1,258 / 1,915
サカダイ編
1241.魔力を感じ取れない理由
しおりを挟む
他の妖魔召士達は各々が契約を果たしている『式』を出している。そしてケイノトを守り立つように並んでいる妖魔退魔師達の隙を窺うように視線を向けて『魔瞳』のタイミングを図っているようであった。
既に戦闘態勢が整いつつある両組織の者達の中で、まだ自分の『式』すら出せていない『キネツグ』は、必死に魔力を放出しようとするのだが、一向に慣れ親しんだ自分の『魔力』を感じられなかった。
(なっ、何故俺は自分の『魔力』が感じられないんだ!? 前回の戦い以降は『魔瞳』も『捉術』も一切使っていないし、魔力を枯渇するような真似はしなかった筈……)
キネツグは自分の魔力が感じられないとボヤいたが、実際には良く集中をすれば感じ取れる筈であった。しかし彼が自分の魔力を感じ取れないと思えた理由も確かに明確に存在していたのである。
――それは『煌鴟梟』のアジト内で、彼がエイジと戦った事が原因であった。
エイジは彼が間違った方向へと進み始めていた事に懸念を感じ、そのキネツグの道を正そうと考えてお灸をすえる意味を兼ねて彼の捉術『修劫』によって『魔力』を最小限だけを残しつつ奪ったのであった。
魔力を失った彼が再び『妖魔召士』としての道を真面目に考えて、しっかりとやり直そうと考えるならば『エイジ』は彼の魔力を元の状態へと戻すつもりであったが、結局は成り行き上仕方がなかったとはいっても『ヒュウガ』達によって旅籠町の予備群の屯所の牢から連れ出されてしまい、その機会は永久に閉ざされてしまった。つまり彼は残された僅かな『魔力』で今後は、ヒュウガ一派として生きて行かなければならないのである。
当然残された魔力では『禁術』を『式』に使うどころか、その契約を果たしているランク『3』以上の『式』を使役した瞬間に魔力枯渇を伴ってしまうだろう。
最悪魔力を補うために生命力を犠牲に使役せざるを得なくなり、その僅かな使役時間と引き換えに彼は絶命するのがオチだろう。普段通りに自分の魔力が感じられない程に微弱となった『魔力』では、ランク『1』の妖魔を僅かな時間使役する程度が関の山であった。
勿論自分がそんな状態なのだという事を存じていない彼は、何故自分の魔力が感じられないのか、そしてその理由にも思い至る事もなく、必死に『魔力』を使って『虚空丸』や『卓鬼』を出そうと試みるのであった。
(魔力を感じられないだけじゃなく『契約紙帳』に『虚空丸』や『卓鬼』の名がなくなっている!? ど、どういう事だ? 俺は契約を解除した覚えはないぞ)
身に覚えのない事ばかりの連続でキネツグはただでさえ焦っているというのに、隣に居るチアキからも早く『式』を出せと急かしてくる為に混乱から頭を抱え始めるのだった。
妖魔退魔師側の『三組副組長』であるヒサトは、敵となる妖魔召士達の『魔瞳』を警戒して一人一人の表情を窺っていた為に、当然パニック状態に陥っている『キネツグ』のその様子を見逃す筈もなかった。
(あの若いガキの妖魔召士、何か問題が起きているのか? 周りの連中はそこそこにランクの高い『式』を出している上に『魔瞳』を使う魔力の準備も出来ていそうな余裕っぷりだが、あのガキはまだ『式』すら出せていない。これは好機か? あれが演技なら大したものだが、そうでないのならばあそこから崩せる!)
