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サカダイ編
1221.上位妖魔召士達VS三組組長キョウカ2
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妖魔召士達のような大きな魔力を有していないキョウカだが、可視化出来る程の膨大な魔力の光が妖魔達を包み込んでいるのを見て、あれは相当にやばいと感じさせられるキョウカであった。
(私の目算ではあの狐と鬼は先程まで、ランク『5』程度だった筈だけど……。今はどちらも『6.5』はあるかしら? 本当に今の時代の妖魔召士は誰もが反則的な技法を使えるようね)
キョウカの考えた通りに『妖狐』と『鬼人』は、ミョウイの長時間かけて施された術式によって、急激に能力を上昇させていた。しかしこれ程のパワーアップと呼べるモノを行われて、彼ら『式』の妖魔やその術式を用いた『妖魔召士』に何も副作用がない筈もなく、元々高ランクであった妖狐や鬼人達はその知性や自我を失って、妖魔としての本能でのみ動く怪物と化していた。
――そしてその術式を施した『ミョウイ』もまた、異変が生じていた。
「ぐっ……!」
「しっかりなされよ、ミョウイ殿」
ミョウイと呼ばれていた妖魔召士は、頭を押さえながら倒れそうになっていたところをもう一人の妖魔召士『アチシラ』に体を支えられる。
「き、きひひ……! さ、流石にこやつら程の妖魔達を相手に同時に術を施すのはきつい……」
「ああ……。しかし十分だ。後はワシが引き受けよう。お主は『式』達に命令を出すだけでよい」
「うむ。流石に妖魔退魔師の隊長格とはいっても、今の術を施した『妖狐』や『鬼人』にアチシラ殿を同時に相手どるのは不可能というモノだ。というより少し過剰すぎたかもしれぬな。キキキ……!」
妖魔召士達は互いに笑みを浮かべて頷き合っていたが、やがてアチシラが前に出てくると他の『式』達も前に出て来る。妖魔の顔は虚ろな目を浮かべており、キョウカが見えているのかも怪しい状態であった。どうやらあの術を施したミョウイとかいう妖魔召士の命令で動いているのだろう。
「やれやれ。操られているとはいっても私の邪魔をするのであれば、容赦せずに斬り伏せますよ」
キョウカは大きく溜息を吐いたかと思うと、そう言葉を吐いて再び両手で大太刀を構え始める。
「……」
無言で妖魔達と対峙していたキョウカだが、先に『鬼人』が彼女に向けて襲い掛かって来た。
(……来る!)
鬼人はキョウカに向けて鋭利な爪を突き入れようと手を伸ばしてくるが、キョウカは二歩分後ろへと跳躍しながら、野太刀をその鬼人の爪に合わせて弾き、そのまま相手との距離を保ちつつキョウカは水平に野太刀を構えながら鬼人の真横へと移動してそのまま横凪ぎに振り切った。
「ぐぐっ……!」
人型となっている高ランクの鬼人の胴体を真っ二つにするつもりでキョウカは太刀を振ったが、鬼人の身体の皮膚で切先が止まったかと思うと、鬼人は一瞬だけ苦しそうな声を上げたが、直ぐに笑みを浮かべてキョウカの野太刀の刃を握って手前に思いきり引いて見せた。
「ちっ……!」
鬼人の腕力には流石に対抗が出来ず、キョウカは握っている野太刀ごと鬼人に引き寄せられてしまう。そしてその鬼人は待ってましたとばかりに反対の手でキョウカの顔を思いきり殴ろうとするが、左足でその鬼人の手を蹴って軌道を逸らす事に成功すると、キョウカの野太刀を握っている手が少しだけ緩んだのを確認したキョウカはそのまま太刀を引くのではなく、逆に刀の柄の部分そのまま手で強引に押し入れるが、鬼人の腕と体の皮膚で止められたまま、やはりそれ以上は刺し込めなかった。
「キキキ……! 無駄ですよ、人間のそれも貴方のようなか細い女性の腕では『鬼人』の固い皮膚を貫くことは出来ません! さぁそのまま首をへし折ってしまいなさい!」
鬼人を術式で操っている『ミョウイ』がそう命令を下すと、鬼人は素直に従って間合いに居るキョウカの首を掴もうと再び太刀を持っていない方の腕を伸ばして来るのだった。
「流石にこのままで相手をするのは舐めすぎか」
キョウカはそう告げると持っている野太刀に一気に力を込める。
