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サカダイ編
1213.イツキの信じられない言葉
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現在『ケイノト』の町では一般の町民達が知り得ないところで、多くの勢力の思惑が入り乱れている状況にあった。
まずその多くの原因を作ったヒュウガと『妖魔召士』組織に属していた者達。現在はこのヒュウガ一派と呼ばれている者達が、ケイノト近くの洞穴で配下である『キクゾウ』と合流して『退魔組』からの連絡を待っている状況であった。
そして次にそのヒュウガ一派を見つけ出そうと躍起になっている『妖魔退魔師』組織の者達。こちらは現在『ケイノト』の町の外で、ヒュウガ達やその一派が『退魔組』に接近するところを捕縛する為に見張っていた。
当然に町の外だけではなく、ケイノトの町の中にも『キョウカ』組の組員達が数人程入り込んで『退魔組』の屯所を常に見張っている。この町は『妖魔召士』組織のお膝元と言える町である為、他の町のように『妖魔退魔師』の予備群が護衛隊として活動を行っていない為、表立っては行動が出来ずに町人に扮して陰ながら見張っている状況であった。
更に今度はその『妖魔召士』組織の下部組織である『退魔組』に属している『特別退魔士』と呼ばれる者達が『退魔組』の頭領である『サテツ』の命令でこちらも交代しながら、外を見張っている『キョウカ』組を見つからないように『結界』を施しながら遠巻きに監視を行っている状態である。
このように一触即発となる寸前と言うべき状態が続いており、まさに嵐の前の静けさという状況であった。この状況を動かす唯一の存在が、現在は『退魔組』に属している『イツキ』という頭領補佐の立場に居る男であった。
何故ならこの男の元にヒュウガ一派が『退魔組』と連絡を取る為に用意して送り込んだ『ミヤジ』という元『煌鴟梟』の幹部の男が居る状態だからである。
本来のヒュウガ達の目論見としては、このイツキの元に伝言を伝えた時点で目的は達成された筈であり、後は『イツキ』から『退魔組』の頭領『サテツ』へヒュウガの伝言を伝えてもらってヒュウガ達と合流を果たすというのが狙いの筈だったのだが、実際には『ミヤジ』から『イツキ』へは伝えられたのだが、そのイツキがサテツ達に伝えていないという状況なのであった。
何故こうなっているのかというと、非常に簡単な話ではあるのだが、イツキがヒュウガと手を組むかどうか迷っている状態に他ならない。
現在ヒュウガ達は、旅籠町を襲撃した事によって『妖魔退魔師』組織を敵に回している状況であり、更に仲間である筈であった彼らの古巣である『妖魔召士』組織もまた、ヒュウガ自身が『妖魔召士』組織の長である『ゲンロク』を襲撃して里を飛び出して来た事で『妖魔召士』からも追われている立場なのである。
そんな絶望的な状況に居るヒュウガ一派と行動を共にすれば、当然イツキや『退魔組』もこの二大組織に目をつけられて彼らと同じように捕縛されてしまうだろう。
この話をミヤジから聞かされた当初、イツキは当然のようにさっさと『退魔組』を見限って逃亡しようと考えたのだが、更にミヤジが告げて来た言葉の中に『煌鴟梟』の二代目となった『トウジ』が、この絶望的な状況に居るヒュウガ一派に何か活路を見出したのか仕事を共にしたいと買って出たらしく、その事を聞かされたイツキは、単に逃げるよりもむしろこの状況を好転させて更に何か『利』が働く一手となるのではないかと考えて、直ぐ様決断をするのではなく、様子を見てみようかと判断したのであった。
そしてイツキは同じく『退魔組』に属している『ユウゲ』とも話を行い、再び自分の長屋へと戻って来ていたのであった。
イツキが自分の長屋に戻ると、直ぐにミヤジが立ち上がって声を掛けてきた。
「お、おかえりなさい! もしかして退魔組に行ってたんですか?」
どうやら外へ出たイツキがその足で、サテツにヒュウガの伝言を伝えに行っていたのだと考えていたようであった。
「いや、そのつもりだったんだが、出先でユウゲとばったり会ったもんでな。ユウゲには伝言の事を伝えて、今後について話をしていたんだ」
「な、成程……。そ、それで今はユウゲ殿は一緒じゃないんですか?」
ミヤジとユウゲは組織こそ違う間柄だったがイツキを通してある程度の親交があり、共に行動をする事もある両者である。
「いや、今アイツはサテツ様の命令で『ケイノト』の外で見張っている妖魔退魔師の連中を交代で監視しているらしくてな、直ぐに戻らないと行けなかったみたいでな。今は一緒には居ない」
「そ、そうなんですね……」
前回ユウゲが煌鴟梟のアジトへ行った時にはミヤジは旅籠町に居た為に会えず仕舞いであった為、久しぶりに会っておきたいと思っていたのだろう。ミヤジは少し残念そうな表情を浮かべていた。
「とりあえず明日一番に『サテツ』様にお前がヒュウガ殿から頼まれた伝言とやらの事を知らせに行くつもりだが、正直言ってその後の事はどうするかまだ悩んでいるんだよな……」
「そりゃ、そうでしょうね……。正直いって沈むと分かっている泥船に意気揚々と乗り込んでいくようなもんですからね」
ハッキリとそう告げるミヤジに、客観的に考えさせられて更に行く気が失せるイツキであった。
「全くだ。何でアイツ『ヒュウガ』殿と仕事をする気になったんだろうな? というかここにアイツも居ればよかったのに、上手く行かないもんだな全く」
頭をガシガシと掻きながらイツキは溜息を吐くのだった。
「でもイツキ様? トウジ殿の事云々は別にしてもサテツ様に伝言の件を伝えたら、もう逃げる事は出来ないんじゃないですか? サテツ様に伝えておいてそのままイツキ様が姿を晦ましたら、今度は退魔組にイツキ様も追われる事になるんじゃ……?」
「いや、追ってきたら全員殺すけどな」
「え……?」
イツキは無意識に口にしたのか、それとも本音を告げたのか。分かりずらい表情で平然とちゃぶ台に乗っているお茶を飲み始めるのだった。
「それよりお前は俺と行動をすると言っていたが、俺が『退魔組』としてヒュウガ殿と手を組んだとして、お前もその泥船に乗る事になるがいいのか?」
「イツキ様について行くって決めたんで、それは構わないっす」
直接ヒュウガからの誘いには断っておいて、彼が言っただけでこうも簡単にヒュウガと協力する事に対して、肯定的になるミヤジに苦笑いを浮かべるイツキであった。
「そうかよ。まぁそうだな、ひとまずサテツ様に伝えてヒュウガ殿達と会う事から始めるか。実際に話をしてみない事には分からねぇこともあるしな。まぁお前だけはどうにか生かしてやるから安心しておけ」
「は、はい!」
最後のイツキの言葉が余程嬉しかったのか、にこやかに返事をするミヤジであった。
(まぁ俺はヒュウガ殿と話をしたいんじゃなくて、そのヒュウガ殿と仕事をする気になったトウジと直接話をしたいんだがな)
イツキはそんな事を考えつつも『退魔組』として、前向きにヒュウガ達の伝言通りに会いに行く事に決めたようであった。
まずその多くの原因を作ったヒュウガと『妖魔召士』組織に属していた者達。現在はこのヒュウガ一派と呼ばれている者達が、ケイノト近くの洞穴で配下である『キクゾウ』と合流して『退魔組』からの連絡を待っている状況であった。
そして次にそのヒュウガ一派を見つけ出そうと躍起になっている『妖魔退魔師』組織の者達。こちらは現在『ケイノト』の町の外で、ヒュウガ達やその一派が『退魔組』に接近するところを捕縛する為に見張っていた。
当然に町の外だけではなく、ケイノトの町の中にも『キョウカ』組の組員達が数人程入り込んで『退魔組』の屯所を常に見張っている。この町は『妖魔召士』組織のお膝元と言える町である為、他の町のように『妖魔退魔師』の予備群が護衛隊として活動を行っていない為、表立っては行動が出来ずに町人に扮して陰ながら見張っている状況であった。
更に今度はその『妖魔召士』組織の下部組織である『退魔組』に属している『特別退魔士』と呼ばれる者達が『退魔組』の頭領である『サテツ』の命令でこちらも交代しながら、外を見張っている『キョウカ』組を見つからないように『結界』を施しながら遠巻きに監視を行っている状態である。
このように一触即発となる寸前と言うべき状態が続いており、まさに嵐の前の静けさという状況であった。この状況を動かす唯一の存在が、現在は『退魔組』に属している『イツキ』という頭領補佐の立場に居る男であった。
何故ならこの男の元にヒュウガ一派が『退魔組』と連絡を取る為に用意して送り込んだ『ミヤジ』という元『煌鴟梟』の幹部の男が居る状態だからである。
本来のヒュウガ達の目論見としては、このイツキの元に伝言を伝えた時点で目的は達成された筈であり、後は『イツキ』から『退魔組』の頭領『サテツ』へヒュウガの伝言を伝えてもらってヒュウガ達と合流を果たすというのが狙いの筈だったのだが、実際には『ミヤジ』から『イツキ』へは伝えられたのだが、そのイツキがサテツ達に伝えていないという状況なのであった。
何故こうなっているのかというと、非常に簡単な話ではあるのだが、イツキがヒュウガと手を組むかどうか迷っている状態に他ならない。
現在ヒュウガ達は、旅籠町を襲撃した事によって『妖魔退魔師』組織を敵に回している状況であり、更に仲間である筈であった彼らの古巣である『妖魔召士』組織もまた、ヒュウガ自身が『妖魔召士』組織の長である『ゲンロク』を襲撃して里を飛び出して来た事で『妖魔召士』からも追われている立場なのである。
そんな絶望的な状況に居るヒュウガ一派と行動を共にすれば、当然イツキや『退魔組』もこの二大組織に目をつけられて彼らと同じように捕縛されてしまうだろう。
この話をミヤジから聞かされた当初、イツキは当然のようにさっさと『退魔組』を見限って逃亡しようと考えたのだが、更にミヤジが告げて来た言葉の中に『煌鴟梟』の二代目となった『トウジ』が、この絶望的な状況に居るヒュウガ一派に何か活路を見出したのか仕事を共にしたいと買って出たらしく、その事を聞かされたイツキは、単に逃げるよりもむしろこの状況を好転させて更に何か『利』が働く一手となるのではないかと考えて、直ぐ様決断をするのではなく、様子を見てみようかと判断したのであった。
そしてイツキは同じく『退魔組』に属している『ユウゲ』とも話を行い、再び自分の長屋へと戻って来ていたのであった。
イツキが自分の長屋に戻ると、直ぐにミヤジが立ち上がって声を掛けてきた。
「お、おかえりなさい! もしかして退魔組に行ってたんですか?」
どうやら外へ出たイツキがその足で、サテツにヒュウガの伝言を伝えに行っていたのだと考えていたようであった。
「いや、そのつもりだったんだが、出先でユウゲとばったり会ったもんでな。ユウゲには伝言の事を伝えて、今後について話をしていたんだ」
「な、成程……。そ、それで今はユウゲ殿は一緒じゃないんですか?」
ミヤジとユウゲは組織こそ違う間柄だったがイツキを通してある程度の親交があり、共に行動をする事もある両者である。
「いや、今アイツはサテツ様の命令で『ケイノト』の外で見張っている妖魔退魔師の連中を交代で監視しているらしくてな、直ぐに戻らないと行けなかったみたいでな。今は一緒には居ない」
「そ、そうなんですね……」
前回ユウゲが煌鴟梟のアジトへ行った時にはミヤジは旅籠町に居た為に会えず仕舞いであった為、久しぶりに会っておきたいと思っていたのだろう。ミヤジは少し残念そうな表情を浮かべていた。
「とりあえず明日一番に『サテツ』様にお前がヒュウガ殿から頼まれた伝言とやらの事を知らせに行くつもりだが、正直言ってその後の事はどうするかまだ悩んでいるんだよな……」
「そりゃ、そうでしょうね……。正直いって沈むと分かっている泥船に意気揚々と乗り込んでいくようなもんですからね」
ハッキリとそう告げるミヤジに、客観的に考えさせられて更に行く気が失せるイツキであった。
「全くだ。何でアイツ『ヒュウガ』殿と仕事をする気になったんだろうな? というかここにアイツも居ればよかったのに、上手く行かないもんだな全く」
頭をガシガシと掻きながらイツキは溜息を吐くのだった。
「でもイツキ様? トウジ殿の事云々は別にしてもサテツ様に伝言の件を伝えたら、もう逃げる事は出来ないんじゃないですか? サテツ様に伝えておいてそのままイツキ様が姿を晦ましたら、今度は退魔組にイツキ様も追われる事になるんじゃ……?」
「いや、追ってきたら全員殺すけどな」
「え……?」
イツキは無意識に口にしたのか、それとも本音を告げたのか。分かりずらい表情で平然とちゃぶ台に乗っているお茶を飲み始めるのだった。
「それよりお前は俺と行動をすると言っていたが、俺が『退魔組』としてヒュウガ殿と手を組んだとして、お前もその泥船に乗る事になるがいいのか?」
「イツキ様について行くって決めたんで、それは構わないっす」
直接ヒュウガからの誘いには断っておいて、彼が言っただけでこうも簡単にヒュウガと協力する事に対して、肯定的になるミヤジに苦笑いを浮かべるイツキであった。
「そうかよ。まぁそうだな、ひとまずサテツ様に伝えてヒュウガ殿達と会う事から始めるか。実際に話をしてみない事には分からねぇこともあるしな。まぁお前だけはどうにか生かしてやるから安心しておけ」
「は、はい!」
最後のイツキの言葉が余程嬉しかったのか、にこやかに返事をするミヤジであった。
(まぁ俺はヒュウガ殿と話をしたいんじゃなくて、そのヒュウガ殿と仕事をする気になったトウジと直接話をしたいんだがな)
イツキはそんな事を考えつつも『退魔組』として、前向きにヒュウガ達の伝言通りに会いに行く事に決めたようであった。
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※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
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