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サカダイ編
1223.信用に値しない妖魔召士
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自分を見上げている鬼人の妖魔の様子を見たキョウカは、どうやら既に戦う意思はなくその上でキョウカが何か自分に話しかけているという事には理解を示せているのだろうが、現在この妖魔は『妖魔召士』の術の影響か、それとも別の何か『妖魔召士』が『式』を結ぶ上で成立している副作用によるものなのか、そこまでは分からないがどうやらキョウカの言葉に理解は示してはなさそうだった。
(ふーむ。人型となっている以上は多少なりとも言葉が通じると思っていただけど、やっぱり先程あの男が長い時間を掛けて手印を結んでいた術式が影響を及ぼしているのでしょうね。そうなるとこの妖魔をいくら説得しようとしても無駄かな。まぁ本能によるものかどうかまでは知らないけど、もうこの妖魔は私に対して敵意は見せてきていない。つまりこのまま放っておいても問題は無いでしょう)
そう考えるキョウカだったが、目の前に居るこの『鬼人』は術の影響もあってランク『6.5』相当の力量を有している。例えば組に所属していない妖魔退魔師衆や、下部組織の予備群であればこの脅えている今の『妖魔』であってもキョウカの考えた様に『このまま放っておく』という選択肢は決して選ぶ事はなかっただろう。あくまで目を離した事でこの『鬼人』が万が一襲ってきたとしても、彼女にとっては何一つ脅威はないと判断したからこその選択肢であった。
「元に戻す方法なんて分からないし、仕方ないから一番可能性の高い事を試してみようかな」
顎の下に手をやりながら考え付いた一つの事をやろうと決めたキョウカは、そう口に出した後にその妖魔から視線を外して、森の近くへと後退って離れようとしていた人間の方を一瞥する。
「ひ、ひぃっ……!!」
ミョウイは立って走って逃げるような素振りは見せず、座っている態勢のままでゆっくりと手で這うように森へと後退っていた。どうやら彼も二体に禁術を施すという無茶な真似をした所為で、魔力枯渇によって戦わずとも満身創痍なのだろう。
そしてキョウカに視線を向けられた事で、このまま逃げられるかもと淡い期待を抱いていた彼は、再び絶望の淵へと落とされて悲鳴を上げるのだった。
「仲間をやられて契約している妖魔が危険な状態に陥っているというのに、よくもまぁ自分一人だけ逃げ出そうと出来るわね?」
信じられないとばかりに失望するような目をミョウイに向けながら、彼女はそう告げて彼に近づいて行く。
「ま、待て! 待ってくれ!」
何とか湿地帯を抜けて森付近へと近づいてきていたミョウイだが、キョウカが近くまで来た事で彼はもう逃げられないと理解したようで、その場で振り返りながらキョウカに必死に救いを求めるように言葉を出す。
「お前の目的はヒュウガ様の居場所なのだろう!? わ、ワシを生かしてくれると約束してくれるのならば、お前をヒュウガ様の居る場所まで案内しよう!」
信じられないような言葉を平気で口にする『妖魔召士』の存在に、近くまで歩いてきていたキョウカはその足を止めて蔑むような視線をミョウイに向けながら口を開いた。
「貴方は仲間や契約を結んだ自分の『式』を見捨てた挙句に、自分が信じてついて行こうと決めた相手までも裏切るというの?」
「し、死ぬよりはマシだ……! それに青臭い正義感や志などは『妖魔召士』組織を背いた時に既にわしらは捨てている! わしらの存在を示す為にはより強い者に従い、そして何としても生き続けなくては意味がない! お主がワシを生かしてくれるというのであれば、きっとワシは役に立って見せるぞ!?」
確かに自分という存在を継続させる事で泥臭く生きて行く事も時には必要な事ではあるが、そこに信念や志がないのであれば、結局最後に手元に残るものは価値のないモノになる。そう考えるキョウカにとって、ただ単に生き残る事だけを目的としてついていこうと思った人間を裏切って自分の『式』すらも見捨てようとしたこの『ミョウイ』という目の前で醜く宣っている妖魔召士に対して少しも共感出来る部分はなかった。
キョウカはもう目の前の男に興味を失ったようで、持っていた大太刀を両手で握りしめる。
「ま、待って……! た、助けてく……」
自分の背丈に見合わぬ程に大きな太刀を恐ろしく速く振り切ったキョウカは、救いを求めていたミョウイの首をあっさりと切り落とすのだった。
「残念だけど……、私はあっさりと裏切る事の出来る人間の言葉を信用しない事にしているの」
血を払うように大太刀をその場で振ったかと思うと、再びその大太刀を背に仕舞い直して先程の『鬼人』の元へと歩いて行く。
「ぐっ……、俺は……」