「ぎっ……!!」
キョウカの首を掴もうと手を伸ばしていた鬼人だが、反対側の手の掴んでいる野太刀が急に鮮明な青色のオーラが包まれ始めたのを見て、鬼人は咄嗟にそちらに意識を向けてしまう。
キョウカの持っていた野太刀から先に青色のオーラが包んでいたが、その得を掴んでいる腕から徐々にキョウカの身体全体にオーラが伸びて行くと、一瞬の内にキョウカの身体の全身が『鮮やかな青色』に包まれるのだった。
「悪いけど、もう手加減は出来ないわよ?」
キョウカがそう告げると今度は思いきり大太刀を空に向けて振り上げる。すると今度は刃の方を掴んでいる鬼人の身体ごと宙に浮いたかと思うと、次の瞬間には地面に向けて思いきりキョウカは大太刀を振り下ろす。
「ぎぁ……っ!」
地面に思いきり叩きつけられた鬼人はそのままひっくり返ってしまい、刀をもっていられずに離してしまうのだった。重しが無くなった太刀をキョウカは再び天に向けたかと思うと、そのまま地面にひっくり返っている鬼人の目を目掛けて大太刀を突き入れると、鬼人は声にならない悲鳴を上げた。
「やっぱり高ランクの鬼人はタフね。今ので式札に戻らないか……」
「くっ、妖狐! 吐け!」
鬼人に止めを刺そうとしていたキョウカだが、突如としてミョウイが大声で命令すると同時に『妖狐』の体が突如燃え上がって炎に包まれたかと思うと、今度は妖狐の口から炎が吐き出された。
キョウカは妖狐の炎を躱す為にその場から離れるが、移動した先にも直ぐ様『妖狐』の口から炎が連続で吐き出されていく。器用に彼女は躱しているが避けた炎が次々と沼地ごと焼き焦がしていく。まるでマグマ溜りのように気泡が発生し、その沼地に浸かる事になれば火傷では済まないだろう。妖狐の炎によって森付近の湿地帯は、熱水の海へと変貌を遂げるのであった。
「これだから高ランクの妖魔は面倒なのよね」
連続して吐かれていく『妖狐』の炎を躱しながら愚痴を零すキョウカの元に、再び数体の狗神が飛び掛かって来る。どうやら妖魔達に気を取られている内に再び『アチシラ』と呼ばれていた妖魔召士が『狗神』を出したのだろう。
「グルルル……ッ!!」
先程のように大勢というわけでは無いが、目視出来るだけで四体程の狗神が湿地帯を器用に駆け抜けてキョウカの元へ向かって来る。
(何故この湿地帯を選んだのかと思っていたけれど、こういう狙いがあったわけか。確かに『妖狐』の狐火とやらで湿地帯の至る場所がもう踏み込めなくなってきているわね。熱気だけでやばいのが伝わってくる……!)
そこに狗神達もキョウカを追って来ているのだが、どうやら彼らは熱水の沼溜まりを恐れていないのか全く気にしていない様子で、器用に湿地帯の無事な足場を見つけながらキョウカの元に距離を詰めてくるのだった。
「ワシの事も忘れてもらっては困るぞ! さぁどうする! 既にお前の周りの足場は熱水溜りだ! 徐々に足場は無くなって行くぞ? どうする、どうする! ふははは!」
焦らすように言葉で煽る『アチシラ』に、妖狐の炎を避けていたキョウカはその足を止めるのだった。
「ふははは! 遂に観念したか! たった一人でこの場に来た事を後悔しながら死んでいくがよいぞ!」
「「グルルルルッ!!」」
狗神達も熱水溜りの海となった沼地に落ちる事を避ける為に、先頭を走る狗神が通った道を安全だと判断して縦一列に並び立ってキョウカを追って来ていた。
「距離的にギリギリかな?」
キョウカはそう告げるとこれまで逃げていた方向とは逆に、迫って来ている狗神達に向かって飛び出したかと思うと、最初の狗神を右足で蹴り上げて空中で狗神の頭に飛び乗ると、そのまま次に向かってきている狗神に向けて飛び移る。まるで小島を渡って行くかのように、狗神の通って来た安全な足場とその狗神の頭を踏んでいきながら元来た道を戻って『アチシラ』や『妖狐』、それに目を押さえて倒れている『鬼人』の居た場所へと戻るキョウカであった。
「なっ……、ななっ!!」
すでにこの湿地帯の大半の足場が熱水の海となっているというのに、狗神の通っていた安全な足場を使いながら、再びキョウカが凄い速度で戻って来るのを見て『アチシラ』と『ミョウイ』は慌てて次の手を打とうとするのだった。
