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サカダイ編
1191.曖昧な態度
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エイジとゲンロクに軽く謝罪をするように頭を下げた後、眼鏡をくいっとあげながら再び口を開いた。
「こちらが得ている情報についてですが、部下達からの報告によれば襲撃してきた『妖魔召士』は『天狗』を『式』にしていたそうです」
「天狗といえば……。最近ではやはり『王連』か?」
ミスズの言葉にエイジがそう呟きながらゲンロクを見ると、ゲンロクもそう考えていたようでエイジに頷きを見せる。
「その天狗が『王連』なのであれば、間違いなくそれは『ヒュウガ』一派で間違いはあるまい。確か天狗を『式』にしておったのは『ジンゼン』だった筈だ」
「そもそもあの旅籠町に捕縛されている『キネツグ』達に命令を出したのもヒュウガ一派だからな。組織から抜けた奴らが、自分達に従う部下を取り戻しに旅籠町の屯所を襲撃したのだろうな」
ここまでの話を『ゲンロク』と『エイジ』から聞いたミスズは、自分の読み通りだとばかりに頷くのだった。
「その『ジンゼン』という者も前回の会合では姿を見せてはいませんでしたね。ゲンロク殿、他にあの会合でヒュウガ一派だと思われる者達の名前と特徴、それにヒュウガ一派と見られる者達の中でランク『7』以上の『式』を扱う者達の情報を纏めて渡しては頂けませんか?」
ミスズに面と向かってそう言われたゲンロクは流石に悩む素振りを見せた。彼女の言葉にすんなりと頷くわけにはいかないというのが本音ではあるが、ヒュウガをこれ以上好きにさせておくわけにもいかないというのもまた彼の本音である為だった。
現在ゲンロクは前回の会合で約束した通り渋々とではあるが、自分が組織の長という立場を退いて新たな『妖魔召士』の長を選出する為に動き始めている。
しかしそれは思った以上に難航している状態であった。有力であった妖魔召士達が『ヒュウガ』一派と共に組織を抜けてしまっている事も大きいが、何よりも前回の会合や前々回の会合で目の前に居る『ミスズ』や『ヒノエ』それに『シゲン』という大きな魅力を持った、所謂カリスマ性に溢れている『妖魔退魔師』達と相対した事で、そんな連中とこれから組織を背負って渡り合って行くのだという気概を持つ者が中々見つからないというのが現状なのであった。
そんな状況下で同じ妖魔召士組織の仲間であった『ヒュウガ』一派の問題も考えなくてはならず、ゲンロクは相当に苦しい状況に立たされていると言えた。
(ここは素直にミスズ殿達と協力関係を結んで、妖魔召士組織の持つヒュウガ達の情報を渡した方が良いのだろうか。どうせヒュウガ達はもう組織から抜けて行った者達なのだ。組織とはもう何も関係が無い以上、ここは少しでも心証をよくするためにも情報を渡すべきではないだろうか……)
彼が抜けた『ヒュウガ』一派達の情報を渡す事に悩んでいるのは『ヒュウガ』達が、仲間達だったからという理由ではなく、高ランクの妖魔と契約をしている『式』の情報を『妖魔退魔師』組織に渡す事が最大の理由なのであった。
何故なら『ヒュウガ』は元々ゲンロクの代の右腕として最高幹部に居た男であり、そのヒュウガの扱う『式』の全てはゲンロクも当然把握をしているが、その情報をミスズに渡す事によって、今の『妖魔召士』組織全体のレベルをミスズを通して『妖魔退魔師』組織に知れ渡って把握されてしまうというのが問題なのであった。
ゲンロクも組織の長という立場に居た者として、これがどれだけ難しい判断が必要かという事は心得ている。本来であれば組織から勝手に離れて好き勝手に暴れて妖魔召士の『格式』を貶めている『ヒュウガ』一派を自分達が妖魔召士組織として取り押さえて成敗という形をとるのが必然なのであろうが、何度も妖魔退魔師組織に脇の甘さを露呈してしまい、こうして付け入る隙を与えてしまっているのである。
前々回の会合では『加護の森』の一件。前回の会合ではキネツグとチアキによる『妖魔退魔師組織の所属である予備群を襲撃した』一件。そして今回の元妖魔召士の最高幹部であった『ヒュウガ』とその一派による前回と同様の予備群襲撃と続いてしまっている。
最早、ゲンロクは同格であった筈の『妖魔退魔師』組織に対して借りが大きくなりすぎてしまい、強気に出られなくなってしまっているのであった。しかしあくまで最後の『ヒュウガ』の一件に関していえば『妖魔召士』の組織としては非は無いと考える事が出来る為に、組織を離れたといっても『妖魔召士』の扱う『式』に関しての情報を提供する事は、今後の自分達の首を絞める事にも繋がりかねない。
『ヒュウガ』一派の事を度外視しても『妖魔召士』の『式』と扱っている情報を提示して欲しいというミスズの要求は、妖魔召士の暫定の長の立場としても突っぱねるべきであろう。
