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サカダイ編
1198.眩しい期待感と相対する無力感
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「ひ、ひぃっ……! た、頼む! こ、殺さないでくれ!!」
旅籠町からここまで目隠しと猿轡を嵌められて強引に連れて来られた『煌鴟梟』の幹部だった男『ミヤジ』は、目の前に居る『妖魔召士』達の集団の前で、震える両手で祈りを捧げるように組ながら懇願するのだった。
どうやら旅籠町の地下にある座敷牢の最奥の部屋から出された時に、一つ手前の扉が開かれていた部屋の前扉の隙間からあの護衛隊の男の首が刎ね飛ばされて、胴体だけが置かれていた姿を見ていた事で『ミヤジ』はこの目の前に居る紅い狩衣を着た集団が話の通じる妖魔召士ではなく、平気で他者を殺害出来る危険な集団だと認識している様子であった。
「ふふ、まぁまぁ落ち着きなさい。貴方達を勝手に連れ出してきた事は悪いとは思っていますが、予備群達から解放をして差し上げたのですからありがたく思いなさい。それにこの後に少しだけ我々に協力をして頂けるならば、自由にして差し上げますのでご安心なさい」
「そ、それは……、ほ、本当か!?」
脅えていたミヤジだが、ヒュウガの言葉に少しだけ嬉しそうな表情に変えた。どうやら旅籠町の護衛隊に捕縛された事で絶望感に苛まされていたようだが、外に出られた事と今のヒュウガの一言によって、ミヤジの中で『再びやり直せるかもしれない』と頭に過ったようで目に希望に満ち溢れていた。
「もちろんですよ。それにこれから行って頂く事に関しても、貴方達であればむしろ喜んで頂ける事かと思いますよ『煌鴟梟』であった貴方達ならね」
「……え?」
ミヤジは目の前の男が何を言っているのか分からず戸惑いを見せたが、確かに旅籠町の護衛隊の屯所から抜け出せた事でやり直せるかもしれないと、閉ざされていた未来への道が再び切り開かれた感覚を胸に宿らせていた。煌鴟梟という組織は今後も続いて行く組織の筈だったが、同じように捕らえられた隣に居る無能な元ボスのおかしな采配の所為で崩壊をしてしまった。
このボスであった『トウジ』という男は、組織を運用するという一点で言えばとても優れた一面を有してはいたが、やはり先代『煌鴟梟』のボスと比較すればカリスマ性というモノに乏しく、そして『よく分からない意地』を通す節があった。先代『煌鴟梟』の時代から居る幹部であったミヤジの言葉を何度も破却し、勝手に入れた新人に固執するように使いたがり、挙句に組織を巻き込んで護衛隊に全員が捕縛されて組織は壊滅させられた。全てこの無能が招いた事である為に、トウジに対して『ミヤジ』はもう尊敬する相手ではなくなり、逆に全てを破滅に招く厄介者としか目に映ってはいなかった。
そしてミヤジがヒュウガの言葉に驚いている横で、煌鴟梟の二代目ボスであった『トウジ』は、興味なさげに話を聞いていた。
(今の話を聞いて思った事がミヤジだけではなく俺まで連れ出したのは、この俺が『煌鴟梟』のボスだった事が関係しているのだろうな。正直言ってどんな事をやらされるのか分からんが、もう俺の事はあのまま護衛隊の屯所で放っておいて欲しかった。今更外に出たところで何もする事もないし、何もする気力もわかないのだから……)
トウジが屯所の座敷牢でようやく意識が戻った時、最初に何故ここに居るのかと考えたが、中に居たミヤジや他の『煌鴟梟』の仲間達が捕縛されている様を見て、自分達は護衛隊に捕まったのだとようやく理解した。トウジからすれば何も分からない間に自分も捕まっていた為に、把握するのに時間が掛かったが、同じ部屋に収監されていたミヤジとサノスケ達に、座敷牢の中で何度もお前のせいだと言われ続けた事でようやく自分が『セルバス』という男に固執したことで捕縛されるに至ったのだと理解させられたのである。
しかしトウジ自身その事には全く覚えがなく、セルバスという男すら組織に加入させた覚えもなかった。どうやら噂に聞く『妖魔召士』の『魔瞳』とやらと似たような技術で自分は洗脳されていたのかもしれないとさえ考える程であった。
だが、どんな理由にしてもこうして現実に自分達の仕事が出来なくなった事で『煌鴟梟』のボスであったトウジは無気力になってしまったのである。
それは受動的に受け入れたというよりは、積み上げて来たモノが自分の預かり知らないところで崩されてしまい、何が起きたか分かっていない間に自分の人生の幕を下ろされてしまって、どうしていいか分からずに自分の気持ちに整理すらつかない間に仲間であったはずの者達から責められ続けたによって、気持ちが病んでしまったと言った方が正しいのだろう。
そしてそれはこうして外に連れ出されて、人生をやり直すきっかけを与えてやると口にされた今であっても、気分は滅入ったままで、トウジは前向きにはなれなかった。
まだ若いミヤジはやり直せるかもしれないと自覚した事で、その野心を再び募らせ始めているようだが、トウジにしてみればもう放っておいてくれという気持ちが大きく、どこかこの場に居ても気持ちは別の場所にあるような感覚に陥りながら、ミヤジと妖魔召士達の話を聞いているトウジであった。
「そ、それで何をすればいいんです?」