「みょ、ミョウイ殿! 直ぐに『妖狐』を奴に向かわせろ! こ、こちらにこれ以上近づけるな!!」
「わ、分かっている! し、しかし、そうは言ってもこちらも動きようが……!」
調子に乗って『妖狐』に炎を吐かせ続けた所為で、彼らの周りの地面も沼地も既に焦土と化して熱水の海になってしまっていて身動きが取れなくなっていたのであった。
焦る二人の妖魔召士を余所に、キョウカは元来た道を戻って来るのが見えた。そしてそれを見た事で更に混乱したミョウイが『妖狐』にキョウカを止めろと指示を出すのであった。
『妖狐』はミョウイの指示に従って再び口から炎を吐こうとするが、その対象となったキョウカの元に、先程頭を踏まれて激昂していた数体の狗神がキョウカの後を追って戻って来るのが見えた。
「「グルルルルッ!」」
「いい子ね?」
キョウカは『妖狐』が口を開くのを確認した直後、その場で高く跳躍をして見せる。襲い掛かる対象のキョウカが目の前で消えた事で狗神は立ち止まり周囲を見回していたが、そこへ妖狐の狐火が狗神に襲い掛かった。
「……ギッ!!」
狗神は妖狐の炎によって一鳴きした直後に、一瞬で焼き尽くされるのだった。
「可哀想に……」
狗神が妖狐の炎に燃やし尽くされたのを空から落ちてきながら確認して呟くと『鮮明な青』を纏わせた大太刀を妖狐に向けて振り下ろすのであった。
上位妖魔召士の『ミョウイ』の禁術を施された事によってランクが『6.5』相当になっている『妖狐』だが、キョウカはあっさりとその『妖狐』の首を刎ね飛ばして式札に戻した後、一呼吸もせずにそこから更に跳躍して『アチシラ』の目の前に降り立ったと同時に、その青のオーラに包まれた大太刀で『アチシラ』の首を一刀両断にするのだった。
あまりの速さに『アチシラ』は妖狐がやられるところまでは理解出来たが、いつの間に自分の間合いに入ってこられたかすら気付けぬままに、彼もまた首を刎ね飛ばされて即座に絶命するのであった。
「さて、後はあの妖魔召士だけだね……。ここは熱いからさっさと片付けて森へ向かいたいわね」
『アチシラ』の首を切断した時に大太刀に付いた血を振って払うと、そのまま『ミョウイ』の元へと歩いて行くキョウカであった。
(私の目算ではあの狐と鬼は先程まで、ランク『5』程度だった筈だけど……。今はどちらも『6.5』はあるかしら? 本当に今の時代の妖魔召士は誰もが反則的な技法を使えるようね)
キョウカの考えた通りに『妖狐』と『鬼人』は、ミョウイの長時間かけて施された術式によって、急激に能力を上昇させていた。しかしこれ程のパワーアップと呼べるモノを行われて、彼ら『式』の妖魔やその術式を用いた『妖魔召士』に何も副作用がない筈もなく、元々高ランクであった妖狐や鬼人達はその知性や自我を失って、妖魔としての本能でのみ動く怪物と化していた。
――そしてその術式を施した『ミョウイ』もまた、異変が生じていた。
「ぐっ……!」
「しっかりなされよ、ミョウイ殿」
ミョウイと呼ばれていた妖魔召士は、頭を押さえながら倒れそうになっていたところをもう一人の妖魔召士『アチシラ』に体を支えられる。
「き、きひひ……! さ、流石にこやつら程の妖魔達を相手に同時に術を施すのはきつい……」
「ああ……。しかし十分だ。後はワシが引き受けよう。お主は『式』達に命令を出すだけでよい」
「うむ。流石に妖魔退魔師の隊長格とはいっても、今の術を施した『妖狐』や『鬼人』にアチシラ殿を同時に相手どるのは不可能というモノだ。というより少し過剰すぎたかもしれぬな。キキキ……!」
妖魔召士達は互いに笑みを浮かべて頷き合っていたが、やがてアチシラが前に出てくると他の『式』達も前に出て来る。妖魔の顔は虚ろな目を浮かべており、キョウカが見えているのかも怪しい状態であった。どうやらあの術を施したミョウイとかいう妖魔召士の命令で動いているのだろう。
「やれやれ。操られているとはいっても私の邪魔をするのであれば、容赦せずに斬り伏せますよ」
キョウカは大きく溜息を吐いたかと思うと、そう言葉を吐いて再び両手で大太刀を構え始める。
「……」
無言で妖魔達と対峙していたキョウカだが、先に『鬼人』が彼女に向けて襲い掛かって来た。
(……来る!)
