師の刀を、同じ妖魔退魔師の刀で弾く音が響き渡った。
幻覚を見せられて正気では無いとはいっても、身体自体は普段通りなのである。つまり妖魔退魔師の幹部であり、高ランクの妖魔を相手に戦い続けて来た刀の達人同士が、抜き身の刀で本気で殺し合いを始めるのだった。
「お、おい!!」
妖魔召士の『捉術』から逃れる事に成功していた隊士は、仲間達が互いを認識出来ずに本気で打ち合っているのを見て、慌てて止めに入ろうとするが――。
そこに数の上でも既に有利差をもぎ取った妖魔召士達が、待ってましたとばかりに更なる行動を取り始める。
仲間達を『捉術』の『結界』の範囲外へと連れ出そうと駆け寄って行った隊士に向けて右手を突き出すと、妖魔召士達は『魔瞳』とは違い、明確に自身の『捉術』を用いる時に使う発動に必要な『魔力』そのものを放った。
放たれた『魔力』の圧の速度は『魔瞳』が放たれる時の魔力の波の襲い掛かる速度とは違い、放出速度が数倍程速くそして威力も桁違いだった。
「くっ……!!」
しかしそこは流石に妖魔退魔師達であった――。
隙を狙って放たれた妖魔召士の魔力を見事に躱せてみせる。
だが、単純な武力の差では妖魔退魔師の方がまだ上ではあるが、既に数の上では逆転をしてしまっている今の状況では、遠距離を主として戦う妖魔召士の方が『戦闘有利』といえた。
「急くな! 同志達を無理に助けようとするとお前もやられるぞ! 奴らの狙いは残った我々が救出に向かおうとしたところを一気に叩くつもりだ!」
「くっそがぁ……!」
同士討ちを行い始めた同志達を助ける為に『結界』内に割って入ろうとした一人の隊士に、今も『幽鬼』や迫りくる妖魔の数々と戦い続ける別の妖魔退魔師達が忠告を行うのだった。
しかしその助けに入ろうとした妖魔退魔師は納得が行かず、いちかばちか『捉術』を放ち続けている数人の『妖魔召士』達を一刀のもとに斬り捨ててやろうと考え始める。
(……奴らは確かに厄介な存在だが、所詮『式』に頼らなければ身一つでは何もできない者達だ。同志達に術を使って隙がある今の内に、全員斬り捨ててやる!)
先程の助けに入ろうとした妖魔退魔師の男はそう決心すると、手に持つ刀に再び青いオーラを纏わせ始めると、一目散に『妖魔召士』達に向けて斬り込んでいった。
それを見た妖魔召士側の指揮官『ジンゼン』は笑みを浮かべたかと思うと、捉術を使っている妖魔召士を一瞥する。
ジンゼンに視線を送られた『上位妖魔召士』はこくりと頷くと、自分に向かって突進してきている男から身を守る為に新たに『式』を数体使役した。
ぼんっ、ぼんっという音と共に、今度は人型をとれる高ランクの妖魔である『鬼人』が出現した。
「……あの迫りくる男の動きを数秒程止めろ。倒せなくてもいいから時間を稼げ」
「……分かった」
その『鬼人』は契約主の『上位妖魔召士』の命令に従うと、刀を持って突っ込んで来ている妖魔退魔師を睨みながら構え始める。
「邪魔をするならお前から先に斬る!」
妖魔退魔師の男は斬ろうとしていた妖魔召士の男の前に出現した『式』にそう言い放つと、目にも止まらぬ速さで『鬼人』の間合いに一気に入り込んだかと思うと『鬼人』の突き出して来た手を掻い潜って刀を振り切った。
「ぐっ……ぬっ!」
鬼人の固い皮膚も何のそのといわんばかりに『天色』の鮮やかな青のオーラに包まれた妖魔退魔師の刀は、あっさりと鬼人の腕を切断して見せた。
「俺達妖魔退魔師を舐めるなよ!」
そして刀を返して今度は袈裟斬りで『鬼人』の肩口から掻っ捌こうとした瞬間、妖魔退魔師の男は動けなくなった。
「なっ……! う、うごか……な!?」
声を出す事は出来るのだが、男の刀を持った手が自分の意志で動かせなくなり、驚愕に目を丸くしていると、片手を斬られた『鬼人』は笑みを浮かべた。
「……残念だったな?」
そして避ける事も防御をする事も出来ずに無防備に立っている妖魔退魔師の男は、その鬼人の斬られていない方の腕で首を掴まれてしまい――。
ぐちゃりっという音と共に、妖魔退魔師の男の首はランク5の『鬼人』の腕で引き千切られてしまうのだった。
「……ふふっ、見事です」
『三組』の幹部の妖魔退魔師の首が取れるところを見たジンゼンは、魔瞳で青くしていた目を通常に戻すとそう告げるのだった。
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