どうやらミョウイが絶命した事で、術で操られていた『鬼人』は自我を取り戻したのだろう。頭を押さえて苦しんではいたが、キョウカにも言葉が聞き取れるようになっていた。
「どうやら自分を取り戻せたみたいね?」
人の言葉が話せるという事は、キョウカの話す言葉も理解が出来るだろうと、彼女は『鬼人』に話し掛けるのだった。
(ふーむ。人型となっている以上は多少なりとも言葉が通じると思っていただけど、やっぱり先程あの男が長い時間を掛けて手印を結んでいた術式が影響を及ぼしているのでしょうね。そうなるとこの妖魔をいくら説得しようとしても無駄かな。まぁ本能によるものかどうかまでは知らないけど、もうこの妖魔は私に対して敵意は見せてきていない。つまりこのまま放っておいても問題は無いでしょう)
そう考えるキョウカだったが、目の前に居るこの『鬼人』は術の影響もあってランク『6.5』相当の力量を有している。例えば組に所属していない妖魔退魔師衆や、下部組織の予備群であればこの脅えている今の『妖魔』であってもキョウカの考えた様に『このまま放っておく』という選択肢は決して選ぶ事はなかっただろう。あくまで目を離した事でこの『鬼人』が万が一襲ってきたとしても、彼女にとっては何一つ脅威はないと判断したからこその選択肢であった。
「元に戻す方法なんて分からないし、仕方ないから一番可能性の高い事を試してみようかな」
顎の下に手をやりながら考え付いた一つの事をやろうと決めたキョウカは、そう口に出した後にその妖魔から視線を外して、森の近くへと後退って離れようとしていた人間の方を一瞥する。
「ひ、ひぃっ……!!」
ミョウイは立って走って逃げるような素振りは見せず、座っている態勢のままでゆっくりと手で這うように森へと後退っていた。どうやら彼も二体に禁術を施すという無茶な真似をした所為で、魔力枯渇によって戦わずとも満身創痍なのだろう。
そしてキョウカに視線を向けられた事で、このまま逃げられるかもと淡い期待を抱いていた彼は、再び絶望の淵へと落とされて悲鳴を上げるのだった。
「仲間をやられて契約している妖魔が危険な状態に陥っているというのに、よくもまぁ自分一人だけ逃げ出そうと出来るわね?」
信じられないとばかりに失望するような目をミョウイに向けながら、彼女はそう告げて彼に近づいて行く。
「ま、待て! 待ってくれ!」
何とか湿地帯を抜けて森付近へと近づいてきていたミョウイだが、キョウカが近くまで来た事で彼はもう逃げられないと理解したようで、その場で振り返りながらキョウカに必死に救いを求めるように言葉を出す。
「お前の目的はヒュウガ様の居場所なのだろう!? わ、ワシを生かしてくれると約束してくれるのならば、お前をヒュウガ様の居る場所まで案内しよう!」
信じられないような言葉を平気で口にする『妖魔召士』の存在に、近くまで歩いてきていたキョウカはその足を止めて蔑むような視線をミョウイに向けながら口を開いた。
「貴方は仲間や契約を結んだ自分の『式』を見捨てた挙句に、自分が信じてついて行こうと決めた相手までも裏切るというの?」
「し、死ぬよりはマシだ……! それに青臭い正義感や志などは『妖魔召士』組織を背いた時に既にわしらは捨てている! わしらの存在を示す為にはより強い者に従い、そして何としても生き続けなくては意味がない! お主がワシを生かしてくれるというのであれば、きっとワシは役に立って見せるぞ!?」
確かに自分という存在を継続させる事で泥臭く生きて行く事も時には必要な事ではあるが、そこに信念や志がないのであれば、結局最後に手元に残るものは価値のないモノになる。そう考えるキョウカにとって、ただ単に生き残る事だけを目的としてついていこうと思った人間を裏切って自分の『式』すらも見捨てようとしたこの『ミョウイ』という目の前で醜く宣っている妖魔召士に対して少しも共感出来る部分はなかった。
キョウカはもう目の前の男に興味を失ったようで、持っていた大太刀を両手で握りしめる。
「ま、待って……! た、助けてく……」
自分の背丈に見合わぬ程に大きな太刀を恐ろしく速く振り切ったキョウカは、救いを求めていたミョウイの首をあっさりと切り落とすのだった。
「残念だけど……、私はあっさりと裏切る事の出来る人間の言葉を信用しない事にしているの」
血を払うように大太刀をその場で振ったかと思うと、再びその大太刀を背に仕舞い直して先程の『鬼人』の元へと歩いて行く。
「ぐっ……、俺は……」
どうやらミョウイが絶命した事で、術で操られていた『鬼人』は自我を取り戻したのだろう。頭を押さえて苦しんではいたが、キョウカにも言葉が聞き取れるようになっていた。
「どうやら自分を取り戻せたみたいね?」
人の言葉が話せるという事は、キョウカの話す言葉も理解が出来るだろうと、彼女は『鬼人』に話し掛けるのだった。
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