鬼人はキョウカに向けて鋭利な爪を突き入れようと手を伸ばしてくるが、キョウカは二歩分後ろへと跳躍しながら、野太刀をその鬼人の爪に合わせて弾き、そのまま相手との距離を保ちつつキョウカは水平に野太刀を構えながら鬼人の真横へと移動してそのまま横凪ぎに振り切った。
「ぐぐっ……!」
人型となっている高ランクの鬼人の胴体を真っ二つにするつもりでキョウカは太刀を振ったが、鬼人の身体の皮膚で切先が止まったかと思うと、鬼人は一瞬だけ苦しそうな声を上げたが、直ぐに笑みを浮かべてキョウカの野太刀の刃を握って手前に思いきり引いて見せた。
「ちっ……!」
鬼人の腕力には流石に対抗が出来ず、キョウカは握っている野太刀ごと鬼人に引き寄せられてしまう。そしてその鬼人は待ってましたとばかりに反対の手でキョウカの顔を思いきり殴ろうとするが、左足でその鬼人の手を蹴って軌道を逸らす事に成功すると、キョウカの野太刀を握っている手が少しだけ緩んだのを確認したキョウカはそのまま太刀を引くのではなく、逆に刀の柄の部分そのまま手で強引に押し入れるが、鬼人の腕と体の皮膚で止められたまま、やはりそれ以上は刺し込めなかった。
「キキキ……! 無駄ですよ、人間のそれも貴方のようなか細い女性の腕では『鬼人』の固い皮膚を貫くことは出来ません! さぁそのまま首をへし折ってしまいなさい!」
鬼人を術式で操っている『ミョウイ』がそう命令を下すと、鬼人は素直に従って間合いに居るキョウカの首を掴もうと再び太刀を持っていない方の腕を伸ばして来るのだった。
「流石にこのままで相手をするのは舐めすぎか」
キョウカはそう告げると持っている野太刀に一気に力を込める。
「ぎっ……!!」
キョウカの首を掴もうと手を伸ばしていた鬼人だが、反対側の手の掴んでいる野太刀が急に鮮明な青色のオーラが包まれ始めたのを見て、鬼人は咄嗟にそちらに意識を向けてしまう。
キョウカの持っていた野太刀から先に青色のオーラが包んでいたが、その得を掴んでいる腕から徐々にキョウカの身体全体にオーラが伸びて行くと、一瞬の内にキョウカの身体の全身が『鮮やかな青色』に包まれるのだった。
「悪いけど、もう手加減は出来ないわよ?」
キョウカがそう告げると今度は思いきり大太刀を空に向けて振り上げる。すると今度は刃の方を掴んでいる鬼人の身体ごと宙に浮いたかと思うと、次の瞬間には地面に向けて思いきりキョウカは大太刀を振り下ろす。
「ぎぁ……っ!」
地面に思いきり叩きつけられた鬼人はそのままひっくり返ってしまい、刀をもっていられずに離してしまうのだった。重しが無くなった太刀をキョウカは再び天に向けたかと思うと、そのまま地面にひっくり返っている鬼人の目を目掛けて大太刀を突き入れると、鬼人は声にならない悲鳴を上げた。
「やっぱり高ランクの鬼人はタフね。今ので式札に戻らないか……」
「くっ、妖狐! 吐け!」
鬼人に止めを刺そうとしていたキョウカだが、突如としてミョウイが大声で命令すると同時に『妖狐』の体が突如燃え上がって炎に包まれたかと思うと、今度は妖狐の口から炎が吐き出された。
キョウカは妖狐の炎を躱す為にその場から離れるが、移動した先にも直ぐ様『妖狐』の口から炎が連続で吐き出されていく。器用に彼女は躱しているが避けた炎が次々と沼地ごと焼き焦がしていく。まるでマグマ溜りのように気泡が発生し、その沼地に浸かる事になれば火傷では済まないだろう。妖狐の炎によって森付近の湿地帯は、熱水の海へと変貌を遂げるのであった。
「これだから高ランクの妖魔は面倒なのよね」
連続して吐かれていく『妖狐』の炎を躱しながら愚痴を零すキョウカの元に、再び数体の狗神が飛び掛かって来る。どうやら妖魔達に気を取られている内に再び『アチシラ』と呼ばれていた妖魔召士が『狗神』を出したのだろう。
「グルルル……ッ!!」
先程のように大勢というわけでは無いが、目視出来るだけで四体程の狗神が湿地帯を器用に駆け抜けてキョウカの元へ向かって来る。
(何故この湿地帯を選んだのかと思っていたけれど、こういう狙いがあったわけか。確かに『妖狐』の狐火とやらで湿地帯の至る場所がもう踏み込めなくなってきているわね。熱気だけでやばいのが伝わってくる……!)