まだ暫定の妖魔召士の組織の長という立場である以上は彼が答えを出すべき状況であるのだが、ゲンロクはまたもや悩んで結論を下す事が出来ずに流れ出る顔の汗を拭きながら、曖昧な態度を浮かべるのであった。
「こちらが得ている情報についてですが、部下達からの報告によれば襲撃してきた『妖魔召士』は『天狗』を『式』にしていたそうです」
「天狗といえば……。最近ではやはり『王連』か?」
ミスズの言葉にエイジがそう呟きながらゲンロクを見ると、ゲンロクもそう考えていたようでエイジに頷きを見せる。
「その天狗が『王連』なのであれば、間違いなくそれは『ヒュウガ』一派で間違いはあるまい。確か天狗を『式』にしておったのは『ジンゼン』だった筈だ」
「そもそもあの旅籠町に捕縛されている『キネツグ』達に命令を出したのもヒュウガ一派だからな。組織から抜けた奴らが、自分達に従う部下を取り戻しに旅籠町の屯所を襲撃したのだろうな」
ここまでの話を『ゲンロク』と『エイジ』から聞いたミスズは、自分の読み通りだとばかりに頷くのだった。
「その『ジンゼン』という者も前回の会合では姿を見せてはいませんでしたね。ゲンロク殿、他にあの会合でヒュウガ一派だと思われる者達の名前と特徴、それにヒュウガ一派と見られる者達の中でランク『7』以上の『式』を扱う者達の情報を纏めて渡しては頂けませんか?」
ミスズに面と向かってそう言われたゲンロクは流石に悩む素振りを見せた。彼女の言葉にすんなりと頷くわけにはいかないというのが本音ではあるが、ヒュウガをこれ以上好きにさせておくわけにもいかないというのもまた彼の本音である為だった。
現在ゲンロクは前回の会合で約束した通り渋々とではあるが、自分が組織の長という立場を退いて新たな『妖魔召士』の長を選出する為に動き始めている。
しかしそれは思った以上に難航している状態であった。有力であった妖魔召士達が『ヒュウガ』一派と共に組織を抜けてしまっている事も大きいが、何よりも前回の会合や前々回の会合で目の前に居る『ミスズ』や『ヒノエ』それに『シゲン』という大きな魅力を持った、所謂カリスマ性に溢れている『妖魔退魔師』達と相対した事で、そんな連中とこれから組織を背負って渡り合って行くのだという気概を持つ者が中々見つからないというのが現状なのであった。
そんな状況下で同じ妖魔召士組織の仲間であった『ヒュウガ』一派の問題も考えなくてはならず、ゲンロクは相当に苦しい状況に立たされていると言えた。
(ここは素直にミスズ殿達と協力関係を結んで、妖魔召士組織の持つヒュウガ達の情報を渡した方が良いのだろうか。どうせヒュウガ達はもう組織から抜けて行った者達なのだ。組織とはもう何も関係が無い以上、ここは少しでも心証をよくするためにも情報を渡すべきではないだろうか……)
彼が抜けた『ヒュウガ』一派達の情報を渡す事に悩んでいるのは『ヒュウガ』達が、仲間達だったからという理由ではなく、高ランクの妖魔と契約をしている『式』の情報を『妖魔退魔師』組織に渡す事が最大の理由なのであった。
何故なら『ヒュウガ』は元々ゲンロクの代の右腕として最高幹部に居た男であり、そのヒュウガの扱う『式』の全てはゲンロクも当然把握をしているが、その情報をミスズに渡す事によって、今の『妖魔召士』組織全体のレベルをミスズを通して『妖魔退魔師』組織に知れ渡って把握されてしまうというのが問題なのであった。
ゲンロクも組織の長という立場に居た者として、これがどれだけ難しい判断が必要かという事は心得ている。本来であれば組織から勝手に離れて好き勝手に暴れて妖魔召士の『格式』を貶めている『ヒュウガ』一派を自分達が妖魔召士組織として取り押さえて成敗という形をとるのが必然なのであろうが、何度も妖魔退魔師組織に脇の甘さを露呈してしまい、こうして付け入る隙を与えてしまっているのである。
前々回の会合では『加護の森』の一件。前回の会合ではキネツグとチアキによる『妖魔退魔師組織の所属である予備群を襲撃した』一件。そして今回の元妖魔召士の最高幹部であった『ヒュウガ』とその一派による前回と同様の予備群襲撃と続いてしまっている。
最早、ゲンロクは同格であった筈の『妖魔退魔師』組織に対して借りが大きくなりすぎてしまい、強気に出られなくなってしまっているのであった。しかしあくまで最後の『ヒュウガ』の一件に関していえば『妖魔召士』の組織としては非は無いと考える事が出来る為に、組織を離れたといっても『妖魔召士』の扱う『式』に関しての情報を提供する事は、今後の自分達の首を絞める事にも繋がりかねない。
『ヒュウガ』一派の事を度外視しても『妖魔召士』の『式』と扱っている情報を提示して欲しいというミスズの要求は、妖魔召士の暫定の長の立場としても突っぱねるべきであろう。
まだ暫定の妖魔召士の組織の長という立場である以上は彼が答えを出すべき状況であるのだが、ゲンロクはまたもや悩んで結論を下す事が出来ずに流れ出る顔の汗を拭きながら、曖昧な態度を浮かべるのであった。
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