目をギラつかせながらやり直す好機を必死に手繰り寄せようと、ミヤジは必死に話を聞こうとヒュウガに尋ねるのであった。
旅籠町からここまで目隠しと猿轡を嵌められて強引に連れて来られた『煌鴟梟』の幹部だった男『ミヤジ』は、目の前に居る『妖魔召士』達の集団の前で、震える両手で祈りを捧げるように組ながら懇願するのだった。
どうやら旅籠町の地下にある座敷牢の最奥の部屋から出された時に、一つ手前の扉が開かれていた部屋の前扉の隙間からあの護衛隊の男の首が刎ね飛ばされて、胴体だけが置かれていた姿を見ていた事で『ミヤジ』はこの目の前に居る紅い狩衣を着た集団が話の通じる妖魔召士ではなく、平気で他者を殺害出来る危険な集団だと認識している様子であった。
「ふふ、まぁまぁ落ち着きなさい。貴方達を勝手に連れ出してきた事は悪いとは思っていますが、予備群達から解放をして差し上げたのですからありがたく思いなさい。それにこの後に少しだけ我々に協力をして頂けるならば、自由にして差し上げますのでご安心なさい」
「そ、それは……、ほ、本当か!?」
脅えていたミヤジだが、ヒュウガの言葉に少しだけ嬉しそうな表情に変えた。どうやら旅籠町の護衛隊に捕縛された事で絶望感に苛まされていたようだが、外に出られた事と今のヒュウガの一言によって、ミヤジの中で『再びやり直せるかもしれない』と頭に過ったようで目に希望に満ち溢れていた。
「もちろんですよ。それにこれから行って頂く事に関しても、貴方達であればむしろ喜んで頂ける事かと思いますよ『煌鴟梟』であった貴方達ならね」
「……え?」
ミヤジは目の前の男が何を言っているのか分からず戸惑いを見せたが、確かに旅籠町の護衛隊の屯所から抜け出せた事でやり直せるかもしれないと、閉ざされていた未来への道が再び切り開かれた感覚を胸に宿らせていた。煌鴟梟という組織は今後も続いて行く組織の筈だったが、同じように捕らえられた隣に居る無能な元ボスのおかしな采配の所為で崩壊をしてしまった。
このボスであった『トウジ』という男は、組織を運用するという一点で言えばとても優れた一面を有してはいたが、やはり先代『煌鴟梟』のボスと比較すればカリスマ性というモノに乏しく、そして『よく分からない意地』を通す節があった。先代『煌鴟梟』の時代から居る幹部であったミヤジの言葉を何度も破却し、勝手に入れた新人に固執するように使いたがり、挙句に組織を巻き込んで護衛隊に全員が捕縛されて組織は壊滅させられた。全てこの無能が招いた事である為に、トウジに対して『ミヤジ』はもう尊敬する相手ではなくなり、逆に全てを破滅に招く厄介者としか目に映ってはいなかった。
そしてミヤジがヒュウガの言葉に驚いている横で、煌鴟梟の二代目ボスであった『トウジ』は、興味なさげに話を聞いていた。
(今の話を聞いて思った事がミヤジだけではなく俺まで連れ出したのは、この俺が『煌鴟梟』のボスだった事が関係しているのだろうな。正直言ってどんな事をやらされるのか分からんが、もう俺の事はあのまま護衛隊の屯所で放っておいて欲しかった。今更外に出たところで何もする事もないし、何もする気力もわかないのだから……)
トウジが屯所の座敷牢でようやく意識が戻った時、最初に何故ここに居るのかと考えたが、中に居たミヤジや他の『煌鴟梟』の仲間達が捕縛されている様を見て、自分達は護衛隊に捕まったのだとようやく理解した。トウジからすれば何も分からない間に自分も捕まっていた為に、把握するのに時間が掛かったが、同じ部屋に収監されていたミヤジとサノスケ達に、座敷牢の中で何度もお前のせいだと言われ続けた事でようやく自分が『セルバス』という男に固執したことで捕縛されるに至ったのだと理解させられたのである。
しかしトウジ自身その事には全く覚えがなく、セルバスという男すら組織に加入させた覚えもなかった。どうやら噂に聞く『妖魔召士』の『魔瞳』とやらと似たような技術で自分は洗脳されていたのかもしれないとさえ考える程であった。
だが、どんな理由にしてもこうして現実に自分達の仕事が出来なくなった事で『煌鴟梟』のボスであったトウジは無気力になってしまったのである。
それは受動的に受け入れたというよりは、積み上げて来たモノが自分の預かり知らないところで崩されてしまい、何が起きたか分かっていない間に自分の人生の幕を下ろされてしまって、どうしていいか分からずに自分の気持ちに整理すらつかない間に仲間であったはずの者達から責められ続けたによって、気持ちが病んでしまったと言った方が正しいのだろう。
そしてそれはこうして外に連れ出されて、人生をやり直すきっかけを与えてやると口にされた今であっても、気分は滅入ったままで、トウジは前向きにはなれなかった。
まだ若いミヤジはやり直せるかもしれないと自覚した事で、その野心を再び募らせ始めているようだが、トウジにしてみればもう放っておいてくれという気持ちが大きく、どこかこの場に居ても気持ちは別の場所にあるような感覚に陥りながら、ミヤジと妖魔召士達の話を聞いているトウジであった。
「そ、それで何をすればいいんです?」
目をギラつかせながらやり直す好機を必死に手繰り寄せようと、ミヤジは必死に話を聞こうとヒュウガに尋ねるのであった。
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