そこに狗神達もキョウカを追って来ているのだが、どうやら彼らは熱水の沼溜まりを恐れていないのか全く気にしていない様子で、器用に湿地帯の無事な足場を見つけながらキョウカの元に距離を詰めてくるのだった。
「ワシの事も忘れてもらっては困るぞ! さぁどうする! 既にお前の周りの足場は熱水溜りだ! 徐々に足場は無くなって行くぞ? どうする、どうする! ふははは!」
焦らすように言葉で煽る『アチシラ』に、妖狐の炎を避けていたキョウカはその足を止めるのだった。
「ふははは! 遂に観念したか! たった一人でこの場に来た事を後悔しながら死んでいくがよいぞ!」
「「グルルルルッ!!」」
狗神達も熱水溜りの海となった沼地に落ちる事を避ける為に、先頭を走る狗神が通った道を安全だと判断して縦一列に並び立ってキョウカを追って来ていた。
「距離的にギリギリかな?」
キョウカはそう告げるとこれまで逃げていた方向とは逆に、迫って来ている狗神達に向かって飛び出したかと思うと、最初の狗神を右足で蹴り上げて空中で狗神の頭に飛び乗ると、そのまま次に向かってきている狗神に向けて飛び移る。まるで小島を渡って行くかのように、狗神の通って来た安全な足場とその狗神の頭を踏んでいきながら元来た道を戻って『アチシラ』や『妖狐』、それに目を押さえて倒れている『鬼人』の居た場所へと戻るキョウカであった。
「なっ……、ななっ!!」
すでにこの湿地帯の大半の足場が熱水の海となっているというのに、狗神の通っていた安全な足場を使いながら、再びキョウカが凄い速度で戻って来るのを見て『アチシラ』と『ミョウイ』は慌てて次の手を打とうとするのだった。
「みょ、ミョウイ殿! 直ぐに『妖狐』を奴に向かわせろ! こ、こちらにこれ以上近づけるな!!」
「わ、分かっている! し、しかし、そうは言ってもこちらも動きようが……!」
調子に乗って『妖狐』に炎を吐かせ続けた所為で、彼らの周りの地面も沼地も既に焦土と化して熱水の海になってしまっていて身動きが取れなくなっていたのであった。
焦る二人の妖魔召士を余所に、キョウカは元来た道を戻って来るのが見えた。そしてそれを見た事で更に混乱したミョウイが『妖狐』にキョウカを止めろと指示を出すのであった。
『妖狐』はミョウイの指示に従って再び口から炎を吐こうとするが、その対象となったキョウカの元に、先程頭を踏まれて激昂していた数体の狗神がキョウカの後を追って戻って来るのが見えた。
「「グルルルルッ!」」
「いい子ね?」
キョウカは『妖狐』が口を開くのを確認した直後、その場で高く跳躍をして見せる。襲い掛かる対象のキョウカが目の前で消えた事で狗神は立ち止まり周囲を見回していたが、そこへ妖狐の狐火が狗神に襲い掛かった。
「……ギッ!!」
狗神は妖狐の炎によって一鳴きした直後に、一瞬で焼き尽くされるのだった。
「可哀想に……」
狗神が妖狐の炎に燃やし尽くされたのを空から落ちてきながら確認して呟くと『鮮明な青』を纏わせた大太刀を妖狐に向けて振り下ろすのであった。
上位妖魔召士の『ミョウイ』の禁術を施された事によってランクが『6.5』相当になっている『妖狐』だが、キョウカはあっさりとその『妖狐』の首を刎ね飛ばして式札に戻した後、一呼吸もせずにそこから更に跳躍して『アチシラ』の目の前に降り立ったと同時に、その青のオーラに包まれた大太刀で『アチシラ』の首を一刀両断にするのだった。
あまりの速さに『アチシラ』は妖狐がやられるところまでは理解出来たが、いつの間に自分の間合いに入ってこられたかすら気付けぬままに、彼もまた首を刎ね飛ばされて即座に絶命するのであった。
「さて、後はあの妖魔召士だけだね……。ここは熱いからさっさと片付けて森へ向かいたいわね」
『アチシラ』の首を切断した時に大太刀に付いた血を振って払うと、そのまま『ミョウイ』の元へと歩いて行くキョウカであった。
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