妖魔召士自体の人数は、この場に居る妖魔退魔師側の『三組』の数に劣るが、当然妖魔召士達は『式』と呼ばれる契約を果たしている妖魔を魔力が続く限り使役が出来る。つまりは『妖魔召士』一人であっても、戦力として数えるならば決して侮れるモノではないのである。
そんな妖魔召士の一人が何かトラブルを引き起こしているのならば、そこを突かない理由が妖魔退魔師側にはない。こちらにそう思わせるのが彼の思惑だったとしても、こちらに何も不利益はないのだから罠であっても乗るべきである。
――そう考えた『ヒサト』は、組の部下達に新たな命令を出すのであった。
既に戦闘態勢が整いつつある両組織の者達の中で、まだ自分の『式』すら出せていない『キネツグ』は、必死に魔力を放出しようとするのだが、一向に慣れ親しんだ自分の『魔力』を感じられなかった。
(なっ、何故俺は自分の『魔力』が感じられないんだ!? 前回の戦い以降は『魔瞳』も『捉術』も一切使っていないし、魔力を枯渇するような真似はしなかった筈……)
キネツグは自分の魔力が感じられないとボヤいたが、実際には良く集中をすれば感じ取れる筈であった。しかし彼が自分の魔力を感じ取れないと思えた理由も確かに明確に存在していたのである。
――それは『煌鴟梟』のアジト内で、彼がエイジと戦った事が原因であった。
エイジは彼が間違った方向へと進み始めていた事に懸念を感じ、そのキネツグの道を正そうと考えてお灸をすえる意味を兼ねて彼の捉術『修劫』によって『魔力』を最小限だけを残しつつ奪ったのであった。
魔力を失った彼が再び『妖魔召士』としての道を真面目に考えて、しっかりとやり直そうと考えるならば『エイジ』は彼の魔力を元の状態へと戻すつもりであったが、結局は成り行き上仕方がなかったとはいっても『ヒュウガ』達によって旅籠町の予備群の屯所の牢から連れ出されてしまい、その機会は永久に閉ざされてしまった。つまり彼は残された僅かな『魔力』で今後は、ヒュウガ一派として生きて行かなければならないのである。
当然残された魔力では『禁術』を『式』に使うどころか、その契約を果たしているランク『3』以上の『式』を使役した瞬間に魔力枯渇を伴ってしまうだろう。
最悪魔力を補うために生命力を犠牲に使役せざるを得なくなり、その僅かな使役時間と引き換えに彼は絶命するのがオチだろう。普段通りに自分の魔力が感じられない程に微弱となった『魔力』では、ランク『1』の妖魔を僅かな時間使役する程度が関の山であった。
勿論自分がそんな状態なのだという事を存じていない彼は、何故自分の魔力が感じられないのか、そしてその理由にも思い至る事もなく、必死に『魔力』を使って『虚空丸』や『卓鬼』を出そうと試みるのであった。
(魔力を感じられないだけじゃなく『契約紙帳』に『虚空丸』や『卓鬼』の名がなくなっている!? ど、どういう事だ? 俺は契約を解除した覚えはないぞ)
身に覚えのない事ばかりの連続でキネツグはただでさえ焦っているというのに、隣に居るチアキからも早く『式』を出せと急かしてくる為に混乱から頭を抱え始めるのだった。
妖魔退魔師側の『三組副組長』であるヒサトは、敵となる妖魔召士達の『魔瞳』を警戒して一人一人の表情を窺っていた為に、当然パニック状態に陥っている『キネツグ』のその様子を見逃す筈もなかった。
(あの若いガキの妖魔召士、何か問題が起きているのか? 周りの連中はそこそこにランクの高い『式』を出している上に『魔瞳』を使う魔力の準備も出来ていそうな余裕っぷりだが、あのガキはまだ『式』すら出せていない。これは好機か? あれが演技なら大したものだが、そうでないのならばあそこから崩せる!)
妖魔召士自体の人数は、この場に居る妖魔退魔師側の『三組』の数に劣るが、当然妖魔召士達は『式』と呼ばれる契約を果たしている妖魔を魔力が続く限り使役が出来る。つまりは『妖魔召士』一人であっても、戦力として数えるならば決して侮れるモノではないのである。
そんな妖魔召士の一人が何かトラブルを引き起こしているのならば、そこを突かない理由が妖魔退魔師側にはない。こちらにそう思わせるのが彼の思惑だったとしても、こちらに何も不利益はないのだから罠であっても乗るべきである。
――そう考えた『ヒサト』は、組の部下達に新たな命令を出すのであった。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる